田舎少年が行く学園青春狂騒曲 厄ネタを添えて 作:ビスマルク
闇寮の女子、リリィ達が着ている制服とほとんど同じ白を基調としたデザインの制服。違うのはリリィ達の制服に入っていた線の色が黒ではなく赤になっている所だろう。多分寮によってそこに入っている線の色が変わっているのだと思う。他の寮の人間を見たことないので断言は出来ないが。
「炎寮代表、炎の完全適合者エンリ・ウリエラよ。初めまして、闇の完全適合者ヨル・イザナギ」
殺意の籠った目で睨まれても正直小動物にしか見えない。隣に座るアルザードさんが大きいのもそうだがそれと比較しなくても小柄だ。どれくらいかというと立った状態で並ぶとアルザードさんの胸がウリエラの頭に乗りそうなくらいだ。
「小さき者……」
「あ”!?」
「クソボケがァ!!!!」
俺の隣でボソッと呟いたテニアをぶん殴る。物凄い可愛らしい声から繰り出される低い声は恐ろしいことこの上ない。というかその前の俺の発言で既に好感度はゴミ同然なので少しでもフォローしないとそのうち殺されかねない。
「ヨル・イザナギだ。同じ代表及び完全適合者としてよろしく頼む」
「よろしくしたくないわ」
駄目だ、既に敵認定されている。これでは友好関係を築きそこから女子生徒を紹介してもらうという当初の目的を達成できない。何とかして少しでも挽回しなければ俺達二人に未来はない。具体的に言うとあの屑クラスメイト共に八つ裂きにされる。
その場合はテニアを生贄にして逃げるつもりだが隣の馬鹿も間違いなく俺と同じことを考えているだろう。人の心とかないのだろうか。人を生贄にして逃げるとか恥の概念とかないのかな?
「エンリちゃん、やっぱり闇寮と交流は……」
「駄目よフレイ。これは寮の皆からの希望だもの。代表として叶える必要があるわ。他の寮はみんな断られたし、闇寮くらいしか現状選択肢ないもの」
「俺達としか選択肢がないとか他の所はもっとヤベェのか?」
「闇寮以上にヤバい所があったとしたらそらもう地獄だろ。あるいは煉獄か?」
「でも自分の寮をこんな風に言ってる人達の巣窟だよ!!」
「……アタシも考えなおしたくなったけど仕方ないわ」
「んー、なんでそんなに他寮と交流したいんだ?俺達としては嬉しい限りではあるが寮単独でも普通に過ごせるくらいには色々とあるだろ」
他の寮の敷地については詳しくはないが俺達闇寮のような人間が住むような環境じゃないってこともないだろう。その闇寮でさえ学食は量も味も最高だし種類も豊富。購買とやらは色々とあるし女子達が長時間買い物できるくらいには場所も広かった。
自然に囲まれた(極めて良くした言い方)闇寮と比べれば他の寮はもっとまともだと思っていたのだが違うのだろうか?そんな疑問から来た言葉だったがエンリは呆れたように溜息をついた。
「なにも知らないのねアンタ達。情報収集もろくに出来ない寮と手を組まざるをえないとか泣きたくなるわ」
「いやだってつい先日まで「一週間耐久サバイバル、夜襲もあるよ!!」をしてたし……」
「他寮の情報どころか俺ら先輩方と会う事すらしなかったからな。昼は授業で放課後はサバイバル。女子生徒達でさえ別メニューで鍛えられていたって聞いてるぞ」
「リリィが愚痴ってたから間違いないな。あっちもあっちで大変だったらしいがまぁ男子に比べればマシなんじゃねぇの?少なくてもあのクソジジイの顔を深夜に見ることもなかったし」
「今思えば昼間に襲撃仕掛けた奴だったよな、夜にルグ先生に襲われた奴」
「えっ、じゃあなに?毎日俺の所に来てたのはそれが理由なの?」
「毎日襲い掛かってたのお前だけだから間違いないだろ」
なんてこった、そんな規則性があったなんて。毎日襲い掛かったせいで全然気づかなかった。そういうことは先に言えよあのジジイ。夜襲された復讐に翌朝襲い掛かっちまっただろうが。知ってたら一日くらいは休んで身体を癒してから襲ったのに。
俺達の闇寮トークに炎寮の二人はドン引きした目で見てくる。だが弁解させてほしい。クソジジイに急襲しかけたの俺だけじゃない。闇寮は全員最低二回はやってるから。
「ふぅ……。まぁ他寮の文化に文句を言うつもりはないわ。こっちも色々とあるし。それじゃあまずは前提条件から話そうと思うけどいいかしら?」
「やだ、この人凄い良い人だ」
間違いなく警戒対象、悪く言えば嫌いな相手にも説明をしてくれるとか聖女かな?
