トリニティの黒幕系生徒() 作:漢栗山
一体何者なんだ…
給料が入ると思っていた私の姿はお笑いだったぜ。
チクショー!!なんで私がこんな目に合わにゃならんのだ。お陰で休日も飛んでバイト漬けの毎日に逆戻りだ。
私は今アビドスの市街地で交通量調査をしています。
ちなみにバイト開始から三時間経過してカウントは0。
そう0です。
正直何故こんなことを
…
……
前言撤回‼︎こんなのやってられっかよ!!
この三時間ありもしない通行人をずっと待ち続け虚空を眺めていたせいで気が狂いそうだ。そもそも誰がこんなとこ通るというんだこんなド田舎よぉ。
はー、やめやめ。近くでバイト探すかぁ〜。
さてと善は急げだ。まだ中央の方に行けば店かなんかあるだろ、多分。
ん?
なんか音がしたぞ…って人ォ⁉︎しかも大人だ!
あ〜見たことあると思ったら先生だ。タクシーで連邦生徒会のお偉いさんと一緒にいたから覚えてるわ。
これは…生きてるのか?
つついてみる。うわ!ピクってした。
一先ず生きてはいるな意識はどうだろう。
「聞こえますか?聞こえていたら何でもいいので合図してください」
おっ、目が開いた。意識もある…と。
コレは脱水症状かな?熱中症もあるかも。
「水、飲めますか?無理なら私が飲まします」
水というワードを聞いた途端ガバッと起き上がりペットボトルの水を飲み干していく。
めちゃくちゃ喉が渇いていたのか、全部飲み切ったと言うのにまだ足りないようだ。
申し訳ないけどそれしかないから我慢してね♡
水分補給もできたがこの様子だと二日、いや三日くらいは何も食ってないんじゃないか?
私もここ二日は何も食べてないんだけどね!
お揃いだね‼︎
先生との最悪な共通点を感じて悲しくなった心を無視して私はカバンの中を探る。
「……こんな物しかありませんが食事です。お辛いでしょうがお召し上がりください」
先生にあげたのは私の昼メシ(になる予定だった)菓子パンだ。私だってお腹は空いてる、けども倒れている人を見捨てるほど落ちぶれちゃいないよ。
先生はパンを受け取るととんでもない勢いで食いつき、あっという間に平らげてしまった。
カ○ビィもびっくりの速さだ。
「本っ当に!ありがとう!お礼がしたいんだけど名前はなんて言うのかな?」
うーん。名前かぁ〜。教えてもいいけどハスミさんとかスズミさんと繋がりがあるっぽいし。
もし何かの拍子に私がバイトしていることがバレたら
『うわw貧乏人じゃーんwバイト頑張ってねw』
とか言われて迫害されてしまうんだ!
きっと!
くそう!謀りよって!ならばこちらとしても誤魔化すしかないなぁ!
「…出会ったばかりのレディに名前を聞くなんてマナー違反ですよ?」
「あっあぁ、ごめんね」
「……なんでここにいるのか聞くのもダメかな…?」
なんだぁ?コイツ。
あなたが良い人で悪意がないのは分かるのよ。でもさ、こっちも死活問題なわけなんだよね。バレたら終わりなんですよ。
まぁある程度正直に答えますんで!頼むからもう聞かないでください!
「そうですね…貴方の素直さに応えて此方も誠意を持ってお答えしましょう」
「私はとある目的(金稼ぎ)のために
ウソは言ってないし、ヨシ‼︎
と言うか先生もまだ意識がぼーっとしてるのか反応が薄いっすね。ワンチャンこのままとんずらできますかねぇ?
「 次にお会いする刻、それは運命(バイトの予定)のみが知るところでしょう」
「ですが。私たちは必ずまた何処かで相まみえることとなる。その刻を心待ちにしておりますわ」
先生?
決まったな。キリッ
近くのバイトはと…おっ!賄い付きか!ここにしよう!
そうと決まれば善は急げだ!
