キヴォトスにある1つのカフェ   作:ミハマ

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「夢」が語るは昔話

アビドスの一件より数日後

あれから柴関が爆ぜただかなんだかつって大将と先生とうちの諜報から報告が来た

そらもうクッソ焦った

 

「大将ォォ!無事かァ!」

 

「お、おう、怪我もなく無事だぜ」

 

「良かったぜ…あんたに傷一つでもついてたらゲヘナに…いや、何でもねぇ、にしてもほんとに無事でよかったぜ」

 

「一瞬物騒な事が聞こえたような気がするが…まぁ、いい機会だし店はもう畳むとするさ」

 

「そうかぁ…結構前にも言ってたよな、いい加減畳んでもいいかもってな…名残惜しいがまたいつかラーメン食わせてくれよ…」

 

「あぁ、あんたを支えて支えられて作ってきたラーメンだ、またいつか作るさ」

 

「大将…!」

 

まぁそんなこんなでお見舞いにもいった

そして

D.U.

ルミナクラスコーポレーション本社ビル

時刻は1800

最上階、ガラス張りのフロア

60階の社長室にて

1人の男と数人のおそらく社員であろう子供がソファーに座りなにやら会議をしている

 

「…ですので社長、スペスターのみならず、クラドル大隊ではこの新薬を携行させる事を推奨します」

 

「…却下だ」

 

「何故です社長!この新薬は…!」

 

「お前らの言い分もわかるが、まず第一に…」

 

何だか深刻そうな話をしている…が

男、葛城ミコトは手に持っていた書類を机の上に置き生徒達のことを見る

そして呆れたような表情で言う

 

「エナドリを100倍濃縮した錠剤だなんて普通にカフェインの過剰摂取になるだけだろ、やめだやめだ!」

 

その言葉に子供達は「え〜!」と声をあげ不満の声を露わにする

 

「えー!も何も、普通に危ないし、詳細からコスト面まで全部見たが、俺からしたらあんま効果は期待できそうにないぞ?それに、可愛い部下達がカフェイン中毒になるのは頂けんからな!」

「…まぁ戦場で集中力が続くようになるのはいいとは思うが…だがなぁ…それはそれとしてだ」

 

「ブーブー!社長のケチ!」

 

「ケチでもなんでも言いやがれ!」

 

ミコトは帰った帰った!と口に出し手をヒラヒラとし子供達に帰るよう促す

 

「今日は客がいるんでお前達ラボの連中とも構ってらんねぇんだよ、すまんが帰ってくれ」

 

ミコトのその言葉で観念したのかブツブツと呟きながら全員がエレベーターの方へ向かい、ミコトはそれを見送るように近づく

 

「うぬぬぬ!次こそは社長も納得するようなものを…!!」

 

「楽しみにしてる、じゃあな」

 

ドアが閉まり始めると同時に手を振り別れの言葉をだす

 

「ふー…よし、とっとと着替えるか」

 

 

 

 

連邦生徒会前

カフェ「ルミナス」

時刻は2000

普段通り店番をしていて

閉店間際の今、戸が開く

客だろうか

 

「すみませんが、ラストオーダー過ぎていまして…申し訳ありませんが退…店を…え?」

 

閉店を促そうと客へ近づく

しかしそこに居た人物達は

 

「よ、ミサト」

 

「この子がミサトちゃん?」

「かわいい〜!」

 

父…ミコトと見知らぬふわふわ系の青緑の髪の可愛い女性だ

見知らぬ間に女を作ってた…だとっ!?