「まず大前提として今年入った新入生、各寮に各属性の完全適合者がいるわ。数百年に一度ってレベルで生まれる完全適合者が全員揃ってるの。この時点でおかしいでしょ」
「ああ。コイツみたいに頭のおかしいのが6人もいるとか最悪だ。おっともちろんお嬢さんは例外だぜ?」
「喧嘩売ってるのかな???」
「漫才は後にしてくれないかしら?」
隣の馬鹿のせいで俺まで叱られた。帰ったらぶっ飛ばしてやろう。
「話しを戻して、この『ノウブル魔法学園』では度々寮対抗でのイベントがあるのよ。そして今年の一年生は各寮に完全適合者がいる。つまりこれまで以上の盛り上がりを見せるってこと。毎年色んな国が気にするくらいには盛大にやっている祭りが、更に規模を上げるかもしれないわ」
「へぇ……。つまり、闇寮と炎寮で同盟を組んで他寮に対抗したいってことか?」
「頭の回転は悪くないみたいね。ええ、その通りよ」
フム。これは確かに悪い話しではないかもしれない。如何せん俺達闇寮は数が少ない。他の寮の一年生は100人くらいいると聞くが俺達はその半分以下だ。その分協調性は間違いなく随一だと断言出来る。特に幸せになろうと抜け駆けする奴を処刑しようとする時はそれこそ一つの生物のようだ。
だがやはり戦いは数だよ兄貴とかつての偉人も言い残した。最悪俺が魔法生物を大量生産すれば一軍くらいは出来るんだが……。俺アイツらに名前つけるくらいには可愛がってるからむやみやたらに増やしたくない。というか制御出来なくなる可能性が高い。実際今も五体いる中で制御不可が一体いるし。化物のごとく強いけど。
「だけどアタシ達も弱い奴と組むつもりはないわ。最低限力を見せてもらわないとね」
「つまり?」
「ヨル・イザナギ。アタシと決闘しなさい。一対一、寮の代表同士での決闘。炎と闇の完全適合者同士の決闘よ」
指を突きつけながら宣言するエンリは自分に対する自信に満ち溢れている。それだけ今までの自分がやってきたことと現状の自分に自信があるのだろう。
いやしかしこうして見るとリリィもそうだがどうやったらエンリも絶望して闇落ちするんだ?結末だけ見せられても家庭が分からないから何をどうすれば阻止できるのかまるで分らないんだが。あの邪神も本当気が利かねぇなぁ……。
「嫌だよ、なんで必要もないのに戦わなきゃいけないんだ。そんなことするくらいだったらジジイ教師に襲撃仕掛けた方が早く上達するし」
「あのジジイ、曲がりなりにも教師だから教えること自体は上手いんだよな。基本的に肉体教導なだけで。それが容易く俺達の限界を突破してくるだけで」
(担任を襲撃……!!やっぱり闇寮はヤバい奴の集まりのようね。風寮の代表が調べ上げたことに偽りなしってこと!!そんなところの連中が炎寮に牙を剥く前に序列を刻み込んでやらないと!!炎寮代表としてみんなの為にも格付けして安心を手に入れてみせる!!!)
凄い警戒してる顔してる……。気持ちは分かるけど……。俺だって闇寮の連中が隣にいるとか考えたらヤバいと思うもん。いやでも敢えて言わせてほしいんだけど俺達が足引っ張るのは同じ寮の連中だけで他の寮にまで手は伸ばさないんだ。イケメンには呪詛履き続ける奴もいるけど。
だけどそんな内心が届くはずもなくエンリは隣に立つアルザードさんを見てから決意に満ちた目でこちらを睨む。そこには絶対に逃がさないという想いが宿っている。
「あら、逃げるのね。でもそれじゃあ私も困るのよ。だから……そうね、私に勝てたとしたら炎寮の女子生徒集めて合コンでも開いてあげようかしら」
「「ッ!!!??!??!?」」
(こいつらは女に飢えてるって聞いてるわ。もしもの為に事前にクラスでも許可取っておいたし、これを餌にして引きずり出す……!!)
まさか、まさかあちらから俺達の勝利条件を出してきてくれるなんて。これはまさに吉兆に違いない。神(闇神ではない)の思し召しに違いない!!!
「おいヨル、分かってるな……!!」
「当然だ。必ずこの決闘、勝利してみせる。そして俺達は楽園へと進むのだ」
「心強いぜ。流石は俺達の代表だ……!!」
((俺を置いて幸せになろうとしたら絶対に足引っ張って失敗させてやるけどなぁ!!!!))
今、俺達の心は一つになった。必勝の誓いの元ともに行く。そう、合コンという名のパラダイスへ進むのだ!!!
「決闘は一週間後、詳しい時間はまた知らせるわ」
まずは帰って作戦会議からだな!!絶対に負けられない戦いがここにある!!!