昼行燈の女神は微笑む 作:匿名
「あ、クラウさん。おはようございます!」
「あらライザちゃん〜。おはよ〜。今日もバカ息子起こしに来てくれたの〜?」
時刻は朝10時。
ライザは今日も今日とて、ヨルを起こすために彼の家ーーーシャーロット家に訪れていた。
あまりに早すぎるのは可哀想かと、気持ち朝一番、とまではいかない時刻に起こしにくる。
それがライザの1日の習慣でもあった。
クラウさん。
そう呼ばれた亜麻色の髪の毛にヨルと同じクーケンフルーツを思わせる瞳の女性は、周りの時間をゆっくりさせる力でもあるんじゃないかといった雰囲気で、辛辣な言葉を吐く。
「あの子はまだ寝てるわよ〜。ダメ元で起こそうとしたけど、起きる気配ひとつしなかったわ〜。」
ノックしただけなんだけどね〜。うふふ。
そういいながら軒先を箒で掃除する。
ライザちゃんにきっと甘えてるのね〜。と笑いながら雑談に話を咲かせる。
「だ、大丈夫ですよ!ちゃんと起こしますので…!」
と、少し顔を赤めながら、元気よく答え、ヨルの部屋に向かう。
扉の前で、気合を入れるようにパンっ!と顔を叩き、扉を強く開く。
「ヨル兄ーーー!!!朝だよーーー!!」
扉を開けたその先には、いつもの見慣れた景色が広がっていた。
部屋の壁中央にある窓。
そこから入る光は、ヨルが寝ているベッドを照らす。
なんでこんなに明るく照らされてるのに、自分で起きることはないんだろう…。
そんな疑問が頭をよぎるが、ぶんぶんと頭を振って今は目の前のことに集中する。
「ほら、ヨル兄!朝だってば!今日はレントはいないけど、絶対
そう言いながら、ベッドの膨らみをバンバンと叩く。
ライザより2歳。レントより一歳年上にも関わらず、背丈に関してはタオよりはあるものの、せいぜいライザの少し上。体重に関しては、認めたくないが目算でライザより軽いであろう、小柄な痩躯をベッド越しに容赦なく叩く。
しかし、いつもとは違い返答が返ってくることはなく、部屋は静寂を保っていた。
「…え、よ、ヨル兄…?」
おそるおそる、つんつんと頭があるであろう位置を突くが、微動だにせず、よくよく観察すればベッドの中で寝息を立てるように胸を上下させてる雰囲気も感じられない。
思わずライザは焦りながらベッドを剥いだ。
「え、嘘でしょヨル兄!もしかしてほんとになにか…!」
バッと半涙目になりながらベッドを剥ぐとーーー
布が敷き詰められた、オブジェクトが置かれていた。
ライザは目をこすりながら、二度見する。
どう見ても、うまい具合にヨルの背丈に似せて敷き詰められた布だ。
「…え、ちょ、ちょっと!!!ヨル兄どこいったのーーー!?!?」
時刻は10時15分。ヨルの部屋に、ライザの絶叫が響き渡った。
「おい、いつまで寝てやがんだ。」
時刻は11時。
ベッドに頭まで潜ったヨルを、やたら目つきの悪い少年ーーーボオス・ブルネンがドスドスと片足で踏むように起こす。
「あと…15分…」
「舐めんな!さっさと起きろ!」
と、雷を落としながら、容赦なくベッドから引き剥がされる。
窓から入る光に亜麻色の髪の毛は明るく輝き、白磁の肌は光を反射するように白さを強調するーーー寝起きのヨルが、うずくまるように眠っていた。
が、最後には小柄すぎて話にならんとでもいうようにヨルをベッドから引き剥がされ、担ぎ出していた。
「…夢見心地の人の邪魔をすんなや…○すぞ…バカタレが…」
「そもそもここは俺の家だろうが。…まったく昨晩唐突に枕だけもってきやがったと思ったら…」
悪態をつきながらヨルを机に座らせ、乱暴だが手早く髪の毛を結い上げて頭を叩く。
「おら、さっさと起きて出て行けよヨル。ブルネン家のあととりは忙しいんだよ。」
「あー…飯を食ったらな。…奢れ。」
尻尾のように垂れ下がった毛先をくるくるといじりながら、ボオスを見上げる。
「なんで俺が…!」
「頼むよ、ボオス。たまには
無駄に麗しいクーケンフルーツの瞳に見つめられ、押し切られそうになる。
くそ、顔面偏差値落として内面偏差値をあげやがれ…!
「…ちっ。とっとと下に来い。さっさと食って出るぞ。」
おう。とだけ返し、枕を小脇にボオスの後ろをついてくる。
こいつは昔からこんな勝手な奴だったな…。と悪態をつきながら、階段を降りていった。