俺が言い終わると同時にダークライが大きく咆哮をあげる。さぁ、最後のバトルだ。
・・・それから約5分、俺達は手持ちのポケモンを使ってダークライに攻撃を加え続けた。
「ボワ!インファイト!」
ボワの連撃がクリーンヒット、しかしダークライは全く怯まずに黒弾を発射。ギリギリで避けるも黒弾はダークホールなる暗黒空間を瞬時に展開し、触れてしまったボアを眠らせてしまう。
(しまった!ここは一旦オーダイルに交代して・・)
オーダイルに交代して戦ってもらう。その間にボワを回復させようと考えてオーダイルを出した・・その瞬間、上空からみらいよちによる光弾が飛来した。
「行け!オーダァッ!?しまった!ダークホールはみらいよちを確実に当てる為のものだったのか!?」
ボールから出てすぐのオーダイルは当然上空から降って来る攻撃を避けれず被弾。二足歩行生物の急所である背中や頭部にこれでもかと攻撃をくらったオーダイルはそのまま前に倒れて瀕死に陥ってしまった。
ダークライはほとんど怯まない事を最大限に利用して、時間差で相手を確実に葬る手順を息を吐くようにやって見せた。瀕死のオーダイルを見下ろすその姿はまさに魔王・・でも、俺だって何もしなかった訳じゃない。
(すまないオーダイル、でもおかげでボワの体力は満タン!目も覚ましたぜ!)
「もう一度だ!ボワ!」
再び舞い戻ったボワは目にも止まらぬ速さでインファイトを仕掛ける。それに続いて二人もルカリオとエンブオーで追い打ちを掛ける。
「ルカリオ!はどうだん!」
「エンブオー!インファイト!」
二人の連携が見事に決まり、ついにダークライの動きが止まった。やった、勝った・・と喜んだのもつかの間、
「・・っ!メガエネルギーが溢れ出していってるし!今までの比じゃないくらい!」
「ここからが本番っぽいね・・タウニー、キョウヤ!まだイケる?」
「当然だし!キョウヤは?」
「ああ大丈夫。(でも、相手はあのダークライ・・どんなメガ進化を果たすのか・・)」
戦ってよく分かった。ダークライはただ珍しいだけのポケモンじゃない。自分の持っている技を的確に使って相手を追い詰める事が出来る・・トレーナーがポケモンになったような存在だ。そんな頭の良いポケモンがメガ進化してさらに強くなる・・
(残り滞在時間もあと半分しかない。なのに相手はパワーアップ・・不安だ、せめてあと一人俺達くらい強いトレーナーがいれば・・)
「来るよ!二人共!」
コルニの掛け声でハッとする。見ればダークライの周りを大量のメガ進化エネルギーが囲い・・・そして雄たけびを響かせながらダークライは真の姿を露わにさせた。
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!!」
「お、大きすぎだし!」
「でもやるしかないよ!」
「ああ、行こう!みんな!」
(だが焦って突っ込んではいけない。一先ずメガ進化したダークライの動きを一通り見て突破口を・・・)
しかし次の瞬間、頭上から流星群を思わせる量の光弾が出現した!
「んなっ!あれはみらいよち攻撃!」
「まさか、変身中ずっとみらいよちし続けてたって事!?信じられないし!」
光弾が雨のように降り注ぐが、俺達全員ポケモンの力を借りてなんとか避け続ける。ボワが常にミサイルばりを打ち続けて光弾を少しでも減らし、俺が数秒だけの安全地帯に滑り込みながら逃げ回る。他二人も似たようなやり方で弾幕の雨を搔い潜る。これならなんとか・・そう思った矢先、俺の目の前に黒い弾が落下した。
(光弾じゃなく黒弾!?しまった!この弾幕に黒弾を紛れ込ませて・・)
落下した瞬間あっという間に広がる暗黒空間。俺は寸でのところでなんとか避けられた。しかし・・
「っ!しまった!ボワがっ!?」
黒弾はボワの周りにも落下していた。ミサイルばりを打つ事に集中していたボワは避けられずに被弾、眠ってしまった。残された俺の元に降り注ぐ避けようのない飽和弾幕。白と黒のコントラストが実に美しい・・・
(・・・ああ、終わったな。)
咄嗟に避けたせいで体勢は崩れ、そんな状態でどこへ避けようが直撃は確実。ポケモンを入れ替えようにも時間が足りない。それらの判断を俺の脳は瞬時に計算し、死ぬ前に走馬灯を見る時間をも創ってくれた。このまま目を閉じれば俺は夢見心地で死ねる・・
(・・いや、死ぬならせめて手持ちのポケモン達だけでも!)