ポカンとしているとミコトがおい、と声をかけてくる

 

「2人、カウンターでもテーブルでもどっちでも構わん」

 

「お席にご案内いたしま…じゃなくて!!!!」

「えっはっ彼女っ!?」

 

見知らぬ女性に指を指し事実かどうか聞く

すると女性はそれを面白がっているのか笑いながら答える

 

「そうだよ〜!私はミコトさんの彼女でそのうちミサトちゃんのお母さんになるんだよ〜!」

 

ふふ!と笑いながら答えてくる

おいおい嘘だろ

いつの間にこんな可愛くておっぱいのデカイ人捕まえてたんだこの人(ミコト)

 

「おかっ!?」

「マジ?マジなんすかっ!?」

 

「ちげぇよアホ、昔仕事で世話になった人だ」

 

「えぇ〜?なんで答え言っちゃうんですか!」

 

「コイツの事だ、とっととバラさんとマジで勘違いしかねないからな」

 

「あ、焦ったッス…」

 

本当にびっくりした

ミコトの話を聞き思わず膝から崩れ落ちてしまった…

すると女性が近づいてきて手を差し伸ばしてくる

 

「わー!ごめんね!ちょっと揶揄うだけだったの!」

 

女性は私が崩れ落ちたのを見てかなりびっくりしたように近づいてくる

あっこの人いい人だ

直感がそう言っている

 

「焦ったッスけど、自分が早とちりしただけなんで、大丈夫ッスよ!」

 

「ううん、ごめんね、本当にびっくりさせるつもりはなかったんだ…」

 

その女性はひぃん…と俯き申し訳なさそうにしてくる

そこまでされるとこっちも申し訳なくなってくるというものだ

 

「いいんでいいんです!元はと言えば社長かここに人を連れてくるって言ってこなかったのが悪いんですから!」

 

そういい慰める

するとミコトが口を開く

 

「俺のせいかよ…」

 

「当然ッスよ、突然店番任せるって飛び出していけばもう夜っすよ!それで帰ってきたと思ったら…こんな可愛い人連れてくるもんだから結婚相手でも紹介するのでも思いましたよ…」

 

「おいおい俺は37のいい歳したおっさんだぜ?そんな俺にこいつは勿体なすぎるだろ、もっといい人がいるはずだぜ」

 

そのセリフを吐くと女性は顔を赤らめながら慌てて言葉を口にする

 

「そ、そんなお世辞なんていいですよ!それにミコトさんって若々しいし、優しいし…何より頼りになるいい人じゃないですか!」

 

「………惚気?」

 

「違うだろ」

 

 

 

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ラストオーダー終了後でもう客はいないから女性をカウンター席に座らせコーヒーを入れる

 

「あーえっと、そう言えば自己紹介まだだったッスね…」

 

「ん゛…しょうだったね…」

 

突然の呼び掛けにびっくりして舌を噛んだのか

またはコーヒーが熱くて火傷したのか…どちらかは定かかはわからないが女性は舌を出し痛そうにしながら肯定する

 

「こほん、初めまして!私は梔子ユメっていいます!これから度々会いに来ると思うから、よろしくね!」

 

女性…もとい梔子ユメさんは席から立ち私に名前をいい頭を下げる

 

「えっと、私は葛城ミサトっていいます、この人がいつもお世話になっています…」

 

私もユメさんのそばへ行き名前と感謝を伝える

 

「お世話だなんて…私の方がお世話になってるのに…ふふ!よろしく!」

 

ユメさんはそう言うと私の事をハグする

 

「ゆっユメさっ!?」

 

前触れもなくハグをしてくるので回避することもできずその豊満で凶器とも言えるモノを顔に押し付けられ窒息しそうだ

 

「うんうん、ユメさんだなんて堅苦しい呼び方じゃなくて好きに呼んでいいんだからね〜!」

 

私の状況は知らずかのほほんと頭を撫でながら言ってくる

この人力強っ

 

「ユメ、そこまでにしとけ、窒息する」

 

ミコトの言葉で私の状況に気づいたのかパッと離される

 

「は゛ぁー…はぁ゛…死ぬかと…ゴホッ…お゛もった…」

 

「ごっごめんね!そんなつもりじゃ…」

 

最初のドッキリの時のよう慌てて背中をさすってくる

しばらく背中をさすられ呼吸を整えていけば安定した

 

「はぁ…いいですよ、別に悪気があった訳でもないでしょうから」

 

