4人の勇者と3匹のルカリオ   作:ロクナナエイト

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注意! このお話はポケモンZAの二次創作です。本編とDLCのネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方はお戻りを。大丈夫な方はどうぞお楽しみ下さい。





4人の勇者と3匹のルカリオ-その1

「ダークライ・・」

「うん、きっとこの先にいるのはダークライだと思う。」

「・・・分かった。ありがとうコルニ。」

「ふふん!分からない事があったら何でも聞いてね!ダークライのいるところまでもうちょっとありそうだし。」

 

 コルニの言う通り、見たところこの森はまだまだ奥が深そうだ。道すがらダークライと戦う事を想定してイメージトレーニングしておこうと俺は思っていた。

 

「そうだね、話しながら行こう。ね、キョウヤ?」

「ん?・・ああ、そうしようか。」

(話ながら・・イメージトレーニングは出来そうにないな。)

 

 俺達は・・おそらくダークライの心象風景が創ったであろう深い森を、互いの歩調を合わせながらゆっくり歩いていった。全員が不意の強襲に備えて神経を張り巡らせ、常に緊張状態を保っていた。とても楽しく会話が出来る雰囲気ではない。そんな中、張り詰めた空気を壊さない絶妙な声色でコルニが話し始める。

 

「こんな時に何だけどさ、二人から見てAZさんってどんな人だったの?」

(・・本当にこんな時にって話題だな。)

 

 でも悪くない話題だとも思った。この場合、下らない話をすればせっかくの緊張感が解けてしまう。なら多少暗い話の方がかえって適している。でも・・・とりあえず俺は、タウニーの返答を待つ事にした。

 

「・・・・・」

「えっと、私は・・・少なくとも私にとっては良い人だったよ。半年以上一緒にいたから、色々とホテルの事とかポケモンの事とか教えてもらったし。それに・・暴走メガ進化したピジョット相手に犠牲覚悟で戦ってたし、やっぱり良い人かな!私の中では!」

「そういえば、それがタウニーとAZさんの出会いだったんだっけ?」

「そう、メガピジョット相手にメガルカリオで挑んで・・でも負けそうになってたところを私が助けたんだし!」

「うんうん、それでMZ団のリーダーとして活動し始めたんだ。」

「うん、ほんと偶然だったけどね。死んだお母さんのルーツを知る為に街へ来てすぐの頃だったから、まさしく運命って感じ。」

「そっかぁ・・・キョウヤは?」

「・・・・・愚かだと思う。」

「え?」

「愚かだと思う。AZさんの行動を見るに。」

 

 二人揃って足が止まる。それに合わせて俺も止まる。

 止まって気づいたがこの森はあまり風が吹かない。それどころか虫ポケモン達の音も一切無い。だからこの沈黙がとても痛く苦しい・・それでも俺は言いたかった。タウニーの為に言いたかった。

 そんな俺の心を知らず、彼女は怒気を含ませながら俺に尋ねた。

 

「ねぇキョウヤ、それってどういう意味かな?」

「言葉通りの意味だよ。AZさんは愚か、いや・・最低な大人だよ!」

 

 大声で怒鳴って啖呵を切る。俺が今まで思っていた不満を全て吐き出す。ミアレでは耳が多すぎて言えない。誰も聞いていない今だからこそ言える。それに・・・

 

(この後の戦いで生きている保証なんてどこにも無いんだ。相手はあのダークライ、場所は彼のもっとも得意な住処を形造った異次元。今度ばかりは死ぬかもしれない。だから・・・)

「・・ごめん、あたしはAZさんの最後に立ち会えなかったから。あたしにも分かるように教えて欲しいな。」

 

 コルニが仕切り直しを促しながら歩き始める。彼女の為にも、タウニーの為にも、俺は一から順を追って話す事にした。もちろん歩きながら。

 

「最初に変だと思ったのはマスカットさんの話を聞いた時。あの時マスカットさんは言った・・2年前にAZさんが現れたって。」

「2年前?そんな前からAZさんはミアレの異変に気付いてたんだ!」

「そこがおかしいんだって!2年前にクエーサー社が調査して、ポケモンがメガ進化するエネルギーが街中に溢れている事を知ったAZさんなら、その原因がタワーにあるってあの時点で気づいたはず!実際俺らにタワーが原因だって教えたのもAZさんだったし。」

「それの何がおかしいのか私には分からないんだけど?」

 

 露骨に怒っている事をアピールするかの如くぶっきらぼうな返事をしたタウニー。少し怯んだ俺は結論を急ぐ事にした。

 

「2年前にタワーが原因だって分かったんなら、AZさんが直接フラエッテをメガ進化させてタワーに乗り込めば良かったって言ってるんだよ!」

「え?・・・あっ!?」

「・・・・そうか、そういう事。」

 

