どう考えてもお荷物の俺を、最強パーティの幼馴染たちが追放してくれない   作:ひじき次郎

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第2話 俺を追放してくれ

「駄目だ」

 

「早くない?」

 

 アルトの返事は、俺が言い終わるより早かった。

 

「なんでだよ!」

 

 俺は机を叩いた。

 

 向かいに座るアルトは、いつもの無表情で俺を見るだけ。

 

 その横でセレナがため息をつく。

 

「毎回こりないわねえ」

 

「毎回言わせてるのお前らだろうが!」

 

「今回も駄目だけど」

 

「何が今回もだ!」

 

 フィアが困ったように笑った。

 

「レオンさん、本当に辞めたいんですね」

 

「ずっとそう言ってんだろ!」

 

 冗談で言ってるわけじゃない。

 

 最近の依頼はおかしい。

 

 今日の大型魔獣だってそうだ。

 

 アルトは正面から斬り合った。

 

 セレナは横から魔法を叩き込んだ。

 

 フィアは二人を守りながら治癒までしていた。

 

 俺は。

 

 フィアが張った結界の中で、岩陰にいた。

 

「今日の戦い思い出せ!」

 

「思い出してるわよ」

 

「俺、何した?」

 

「何も」

 

 セレナが即答した。

 

「そうだろ!?」

 

「外に出られても邪魔だもの」

 

「そうだろ!?」

 

「だったら辞めさせろ!」

 

「嫌」

 

「なんでそこだけ繋がらねえんだよ!」

 

 フィアが首を傾げる。

 

「戦闘は私たちがしますから」

 

「だから、その戦闘がある場所に行きたくねえんだよ!」

 

「守りますよ?」

 

「守られながら化け物の前まで連れていかれる側の気持ち考えたことある!?」

 

「安全ですよ?」

 

「俺の精神が安全じゃねえ!」

 

 アルトが口を開く。

 

「フィアの結界は破られない」

 

「そういう問題じゃねえ!」

 

「今日も破られなかった」

 

「知ってるよ! 中にいたんだから!」

 

 途中、一回だけ大型魔獣の尻尾がこっちまで飛んできた。

 

 結界にぶつかって、とんでもない音がした。

 

 もちろん結界には傷一つつかなかった。

 

 俺は死ぬかと思った。

 

「レオン、すごい声出してたわね」

 

「尻尾飛んできたんだぞ!」

 

「届いてないでしょ」

 

「目の前までは来たんだよ!」

 

「結界があるのに?」

 

「お前ら、ずっと強い奴の感覚で話しやがるよな!」

 

 三人とも何が問題なのか分かってない顔をしている。

 

 こいつらにとっては、結界で防げるなら安全。

 

 俺にとっては、大型魔獣が目の前にいる時点で帰りたい。

 

 この差はでかい。

 

「俺は別に、自分が何にもできねえとは思ってねえぞ」

 

「知ってる」

 

 セレナが言う。

 

「飯は作れる。旅の準備もできる。買い物も交渉も、お前らより俺の方が上手い」

 

「知ってるわよ」

 

「だったら分かるだろ!」

 

「何が?」

 

「それと魔獣の前まで連れていくのは別問題だ!」

 

 セレナは少し考えてから言った。

 

「でも便利だし」

 

「便利って言ったな今!」

 

「便利よ」

 

「人間に使う言葉じゃねえだろ!」

 

「褒めてるのよ」

 

「命懸けの便利屋にされて喜ぶ奴がいるか!」

 

「いる」

 

 アルトが言った。

 

「誰だよ!」

 

「レオン」

 

「ふざけんな!」

 

 俺は椅子へ座り直した。

 

「とにかく、俺はもっと平和に生きたいんだよ」

 

「平和?」

 

 フィアが聞く。

 

「そう。店でもやる。食堂でもいい」

 

「レオンさんのお店、素敵ですね」

 

「だろ?」

 

「毎日行きます」

 

「毎日は来なくていい」

 

「私も行くわ」

 

「お前もか」

 

 アルトも頷く。

 

「俺も」

 

「なんで全員ついてくる前提なんだよ!」

 

 セレナが少し笑う。

 

「じゃあ食堂以外は?」

 

「釣り」

 

「釣り?」

 

「朝起きて釣りして、昼寝して、夕方から酒飲む」

 

「駄目人間じゃない」

 

「命懸けより百倍いい!」

 

「働きなさいよ」

 

「店やるって言っただろ!」

 

「釣りして昼寝してるじゃない」

 

「休みの日だよ!」

 

 しばらく言い合ったが。

 

 結局、その日の脱退申請も却下された。

 

 三対一。

 

 おかしい。

 

 俺が俺を辞めさせたいと言っているのに、どうして多数決なんだ。

 

「腹減った」

 

 アルトが言った。

 

「知るか!」

 

「夕飯」

 

「自分で作れ!」

 

 三人とも俺を見る。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「何だよ」

 

 誰も何も言わない。

 

「作れよ」

 

「嫌だ!」

 

「レオンさんのご飯、食べたいです」

 

 セレナが立ち上がる。

 

「今日、何?」

 

「まだ作るって言ってねえ!」

 

「肉あったでしょ」

 

「……あるけど」

 

「じゃあそれで」

 

「注文まで始めんな!」

 

「…………」

 

「……わかったよ!」

 

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