彼らはそのガンダムが連合への脅威になると見て、アルバート艦隊提督『アルバート・テンシュリー』にガンダムの破壊を命じ、彼はそのガンダムの乗る戦艦を見つけ出す。
「かかってくるがいい、体制を破壊するためのモビルスーツ、ガンダムよ。その性能とやらを見せてくれ」
「レーダーに反応あり!速度からしてシエル所属のモビルスーツ…ガンダムだと思われます!」
無重力というのは少し不快な感じを覚えて、だけど心地いい。
そんな矛盾する感覚をまたも感じながら私、マナ・クルスザカはガンダムに乗り込み、カタパルトハッチを開けた。
「えっと…武器は」
今時では中々見ることの無い紙のマニュアルを片手に、このモビルスーツ…ガンダムの使用可能武器を確認する。
「なるほど…ビームサーベルにライフル、ビームシールドもある。あとは…ハンマー、ってこんなもの使わないよ」
この機体は開発者の遊び心か分からないがハンマーやビームジャベリン、さらにブーメランといったものもオプションで装備可能らしい。
そんな使いづらそうな武装、絶対使いたくないし見なかったことにしよう。
「敵が動き出した。動かないと」
武装確認に夢中になっていると、敵艦からモビルスーツが飛び立った時のスラスター音が脳に響く。
「うぐっ、まだ慣れないな。この感覚」
脳に直接、他人の思考が流れてくるようというのはあまり良いことではない。
見たくないところも、聞きたくないところも全て脳に注がれるような感覚は吐き気すら覚えるほどだ。
一生慣れることはないだろう、というかどうにかシャットアウトできないものか。
だが今はそんな事を考えてる暇もない。
はやく撃退して、何処か安心できる…誰も来ないような場所に艦を停めて、これからどうするかを考えたいのだ。
廃棄された資源採掘用の小惑星とかなら艦を止める所もあるだろうし、運が良ければ食糧も見つかるかもしれない。
「…その後は?」
いや、今はそんなことも考えてる場合じゃないと、変に思考を巡らせている私自身に言い聞かせ、モビルスーツのスラスターを吹かせる。
操作に慣れてきたのか、ある程度の動きなら制御できそうだ。
モビルスーツの前面を敵艦が見えるように向け、確認した通りにライフルを腰から取る。
「当たってくれ!」
こちら側に全速力で向かってくるモビルスーツ郡に銃口を構え、撃つ。
銃口から線を描くように出た赤白いビームは、その先頭に立っていたモビルスーツの胸付近を貫き、直後に爆発した。
(うわぁっ!なんだとっ)
爆発とほぼ同時に脳に響いた断末魔のようなものに聞かなかったフリをし、他のモビルスーツに射線を向ける。
(なんだこの威力は)
(隊長を撃ち抜いたぁ!?)
脳によぎった敵の思考から察するに、さっき撃ったモビルスーツに乗っていたのは隊長と慕われていたらしい。
けど私はそんなことは知らない、来るのが悪いんだと少し感じた罪悪感のようなものを振り払い、もう一発撃った。
「来るなよ…殺しちゃうんだからっ!」
一機、二機、三機、四機と敵のモビルスーツを撃ち、空になったエネルギーパックを取り変える。
「生きるんだ!来るなよっ!」
取り変える瞬間を待っていたかのように突っ込んでるモビルスーツに射線を向けるが、敵機のビームライフルに撃たれ、破壊された。
「なにぃ!やったなぁっ!」
もう使い物にならなくなったライフルを捨て、掌の中央部からサーベルを取り出す。
突撃してくるモビルスーツから撃たれたライフルを肩部で受けながら、取り出したサーベルでモビルスーツの胸付近…恐らくコックピットのある箇所を貫く。
「お前らがかかってくるから…っ!いけないんだぞっ!」
(こいつっ!装甲が)
貫き、爆発寸前のモビルスーツを他の敵に投げつける。
投げてすぐに聞こえた爆発音と断末魔のようなものを流しながら、周りを確認する。
「いる…!それも強いやつ!」
人の勘というものが敵艦の方向から突っ込んでくるモビルスーツに乗る者が強者だと言っていた。
(ガンダム!お手合せ願おう!このアルバート自らが!)
◈◈◈◈◈
「何と戦ってるの…?」
マナが離れてから少しして、近くの宙域から何かの音が聞こえた。
少し気になって部屋の窓から少し見ていると、白いモビルスーツが灰色のモビルスーツを貫いている。
「あれってゲルだ、コロニー連合の」
私たちの住むコロニーを守る連合の量産機・ゲル。
灰色の機体カラーに特徴的なモノアイ、ユニバーサル規格の採用によって拡張的な整備性を売りとしている、『テルマイト社』の傑作量産機として有名なモビルスーツだ。
その機体に敵対しているあのモビルスーツは何なのだろう、何故かこの艦を守っているように見えるけれど。
(お前らがかかってくるから…っ!いけないんだぞっ!)
「何?今の」
一瞬、マナの声が聞こえたような気がして後ろを振り向く。
だが、そこには誰も居ず、開けっ放しの扉が見えるだけだ。
「…?」
何でかは分からないが、そうして目に入った扉の先が少し気になってしまい、部屋の外に出る。
廊下の奥まで凝視するが、誰もいない。
けれど、何かがこの先にあるような感じがして、廊下を歩き始める。
「この先…?」
しばらく歩いていると少し広い空間に出、そこは三つの廊下へ進む道とエレベーターのようなもので分岐していた。
私は導かれるようにエレベーターに乗り込み、無意識に下へのボタンを押す。
エレベーターが降下をし始めて少しして止まり、ドアが自動で開いた。
エレベーターを降り、右へ移動すると宇宙服の置いてある部屋につく。
「これを着るの…?」
何かに言われるように宇宙服を着、専用のヘルメットを被る。
そして来た反対側の奥に行き、少し重たい扉を開く。
「ここは…格納庫?」
何かの発着場だろうか、カタパルトデッキもある。
興味を抱きながら下に降りると、格納庫の奥…壁だったはずのところが開き始めた。
「…モビルスーツ?」
巨大な扉の開いた先には青いモビルスーツが立っていた。
その頭部付近には『GUNDAM』と書かれていたのでそれがこのモビルスーツの名前なのだろう。
「あなたが呼んでいたの?私を」
青いモビルスーツに近づいて、コックピットを開ける。
「これに乗ればいいのね」
内部に入り、コックピットを閉める。
何故か分かっている起動方法で動かそうと試みてみるとOSが立ち上がった。
OSの1番上には【GUNDAM.No002:Vx12-vanitasu】とそう書いてある。
「そうか。あなたはヴァニタスっていうの」
だけど何故、こんなモビルスーツに呼ばれているような気がしたのだろうか。
それと同時に、あの白いモビルスーツが脳裏によぎった。
ヴァニタスに導かれるがまま、宇宙を駆けるヴァニタス。
その青き機体はアルバート艦隊を恐怖させ、撤退させることに成功する。
少しずつ変わりゆく自分達に恐怖しながらも、同時に二人の少女は戦争に魅入られてゆく…。
次回、機動戦士ガンダムヴァルキリー第5話。
もう、あの日には戻れない。