ボールからポケモンが出る前に弾幕は直撃する。死は避けられない。でも死ぬ前にボールをカバンごとタウニーかコルニの方へ投げる事は出来る!
「っ!・・・タウニー!!あとを頼っ!?」
タウニーに全てを託すつもりでカバンを放り投げようとして、俺は止まった。
俺から5、6メートル右横に離れていたタウニーが・・いつの間にか俺の目の前までやって来て・・・そして、
「キョウヤ!あとを頼んだよ!」
そう言って俺を思いっきり突き飛ばした。飛ばされた俺はタウニーから遠ざかり、彼女に黒弾が直撃するのが見えた。続いて周りに光弾が落ちては爆発。無抵抗の彼女は爆発の衝撃で森の方へ飛んでいき・・ボスッという音と共に、俺が地面にぶつかった。
彼女がどうなったのか、最後は見えなかったがおそらく戦闘不能なのは間違いない。起きてすぐに彼女の方へ行きたかったが、それは彼女の命懸けの行動を無に帰す行為だ。
(ここは一旦ダークライから距離をとって整える!たとえ仲間が全員倒れても俺は最後まで戦い続ける!死ぬ時はタウニーと一緒だ!)
勝ち目はほぼ無いに等しい。それでも俺は諦めなたくなかった。ミアレのみんなが俺達の仇を取ってくれる事を願って、ダークライに少しでも深いダメージを残す。そう切り替えて、俺はソウブレイズを繰り出す。
「いけっ!ソウブレイズ!コルニを援護しろ!そして・・出てこい、フラエッテ!」
俺はフラエッテを繰り出し言った。
「フラエッテ、お前はタウニーを見つけて逃げてくれ。」
「っ!?」
「このまま戦ってもダークライには勝てない。たぶん俺もコルニもこのまま殺される。でもタウニーだけは、例え死体だけでもミアレのみんなの元へっ!?危ないっ!」
フラエッテを守るように前転してみらいよちの攻撃を避ける。ダークライは今コルニの繰り出す3体のポケモン達とソウブレイズを倒す事に集中して、俺達が話している事に気づいていない。さっきのみらいよちもただの流れ弾だ。
「頼むぞフラエッテ!必ず彼女をミアレに送り届けてくれ!」
「・・・・(コクン)」
フラエッテは悲しそうに頷いて森の方へ行った。そのままタウニーを見つけて帰還する事を信じ、俺はダークライの方へ向き直る。
その時、丁度ソウブレイズがコルニを庇ってみらいよち攻撃をくらい戦闘不能に。庇われたコルニは瀕死だったルカリオを回復して再びダークライの前に繰り出した。
「ごめんキョウヤ!もうルカリオしかいない!」
「いや、こちらこそ!3人分の仕事を一人でやってもらって申し訳ない!ここからは俺がメインでいく!いけっ!ルカリオっ!」
「グルアアアァァァッ!!」
(AZさんの残してくれたルカリオとコルニのルカリオ・・この2体のコンビでどこまでやれるか。)
「キョウヤ!みらいよち攻撃が!また来る!!」
俺達がルカリオを出している間に、ダークライは未来予知の準備を整えていたようだ。再び光弾が流星群のように降り注ぐ。
「くっ・・ルカリオッ!「はどうだんっ!」・・・えっ?」
「グルァァァ!!」
ルカリオのはどうだんが降り注ぐみらうよちの光弾を打ち消しながらダークライの顔面にヒット。さすがに顔は痛かったのか、わずかに怯んだダークライ。でも俺はそんな事より・・
(今、俺と同じ指示をルカリオに出した人がいた・・?)
さっきルカリオにはどうだんの指示を出した時、自分の声と誰かの声がダブって聞こえた。あれはいったい?
