昼行燈の女神は微笑む   作:匿名

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18話

「縛れー!かつげー!つれてけー!」

 

「!!?!?!!?」

 

時刻は昼過ぎ。

ベッドで舟を漕いでいると、扉を猛烈な勢いで開きライザとレントが入ってきた。

 

そして、掛け声と共に毛布ごと連れていかれーーー

 

「ようこそ!我がアトリエへ!」

 

ヨルの白い右手が、無言で中指をおったてる。

 

「えー!?なんでー!?」

 

「いや、まあ、うん。これに関しては俺もヨル兄に同情するわ」

 

ボサボサな亜麻色の髪の毛に、よれた服といった風貌のヨルが、ジト目になりながらライザに詰め寄り無言の圧力をかける。

 

「だからいったじゃん、やめたほうがいいよって……」

 

そう言いながら、タオが遅れてライザの部屋ーーーいや、アトリエに顔を出す。

その腕の中にはヨルの私服があった。

 

「いやー、はやくヨル兄にもみせたくってーーー……えへへ、許して?」

 

「許さん。」

 

直後、「いたたたた!」と、ヨルの拳に頭をぐりぐりと挟まれるライザの声が、アトリエに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふん、と鼻を鳴らし、服に袖を通す。

服を着た際に巻き込まれた亜麻色の髪を両手で出し、周りを見渡す。

 

「……」

 

ヨルが入れるくらいのでかい釜。

壁にかけられたでかいヘラ。

フラスコやらなんやら。

 

「んで、アトリエってなんだよ。」

 

「……あれ、言ってなかったっけ。あたしアンペルさんに錬金術教えてもらったんだよね」

 

挟まれた頭を押さえ、ライザが振り返る。

 

「あー、そいやライザ、そんときヨル兄のこと起こしに行ってなかったもんな」

 

「意外と薄情だね、ライザ」

 

「こんな可愛い兄貴分をほったらかしにしてたのか?」

 

「上目遣いやめて??」

 

幼馴染3人から怒涛の煽りを受ける。

最後に、わざとらしく赤い瞳で上目遣いをするヨルの頭を、チョップで叩く。

 

「……でもヨル兄にもみてもらいたいじゃん」

 

「ほっぺた膨らませんな、俺が悪いみたいだろ」

 

仕返しとばかりにライザの栗色の頭に、白いチョップが突き刺さる。

うー……、と頭をさすりながらライザが唸る。

 

「いいしー!クラウディアつれてきて褒めてもらうもん!」

 

そこでふと、「あ!」とライザが思い出したように声を上げる。

 

「そういえば今度クラウディアの家に行くんだけど、ヨル兄もくるよね?」

 

当たり前だもんね?となぜか自信ありげなライザに背を向け、ヨルがフラスコを弄びながら答える。

 

「いや?俺はこの前会ったしな。行かないぞ。」

 

「……え?」

 

「偶然会って、昼飯……朝飯か?どっちでもいいか。……まあ、食いにいったんだ」

 

「……え、2人、で?」

 

「あぁー。そうだがどうした?」

 

「変なことを聞くなよ」とばかりに振り返る。

すると、あちゃー、とばかりに顔を押さえるレントとタオ、そして目の座ったライザが立っていた。

 

「……ふーん。」

 

「……?」

 

「よし。俺はリラさんに言われた鍛錬があるからな。ここまでだ。」

 

「僕もちょっと本の解読があるから……」

 

「健闘祈るぜ!ヨル兄!」「じゃあね……」と、部屋を後にする2人。

何やら沈黙が続くが、ふとライザがぱっと顔を上げる。

 

「レントとタオと、素材の採取してくる!!」

 

べー!と何やら拗ねたように部屋を飛び出るライザ。

何もわからないまま、ヨルだけがライザの部屋に残された。

 

「……まじでなんなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

ライザの家の裏手にある寂れた船着場から対岸まで移動した3人。

 

……いや、ライザと、ほとんど拉致されるような形で連れてこられた2人が、プリプリと怒るライザの背中を見ていた。

 

(ライザって、ヨル兄さん絡みになるといつにも増して感情的になるよね……)

 

(ヨル兄もヨル兄だけどな……。人の心、いや女心ってもんをわかってなさすぎるぜ……)

 

こそこそと後ろで話す2人に、ライザが振り返る。

 

「……る」

 

「あ、あー。なんだって?」

 

「魔物と戦って!素材の採取!する!」

 

「そ、そうだね、あはは……」

 

(おいおいおいいつにも増して不機嫌じゃねえか!)

 

(過去一だねこれは……)

 

砂浜を踏みしめながら、小妖精の森とは別の道ーーー

旅人の道に向かっていくライザに、タオとレントがついていく。

 

「まあ探索範囲を広げてみたかったからちょうどいいんだけどよ。」

 

「やっぱ生態系が違うのか、小妖精の森とは大分違いそうだな」と、レントが続ける。

 

「うん……。なにあの竜みたいな魔物……。帰りたいんだけど……」

 

タオが零すようにちらっとライザに視線を向ける。

前衛のレントよりも前に出て、杖を折ってしまうんじゃないかというほど杖を握り締め、目はメラメラと燃えている。

 

「……そうはいかないよねぇ……」

 

「まあ、腹括れ、タオ……」

 

「俺たちは付き合うしかないんだよ、ライザにな……」

 

肩を落としながら、竜と対峙しつつあるライザの横に、2人が追いついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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