【急募】元宮チアキって何すればいいんですか? 作:元宮愛好人間
こんにちはー
えっ?旗見エリカは私だけど……万魔殿の先輩が私に何か……?
…………
ああ、チアキちゃんについて
えっと、ちょっと待ってね
うーん……なんだろう
いつの間にか仲良くなってたから、きっかけとかはよく分からないや
普段の様子?
いつも表情豊かで元気だけど、時々魂が抜けたみたいにボーっとしてるよね
え、チアキちゃんの友達はみんな知ってると思ったけど……
そっか、万魔殿では頑張ってるのかな
猫みたいでかわいいよね。何も無いところ見つめてたり
最近はさ、ボーっとするための場所を探してそこでボーっとしてるんだって
本当に猫みたいだと思わない?
頼み事……?特にはしてないけど……
==
ん?うちに話?
チアキちゃんのこと?
最初に会ったのは入学式だよ
ほら、『
だから席が隣でさ、最初は周りに挨拶してきて珍しいなーって思ってたし
あー……万魔殿の人の前で言うのはちょっとアレだけど、ぶっちゃけつまんなくてずっと携帯イジっててさ、そろそろ抜け出してどこか行こうかなーなんて思ってた時……
隣で目をキラキラさせながらマコト議長の挨拶を聞いてる姿が目に入っちゃって
それで面白いなーって思ったのが最初
うん。だから万魔殿に入ったって聞いても、あんまり驚かなかったかな
思ったこととかすぐ顔とか声に出てるから、隠し事はしないっていうかできないタイプだよね
運動神経とか射撃とかはあんまりって感じだし、時々ボーっとしてるから見ててちょっと不安になるところあるかなーって
でも、そういうところ含めて「愛されてる」ってうちは思ってる
頼み事とか?
普通の友達に頼むぐらいのことは頼むけど?
==
あ、ごめんなさい今日はもう……え、チアキについて、ですか?
ちょっと待っててください
はい。それでチアキが何か……あ、違うんですね
何かトラブルを起こしたわけじゃないなら安心しました
あはは、そうですね
よくトラブルを起こす
それでチアキがどんな子なのか、ですよね
他人のことをよく見ている生徒……って印象でしょうか
本人も言っていましたけど、色んなことに興味があるみたいで
イズミと一緒に美食研究会へ誘われた時にそんなことを言っていました
ああ、そういえばあの時……
え?いや、別に変な話じゃないですよ?
突然チアキが先輩たちに向かって「お二人って付き合ってるんですか?」って言うものだから
はい、ビックリしちゃいますよね
だって本当に唐突だったから……
でも、それが正解で……その時に、チアキはよく人のことを見ているんだなーって思ったんです
色んな人と直ぐ仲良くなるし……学校に来ている同じクラスの生徒とはもう全員連絡先を交換してるんじゃないですか?
万魔殿に入ったって聞いた時、凄く納得しました
いつのまにか集団の中心にいて、他の人にも目を配ってて……生徒会にぴったりな生徒だと思いますよ
そして、万魔殿もチアキにぴったりなところだと思います
他の友達について……?
イズミは確か入学前からの付き合いって言ってましたよ
==
こんにちは~これ、食べたいの?
あ、お腹いっぱいなんだ。そっかー、せっかく美味しいのに……
うん?チアキなら友達だよ?
分かった。代わりにチアキのことを話せばいいんだね!
えっと、チアキと出会ったのはすごく混んでる喫茶店だったかなー
混んでるから相席に~って
うん!すごく良い人だと思うよ!
あと、友達作りが上手いよね
他に?
そうそう、料理の勉強にも付き合ってくれたんだよ!
「イズミちゃんは、1から100を作り出すのが上手ですよね」
「それなら、0から100を作り出せるようになったらもっとすごいと思いませんか!?」
って言ってきたから私も楽しそうだなーって思って
料理のアレンジが好きなんだけど、チアキちゃんは「基礎」が分かっていたら相性のいいアレンジも思いつきやすくなるんじゃないかって
だから一緒にお菓子作りしてみたり、入学してからはフウカと一緒に練習したり……
おかげで今は美食研究会の料理人!色んな料理が作り放題!アレンジし放題!
先輩も応援してくれてるし!
学校違うのに仲良くしてくれて……うん!本当に良い友達だと思ってる!
私の料理も美味しく食べてくれるし!