「うぅ…ごめんなさい…」

 

「だからもう良いんですって…」

 

「うん…」

 

如何せん申し訳なさそうにしている

その様子をミコトは見ながら微笑んでる

 

「ジジイ、微笑んでないで一緒に慰めるッス」

 

「あ゛?誰がジジイだ??ん……はぁ…ま、いいけどよ…」

 

慰めること数分

最初はひんひん鳴いてたけど今じゃケロッとしてる

かわいい

 

「そう言えばァ…2人とも飯は食ったか?」

 

「私はまだッスね」

 

「私もまだかなぁ…」

 

「じゃあ作ってやるよ」

 

「よっしゃ!」

 

「いいんですか?」

 

「ああ、昔馴染みだ、ちょっとオマケしてやるよ」

 

「んん…でもなぁ…」

 

「お前はもっと甘えろ、どうせ今まで後輩しかいなくて好きに甘えることも出来なかったんだろう」

「お前も19とはいえまだガキだ、ガキは大人に甘えろ」

 

恥ずかしげもなく吐き捨てる

それにユメさんは顔を真っ赤にさせて口をぱくぱくとさせている

かわいい

 

「…社長ってほんとそういうところ有りますよね…」

 

「んだよ、そういうところって」

 

「鈍感ジジイは知らなくていいんスよ、とっとと作ってください」

 

「テメェってやつは……まぁいい…希望は?」

 

「私はカルボナーラとプリン!」

 

「ん、ユメは?」

 

「えぇっと私は…」

 

「ゆっくりでいいからな、先にコイツのを作るから決まったら教えてくれ」

 

「は、はい!」

 

 

ユメの横からカウンター裏へ行きエプロンをつける

 

「飲みもんなんかいるか?」

 

「私りんごジュース」

 

「私は…ホットミルクをお願いします!」

 

「あいよ」

 

グラスにりんごジュースを入れ、コースターと共に手渡す

次にマグカップの中に牛乳を入れはちみつを少し入れかき混ぜ半分ラップで封をしレンジへ

その間に余っていた生麺を鍋の中へ入れ茹で始める

麺を入れタイマーをつけたら次はソース作りだ

金属ボウルの中に卵黄2つと粉にしたパルミジャーノを気持ち多めに入れ、生クリームを50ml入れ、それを優しくかき混ぜる

そのうちにレンジで温まったホットミルクをもう一度混ぜ先程と同じようにコースターとそれをユメに手渡す

そうこうしていると麺が茹で上がりそうだ

そうしたらフライパンの上に切ったパンチェッタを乗せオリーブで軽く焼き目が軽く付く程炒め火を止める

そうしたら麺を入れ、先程作ったソースを和えフライパンの余熱で温めながら混ぜる

最後に平たい皿の上へ形を整えながら乗せブラックペッパーをかけ、追いパルミジャーノをと少量かけそれをわざわざキッチンから出てミサトの目の前へ置く

 

「ルミナス特製カルボナーラです、少々お熱いのでお気をつけて」

 

そう言いカトラリーを手で渡し

 

「では、ボナペティ」

 

そう言う

言ってすぐ背を向けキッチンへ戻る

 

「じゃ、お先に頂きますッス!」

 

その言葉にミコトは特に反応することもなく黙々と今さっき使った物を洗っている

 

「ユメ、決まったか?」

 

ミコトとミサトを交互に見て目を光らせている

話しかけられると

質問の答えが来ることはなく

 

「ミコトさんすごいです!」

 

と大きな声で言ってくる

 

「…?なにが?」

 

「お料理の事です!前からできるとは聞いていましたが、こんなに上手いだなんて知りませんでした!」

 

ユメは席から立ち上がり少し鼻息を荒くさせ興奮したように言ってくる

 

「そ、そうか?」

 

「私もそう思うッスよ、私がカルボナーラ作るもんならダマにしますからね、こんな滑らかに作る人は私の中じゃ2人しかいませんしね。美味いッスよ

 

