こんにちは、掟上現です。現在、マミさんと昼食をとっています。コンビニの菓子パンの僕と違ってしっかりとした弁当を持ってきているマミさん。今朝の戦闘で中身が崩れていました。すいません。
なんで僕が弁当を作らないかって?普段余り物を作らないように料理をしているせいで、お昼に回す分がないんですよね。忘れてしまうと言うことはいつ作ったかも分からなくなるので、作り置きには向いていない体質です。
「それにしても、完全記憶能力ねぇ、それは体質なんでしょう?」
「はい、一度見聞きした者は絶対に忘れない、その代わり、脳に多大な負荷をかけます。人間が保有できる記憶量は決まっていますし、老化とともに劣化していきますから。リセットするほうが安全なんです」
「完全記憶能力を無くしてほしいとは願わなかったのね」
「そうですね、その時の僕が何を願ったのかは正確にわかりませんが、そんな余裕がなかったんじゃないでしょうか。僕の契約先は、キュゥべえとは違うようなので」
「え?」
「戯言です、忘れてください」
危なかった。キュゥべえ以外との契約は安全な可能性があるという考え方は、キュゥべえ、もといインキュベータについての否定につながる。
否定するだけならいいが、話を聞いて、魔法少女という立場にかなりの信頼をおいているマミさんには、話さないほうがいいだろう。
好きな人には生き延びてほしい、でも、好きだからこそ知ってほしくないという気持ちもある。知らぬが仏だ。
「でも、忘れてしまうのはなんとかしたほうがいいんじゃないかしら?」
「忘却体質ならぬ能力を、変換すると?」
「ええ、貴方も不便でしょう、私としてはこれからも関わり続けたいからね」
「…っ!」
「どうかしたかしら?」
「いえ、何でもないです。それよりも、この街に新しい魔法少女が来ました」
「え?」
朝のHRで転校してきた魔法少女、深く見ることはなかったが、見てしまえば思い出せる。
「左手の中指に、指輪、ソウルジェムがありました。九割九分、魔法少女です」
「そう、ありがとう。協力したいわね」
「そうですね、明日がない僕からしたら、明日の僕に迷惑がかからないような関わり方をしたいです」
「……やっぱり不思議な言い回しね」
「そうでしょうか?寝れば記憶がリセットされる。昨日もなければ、明日もない、これほど適切な表現はないと思いますよ」
「そうね、ありがとう」
急に感謝された。何がだろう、今の会話は自分事だ。それがマミさんにとって感謝する事柄だったのだろうか?
「一人は寂しいもの、一緒に戦えるってだけでありがたい話だわ」
「そうですか、こちらこそ」
「そうと決まったなら、今日の放課後はキュゥべえに忘却体質をどうにか出来ないか聞きに行きましょう!毎日初めましては悲しいわ」
「……ありがとうございます」
お昼休みを終え、放課後、マミさんと帰っていると。キュゥべえからの念話を取ったマミさんが、走り出す。
「キュゥべえが襲われているわ!助けに行くわよ!」
「……了解です。存在証明《普通の魔法使い》」
《魔法を使う程度の能力》証明完了
「あの結界よ!入ってすぐに変身して!」
「無理ですね、変身する方法を忘れました」
「不便すぎない?!貴方の魔法!」
「そうでもないですよ、先にいきます。彗星〈ブレイジングスター〉」
脚に魔法陣を展開、そこから極太のレーザーを射手、その推進力で飛ぶわけですが、安定しませんね。砲身がないからでしょうかね。
視界の先では、ピンク色の髪少女と青髪の少女の二人、そう、同じクラスの二人が魔女の使い魔に襲われている。
「伏せてください!恋符〈マスタースパーク〉ふむ、やはりブレますね」
「道具を軸にしたほうが安定するわよ」
「でしょうね、ですが、道具がありません。まぁ他にもいくつか方法があるのでいいですが。存在証明《神隠しの主犯》」
《境界を操る程度の能力》証明完了
空中にスキマを開き、刀を二振り取り出す。
「存在証明《幽人の庭師》」
《剣術を操る程度の能力》証明完了
「幽鬼剣〈妖童餓鬼の断食〉」
横一文字の斬撃の剣閃から放射状の楔弾の一団が発射される。ふむ、もう少し強めにいかなと、守りながら戦えませんね。
「現くん、だよね?」
「ええ、初めまして。掟上現です。それよりも、下がってください、守りながら戦うことは、初めてですので。餓王剣〈餓鬼十王の報い〉」
同様に横一文字の斬撃を繰り出しながら弾幕を展開する。これならある程度は一掃できる。マミさんの銃撃も合わされば使い魔から守りながらは簡単にって、逃げる選択もできるのね、
蜘蛛の子を蹴散らすように、逃げていった魔女。魔女の結果がなくなって、刀をどこに仕舞おうか考える。もう一度、境界を操る程度の能力を証明して、スキマに返す事にする。
「魔女はまだ近くにいるはずよ」
