トリニティの黒幕系生徒() 作:漢栗山
多少違和感があると思いますがよろしくお願いします
今回は主視点はなしです。
黒見セリカにとって今日という日は厄日と言うほかない一日だった。先生という名の部外者の大人が対策委員会に来ておかしいことになった。
今までずっと自分たちだけで頑張ってきたのにもう先生が委員会の輪に入ってきている。セリカにとって先生の印象は助けてくれなかった大人が今更になって善人の顔していることに対しての警戒心しかない。
同級生のアヤネや人の良いノノミが受け入れているのは百歩譲ってわかる、しかしシロコやホシノまでもが一応とはいえ受け入れていることに一種の裏切りを感じていた。
だが先生が来たところで学校の借金が減るわけでもなくセリカはいつも通りバイトをしに柴関ラーメンへ向かって行く。
そうだ、先生が来た以外はアビドスは全ていつも通りなのだ。自分が認めなければいつかは対策委員会も元通りに戻るだろう。セリカの中でそんな考えが生まれ少しばかり気が楽になる。
今日は大変な一日だった。申し訳ないとは思うけども大将に愚痴を聞いてもらおう、大将ならいい考えを示してくれるかもしれない。
「大将、聞いてよ!今日ほんっとに最悪だったの
店内には大将ではなく一人の少女がいた。
「こんにちは。…貴女がセリカさんですね?」
なぜ自分の名前を知っているのか。そんな疑問が普通であれば出てくるものだがセリカの頭は妙に冷静でいた。もしくは彼女の存在がそうさせているのかもしれないが。
セリカの少女に対する第一印象はどうもチグハグだなという感じであった。言葉遣いや雰囲気、本人の容姿だけ見れば良いトコの、それこそトリニティ生と思うのが自然であるほどだ。しかし一方で顔や服には油汚れが付いており何か作業をしていたことが伺える。
この少女は何者だ?
大将がエアコンの調子が悪いと言っていたし業者だろうか。少なくともアビドスの生徒ではないことは確かだ。
「こ、こんにちは…?えーと、あなたって誰?」
「あぁ、申し遅れました。私は
セリカの予想は当たっていた。当たってはいたもののやはり
セリカがこの怪しい少女に話しかけようとした瞬間、柴大将が厨房の奥から姿を現した。柴大将自慢の毛並みが汗で濡れていないことからエアコンの修理は一時間前には終わっていたのだろう。
「セリカちゃん、来てたのか。紹介するよ、この子はエアコン修理に来てくれたヨミちゃんだ。数時間はかかると思ってたんだがものの一時間でパパッと終わらしてくれて助かったよ」
柴大将が言う通りであれば彼女は相当高い技術を持っているらしい。そうするとますますアビドスに来た理由が分からなくなってくる。
柴大将は言葉を続ける。
「そんでもって今日から暫くうちで
「…えぇ〜〜!?」
数時間後…
閉店時間が迫り人も疎らになってきた店内で二人は同じ席で向かい合って
「へぇ〜!あんたもお金で悩んでるんだ!分かるわその辛さ!」
「はい…、ですけど絶対にセリカさんたちの方が大変ですし頑張ってますよ。私は学校のために働くことなんてできっこないですから」
セリカとヨミはこれ以上ないほど意気投合していた。
お金に苦労しているワケや借金の有無など違いはあれどお金を稼ぐためにバイト戦士と化した二人はその辛さを互いに理解しておりすぐに仲良くなった。
セリカは対策委員会の皆んなのことはもちろん仲間であると信頼しているがその一方で借金返済への熱意の違いなどがあってほんの少しだけ疎外感を覚える瞬間もあった。このようなバイトの辛さを共有できる人が周りにいなかったのだ。
そこに同じ境遇のヨミが来たとなれば気に入るのも無理はない。
平たく言えば傷の舐め合いができる者を両者が求めていたということだ。
「…もやしが食べられるうちはまだ余裕があるんですよね」
「そうそう!ほんとに切羽詰まってきたら野草とか食べるのよね!」
その言葉にヨミは大きく頷き同感であると示す。
側から見たら惨めというか可哀想なことこの上ない会話であるが本人たちはいたって楽しそうにガールズトークを展開している。
「というかあんたってアビドスになんで来たのよ?もっと近場にいいとこあるでしょ」
セリカの中のヨミに対する疑いはすでになくなっている。それはそれとして気になるものは気になる。会話を重ねてきたがなぜアビドスに来たのかという疑問は未だ解消されていない。
「…今のままでは帰れないんです。帰るためにも私たちのためにもっ!私にはこの地で命に変えてでもやり遂げなきゃいかないことがあるんです‼︎」
セリカは驚いた。
出会ったときもそうだがヨミは基本的に静かというか優雅な振る舞いを崩さない。セリカはこれまでの会話の中でヨミという人間をそう評していた。
そんな彼女がここまで声を上げることがあるのかと驚いたのだ。そして同時に一体何が彼女を熱くさせているのかという好奇心も湧いていた。
「そのやらなきゃいけないことって何よ?」
それを聞いた瞬間ヨミの顔が歪んだ。嫌悪感というよりは仲間に申し訳ないことをするような、なぜだかそういうふうな表情に見えた。
「…すみません、教えることはできません。世の中には知らぬが仏という言葉があるように知らない方が互いのためになることがあります」
「私はセリカさんと対等な友人の関係でいたい。だから教えることはできません」
「そ、そう。分かったわ」
人間誰しも知られたくないことの一つや二つあることはセリカも理解している。彼女にとってのそれが