 違和感に気づいたタウニー。コルニは考えを整理する為に推測を語り始める。

 

「2年前にタワーが原因だと突き止めたAZさん。その時点でタワーはまだ暴走するほどエネルギーを貯めていない。この時にタワーに乗り込んでフラエッテをメガ進化させれば難なくタワーをコントロールしてエネルギーを大地に還元出来た・・・そう言いたいんだね?」

「ちょっと待ってよ!もしそれが最善だとしてもAZさんは3000歳のおじいちゃんなんだよ!私達ならともかくおじいちゃんの身体じゃフラエッテのメガ進化に耐えられ・・」

「いや、約半年前に暴走メガ進化したピジョットに一人で対応しようとしたんだ。暴走メガ進化にはメガ進化か技プラスで対応するしかない。技プラスで対応してもいいけどそれだと長期戦になるのは確実・・・だからフラエッテかルカリオをメガ進化させるつもりで短期戦を挑んだんじゃないかと俺は思うよ。結果は思ったより体力が落ちていて、そもそも勝負にならなかったようだけど。」

「いや違うし!AZさんは最初からメガ進化に耐えられなかったんだよ!だから最強のメガ進化使いを探して・・」

「それもおかしいんだよ。コルニ、ポケモンがメガ進化するのに必要なのって何?」

「え?えっと・・キーストーンとメガストーン、そしてポケモンとの深い絆かな。」

「そう、別にメガ進化を極める必要なんてないんだよ。仮にフラエッテを完全に従わせられるくらいの実力が欲しいんだとしても、ミアレにはユカリを始めとしてカラスバ、カナリィ、ハルジオ、グリにグリーズが最初からいた。2年前の彼らがどの程度強かったのかは分からないけど、少なくともユカリの強さは保証されていたはず、なんたってチャンピオンカルネの弟子なんだから。」

「っ!?それは・・」

「あ~ユカリさん!あの人は強いよ~、実はミアレに来る前にカルネさん主催のパーティに招待された時に戦ってさ~、もうフェアリータイプの扱いが上手いのなんのって!そういえばフラエッテもフェアリータイプだよね?確かに相性は良さそうかも!」

 

 そう、ミアレにはユカリがいる。ポケモンバトルの腕はもちろんの事、金銭面でも社会的立場でもトップクラスの存在。フラエッテを任せても悪いようにはしない・・・う~ん・・しない、と思われる。

 

「普段から名のあるトレーナーをミアレに招待してバトルに励んでいた彼女ならフラエッテだって難なくメガ進化させられた・・・まぁ、師匠の愛娘のアイシャを任されたのにサボり癖のあるハルジオに押し付け、案の定脱走されてもハルジオを使うだけで自分は動かない彼女の独特な価値観というか、危機感や責任感が歪なところはかなりの不安要素ではあるけど・・」

「あ~それはあるね!カルネさんも言ってたけどユカリさんってかなりマイペースなところがあって、そこがバトルにも悪い影響を与えてるって。」

「・・・思えば最初から彼女は失礼だった。俺達がカフェで休んでいたのにメイドのハルジオを使わせて、主人が呼んでるから今すぐ来いって迫ってきたし・・初対面の相手にこれって普通に誘拐犯の手口だし。誰がほいほいついて行くんだよ。それに呼ばれた理由も個人的なポケモン大会に付き合えって・・そういうのは普通数ヶ月前に招待状を郵便で送付するもんだろ。当日に呼んだって誰も来る訳ないじゃん。学校で例えるならお昼休みの最中にいきなり先生がやって来て『今から小テストするからお前等席に着け』って言われるようなもんだよ、気分最悪だわ。極めつけはユカリゾーン、他人を個人的な理由で個人所有の敷地に軟禁して要望を通すまで出さない、これ完全にヤクザじゃん。あっ!?だからカラスバと仲悪いんだ!お互いが同じようなやり口してるのが許せないんだ!同族嫌悪か!?そうかそうだったのか・・・俺達はヤクザの抗争に巻き込まれ両組の鉄砲玉にされた使い捨ての駒に過ぎない?」

「ちょっとキョウヤ!?何ぶつぶつ言ってるの!?」

「えっ!?あっ!?ごめん。」

 

 完全に一人の世界に閉じこもってしまっていた。周りをよく見れば最初に入った森の入り口はもう見えなくなり、辺りには木しかない。

 

(・・・思ったより深いな、この森はどこまで続いているんだろう?)