その言葉を肯定するかのようユメは頭をブンブンと振り同意を示す

 

「まぁそこまで言ってもらえると料理人冥利に尽きるが…」

 

「あんたの本業はメカニックでしょうが」

 

「これでも元々イタリアンの店でキッチンで働いてたんだぜ?なら料理人だろ」

 

「クッソああ言えばこう言う…」

 

「…んで、忘れてたけど、決まったか?」

 

再度の質問に「あっ」と声を漏らす

おそらく忘れていたのだろう

 

「じゃ、じゃあ…」

 

「なんだ?」

 

「おかゆを…」

 

「ん?おかゆ?体調でも悪いのか?」

 

「い、いえ、そう言う訳じゃないんですけど…」

「昔話になるんですけど、いいですか?」

 

「別に構わねぇが…」

 

「なになに〜?馴れ初めの話?」

 

「おい」

 

2人の様子を無視しユメは話し始める

 

「昔────」

「ミコトさんがアビドスに来た時のこと…なんですけど」

 

2人は静かに聞いている

片方はフォークで麺を掬い食べながら

もう片方はいつの間にかいれていたコーヒーを片手に

 

「今から4年前…私がアビドスに入ってまだすぐの頃、全校生徒が私1人だったんですけど…」

 

そう口に出すとミサトがフォークを動かす手を止め

 

「え゛1人!?」

 

と口に出していたがミコトは唇の前に人差し指を出し静かにするよう指示する

 

「えっと、続きなんですけど…」

「高校に入ってすぐに生徒会に入ったんですよ」

「入ってからすぐにミコトさんがスーツを着込んで校舎にやってきたんですよ」

 

「あぁ…懐かしいな…」

 

「ほんとに…それで、当時私は1人でずっと居たせいで少しやさぐれていて…そんな時にミコトさんが来て」

 

「バリバリに撃たれたな、なっつ」

 

「え…」

 

「別にユメが悪いわけじゃない」

「ずっと独りで心細かった時にスーツに身を包んだ全身真っ黒のガタイのいい男の不審者が来れば「自分の居場所を奪われるかもしれない」って考えて、守るためになんだってやるだろ、そういうことだ」

 

「まぁすぐに持ってたハンドガンを取り上げられ強制的に話をすることになったんですけど…」

 

「しゃあなしだ」

 

ミコトは懐かしむように目を瞑り

昔あったことを思い出そうと脳の記憶の中を歩き回る

 

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アビドス高校

グラウンド

照りつける太陽

それからなるお世辞にも涼しいとは言え無い過酷な気温の中

グラウンドの中心の空気は氷点下まで冷たくなっているように見える

そこには盾を持った細身の少女とスーツを着込み全身を黒に染めている筋肉質な男がいる

少女は持っていた銃を取り上げられ男の持っていた手錠で拘束されている

 

「私から銃を奪って…何する気ですか」

 

「話し合いだ、こんな所で話してたら熱中症になるから勝手にでも入らせてもらうぞ」

 

男は少女の返答を聞かずに少女を担ぎ校舎へ入っていく

そして入って散策していると「生徒会室」が目に付いた

そこへ入り置いてあったパイプ椅子をひとつ広げそこに少女を座らせると拘束を解く

 

「軽かったな…」

 

「悪いですか」

 

男の言葉に少女は不快感を露わにしながら言葉を吐く

男はそれを少しも気にせずもうひとつのパイプ椅子を持ってきて対面するように座る

 

「ま、そんな邪険にしてくださんな、今回はアビドスにとって利益しかない話を持ってきた」

 

"利益"という言葉に身体を震わせ先程より強くみことのことを睨む

 

「…私の体でも売るんですか」

 

「…お前は俺のことをなんだと思ってんだ?第一にお前の貧相で弱りきってる体じゃ誰も買わねぇ、それに人身売買はナシだ」

 

その言葉に少女は心の中で積もりに積もって来た疑問と不満が爆発する

 

