どう考えてもお荷物の俺を、最強パーティの幼馴染たちが追放してくれない   作:ひじき次郎

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第6話 勧誘お断り

数日後。

 

 俺たちは昼飯を食いに、ギルドへ来ていた。

 

 別に依頼があるわけではない。

 

 ここの酒場は量が多いし、冒険者向けだから値段も悪くない。

 

「俺、今日の日替わり」

 

「私はスープとパン」

 

「肉」

 

「私は――」

 

「フィアは魚にしとけ。注文時間かかるとめんどい」

 

「では、そうします」

 

 注文を済ませる。

 

 さて。

 

 今日こそ午後から商会でも回るか。

 

 ギルドは駄目だった。

 

 なら次だ。

 

 安全な職場は王都にいくらでも――

 

「レオン!」

 

 でかい声が飛んできた。

 

「ん?」

 

 振り返る。

 

 冒険者が四人、こちらへ歩いてくる。

 

 見覚えのある顔だった。

 

「おお。久しぶり」

 

「久しぶりじゃねえよ!」

 

 先頭の男が俺の肩をばしばし叩く。

 

「たまには顔出せ!」

 

「何でだよ」

 

「こっちは大変なんだぞ!」

 

「知らねえよ」

 

 後ろの三人も寄ってくる。

 

「本当にレオンだ」

 

「お前、今暇?」

 

「暇なら来いよ」

 

「どこに?」

 

「うち」

 

「嫌だよ」

 

 即答した。

 

「早えな!」

 

「どうせ依頼だろ?」

 

「そうだけど」

 

「じゃあ嫌だ」

 

 男が露骨に嫌そうな顔をした。

 

「相変わらずだな、お前」

 

「俺は昔から冒険者が好きじゃねえんだよ」

 

「その台詞、冒険者ギルドで言うなよ」

 

「事実だからしょうがねえだろ」

 

 そんな話をしていると、隣から声がした。

 

「……また来たの」

 

 セレナだった。

 

 明らかに歓迎していない。

 

「なんだよ、その顔」

 

「別に」

 

「別にって顔じゃねえぞ」

 

「この人たち、前にもレオンを勧誘したでしょ」

 

「したな」

 

 男があっさり認めた。

 

「今日もするけど」

 

「しなくていい」

 

「お前が決めるなよ」

 

「レオンは行かないから」

 

「だからお前が決めんな」

 

 俺が突っ込む。

 

 フィアも少し困ったような笑顔を浮かべている。

 

 アルトに至っては、もう男たちを見てすらいない。

 

 肉が来るのを待っていた。

 

「で?」

 

 俺は聞いた。

 

「何の用だよ」

 

「だから、うち来い」

 

「嫌だっつってんだろ」

 

「前より条件良くするぞ」

 

「だから行かねえって」

 

「取り分増やす」

 

「金の問題じゃねえ」

 

「お前がそれ言う?」

 

「俺だって命より金を優先するほど馬鹿じゃねえよ!」

 

 金は好きだ。

 

 大好きだ。

 

 だが死んだら使えない。

 

「そもそも」

 

 俺は男を指差した。

 

「前にも言っただろ。俺は《黎明の鐘》からお前らのところへ移りたいわけじゃねえ」

 

「ああ」

 

「冒険者を辞めたいんだよ!」

 

 男が腕を組んだ。

 

「まだ言ってんのか」

 

「まだじゃねえよ! ずっと言ってんだよ!」

 

 三人の視線がなぜか俺から逸れた。

 

「お前らも逸らすな」

 

「いや」

 

 男が椅子を勝手に引いて座る。

 

「でもレオン、うちにいた時は結構楽しそうだったじゃねえか」

 

「そうか?」

 

「飯食ってる時とか」

 

「辛気臭い顔で飯くいたくねえだろ」

 

「野営も」

 

「外で食う飯の方がうめえからな」

 

「移動中もずっと喋ってたし」

 

「黙って歩くだけとかつまらねえだろ」

 

「町着いた時も」

 

「宿代ふっかけられてたから値切っただけだろ」

 

「ほら」

 

「何がほらだ」

 

 男が仲間を見る。

 

 一人が頷いた。

 

「お前がいた時、旅楽だったよな」

 

「あと楽しかった」

 

「飯うまかったし」

 

「報告書も帰った日に終わった」

 

「その後俺らだけで行ったら」

 

「三日かかった」

 