あ、先輩たちなら今頃……
「どうだった?」
京極サツキは、後ろから羽沼マコトに声を掛けられた。
この2人は、少々気になることがあり二手に分かれて「チアキの友達」に色々と訊ねて回っていたのだ。
「……収穫は特になし。チアキちゃんにはお友達がたくさんいるってことしか分からなかったわ」
「こちらもだ」
小さく溜息をつく。
入学したばかりだというのに、既にチアキの友達を自認している生徒の数は凄まじく、調査は想定よりも大変なことになってしまった。これはこれでいい報告ではあるのだが、今求めている情報ではない。
「やはり考え過ぎなんじゃないか?」
「でも──」
「──チアキちゃんは、どう考えても
「…………」
沈黙。
その中で、京極サツキは先日の放送室での一件を思い返していた。
最初は、万魔殿の一員として学園の設備を活用したいというチアキの提案。そして、放送室を使用したいというお願い。
何もおかしいことではない。
ゲヘナ学園の放送室は、色々あって放置されているだけなので、別にチアキがそこをどう使おうと構わない。マコトも同じ意見であった。むしろ活用してくれるのならありがたいばかりである。
そして放置されているから掃除が必要だ、という意見。
これもおかしくはない。
ただ──
『そうか、では風紀委員に掃除を──』
『あー!待ってください!せっかくなので私たちで掃除をですねー……』
いつものようにマコトが風紀委員に仕事を押し付けようとしていた時、チアキは妙に焦った様子でそれを止めてきたのだ。
まぁ、その時はサツキも不審に思わなかったし、イブキが「みんなでお掃除楽しそう」と言ったのでそのまま4人で放送室の掃除へ向かうことにした。
そして、マコトが放送室に入るなり襲い掛かってきた耳鳴りと頭痛。珍しく辛そうにしていたので、流石にサツキも心配になり保健室に行くよう言うと、マコトはそのままイブキに付き添われながら保健室へ。
マコトのことは心配だが、京極サツキはマコトがアレぐらいでくたばるような生徒ではないことを知っている。むしろ、自分の心配をされて掃除を中止された方が嫌だろう。
そういうこともあり、人数が半分になってしまったが掃除には問題ないと、サツキはチアキと二人で掃除を開始することにした。
サツキがチアキのことを不審に思い始めたのは、そこから。
『先輩!これなんですか?』
『それはスピーカーよ。屋外用かしら』
『先輩!こっちは……』
『これは……』
何かを見つける度に、これが何か自分へ聞いてくるのだ。見れば分かるようなものまで、何もかも。
最初は捨てて良いのか聞いているのかと思っていたが、そうでもない。
『あ、いえ、そういうわけではなく……』
『もしかして、何か探しているの?』
『え、ああ、はい。
サツキの心に何か引っかかるものを残しながら、そのまま放送室の掃除は終わった。
『え、あの、サツキ先輩……?何かおかしいものとかは……?』
『……なかったわよ?』
だが、チアキは『探し物』を見つけられなかったらしい。
『そ、そんなはずはありません!だってここにあるって……』
『ええと、それはどういうもので、誰から聞いたのかしら?』
『あ、あの、えっと……私の友達から……その』
その時、初めてチアキが狼狽えている姿を見た。
『あ!確かに!』
すると、突然何かに納得したかと思えば、機材の配電盤などを調べ始めるチアキ。
「──そして、そこにNKウルトラ計画があった」
やはり、考え直してもチアキの行動が不自然である。
故に京極サツキは……端的に言えば、元宮チアキのことを疑っていた。
「マコトちゃんは、本当にチアキちゃんが『偶然』発見したと思うの?」
「……確かに、言動や行動は不自然かもしれん」
マコトは、天井を見ながら考えこむ。
「だが、『敵』だと決めつけるのは早計ではないか?」
「それは……」
「ウルトラ計画を利用するつもりなら、わざわざ『こちら側』のサツキを判定に使わんだろう」
マコトの意見も、納得はできる。しかし、もしそうだったとしても、チアキにウルトラ計画のことを教えた何者かはそうではないかもしれない。
「それに……」
「それに?」
マコトは、少しだけ悲しそうな顔をした。
「入学式、あんなに目をキラキラさせながらこのマコト様の話を聞いている生徒は、チアキしか居なかった」
「それは……そうだったけど……」
演説を終えた後、マコトが嬉しそうに『熱心に話を聞いている生徒がいた』『ぜひスカウトに行こう』と喜んでいたのを、サツキはよく覚えている。
「少なくともチアキは『敵』ではない」
マコトは、断言した。
「そうよね。チアキちゃん、隠し事とかできなさそうだし」
「キキッ!そうだ!アレで我々を欺いているのなら、将来は大物俳優だぞ」
「あら、どちらかと言えば撮る方が向いていそうじゃない?」
そうかもな、とマコトが言ったところで、目的地が近づいてきていた。
「とはいえ、万魔殿議長としてはチアキの『情報源』は明らかにしなければならない」
和んだ表情が、一瞬で真剣なものになる。
この先の教室に、情報源の『最有力候補』がいるのだ。
「あ……」
京極サツキは、教室の中の光景を見て固まってしまった。目の前の情報を脳が処理できなかったのだ。
「どうしたサツ……あー……」
マコトが、不審な顔をしながら教室を覗き込む。そして、手で目を覆い天を仰いだ。
教室の中は、
二人は抱き合い、そして『口づけ』をしている。それも、かなり
サツキには、耐えられなかったのだろう。前々からあの2人がそういう関係なのは知っていたが、ここ数日で距離がグッと縮まったような気がする。
まぁ、これを邪魔するのは良くないだろう。そう考えたマコトは、サツキの腕を引いて教室から離れようとした。
「邪魔しといてそれは無くないですか~?」
「用があるならどうぞ?」
教室の中から、声を掛けられる。マコトは正気に戻ったサツキと共に、妙に甘い香りのする教室へと入っていった。
「さて、万魔殿のお二方が揃って何の用でしょう?」
マコトは、適当に引っ張ってきた椅子に座り、黒舘夫妻と向き合った。
「ハルナに
アカリが牽制してくるも、頬が赤らんでいるので、あまり威圧感がない。
「まぁまぁアカリさん、流石にそれではないでしょう?