「じゃあなんなんですか!急に来たと思えば…私のことを拘束して一方的に話を…!」

 

「だから話し合いだつっただろ、だから落ち着け」

 

「だから…ぁ…」

 

「?…っ!おい!」

 

大きな声を出していると急に少女が前のめりになり倒れ込んでくる

すかさず少女を支えるように抱き込むと少女は目を閉じうんともすんとも言わなくなった

男は急いで首に指をやり脈を測る

 

「っ…はぁ…気を失っただけか…」

 

ただ気を失ったようだ

 

「これじゃあ話すらできねぇな…」

 

男はその少女を次は丁寧に抱き抱え校内を練り歩き保健室を探す

見つけるとそこのベットへ寝かせ診察をする

 

「…栄養失調と慢性疲労…あとは"コレ"か」

 

男の視線の先には腹部にある

 

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「ほんとあん時は焦ったぜ」

 

「その節は本当にご迷惑おかけしました…!」

 

「それでそれで?」

 

ミコトとユメの話を肴に話している途中に出てきたプリンを食べながら続きを急かす

 

「あぁ、まぁ倒れたあと寝かせたらとりあえず買い出しに行ったな」

 

「買い出し?」

 

「そうなんですよ、ミコトさん当時栄養失調で死にかけだった私のために自腹で食材を買いに行って料理を作ってくれたんですよ!」

 

「へぇ〜社長も優しいところあるねぇ」

 

「キレるぞ?」

 

「それでね?」

 

キレかけのミコトをよそに再びユメは思い出話を始める

 

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少女が目をさめると自分ただ1つの居場所であるアビドス

その保健室に寝かされていた

 

「…私何してたんだっけ…」

 

気絶した影響か記憶がはっきりとせずおぼろげだった

だけどなんだかいい匂いがどこからからしてくる

久しくまともな料理を食べていない自分の鼻の奥を擽る、食事という名の快楽が私を誘ってくる

その匂いを頼りに保健室を出る

ふらつきながら匂いを辿り歩くと家庭科室だった

家庭科室の扉を開けると男が何かを作っている

男の姿を見ると全てを思い出してくる

 

「…何してるんですか」

 

経過しつつ言葉をかける

私が来たのに気づいていなかったのか声をかけるとびっくりしたのか身体を震わせその次の瞬間

 

「あ゛っ゛つ゛!?」

 

火傷をしたのか指を抑え蛇口から水を出し指を冷やす

 

「いってぇ…あ、起きたのか。おはよう」

 

ふと思い出したかのように私の方へ顔を向け微笑んでくる

 

「…!…おはようございます、それで何をしていたんですか?」

 

久しぶりにまともに聞く「おはよう」

その言葉に少女は一瞬、なにかどことなく嬉しそうに顔を綻ばせ、すぐ先程と変わらない警戒をした顔になった

だがその顔はどうにもさっきの顔と完全に同じとは言えず、どことなく喜びを隠そうともしている顔にも見える

 

「ようやくガキらしいツラになったじゃねぇか、んで何やってるかか」

 

男は手招きをする

少女は警戒しつつも少し体をふらつかせながら近寄り男の手元を見る

 

「おかゆ…?」

 

「ああそうだ、倒れた時に少し触診やら色々させてもらったが、お前しばらくまともに食ってなければ、休んでないだろ…例えば…戦い続け、カロリーバーで食事を済ませ、挙句の果てには"よくわからない流行病"にかかって体力を取られ限界を超えかけている…そうだろう?」

 

「なんで知ってっ!?」

 

「だから言っただろ?診察したって、流石に下着までは剥いでないがある程度は診させて貰った、悪いがお前さんのためだ」

 

「…っ変態!責任取れ!」

 

「…別にいいが、何をして欲しい?何が欲しい?お前は何を望む?」

 

そう言われると少女は先程までから出ていた怒りを次第に収めて行った

 