「馬鹿じゃねえの?」

 

「だから来いって言ってんだよ!」

 

「嫌だよ!」

 

 話が戻った。

 

「飯くらい自分で作れ!」

 

「作った」

 

「じゃあいいだろ」

 

「不味かった」

 

「練習しろ!」

 

「宿代ぼったくられた!」

 

「値段見ろ!」

 

「金がなくなった」

 

「帳簿くらいつけろ!」

 

「馬車の手配も失敗した」

 

「お前ら何ならできんだよ!」

 

「「「魔物を倒す」」」

 

「知ってるよ!」

 

 そこだけは強い。

 

 こいつらも王都で名の通ったパーティだ。

 

 でなければ、俺だって臨時とはいえ同行していない。

 

 話は3か月ほど前まで遡る。

 

 アルトたち3人が、それぞれ腕を磨くために王都を離れていた時期があった。

 

 俺?

 

 戦えない俺に修行などあるわけがない。

 

 なので1人で王都に残った。

 

 暇だった。

 

 金も欲しかった。

 

 それで知り合いのパーティを何度か手伝った。

 

 そのうちの1組がこいつらである。

 

 以上。

 

「とにかく」

 

 男が机に腕を置く。

 

「今度の依頼、1週間くらいなんだよ」

 

「嫌だ」

 

「山越えるだけだから」

 

「嫌だよ!」

 

「魔物は俺たちがやる」

 

「あ?」

 

 嫌な言葉が聞こえた。

 

「お前は戦わなくていい」

 

「……」

 

「危なくなったら俺らが守る」

 

「……おい」

 

「飯と野営と交渉、その辺やってくれれば――」

 

「なんでお前らまで同じこと言うんだよ!」

 

 机を叩いた。

 

 男が驚く。

 

「何が?」

 

「戦わなくていい! 俺たちが守る! それ!」

 

「いい条件だろ?」

 

「よくねえよ!」

 

 頭を抱える。

 

 どいつもこいつも。

 

「俺はな!」

 

 男たちを指差す。

 

「守られたいんじゃねえ!」

 

「うん」

 

「危険なところに行きたくねえんだよ!」

 

「……」

 

「分かるか!?」

 

 男が少し考えた。

 

「でも安全だぞ?」

 

「話聞けよ!」

 

 後ろでセレナが腕を組んで頷いている。

 

「お前は何したり顔してるんだ!」

 

「だって」

 

「お前らと全く同じこと言ってんだぞ!」

 

「なんか良い人達な気がしてきた」

 

「俺にとっては話の通じねえ奴が増えただけだ!」

 

 男は不満そうだ。

 

「本当に来ねえの?」

 

「行かねえ」

 

「取り分増やしても?」

 

「行かねえ」

 

「戦闘なしでも?」

 

「行かねえ!」

 

「飯だけでいいぞ」

 

「行かねえ!」

 

「何で条件良くしたら嫌がるんだよ」

 

「俺を冒険に連れて行くな!」

 

 まったく。

 

 自分たちの面倒くらい自分たちで見ろ。

 

「残念だな」

 

 男が立ち上がる。

 

「気が変わったら言えよ」

 

「変わらねえよ」

 

「いつでも歓迎するからな」

 

「しなくていい」

 

「じゃあな、レオン」

 

「おう」

 

 四人が離れていく。

 

 途中、一人が振り返った。

 

「本当に来ねえ?」

 

「しつけえ!」

 

 今度こそ去っていった。

 

 俺は大きく息を吐く。

 

「……人気者ね」

 

 セレナが言った。

 

「どこがだ」

 

「正式に来てくれって言われてたじゃない」

 

「だから断っただろ」

 

「即答だったな」

 

 アルトが言う。

 

「当たり前だ」

 

 俺は水を飲んだ。

 

「俺が辞めたいのは《黎明の鐘》じゃねえ」

 

 三人を見る。

 

「冒険者だ」

 

 一瞬。

 

 三人の顔が揃って微妙になった。

 

「なんだよ」

 

「別に」

 

「なんでもありません」

 

「困る」

 

「お前はそればっかだな!」

 

 ちょうどそこで昼飯が運ばれてきた。

 

 よし。

 

 食ったら次の転職先を探しに行こう。

 

 俺はまだ諦めていない。

 

 というか。

 

 なぜ転職しようとするたびに、冒険者としての就職先ばかり増えるのか。

 

 本当に意味が分からなかった。

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