「ああ、チアキさんが万魔殿に入ったのでしたね」
「ですから──」
ハルナは、そこで言葉を区切ると、アカリに口を付けた。
「──続きは私のお家で」
「はぁ~い」
アカリは、少々不服そうにしていたが、ひとまずそれでいいらしい。
「二人って……こんなに距離が近かったかしら……?」
サツキが、小声で疑問を漏らしているが今は気にしない。
「……単刀直入に聞く。チアキに放送室でNKウルトラ計画を探すよう頼んだのは、お前らか?」
「なるほど、NKウルトラ計画ですか……」
ハルナは、それを聞いて少し考え込んでいた。その横顔を、アカリが心配そうに見つめている。
「心当たりはありません」
「だろうな」
ハルナからの返答に、マコトは少しだけ安心した。
確かに黒舘夫妻はチアキの情報源として『最有力』ではあったが、それは他の生徒よりも多少は可能性が高い、というだけ。ここまでに話を聞いてきた生徒を1とするなら、黒舘夫妻は3ぐらいの可能性である。
「そもそも、私が去年の万魔殿において『お子様ランチの旗』でしかなかったのはよくご存じでしょう?マコト議長さん」
「……ああ」
黒舘ハルナは、元万魔殿だった。故に、最有力候補なのだ。
ゲヘナにおいてそれなりの影響力を持つ黒舘家の生まれであったために、資金やらなんやらのサポートの一環として万魔殿に『提供』されたのが黒舘ハルナである。
「確かにウルトラ計画なるものが進んでいたのは知っていましたが……知っていただけですし、知っている情報はあなた方にすべて渡しましたわ」
「その対価として、私とハルナの身の安全の保障と逃亡の手助けをしてもらいましたからね〜」
そして、ハルナは鰐渕アカリと『駆け落ち』した。二人の間に何があったのかここでは語らないが、ハルナとアカリが付き合っているのは、そういうことなのだ。
「それに、もし知っていたとしても、わざわざチアキさんを経由する必要はないでしょう?」
ハルナの言うことも、最もである。マコトとハルナは、わざわざチアキを通してウルトラ計画を探すなんてことをするような関係性ではない。
「……さて、これぐらいでよろしいでしょうか?そろそろアカリさんが我慢できなくなりそうなので」
確かに、アカリからは早く帰れというオーラを感じる。二人の愛の時間を邪魔された上に、一年前の掘り返されたくない話をされているのだ。あまり気分は良くないだろう。
聞きたいことは聞けたので、ここはさっさと退散するべきだ。
「すまなかったな、邪魔して」
「いえいえ。とりあえず今の万魔殿は、楽しそうで何よりです」
「結局……チアキちゃんの情報源は分からなかったわね」
サツキは、小さく溜息を吐く。
「こうなったら直接聞くしか……」
「まぁ、泳がせておけばいいだろう」
マコトは、ゲヘナ学園の校舎を眺めながら言った。
「本当に大丈夫かしら」
「心配するな。案外、我々に情報提供してくれているだけかもしれないぞ?それに……」
「それに?」
「あのチアキが友達、と言っているんだ。信じてやろうではないか」
「……そうね」
視界の片隅に、手を繋いでいる黒舘夫妻の姿が目に入る。ああいう生徒たちの自由のためにも、羽沼マコトはこの自由なゲヘナ学園を守っていかなければならないのだ。
だから、もし誰かがチアキを利用しようとしているのならば──
──その時は、容赦しない。