どう考えてもお荷物の俺を、最強パーティの幼馴染たちが追放してくれない   作:ひじき次郎

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第4話 転職面接

 翌日。

 

「……なんでお前らも来るんだよ」

 

 冒険者ギルドへ向かう道で、俺は後ろを振り返った。

 

 アルト。

 

 セレナ。

 

 フィア。

 

 三人ともいる。

 

「暇だから」

 

 アルトが言った。

 

「俺は暇じゃねえんだよ」

 

「昨日の話、気になるじゃない」

 

 セレナは当然のような顔をしている。

 

「私も、レオンさんのお仕事が決まるか気になります」

 

「お前らなあ……」

 

 今日は昨日受付で頼んだ、ギルド事務職の話を聞きに行く日だ。

 

 俺一人で十分である。

 

「なんで普通について来てんだよ」

 

「別にいいでしょ」

 

「よくねえよ!」

 

     ◇

 

「お待ちしておりました、レオンさん」

 

 ギルドへ着くと、昨日の受付嬢にそのまま奥へ案内された。

 

 通されたのは、小さな応接室だった。

 

 机の向こうには四十代くらいの男が座っている。

 

「管理部の責任者をしております、グレゴールです」

 

「レオンです」

 

「存じています」

 

「そりゃどうも」

 

 その後ろから三人も入ってくる。

 

 グレゴールが少し驚いた。

 

「皆さんもご一緒でしたか」

 

「勝手についてきました」

 

 四人で座る。

 

 グレゴールは昨日俺が提出した書類を机の上に置いた。

 

「拝見しました」

 

「はい」

 

「受付からも普段の様子を聞いています。報告書、経費処理、依頼後の各種手続き。かなり慣れていらっしゃるようですね」

 

「まあ、その辺はずっと俺がやってるんで」

 

「率直に申し上げると、こちらとしては歓迎したい人材です」

 

「おお」

 

 これは。

 

 かなりいい。

 

「では――」

 

「勤務条件についてなのですが」

 

 グレゴールが一枚の紙をこちらへ向けた。

 

「こちらでどうでしょう」

 

 俺は受け取った。

 

 勤務は基本的に王都中央ギルド。

 

 担当は冒険者関連の書類確認、依頼情報の整理、物資発注補助。

 

 ここまではいい。

 

 むしろ理想的だ。

 

 問題は、その下だった。

 

「……ん?」

 

 俺は指で一行をなぞった。

 

 《黎明の鐘》として遠征依頼を受ける場合、勤務扱いを停止。

 

 帰還後に通常勤務へ復帰。

 

 さらに長期依頼の場合も、職員籍を維持。

 

「…………」

 

 もう一度読む。

 

 変わらない。

 

「どうでしょう?」

 

 グレゴールが聞いてくる。

 

「ちょっと待ってください」

 

「はい」

 

「これ、どういう意味です?」

 

「そのままですが」

 

 グレゴールは穏やかに答えた。

 

「レオンさんほどの方なら、《黎明の鐘》を離れるのは不本意でしょう」

 

「は?」

 

「ですので、冒険者活動と両立できる勤務形態にしました」

 

 俺は黙った。

 

「通常は認めていません。ただ、《黎明の鐘》ほど重要なパーティとなれば話は別です」

 

 グレゴールは続ける。

 

「依頼がない時期はこちらで働いていただき、パーティに必要とされた際にはそちらを優先していただく。長期遠征で一月空いても、職員としての席は残します」

 

「……」

 

「もちろん、その間こちらから出勤を求めることもありません」

 

 どうです。

 

 とでも言いたげな顔だった。

 

「いいじゃない」

 

 横からセレナ。

 

 俺はゆっくり顔を向けた。

 

「……何が?」

 

「条件。かなり良くない?」

 

「そうですね」

 

 フィアまで頷く。

 

「これなら今まで通り四人で依頼を受けながら、レオンさんがやりたかったギルドのお仕事もできます」

 

「そうだな」

 

 アルト。

 

「違うだろ!」

 

 三人がきょとんとする。

 

 グレゴールもきょとんとしている。

 

「え?」

 

「え、じゃねえ!」

 

 俺は紙を机へ叩きつけた。

 

「俺は冒険者を辞めたいんです!」

 

 グレゴールが瞬きをする。

 

「……《黎明の鐘》を?」

 

「そうです!」

 

「何か、パーティ内で問題でも?」

 

「問題はそこじゃねえ!」

 

 横を見る。

 

 三人。

 

「こいつらとは普通に仲いいです!」

 

「なら、なぜ?」

 

「危ねえからだよ!」

 

 応接室が静かになる。

 

「大型魔獣とか竜とか、そういうのが出る場所に行きたくないんです!」

 

「しかし、レオンさんは戦闘をされないと聞いていますが」

 

「戦わなくても現場にはいるんだよ!」

 

「フィアさんの結界があるでしょう?」

 

「お前までそれ言うの!?」

 

 思わず敬語が飛んだ。

 

 グレゴールが少したじろぐ。

 

「す、すみません」

 

「俺は安全な仕事がしたいんです! 王都で! 机に座って! 夕方になったら帰る!」

 

「でしたら、普段はまさに――」

 

「途中で竜の依頼が来たら出ていくんだろ!」

 

「……はい」

 

「それを辞めたいって言ってんの!」

 

 セレナがため息をついた。

 

「せっかく向こうがここまで考えてくれたのに」

 

「余計なお世話なんだよ!」

 

「レオンさん」

 

 フィアが困ったように笑う。

 

「かなり配慮していただいてますよ?」

 

「方向が真逆なんだよ!」

 

 グレゴールはようやく何かに気づいた顔をした。

 

「つまり……《黎明の鐘》を続けやすい条件ではなく」

 

「はい」

 

「辞められる条件をご希望だった?」

 

「最初からそう言ってるだろ!」

 

「受付からは、『冒険者を辞めて事務職へ』とは聞いていたのですが……」

 

「なら分かるだろ!」

 

「てっきり、待遇面への不満などかと」

 

「命への不安だよ!」

 

 グレゴールが頭を下げた。

 

「申し訳ありません。こちらが勝手に意図を汲み違えました」

 

「本当にそう!」

 

「ただ」

 

「まだあるんですか」

 

「《黎明の鐘》から完全に離脱されるとなると、当ギルドとしても……」

 

「何」

 

「惜しい、というのが正直なところです」

 

「俺、戦えないんですけど!」

 

「それは承知しています」

 

「なんで全員そこだけ承知してんだよ!」

 

 アルトが俺を見る。

 

「じゃあこの条件では駄目なのか」

 

「今の話聞いてた!?」

 

「働けるぞ」

 

「冒険者も続いてんだよ!」

 

「そうだな」

 

「そこだよ!」

 

 俺は頭を抱えた。

 

 何なんだ。

 

 昨日はいい話だと思ったのに。

 

 安全な仕事に転職するはずだったのに。

 

 向こうが勝手に気を利かせた結果。

 

 なぜか。

 

 冒険者を続けながら仕事が一つ増えそうになっている。

 

「この話、なしで」

 

「レオン!」

 

「フィア、止めるな!」

 

「でも、とてもいい条件です」

 

「俺にとっては最悪だ!」

 

 グレゴールが残念そうに紙を引っ込めた。

 

「分かりました。もし気が変われば、いつでも」

 

「冒険者辞めていいなら来ます」

 

「それは……」

 

「じゃあ来ません!」

 

 俺は立ち上がった。

 

 三人も立つ。

 

「昼どうする?」

 

 アルトが聞いてきた。

 

「お前は何しに来たんだよ!」

 

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