「…もう…もう何が欲しいのかわかんなくなってきた」

「来る日も来る日も自分の欲しいものを捨ていつか遅れるかもしれない青春だなんて言う偽りの希望を胸に抱いて、青春の為にってやってきたけど…もうわかんないよっ!」

 

「…そうか」

 

少女はその場で膝を抱え座り込んでしまった

 

「なにをっ…」

 

男は少女を持ち上げ椅子に座らせる

 

「とりあえず食え、俺の金から出したから腹いっぱい食え…あーいや、久しぶりのマトモな飯だろう、少しづつ食って腹を慣らせ、いいな?」

 

「別にい「言っとくが拒否権はないぞ」い…」

 

断ろうとした

だが男の言葉

そして目の前のご馳走

スプーンを渡される

器に盛ってあるおかゆを少し掬い口に入れる

 

「…っ!…っ!!」

 

美味しかった

とても

 

「おい…じい゛…!」

 

少女は少しづつである事には変わりないが、少しづつ器の中のものを食べていく

その様子を見た男はどこか安心したような表情を浮かべ、水の入ったグラスと錠剤を取り出してくる

 

「ほら、その流行病に効く薬だ」

「食い終わった後でいいから飲んどけ、だんだん効くはずだ」

 

男の手に持つものを見ると少し緩んでいた表情を強張らせる

 

「…別に変な薬じゃねぇ、市販薬だ」

「つってもうちの会社が作ったもんだが、問題は無いはずだ」

 

そう良い男は錠剤を1つ手に取りそれを口に含む

そして持っていたグラスとは別にもうひとつグラスを取り出しそれに水を入れ口に含んでいる薬を飲み込む

ゴクリと喉仏が動くのをみせ、そして口の中を見せてくる

 

「飲んだぜ、これで多少は信用できるだろうよ」

 

男はそういいポケットに手を入れ家庭科室から出ていこうとする

 

「生徒会室で待ってる、好きに食え」

 

そう良い戸を締め消えた

その背中を少女はずっと見ていたが消えて少したち再びスプーンを持ちご馳走を食べ直した

 

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「えっじゃあ許可も取らずに服脱がして触ったって事すかっ!?ヴァ、ヴァルキューレ…」

 

「別に当時は怒ったけど…ううん、今もちょっと怒ってる…けど、結果的に私は助かったんだし、結果オーライってやつだよ!」

 

「あぁ…それでおかゆが食いてぇって…」

 

「うん、そういうことです」

「あの時のおかゆは最初の出会い…今は、再開です…もう一度食べて再現をしたいんです…これから、また仲良くしたいですし…なにより、ロマンチックでしょう?」

 

「…くっくっく…はっはっは!違ぇねぇ!いいぜ、作ってやるよ」

 

ミコトは先程使い、洗った金属ボウルを再度取り出して、そこに米を1合いれ、研ぐ

 

「にしてももう4年か…早いな」

 

「本当に…」

 

「…そう言えば、なんで連絡取れなくなったんだ?」

 

「えぇっと…3年ぐらい前にちょっとアビドス砂漠で遭難しちゃって…」

 

その言葉にミコトが動きを止める

 

「お前…」

 

何か嫌なことを思い出すかのような表情、それと心配をする表情が混ざりあったものを向けてくる

 

「あ、結局無事だったんですよ?あの時ミコトさんがくれた腕時計のおかげです!」

 

「腕時計って…」

 

「む、忘れちゃったんですか?」

 

「…すまねぇ…」

 

「むむ…別にいいですよ、続き話しますね!」

 

「…なんだか凄いッスね…」

 

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生徒会室

そこに入ると男は既に居た

 

「…ご馳走様…です」

 

「ん、お粗末さん」

 

男は振り返りもせず窓際に立ち、外を眺めていた

 

 

「…それで、話ってなんですか」

 

「…ここに来てからまだ自己紹介すらもしてねぇ」

 

男が話し始める

 

「まずは自己紹介、違うか?」

「…まぁ戦いから始まったんだが…」

 

男はそう付け加える

それと同時にくるりと体を少女へと向ける

 

