トリニティの黒幕系生徒() 作:漢栗山
トリニティではティーパーティーを最高権力として政治が行われているが、それと同じくらいに派閥の影響力がある。そのため主要派閥同士での対立を避けるため頻繁に
パテル、フィリウス、サンクトゥスの三大分派間で会合が開かれている。
現在も会合が開かれておりもうじき長針が四周目に入ろうとするほど白熱している。
円卓の周りにいくつも置かれた椅子のうち未だ一つは空席のままであった。遅刻は礼節やマナーが何よりも重要視されるトリニティにおいて最も忌避されるものであり弱みとなりえる。
しかし副首長が遅刻しているというのに当のパテル幹部、そして他のフィリウス、サンクトゥス幹部は誰も空席について咎めない。いや咎めれない。
つい先日幹部になったばかりのフィリウス幹部は何故誰も触れないのか、それとも触れられないのか疑問に思っていた。それも会議に集中できないほどに。
その様子を見かねた古株の幹部がそっと新入りに耳打つ。
「
「だから結果しか聞きに来ないのです」と古株幹部は付け加える。
しかし、新入りには納得できなかった。どれほど偉かろうとここはトリニティ、蹴落とし合いは日常茶飯事だ。
先輩達が言えないなら私がいってやろう、そんな気概でいた新入りとは裏腹に空席は埋まらず議論だけが進んでいった。
議論が終わろうとしていた会議室に扉が開く音が響き渡り視線が集中する。
「遅れてしまい申し訳ありません」
思わず見惚れるほどのカーテシーをしながら謝罪を述べたその人物は言葉とは裏腹に威風堂々たる歩みで自身の席へ向かっていく。
何故だか分からない、だけども確かに新入りは彼女に気圧されていた。もはや文句を言うといった気概はなく代わりにあるのは一体どれほどの人物なのだろうという好奇心であった。
「…で、では本日の議論の総評に移ります。まず旧市街の再開発について
「すみませんが、少し宜しいでしょうか?」
暫く書記の総評を聴いた彼女は思ってもいないだろうに心底申し訳なさそうに意見を述べ始めた。
(旧市街の再開発計画…。
新入りは瞬時に計画案や現場からの書類などの内容を思い出し問題がないことを確認する。こちらに問題がなければ間違っているのは指摘の方だ。
そう、此方が間違っている筈はないのだ。
「この書類では工程の50%が完了しているとありますが、実際はせいぜい30%程度しか進んでいません」
そう言いながら部下に書類の束を配らせる。内容は一部
そんな筈はない、そう言いたいがそれを許さない説得力がこの紙と彼女にはあった。
「加えて。第14頁をご覧ください。担当業者ですがカイザーとの癒着が確認されています。資材、特に資金の横流しが目立ち現場作業員の給料が未払いとなっていますのでフィリウスの方々につきましては対応の程よろしくお願いいたします」
何故彼女が、彼女だけがこの事実を知っているのだ。
フィリウスだって書類だけで判断したわけではない、実際に現場へ行き入念に調査した上で問題なしとしたのだ。
底が見えない
新入りが戦慄しているのをよそに、彼女は他の議題にも口を出し始める。最終的にはほぼ全ての議題が彼女の指示通りに執り行うといったところに着地してしまった。
「…分かりましたか?私の言った意味が。彼女こそがトリニティの裏のホスト
清宮ヨイなのです」
一方、ヨイ本人といえば
(ヤッバイ‼︎エッグい遅刻かました‼︎あぁ〜、ガリ○リ君奢りとかで許してくれないかな〜)
なんとも情けない様子であった。
私は昔っからなんてことはない極々普通の、人よりもほんの少しだけ見栄っ張りな人間だった。
小さい頃遊んでいた友達がとんでもないお嬢様でトリニティに行くと聞いて、
『トリニティに行かないとナメられる‼︎』
だなんて思ってしまったことが全ての発端。
全く分からん作法を磨いて必死に勉強してバイトをして…そんなことの繰り返しを毎日していたらなんかパテルの副首長になっていました。
私なんかやっちゃいました(笑)?
じゃないんだよなぁ‼︎
副首長になって仕事が爆増したし、会議にも呼ばれるし。その会議もマッジで意味分からん言葉しかないから最近は後半からしかいってないしね。
とはいっても流石に終わる10分前に着くのはヤバいだろ!いい加減にしろ!
