昼行燈の女神は微笑む   作:匿名

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24話

木漏れ日が差す森を抜けると、人の手で拓かれた広場があった。

その中心に、崩れかかった廃屋がある。

広場を眺めるライザたちの頬を撫でるように、潮風が優しく吹き抜ける。

 

「ここは魔物、入ってこないんだね」

 

「クリント王国の遺跡、なのかな……?森の見張り小屋だったのかも?」

 

ライザとタオが、飛び出すように廃屋に近づく。

レントが「おいおい、急ぐなって」と言いながら後ろを追いかける。

 

「ここがお前らが言ってた廃屋か?」

 

「うん……。でも、しっかり見てたわけじゃないから意識してなかったけど、これはさすがに秘密基地には厳しいかな……?」

 

クラウディアが、廃屋を眺めながら零す。

その言葉に、すでに肘について寝そべるヨルが口を出した。

 

「労働力が五つもあんだ、なんとかなるだろ。」

 

「おい、その労働力にはお前も入ってるのか?ヨル」

 

「この柔肌と白い手のひらを見ろ。とても耐えれないだろ。」

 

白く細い手のひらをボオスにひらひらと見せるヨルを無視し、ボオスがライザ、レント、タオを呼び戻す。

 

「おい!あんまはしゃぐな。見てみる分には十分だろ。この廃屋は使えそうなのか?ライザ。」

 

ライザが廃屋の近くから叫ぶように返事をし、開けた広場に声が反響する。

 

「屋根とかは崩れてるけど、資材さえなんとかできればいけそうじゃないー!?」

 

「肝心の資材をどうするんだよ。」

 

「……そりゃまあ、あれだろ。」

 

「窃盗はダメだよ?ヨル」

 

「俺をなんだと思ってやがる」

 

クラウディアのツッコミに、中指を立てながらヨルが口を開く。

 

「レンキンジュツ……ってやつで、考えてみたらいいんじゃないのか」

 

ヨルたちの近くにまで戻ってきていたライザが、廃屋を眺めながら黙り込む。

 

「……錬金術……。」

 

そして、なにかを閃いたように顔をあげる。

 

「みんな!とりあえず木とか石とか、資材になりそうなもの持って一旦あたしの部屋に戻ろう!」

 

「……お前も働けよ、ヨル」

 

「……ちっ」

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず持ってきたはいいけどさ……」

 

タオが石を抱え、肩で息をしながら寂れた船着場に降りる。

レントとボオスが片手で木を担ぎながら「大丈夫か?」とタオを労っていた。

 

「一体何をするつもりなのさ、ライザ」

 

「ふふん、決まってるでしょ!」

 

腕を組みながら、自信ありげにライザが答える。

 

「ーーーー錬金術で、資材を作ればいいのよ!」

 

「というわけで、がんばってあたしの部屋まで運んでね!」となぜかライザが胸を張る。

 

その後ろで、石を抱えたヨルが桟橋に倒れ伏した。

 

「……もう限界だ……」

 

「ヨル兄さんが死んだ!」

 

「フィジカルがなさすぎるぜヨル兄!」

 

 

 

 

 

 

「ふー。ようやくついたな。」

 

「ほんとだよ……。肉体労働なんて向いてないのに……」

 

資材になりそうなものを抱えながら、七色葡萄の森を抜ける。

が、シュタウト家の軒先で、眉間に皺を寄せるミオと鉢合わせをしてしまった。

 

「……あんたたち、今度は何をするつもりなんだい?」

 

「いい加減お父さんの手伝いを……!」と、ライザに叱ろうとするが、クラウディアやヨルが視界に入り、口を止める。

 

「あら、ヨルちゃんにバレンツのお嬢さん……?」

 

「こんにちは。すみません、お邪魔します」

 

「あら、いらっしゃい。ゆっくりしていってね」

 

ぺこりと会釈をするクラウディアを尻目に、ライザが「お母さん、お菓子よろしくね!」と脇をすり抜けていく。

 

その後ろを、すでに意気消沈しているヨルが重い足取りで階段を上がる。

 

「よ、ヨルちゃん大丈夫?」

 

「大丈夫……」

 

そう零しながら、シュタウト家に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

シュタウト家の2階。

屋根裏を改造したライザの部屋。その窓の前。

大きな釜の前にライザが立っていた。

 

「よし!じゃあ早速錬金していこっか!!」

 

いつになく真剣に、かつ楽しげに釜に向き合うライザの背中を、各々が眺める。

 

すでにライザのベッドの毛布にくるまっているヨルが、芋虫のように顔を出す。

 

「そもそもだが、資材を錬金するってなんなわけ?」

 

「言われてみれば、よくわからないね。」

 

「まあてっきりグラスビーンズとか、フラムとか特殊なモン専門ってイメージあったよなぁ。」

 

「うん、元の原料は必要なんだろうけど、まるまる形自体変えたりするのはすごいよね」

 

「ふふん!でしょ!」

 

「ライザは釜をしっかり見ろ。」

 

自慢げな顔で振り返るライザに、ヨルがベっと舌を出す。

 

「あんな持ち運びに苦労した資材を無駄にしたら、ゆるさん。」と威嚇するヨルを尻目に、クラウディアがくすくすと笑う。

 

「まあ、錬金術は意外と万に通ずるってことなんだろう。」

 

「この島もその成果だったりすんのかもな。」

 

「そんなわけねーだろ。適当言い過ぎだぜヨル兄」

 

と、レントが呆れたように返した。

 

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