「初めましてアビドス高校唯一の生徒であり唯一の生徒会役員さん、俺の名前は葛城ミコト」

「ルミナクラスグループの創設者だ、以後よろしく頼むぜ?」

 

男はそう言うと頭を下げてくる

少しして頭をあげる

 

「じゃあ、君の名前を教えてくれるかな?」

 

そう良い不敵な笑みを浮かべる

 

「…梔子ユメ、1年」

 

「OKユメ、お前と俺の仲だ、アイスブレイクは不要だろ?」

「本題を言おう」

 

そう言うとミコトはユメの後ろにあるスイッチを押し電気を消す

そして生徒会室に置いてあるプロジェクターを起動しUSBポートにUSBメモリを刺すと同時にリモコンを操作する

 

「アビドスの砂を買い取らせてくれないか?」

 

ミコトの言葉に耳を疑った

 

「砂を…?」

 

「ああ砂をだ」

 

ミコトはプロジェクターのリモコンを操作し映す画面を切り替える

 

「先日うちの研究ラボで俺が発見した物なんだが…」

 

そう良いミコトは指を指す

方向は目の前に広がるアビドス砂漠

 

「この砂漠の砂は微量ながら特殊な金属が含まれていてな」

「特殊過ぎて困るぐらいで、新元素とでも言えるな」

 

「新元素…?」

 

「ああ、ここの砂の含む金属は今までに確認されている金属どれとも構造、強度、沸点、全て合わない」

「原子構造も見たことの無い特殊なものだ」

 

「…」

 

ユメは静かに聞いている

 

「この金属を使えばこのキヴォトスの常識を覆しかねない可能性を秘めている…」

「それを我々に売っていただきたい」

 

「…砂を売って私…いや、アビドスに入るメリットは?」

 

「そうだな…まだ結論を出すつもりはないが、6/4でどうだ?」

「6はうちで4はそっちだ」

 

「…せめて半々は?」

 

「うーむ、悪くはないが」

「この金属の抽出、精錬、形成はルミナクラスが手がけている工房とラボとでしかできないだろう」

「現にその抽出方法は特殊で我社の製品を使わなければ不可能…その製品は特許申請済みのもので60年は利益は出せるだろう…おっと話がずれたな、まぁ簡単に言えば砂と金属を分離させるという訳だ」

「それで、精錬方法もまた特殊でな」

「ヴォルフスエック鋼鉄という特殊な合金…それであって純度の高いものを使用し合金にする、そのヴォルフスエック鋼鉄の成分が作用して形成される金属結晶」

「それがこのキヴォトスを揺るがす新金属なんだよ」

 

「…具体的にどんぐらいの利益が?」

 

「そうだな…月間2500万って所か?」

 

その言葉にユメは目をぎらつかせる

 

「如何せん見つけたのもかなり最近だ、研究用の砂も足りなければ、使用用途もまだ限られている…だからまだ7500万がいいところだろう」

「そしてまだいい話があってな」

 

ユメはしっかり真剣に聞く

 

「分離させた砂もまた特殊で、水をよく吸収するんだ」

「一般に出回っている土嚢より効率よく、それであって水を含んでいなければ軽く、含めば硬くなる」

「更に、除雪効果もあり、レッドウィンターにでも売ればそこそこ売れるはずだ」

「両方合わせて年間4200万って所だろうな」

 

ユメは何かを考えているようだ

アビドスの先を考える、自分の居場所を守る方法を

そこにミコトはトドメとも言える一言をかける

 

「金属以外の利益は全てくれてやる」

 

その言葉で決心したのか

 

「その話、もっと詳しく」

 

話に乗ってきた

それから様々のことを話した

利益の分配

責任のあり方、事業管理について

金属のある場所、精製方法を口外しないことなど

様々な事を考え話あった

 

「…じゃあ、これでいいか?」

 

ミコトは今まで話してきた物をまとめ、それをプリントし契約書を作った

 

「…それでいい」

 

「じゃあここにサインをしてくれ、俺はその後にする」

 