幹部のみんなが優しいからなんとかなってるけど…
ホンマ感謝やでぇ。
最近金欠だったからバイトを詰め込みすぎて気づいたら夜の3時までびっしり働き詰めでしたね。
でもそのおかげで工事の話に入れたのは不幸中の幸いってやつかな?
あそこの業者ガチで段取り悪いしそのせいで長いこと働かされるし、その上給料少ないどころか滞納するとかいうガバガバ管理。
んでもってカイザーのやつに金渡してるの見たときはほんとに罪を犯しそうになった。
現場監督は外面だけはいいもんだから監査が来ても見逃されて大変だった…。けどフィリウス管轄で助かったよ〜。泣き寝入りも覚悟してたけどコレで給料が入る!
給料が入ったら私は休む!何がなんでも休むんだ!
仕事?知らない子ですね…。
休みの日に何しようか考えながら歩いていると後ろから呼び止められた。この子は確か…ミカの侍従さんだっけか?
「ヨイ様。ミカ様が第○○テラスに来るようとのことです」
うーむ?何事だろうか?
ま、多分ナギサのお気に入りの茶器を割っちゃったとかそういうとこだろう。しゃーない、一緒に謝っちゃるか。
「お待ちしておりました、ヨイさん。どうぞお掛けになってください」
「ヨイちゃん!座って座って〜♪」
ヨイさんは入ってくるなり抱きついてきたミカさんに動じることなく抱擁を返す。そして此方の存在に気付いたようで微笑んで会釈した。
この一瞬の動作どれを取っても優雅で洗練さを感じさせます。私もティーパーティーとして礼儀作法には自信がありますがヨイさんには敵いませんね。
「それで用件をお聞かせ願います。ティーパーティー二人がいてただのお茶会というわけではないでしょう?」
「えぇ。ヨイさん、連邦生徒会長の失踪とシャーレ。この二つについてご存知ですか?」
「シャーレっていうのは連邦生徒会長が残していった超法規的機関なんだってさ!」
つい先日、各学園のトップにのみ通達された事実。
最近の情勢不安は連邦生徒会長が失踪したことが始まりでありその会長が残したシャーレそして外から来た
来るエデン条約に備えて不確定要素は減らしておきたいところですが、逆に利用するという手もあります。
「…なるほど。近頃彼女について何も音沙汰がなかったものですから何かと思えば失踪されていたとは。いやはやここまでの騒ぎになっても姿を現さない胆力は見事なものですね」
「私が代わりに連邦生徒会長になりましょうかね?胆力には自信がありますし。…なんて、冗談ですよ」
(あなたが言うと冗談には聞こえませんよ……流石にヨイさんでも把握はしていませんでしたか)
「しかしシャーレと言いましたか?かの組織は中々面白そうではないですか。それに"先生"でしたか。キヴォトスの者ではない大人が巨大な権力を持つ…見ものじゃあないですか、ナギサさん?」
「ッ⁉︎どこでそれを⁉︎」
「…秘密です」
ヨイさんはどこまで知っているのでしょうか。いや、もしかすると全て知っていて遊んでいるだけ、そのような馬鹿げた考えすら脳裏をよぎる。
「ヨイさん。何処までがあなたの計画通りなのですか?」
「ヨイさん。何処までがあなたの計画通りなのですか?」
へ?
なんか適当に答えてたら急に予定通りか聞かれたぞ?
タクシーのバイトしててときの連邦生徒会の偉そうな人と男の人が話していた内容を言っただけなのに。
もしかして私と遊びに行きたいのカナ^_^
「全く計画通りではないですよ。(予定)計画が狂わなかったことなんてありません。あぁ、でもこうして(予定が)変わったことでナギサさんとミカとお話できましたし悪いことばかりではないですね。あはは‼︎」
あ、ミカが何言ってんだコイツみたいな顔をしている!
やめてくれミカ、その顔は私に効く。
というか私が一番何言ってるのか分からないよ。
「それでは、ご機嫌よう」
軽く会釈しながらテラスから出ていく。
ふぅ〜。ナギサは賢いからボロ出てないか気を遣うね!
でもコレでいよいよ私は!自由だ‼︎
久しぶりに三時間以上寝られるぞ♪
なおクソ業者がそもそも就業時間を記録していなかったので給料は少ないどころか入らなかった模様。
tips
清宮ヨイの同時に掛け持ちしたバイトの数は最大50個。