「・・キョウヤの言う通りだったよ。確かに最初からユカリさんに頼んでいれば街は壊れずに済んだかもしれない。」

「えっ!?ああうん、そうだね。でも別にタウニーを責めてる訳じゃないから。俺が言いたいのは、タウニーがタワーに突入した時には何もかも手遅れだった。その原因はAZさんの判断ミス。ついでに言うとクエーサー社の怠慢でもある。」

 

 クエーサー社がタワーの解決案をAZさん一人に考えさせて、自分達はバックアップに徹したのは明らかに責任逃れの為の保険だった。

 

「なるほど・・つまり、キョウヤの主張は『AZさんの作戦にはミスがあった。そのミスをフォローするはずのクエーサー社も何もしなかった。みんなもっと最善を尽くせたはずなのにしなかった。だからAZさんもクエーサー社も嫌い。』って事?」

 

 俺の主張をこの上なく分かりやすく纏めてくれたコルニ。俺はそのまとめに追記する。

 

「ついでに、タウニーがフラエッテをメガ進化させたあとにAZさんとフラエッテが一緒にタワーに行けば良かったも追加で。」

「私がフラエッテをメガ進化させたあと・・?」

「タウニーがタワーに突入した時。あの時フラエッテをメガ進化させて、そのフラエッテに捕まって空を飛んでタワーに侵入したじゃん。あの時一緒にAZさんもフラエッテに捕まってタワーに入れば良かったって事。つうかタワーを造ったのはAZさんなんだから、AZさんが装置を起動してタワーをコントロールするのが道理だろ。何で機械の素人に任せるんだよ。そういうところも無責任なんだよなあの人は。」

「あはは・・そっか、キョウヤにはそう見えたんだ。」

「ああ、きっと君やタウニーには優しいおじいさんに見えたんだろうけど、俺の目には情けなく映ってたよ。」

 

 この言葉を最後に再び俺達3人の間に緊張した空気が張り詰める。改めて前方を確認すれば、森の奥の奥にわずかだが月明りが差し込んでいる広い空間を確認した。

 おそらく、ダークライはあそこにいる。

 

(もうすぐだな・・手持ちのポケモンを改めて確認しておこう。)

 

 俺の手持ちには、AZさんのルカリオ、フラエッテ、オーダイル、ヘラクロスのボワ、ソウブレイズ・・最後にリオルの頃から俺が育てた相棒ルカリオがいた。

 

(俺がミアレに来てから出会った人達、彼らとの思い出のポケモン達だ。中でも今回頼りになりそうなのは悪タイプに有利をとれるフェアリータイプのフラエッテ!そして虫・格闘タイプのボワ!というかボワだけで倒せる気がするな。悪タイプに強い虫タイプと格闘タイプの複合だからダークライからのダメージはほぼ入らないし、逆にこっちは近接技のインファイトとメガホーンに遠距離技のミサイルばりときあいだまと遠近隙が無い技構成!危なくなったらアイテム使って回復させれば余裕だろうし今回も難なく・・いや、油断は禁物だな。相手が暴走している以上殺される可能性は常にある、最後まで慢心せず行こう。)

 

 手持ちを確認し終えた俺が前を見たタイミングでちょうど森を抜け視界が開けた。

 目の前に広がっていたのは、まぁまぁ大きな窪地だった。美しい満月が照らすここはちょうどバトルコート4つ~6つ分くらいの開けた大地。地面は綺麗に雑草が生い茂っていた・・が、普通ならいるはずの小さな虫達が一匹もいないのが、ここが異空間で決して安心してはいけない事を俺に知らせてくれた。

 いつでもダークライが出て来ていいようにボワの入ったボールに手を掛ける・・その時!

 

「・・みんな構えて!!」

 

 コルニの警告でボールを構える。・・・次の瞬間!森の中から影が上空に飛翔した!

 影はそのまま上昇し続け・・止まった。ちょうど満月を背にして佇む美しいその姿に、思わず息を飲む。

 

「あれが!?ダ、ダークライ!!」

 

 なんと神秘的な存在か。漆黒の身体に銀色の流線状な頭部。その中から相手をしっかり見据える大きな瞳・・俺はその完成された身体に感動して一瞬動きを止めてしまい・・・その隙をついて彼は急降下しながら体当たりしてきた!!

 

「っ!?うおっ!アブね!!!」

 

 かろうじて避けるが、躱す瞬間に確かに聞こえた・・『タチサレ、タチサレ・・』彼の警告を。

 

(そうだ、俺は彼を助ける為に来たんだ。でもその為には・・)

「ダークライ!絶対にお前を救って見せる!その為にも、今から俺達はお前を弱らせる!だからお前も全力で来い!溜まったエネルギーを全部吐き出せ!」

『ッ!?・・・ワカッタ・・』

 

 それを最後にダークライの瞳から光が消える。かわりに全身から蛍光色の光が溢れ出す。

 コルニがバトル前の最後の確認をする。

 

「みんな!準備OK!?」

「当然だし!ダークライを助けてこの事件を終わらせよう!」

「ああ!みんなで帰るんだ!!行くぞ!!」

 

 俺が言い終わると同時にダークライが大きく咆哮をあげる。さぁ、最後のバトルだ。

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