 

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〜〜〜〜年 〜月〜〜日

 

アビドス、ルミナクラス専属契約書

弊社ルミナス(以降「乙」とする)

貴校アビドス高等学校殿(以降「甲」とする)

 

乙は甲へアビドス砂漠に存在する砂を月々所定の量降ろす

 

条項1 「乙によるアビドス砂漠の砂の使用方法」

1. 乙の所有する技術を使用し砂の含有している金属と砂とで分離し、その金属を加工し、販売、もしくはさらに加工し販売する

 

2. 「1」で分離した砂を土嚢へ加工し販売

 

3. 「1」で分離した砂を除雪剤とひて加工し販売

 

条項2 「乙の行った一連にて発生する利益について」

 

1. 「条項1」で発生した利益は甲並びに乙が納得した分を分配する

 

2. 「条項1」の「1」にて発生する利益のを乙6割、甲4割の利益とする

なお、相互の了承が取れれば変更も可能

 

3. 「条項1」の「2」並びに「3」で発生した利益は乙の行う加工費用、販売費用、の2つを必要費用として除外し、算出した利益を全て甲へ譲る

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

乙、甲双方が存在する間全ての期間で本契約は効力を発揮する

 

以下へ署名をすることで本契約を承認する

 

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契約書を書き終わる

時刻は1700

話し合い開始から5時間が経っていた

 

「あー…終わった…」

 

「これで俺も、お前も、そしていつかできるお前の後輩達にもいい事があるだろうな」

 

「後…輩…?」

 

「そらできるだろ、いくら過疎ってたとしてもいつかは可愛い後輩ができるさ」

 

「…私、頑張る」

 

何かを決心したのか席を立ちミコトの方へ向く

 

「…なんだ?」

 

「だから、あなたも責任を取って」

「サポートして欲しい」

 

「…いいぜ、乗った」

 

2人は近づき握手を交わす

 

 

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─────

 

「へぇ〜これが2人の馴れ初めっすか」

 

「おい…まぁ出会った時はこんなんだったな」

 

「この時にミコトさんが契約祝いにって腕時計くれて…」

 

「あー!あれか!」

 

ミコトは何かを思い出したかのように手を叩く

 

「そうそう!それで、あの後やさぐれてた私をミコトさんが良くしてくれて、今の私がいるの!」

 

「緩くなると同時にアホになったよな」

 

「ひどい!」

 

「…ッケ!やっぱり惚気じゃないッスか」

 

「「違う!」」

 

話している間にできたおかゆをユメに手渡す

 

「ほら、出来たてだ」

 

「…!ありがとうございます!」

 

ユメはスプーンを手に取りおかゆを掬う

それを口へ運び

咀嚼し、飲み込む

 

「…どうだ?」

 

「…」

 

飲み込んでから動かない

口に合わなかったのだろうか

様子を伺っていると次第に肩を震わせていく

そして啜り泣くような声が聞こえてくる

 

「〜っ!?どうした!?不味かったのか?腹痛いのか?」

 

「いや…ちがうんです…」

 

ミコトはそばにより背中をさすり心配そうに聞く

ユメは嬉しそうに否定をする

 

「あの時、出会えてよかったって…あの時、かわいい後輩に会えてよかったって…あの時、死ななくてよかったって…」

「全部思い出すかのように…」

「あの時とおなじ…暖かくて…美味しいおかゆで…」

 

ユメは涙をハンカチで拭きミコトに目を合わせる

 

「私と、出会ってくれて、ありがとう…!」

 

その言葉に答えるかのよう、ミコトはユメの横のカウンター席に座り、ゆっくり食べさせる

 

「…おう、ゆっくり食えよ、じゃないとむせるからな」

 

「っはい!」

 

「…やっぱり惚気じゃないっすか!」

 

 

これにてカフェ「ルミナス」営業終了

今日もまたひとつ物語を刻む

"夢"と"信条"を胸に掲げ歩む

 

 

 

 

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