「では失礼いたしました」
待ってろよ〜!私の賄い‼︎
誰だろう…?微かにだけど声が聞こえる。
近いような遠いような…距離感がハッキリしない。
いや距離感だけじゃない、意識もおかしくなっているのかな?
水…水‼︎
朦朧とした意識の中でも本能というのは弱らないらしく、水と聞いた途端体が急に動き出し半ば奪い取るようなカタチでペットボトルを受け取る。
一口ごとに体に染み渡るのをひしひしと感じる。まさしく生き返るとはこのことを言うのだろう。
しかし、人間一つ欲を満たせばまた欲が湧いてくるもので私の胃袋は限界を訴えていた。
それに気づいてか目の前の彼女はカバンを漁ると市販の菓子パンを差し出してきた。
「こんな物しかありませんが食事です。お辛いでしょうがお召し上がりください」
ここまで施しを受けてさらに生徒に恵んでもらうなんて情けない。私の先生としての部分がそう囁くが体はもう限界で気づいたときには差し出されたパンを口にしてしまっていた。
先生として
けどここで落ち込んでる暇は無い!
まだアビドスにすら着いていないし、何より彼女に直接お礼をしなくちゃね。
「本っ当に!ありがとう!お礼がしたいんだけど名前はなんて言うのかな?」
まずは彼女の名前を知らないと話すにしても不便だと思ってそう言ったんだけど…。
彼女は少し考える様子を見せて此方に向き直して応えた。
「…出会ったばかりのレディに名前を聞くなんてマナー違反ですよ?」
「あっあぁ、ごめんね」
まさか拒絶されるとは思わなかった。でもよく考えれば彼女の言っていることは一理あるどころか完全な正論だ。
なるほど。確かに知らない人に名前を聞かれて素直に答える方がよっぽど問題だろう。
名前を聞かれた瞬間僅かに顔を歪めた様に見えたけど…気のせいかな?
普通であればここで引き下がってこの場でできるお礼をして離れるんだろう。
この時、私の中には彼女に対する強烈な好奇心が生まれていた。それは命を助けてもらったからか未だ完全復活していない意識ゆえなのか、あるいは彼女の存在自体がそうさせているのかは定かじゃなかった。
けどもとにかく何か彼女について何か知りたかった。
それだけは確かな事実だった。
「なんでここにいるのか聞くのもダメかな?」
…しまった。さっきと聞き方もなにも変わらないじゃないか。こんなのではただのしつこい奴だ。
謝ろうとしたそのとき、彼女が微笑んでいるのを見て言葉に詰まる。
私の様子に満足したのか彼女はまるで言い聞かせるように語りだす。
「そうですね…貴方の素直さに応えて此方も誠意を持ってお答えしましょう」
「私はとある目的のために
目的?
目的ってなんだろう。アビドスからきた手紙の内容、そして道中からしてこの自治区はお世辞にも栄えているとは言えない。
ということは土地や人、特に
それに今にしてみれば助けられたのだって違和感がある。この住宅街はとんでもなく広い。それこそ土地に慣れていない自分なんかは遭難してしまうほどに。
そんな中で人が二人ばったり
ダメだ。どれだけ深く思考を回しても彼女の真意がわからない。
「 次にお会いする刻、それは運命のみが知るところでしょう」
「ですが、私たちは必ずまた何処かで再会することとなる。その刻を心待ちにしておりますわ」
先生?
その顔は試すような、いたずらが決まったようなそんな顔だった。
その光景が脳裏に焼き付いて離れなくて戻ってくるのに時間がかかってしまって気づいた頃には彼女はいなくなっていた。
彼女の言っていた"運命"…。だが同時に必ず再会できるとも言っていた。
私が彼女の掌の上で踊らされているのか、彼女自身も何かに踊らされているのか。
結論の出ない問いを脳内で何度も繰り返しあることに気付いた。
「あっ!結局なにもお礼できてない!」
……次会うまでに何か用意しておこう。
tips
清宮ヨイはキヴォトス各地にバイト先を持っている