「ぐー」
「あら? 寝ちゃったんですのね……」
わーい。凛さんだ♪ 凛さんの前で目が覚めるのは久しぶりだなー。私の場合は目を閉じたって言ったほうがいいのかな? まあ、どっちでもいっか!
「ぐー。ぐーぐー!」
凛さんだーいすき♪
「わっ。もう寧夢さんったら……」
嬉しくて抱きついちゃった。凛さんはビックリしたみたいだけど、笑って受け止めてくれた。普段のおとなしい顔からは一転して、恍惚とした表情を浮かべているけど、そんな笑顔もとっても可愛らしいな♪
「ダメじゃないですか。こんな、二人きりの時に無防備に抱きついちゃ……」
「ぐー?」
そういえばここはどこだろう? キョロキョロと心の目で見回してみた。どうやらここはバイオ○ザードのアーケードの中みたい! どうりで暗いと思った。でも良かった! 凛さんに恥ずかしい思いをさせたかと思ったけど、これなら大丈夫だね。嫌じゃないみたいだし、思いっきり甘えちゃおう♪
「寧夢さん、その……お胸が」
「ぐうっ!?」
わっ!? 思い切り抱きついたら勢いで押しつけちゃった。大丈夫かな? ……大変! 呼吸が荒くなっちゃってる。なんだか目の焦点も合ってない。きっと息苦しかったんだ。すぐに離れなきゃ!
「ええと、お胸は恥ずかしいのですが、力強く抱きつかれるのはバイオレンスメルが……♪」
「ぐっ? ぐー!」
あれ? 何かに引っ掛かって椅子に背中を預けちゃった。あ! 抱きしめられてる! そのまま体重を乗せるように覆い被さってきた。凛さん軽くてビックリしちゃった! 苦しいわけじゃないみたいだし、凛さんも嬉しいのかも! 胸じゃなくて、お腹なら恥ずかしくないかな? ぎゅー♪
「いひひひひひ。バイオレンすわ〜!!♡」
ゲームという大義名分を盾に、こちらも銃による暴力を加える。その度にゾンビの血肉が弾け飛ぶ。垂涎ものの光景に本当に涎が垂れてしまう。側から見れば、なんとはしたない姿なのかと思われることでしょう。でもいいんです。今は寧夢さんと二人きりですから。
「すごい……っ」
いつもの睡魔はどこ吹く風か、寧夢さんの目が大きく開かれているのを見て、救われたような気持ちになりました。ずっとずっと苦しかった。血や暴力で興奮するなんて、普通じゃない。変な子なんだって……思っていたから。誰にも見せられないって、両親にだってバレないようにひた隠しにしてきた。包み隠さず自分を曝け出せることに、興奮も相まってどうにかなってしまいそう。
「「あ……」」
二人の集中が高まっていたおかげか、ゲームをクリアしてしまった。もっともっと寧夢さんと共有したかった。呆気ないリザルト画面と共に、光の点滅も収まってしまう。
「ぐー」
「あら? 寝ちゃったんですのね……」
それだけバイオレンスな世界に熱中していたのでしょう。遊び疲れた子供のような笑顔が愛らしいです。……と、思っていたら例の夢遊病? で起きて……いや、寝たまま動き出しました。それってなんだかゾンビみたいで——
「ぐー。ぐーぐー!」
「わっ。もう寧夢さんったら……。ダメじゃないですか。こんな、二人きりの時に無防備に抱きついちゃ……」
さながらゲームが続いて、意識のないゾンビに襲われてしまったようで、快感が身体中を駆け巡っていく。しかも抵抗しないでいると、豊かなお胸で息ができなくなってしまいました。苦しい……けど、あの苦しさとは全く違う。むしろもっと望んでしまう。これがいつか聞いた……性的な目で見ているということなのでしょうか。
「ぐっ? ぐー!」
けれど友人の胸に触れ続けているのは恥ずかしく、離すように促すと、途端に物足りなさを覚えてしまう。するととっさに腕を絡めて、寧夢さんを押し倒していました。ああ——寧夢さんは寝ていて、無防備なのに。ゲームと現実の境目は夢のように朧になっていました。体重をかけられた寧夢さんがビックリしたように見えます。すると思い切り抱きしめられて、私も精一杯の力を込めました。ずっと共有していたい——離れたくない……。
「すごい……っ」
こんな暗い部屋、いつもだったら瞬きしたら寝ちゃうのに……。グロテスクな光景に眠気が飛んでいく……。何より凛さんのあられもない表情が、可愛らしくて……。眠ることは人間にとって一番幸せな時間だけど、今だけは寝たくない……っ。……凛さんと一緒にいると色んな刺激に出会えて……私にとって、もう一つの幸せな時間……。
「「あ……」」
そんな時間も永遠じゃなくて、終わりがやってきちゃった……。普段は考えられないほど開いた目が閉じていっちゃう……。ああ……もう、ダメ……。意識が……。
「わーい。凛さんだ♪」
……夢? 凛さんとの楽しいゲームの続きを見たくて、夢に出てきちゃったのかな……。どうしていつもこうなんだろう……。
「凛さん。だーいすき♪」
「わっ。もう寧夢さんったら……」
夢じゃ意味がないのに……。いつも眠すぎてどこでも寝ちゃうから、誰かと仲良くなることなんてできなくて……。凛さんは……こんな暗い私にできた初めてのお友達なのに……。
「ダメじゃないですか。こんな、二人きりの時に無防備に抱きついちゃ……」
「私は凛さんともっと仲良くなりたいよー?」
本当にしたいことは、夢の中の明るい私が全てやっちゃう……。でも現実じゃ、できっこないから……。夢を見るのは好き……。はぁ……覚めなければいいのに……。
「えっ? ビックリしたー!」
……凛さんに押し倒された……っ? ずるい……。私ができないことをやるのはともかく……私がやってもらえないことをされるのは……いくら憧れの私でも妬いちゃう……。あ……凛さんが抱きつく力を強くした……っ? 明るい私はパワフルだから……もしかすると同じくらい強く抱きしめているのかも……。それが誰も来ない場所で、誰も知らない欲望を共有しているようで……とても刺激的に思えました……。
「……あれ……。凛……さん……っ?」
「え……」
凛さんが私のお腹から顔を上げました……。すると見る見るうちに顔が赤くなってしまいます……。
「そ、そんな——!? ごめんなさい寧夢さん。寝ているところにこんなっ……恥ずかしいことを……」
——ああ、なんだ……。まだ夢の中なんだ……。だって大好きな凛さんが、誰にも見せないような一面を私だけに見せるなんて……もし現実だったら、幸せすぎてどうにかなっちゃうから……。どうせ夢なら——
「大好きです……。凛さん……」
「えっ」
私は腰に回した手を動かして、凛さんの顎を挟むように持ちました……。それ以上何をするでもなく眺めていると……嬉しそうで、それでいて泣きそうで……限界まで顔を赤らめてしまいます……。すると同じように私の顎も持ち上げられてしまいました……。凛さん自身も抑えきれない……人に見せるのが恥ずかしいようなところを見られるのが刺激的すぎて……。ずっと見つめ合っていたい……。——離したくない……。