「私の用があるのは...」
「飲み込みが悪いのね?見逃してあげるって言ってるの」
「…」
どうやら、穴だらけのキュゥべえは暁美ほむらがやったことらしい、気づかなかった。今回も睨んできているし、このまま放っておくのは少し不味いからね、去っていく暁美ほむらを追ってみる。
「どこ行くの?」
「少し話してきます、」
「なら、私の家は…」
「大丈夫です。探し物は得意ですので」
そうして、去っていった暁美ほむらを追いかける。
「……貴方、何者?」
「僕の名前は掟上現。昨日もなければ、明日もない。魔法少女を知る忘却記者。明日の僕のためにも、誤解は解いて置きたいんですよ」
「誤解?」
「ええ、このまま敵対されるのは、明日の僕にとって知り得ないことですからね。おっと失礼。戯言です。ともかくとして、敵対はしたくないということです」
「私の目的を邪魔しないというのならいいわよ」
「では、その目的は?」
「……」
話さない、ですか。厄介ですね。邪魔をするなというのに、邪魔をしない方法を教えてくれないとは、自分勝手が過ぎます。あまりこういう手段は好みませんが、仕方ないですね。
「わかりました。話したくないというのなら、話しません。ですが、僕が魔法を使えるということだけは、そのまま残しておくつもりはありません」
「何をする気?」
「なにって、忘れてもらうだけです。不在証明《忘却記者》、存在証明《完璧で瀟洒な従者》」
《謗滉ク顔樟》証明完了、《時間を操る程度の能力》証明完了
時を停めて、逃げる。
掟上現の特殊能力を見た事実の不在を証明したというのに、その場に掟上現がいれば矛盾が生じてしまう。だから、時を停めて逃げる。思ったよりもこの考えがすんなりと出てきた。慣れているのだろうか、自分を忘れさせることに。
そのまま、探し物を探し当てる程度の能力で、マミさんの家を探す。あった。インターホンを鳴らすとすぐに出てくれた。
「どうだった?」
「忘れてもらいました。あまり話したくないようなので、敵対理由そのものを忘れてもらいました」
「そんなこともできるの?」
「ええ、だからこそ、決めたことがあるんですよ」
「?何かしら?取り敢えず、上がってちょうだい。魔法少女についてはもう話したから、鹿目さんと、美樹さんに貴方のことも紹介したいんだけど……」
今は、18:00、少し遅い時間だ。だからこそ、やることは決まっている。これは、僕のエゴで、彼女達にとって不利益には鳴らない、プラスマイナスゼロにする、そんな方法だ。
「ごめんなさい」
「え?」
「ごめんなさい、見知らぬあなた」
「何て我が儘、理不尽、暴虐なんでしょう。それでも、それでも、それでも‥‥‥」
「な、何を言ってるの?」
そのまま、鹿目さんと、美樹さんのいる部屋へと足を運ぶ。戸惑うマミさんを含めて、向き合う。
「ああ、どうかお見逃しください。これは僕の、溺れるよ うな初恋だったのだから」
「え?それって……」
「それでは皆様、さようなら」
鹿目さんと美樹さんにそう言って。マミさんの目を見て、別れを告げる。
「それではあなた……、永遠にさようなら」
「――――――どうか、良い人生を!」
《謗滉ク顔樟》証明完了、《時間を操る程度の能力》証明完了
時を停めて、マミさんの家をでる。ある程度離れたら、ビルの屋上て時停めを解除する。
「よかったのかい?」
「インキュベータ、そう言えばキミは、複数の身体で同じ思考を持てるんだったね。僕の別れの言葉を知っているわけだ。それで、よかったのかって?そんなわけないじゃないか」
「だったらなんで」
「それこそ愚問だね、過去の僕に同じようなことがあったのなら、同じことを言うはずだ」
「一日だけの恋に、叶わない恋に、今しかない僕に、明日も生きられる彼女達を巻き込みたくはないんだよ。それに、僕は君と契約していない。その歪が彼女達に不利益になる可能性もある、好きであったことすら忘れてしまいけれど、明日以降の彼女達の幸せを願ってもいいと思うんだよ」
僕はノートを開く、そこには巴マミと書かれ、彼女のプロフィールが書かれていた。昼休みに、記者なら書いてみてと言われていたものだ。そのページを破り取る。
「存在証明《蓬莱の人の形》」
《老いることも死ぬこともない程度の能力》証明完了
そして、マミさんのプロフィールを燃やす。
「不死の焔は想いを乗せて、月まで煙る。竹取物語の最後のシーンだ。叶わない恋は、諦らめろってわけじゃないけれど、この想いは届いてほしいよね」
「自分で切り離したのにかい?」
「不躾なんだね、君は、それじゃあ、今後も僕の言葉魔法少女に伝えないでね、インキュベータ」
今日という、一日が終わる。
巴マミに恋した僕は終わりを告げる。
明日の僕は何に思いを馳せるのかな……