だが言い方がどうにも引っかかる。対等な関係ではなくなるとは一体どういうことなのか。
セリカはそれが気になりつつもヨミに対して強硬に聞くことはなかった。友人のそういう部分は尊重したいし何より、やっと現れたバイトの辛さを共有できる仲間を失うことだけは避けたかった。
その後他愛のない話をしながら閉店作業を終わらせてその日のバイトは完了した。
セリカは帰り道の途中で少し考えた。
先生が来たことで対策委員会は変わってしまうだろう。セリカはその
だがセリカは同時に変化によって無二の友達を手に入れた。であれば変化も悪くはないのかもしれない。先生のことも何か
その日のアビドスの夜空には星が浮かんでいた。
アビドスに来てから2日目となる今日はセリカと仲良くなるために一日中ついて回った。自分でもストーカーじみたことをやっているとは思うけれどこれで少しでも距離が縮まればいいな。
それとセリカのバイト先の柴関ラーメンに対策委員会の皆と一緒に行ってラーメンを食べた。懐は少し寒くなっちゃったけど生徒に払わせるわけにはいかないしね。
そんなふうに一日を振り返りながら歩いていると夜道に生徒が一人ポツンと立っているのが見えた。
こんな時間帯に出歩くのは危ないよ、と声を掛けようとして一歩踏み出す。
その瞬間足先から脳天にかけてゾクゾクとした悪寒が体を走り抜ける。これだけでこの生徒は
「一日ぶりだね。元気だったかい?」
彼女は誰かがここに来るのを待っていたようだった。そして驚いた様子がないのを見るに私が待ち人であることは確かだろう。
「…ご機嫌よう先生。私、待ちくたびれてしまいましたわ。
「…どういうことかな?」
生徒の危機と彼女は言った。アビドスにいる生徒は彼女と対策委員会のみだ。
まず目の前の彼女、これは確実に違う。困っている様子すらないしどう見たって危機ではない。
次に対策委員会の面々、柴関に行った後全員家まで着いて行って送り届けたしその後に連絡も取れているから多分違う。
ということは…!
「…セリカさんという方をご存知ですか?彼女は苦労人ですが学校のためにと頑張れる本当に良い人ですね」
「セリカが、セリカがどうかしたの⁉︎」
この子が嘘を言ってなければセリカの身に何か起きているらしい!どうして知っているのかとかどうやって知ったかとか聞きたいことは色々あるけどまずはセリカがどうなってるのか聞かないと‼︎
「…セリカさんとはどのような関係ですか?」
試すような目で彼女は問いかけてくる。なんでこんなことを聞くんだ?分からない。彼女のことなんて何も分からないしアビドスの皆についてだって分からないことばかりだ。
でもこれだけは言える。
「
その回答が予想外だったのか彼女は目を丸くする。彼女を驚かせたことに少しばかり達成感を感じる。
でもそんなことはどうだっていい!今はセリカだ!
「さぁ、教えて!」
「…そう…ですね…。砂漠に…砂漠に…埋めに行きます。あそこならきっと見つからないでしょうから…。…では」
そう言って夜道の暗闇へと姿を消してしまった。
追いかけようとも思ったけどセリカの身がどうなっているのか分からない以上先に助けに行かないといけない。対策委員会の面々に連絡しつつアビドス校舎へと急ぐ。
あっ。またお礼し忘れたな…。
「ん、Flak41撃破。他のヘルメット団は大体逃げたみたい」
「いや〜、よかったよかった。おじさん心配でたまらなかったんだから〜」
対策委員会の活躍によってセリカ救出作戦は成功に終わった。敵も襲撃されることは想定してたみたいだったけどこんなにも早く捕捉されるとは考えていなかったようでほとんどのヘルメット団員は少し戦っただけですぐに逃げていった。
セリカはホシノやシロコたちに半泣きだった件をいじられている。嫌がるフリはしているがどこか嬉しそうできっといつもの日常なんだろうなと容易に想像できる。
「楽しんでるところ悪いんだけど少しセリカを借りてもいいかな?」
「ん、先生に免じてこのぐらいにしといてあげる」
「泣きそうなセリカちゃん、とっても可愛かったですよ♪」
セリカを連れて少し離れたところへ歩いていく。
確かめたいことがある。
「単刀直入に聞くね。白髪赤眼で言葉遣いが丁寧な子って最近見かけなかった?」
彼女はセリカの人柄について話していた。ということは少なくともセリカ本人と会話はしたはず…。
「え⁉︎先生もヨミに会ったことあるんだ!」
ヨミ、それが彼女の名前か。しかも呼び捨てとは結構仲が良い感じなのかな?
「どんな子かなんでもいいから話してみて」
「う、うん。ヨミは昨日からうちで働き始めたバイトの子なの。私たちと一緒でお金に困ってて沢山バイトをしてるらしいわ」
お金に困ってる様には見えなかったけど…。でもヨミが嘘を言うようには見えないし本当なんだろう。
「他に何か言ってなかった?」
「うーん…!帰れないって、自分たちのためにもアビドスで成し遂げなきゃいけないことがあるって、そう言ってたわ!何かは教えてくれなかったけど…」
お金に困ってて帰れない…とかではないか。
自分
ヨミは何を隠しているんだ?
「先生?どうかしたの?」
「…ありがとうセリカ。なんでもないよ。皆んなのところに戻ろうか」
彼女について一つ知ったと思ったら知らないことが三つも四つも出てきたな…。
うーん、考えても仕方がないか!
今はセリカを助けられたことを喜ぼう!
tips
清宮ヨイはバイトのとき様々な偽名を使うが最近のお気に入りはヨミ。
清 宮
キ'ヨミ'ヤ