昼行燈の女神は微笑む   作:匿名

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6話

「にしてもヨル、最後まで笑わなかったなぁ」

 

「笑うのが苦手な奴もいるだろう。」

 

あいつはそもそも生きるのが下手そうだが。

そう続けながら、ボオスは急に黙りこくってしまったタオの方を振り返る。

 

タオは、振り返りキョロキョロと周りを見渡していた。

 

「おいタオ。どうし……!?」

 

「ぼ、ボオス。ヨルとライザが……」

 

「あれ?あいつらどこに行ったん……!?」

 

 

 

 

「ヨ、ヨルちゃん……どうしよう……」

 

肩まで湖に浸かり、徐々に湖面が顔に迫る。

 

「大丈夫だから動くなと言っているだろ、ライザ」

 

二度も言わせるな、と言わんばかりの顔でライザの顔覗く。

いつも見慣れた尊大で、冷静さを保った表情のヨルをみて、少しだけ平静さを取り戻す。

 

そして、少し先を歩いていた三人も、異常に気が付き引き返してくれたことに気が付く。

レントが身を乗り出し、必死に手を伸ばす。

 

「ヨル、ライザ!?掴まれるか!?」

 

「帰るといったそばからお前ら何してんだ!?」

 

「まってレント!身を乗り出しすぎたら君まで落ちる!」

 

どうあがいてもレントの手は二人には届かない。

そう判断したボオスは唇を噛みしめながら、「くっ……俺は大人を呼んでくる!」というと、一目散にかけていった。

 

レント、タオは必死に手を伸ばそう、なにかロープの代わりになるものを探そうとしているが、

ヨルを見上げる形になっているライザだけが気付く。

 

無表情ながら、唇の端から血が出るほど歯を食いしばるヨルに。

 

(あたしのせいで、ヨルちゃんまで……)

 

ライザは、震え、おびえた表情で決心し、

一度だけ、こんな状況ですら衰えない、光に消え入りそうな亜麻色の髪を、

血よりも濃い瞳を見つめーーー掴んでいたヨルの手首を離した。

 

ーーーああ、ヨルちゃんの手首、赤くなっちゃってる。

ごめんね。

 

手を離した先に、目を見開くヨルが映りーーー

がっと、ライザは手首を掴まれる。

 

掴まれた手首が痛むほどの強さで握られ、ライザもまた目を見開く。

 

「な、んで……駄目だよ、ヨルちゃん……」

 

「ばかが……」

 

落ち行くライザを支える。徐々に二人の体を湖が飲み込んでいく。

 

「ダメだよ、ヨルちゃん!ヨルちゃんまで……」

 

必死に手を伸ばすレント、タオが、涙目になりながら何かを叫んでいる。

しかし、ライザの瞳には、目の前の。

 

まるで光が透き通り、微笑みを向ける女神様のようなヨルだけが映っていた。

 

「大丈夫。死ぬ時は一緒だ。」

寂しがるな。

 

そんな言葉が聞こえた気がした。

ゆっくりと湖に落ちていくような刹那。

 

ともに落ち行くヨルに、赤子のように抱きしめられ、湖のしぶきも、レントたちの叫び声も聞こえず、鼓動の音だけが耳に残る。

 

目の前に降りた女神様の微笑みだけが映っており、視界は真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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