混乱する俺にさらなるヒントを出すかのように、彼の声が響いた。怯んだダークライにすかさず彼は攻撃を畳みかける。
「フラエッテ!はめつのひかり!」
声に続いて森の方から紫の光線が発射されダークライに直撃。不意打ちで頭部、しかも先程のはどうだんとは桁違いの威力にさすがの暴走ダークライも大きく怯み、そのままズシンッ!と地面に突っ伏しダウンしてしまった。
ダークライを地に伏せる偉業、俺達の命の危機に馳せ参じた誰か。その人の顔を見る為に俺は森の方へ顔を向けた。するとそこには・・・
「ア、アンタは!?」
つぎはぎの服に真っ白な頭髪、人の背丈ほどの杖に3mはあると思われる身長。まぎれもない・・・彼は、
「え・・AZさん?」
「・・・まさかこのような形で再び会えるとは思わなかったぞ。」
高台から見下ろしながら、彼は優しく微笑み言った。
「アンタは・・そうか。ここは暴走したダークライの創った夢の空間、不安定な今なら夢を見れば誰でも入ってこられる。幽霊が夢を見て入り込んだって事か。」
「おそらくそうだろうな。そして私が助力出来るのもここまでだ。」
その意味を問いただす前に気づく。彼の身体が光を放ちながら、脚から徐々に消えていっていた。
「待ってくれ!タウニーがまだ・・」
「彼女なら大丈夫だ。確認したが、吹き飛ばされた割には傷が浅かった。おそらくここの主であるダークライの影響だろう。致命傷に至る傷も、ここでは軽傷で済む。」
もう身体の半分が消えかかっていた。そんな彼は最後にフラエッテを見て・・
「・・すまない。あとを頼む。」
そう言って光になって消える・・と思われたその時、フラエッテが発光し始めた!
突然の発光現象にその場の全員が驚き固まった。そしてその隙を付くかのようにフラエッテはAZの身体に体当たりした!
「ぬおっ!?」
驚き声を上げるAZ。しかし傍から見ていた二人はさらに驚いた。ぶつかると思われたフラエッテの身体は、なんとAZの中にそのまま入り込み、胸の辺りで虹色に輝き始めたのだ。その輝きはやがて彼の前身を覆いつくし、既に消えてしまった下半身を綺麗に再生して見せた。その現象を目の当りにした二人は何が何だかさっぱりだったが、AZはすぐにフラエッテの意思を汲み取った。
「・・・そうだなフラエッテ、このまま消滅して若者達にあとを任せるのはあまりにも無責任というもの。この事態を引き起こした原因の一端として、ダークライを鎮める為に助力しよう。ルカリオ!」
「グルアアアァァァ!!」
AZさんのルカリオが雄たけびを上げて応えた。久しぶりに主の顔を見れて嬉しそうなルカリオ、もちろんAZさんもどこか嬉しそうに微笑んで・・?
(ん?AZさんってリュック背負ってたっけ?それにニット帽も・・・あれ?もしかして服装変わってる?)
いつの間にかAZさんの服装が継ぎはぎの紳士服からボロボロの旅行者といった風貌に変わっていた。そんな俺の訝し気な視線に気づいたAZさんが教えてくれた。
「この服が気になるか?」
「ええまぁ。」
「この服は彼女と和解した時に着ていた服だ。あの少年達とポケモンバトルをして、大切な事に気づいたあの時・・彼女は戻ってきてくれた。」
「二人共!そろそろ構えて!ダークライが起きる!」
AZさんの話が長くなりそうだと思った矢先、ダークライは再び起き上がろうとエネルギーを纏い始めていた。
「この続きはあとで聞かせてもらいます。とりあえず今は・・・いけっ!ルカリオ!」
「グルルル・・」
俺の手持ちの最後の一体。俺がリオルの頃から育てていたルカリオを繰り出した。そしてAZさんに彼のルカリオのボールを急いで渡した。
「AZさん!アンタが遺したルカリオのボールです!アンタに返上します!」
「おおっとと・・わざわざすまない。うむ、やはり指示するポケモンのボールが手の中にあるのとないのとでは大きく違うな。」
「じゃあ、私からはこれを!」
今度はコルニが投げ渡す。渡したのは・・・キーストーンだ!
「ありがとうコルニ。ルカリオ!」
AZさんはキーストーンを心臓付近のフラエッテに近づけてエネルギーを解放!ルカリオをメガ進化させた。
「じゃあ私も!ルカリオ!」
今度はコルニがルカリオをメガ進化!コルニのルカリオは青を基調としたスピード特化のメガルカリオに!
「キョウヤ、君のルカリオは・・」
「俺のルカリオは技プラスで戦います。メガ進化は出来ませんが足手まといにはなりません。」
「そうか・・では、ゆこう。」
「ええ・・・勝ちましょう!」
ちょうどその時、ダークライが起き上がり浮上する。それを見た俺達はそれぞれ自分のポケモンに呼びかける。
「「「ルカリオ!!」」」
「「「グルアアアァァァ!!」」」
3人の勇者は3匹のルカリオと共に有り!いざ参らん!!