Dropping Out 〜What if Liko drop out to our world?   作:vic.

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第3話「エゼキエル」

【仮想世界・ブレイブアサギ号・甲板】

 

輝美の温もりの中で深い眠りに落ちたリコの意識は、現実の重力から解き放たれ、果てしない暗闇を漂っていた。

そして目を開けた時、彼女の視界に広がっていたのは――見慣れたブレイブアサギ号の甲板と、青く広がるあの大空だった。

 

リコ

「あれ……? 私……戻って、きた……?」

 

自分の手を見つめる。

しかし、安堵したのも束の間、頭頂部にはピクピクと動く緑色の猫耳が残ったままであり、腰の後ろからは短くフワフワとした尻尾がゆらゆらと揺れていた。

現実世界で変貌してしまった身体の異常は、この意識の世界にまで追尾してきていた。

 

ロイ

「リコーーっ! リコなんだろ!? 本当にリコなのか!?」

 

ドット

「リコ……っ! どこに行ってたんだよ! 探したんだぞ……っ!」

 

甲板の向こうから、涙で顔をくしゃくしゃにしたロイとドットが走り込んできた。

二人は一目散にリコへ飛びつき、その肩や腕をしっかりと抱きしめる。

触れ合える実感が、会話ができる歓びが、三人の胸を満たした。

 

リコ

「ロイ……! ドット……! ごめんなさい、私急に居なくなっちゃって……!

私、なんだかすごく変な場所に落とされて……そこでは私のこと、みんな『アニメ』だって……っ!」

 

ドット

「……アニメ? 何言ってるんだよ……。でも、その耳と尻尾は一体なんなんだ……!?」

 

ドットがリコの頭上の猫耳を指差し、困惑の表情を浮かべる。

しかし、再会の喜びと混乱が交錯するその時、リコの脳内に直接、不可逆な「制限時間」の概念が刷り込まれた。

 

リコ

「(あ……ダメだ。私、ここにずっとはいられない……。現実の私が目を覚ますまでの『9時間』しか、ここにいられないんだ……!)」

 

残された時間はわずか9時間。

焦りが募る中、ドットが異質な違和感に気づき、船室の壁へと視線を向けた。

 

ドット

「待って……なにこれ。こんな紙、さっきまで貼られてなかった……!」

 

ブレイブアサギ号の金属壁に、まるで空間の歪みから染み出したかのように、1枚の異質な紙と、古ぼけた英字新聞のような紙面が貼りついていた。

 

ロイ

「新聞……? 英語で何か書いてあるよ……!」

 

紙面の一角には、衝撃的な見出しと文章が印字されていた。

 

『Roy will be in Real World in 48 hours [Also he will gain crocalor tail and hair (not a ability)]』

 

ドット

「『ロイは48時間以内に現実世界へ落ちる……その際、アチゲータの尻尾と頭髪(特性ではない)を獲得する』……!? なんだよこれ……冗談じゃないぞ!?」

 

ロイ

「えっ……僕が……あと2日でリコと同じように消えちゃうってこと……!?」

 

恐怖に青ざめるロイを余所に、リコはもう1枚の紙へと目をやった。

そこには『こぼれ落ちる順番』という不吉なタイトルのもと、びっしりと名前と番号が刻まれていた。

 

1番目:エリック

25番目:サトシ

906番目:リコ

910番目:ロイ

914番目:ドット

 

リストには、フリードやマードック、オリバといったライジングボルテッカーズのメンバー全員の名だけでなく、過去に世界を巡った名だたるポケモントレーナーやポケモンマスターたちの名前が果てしなく列挙されていた。

 

ドット

「これ……全国ポケモン図鑑の番号だ!

906番はニャオハ……だからリコにはニャオハの耳と尻尾がついたんだ!

ロイの910番はホゲータ、ボクの914番はクワッス……! ポケモン図鑑のナンバーに対応した『姿』を強制的に付与されて、順番に現実世界へ追い出されていくんだ……っ!」

 

サトシの25番はピカチュウ。1番目のエリックはフシギダネ。

この世界の住人たちが、定められた法則に従って「ポケモンの特徴を持つ異形」へと書き換えられ、現実世界へと追放されていく絶対的な計画書だった。

 

リコ

「そんな……じゃあ、ロイもドットも……みんな現実世界に落とされちゃうの……!?」

 

ロイ

「嫌だ……! 僕はみんなと、ホゲータとずっと旅をしたいのに……っ!」

 

抗えない世界の崩壊と、迫り来るお別れのタイムリミット。

時計の針が刻む一秒一秒が、3人の絆を容赦なく引き裂こうとしていた。

 

リコは迫り来る自らの目覚め――「9時間後」の別れに向けて、震える手で二人の手を強く握りしめることしかできない。

 

【仮想世界・ブレイブアサギ号・甲板】

 

「おい……一体なんの騒ぎだ?」

 

背後から響く重厚な足音とともに、フリードが甲板へと姿を現した。

蒼白な顔で貼り紙を見つめるロイとドット、そして猫耳と尻尾を震わせるリコの異変に、彼の鋭い眼光が走る。

 

「リコ……! 無事だったのか! どこへ消えていた……いや、その姿は……」

 

フリードが歩み寄ろうとした瞬間、彼の視線が壁の貼り紙のすぐ脇、歪んだ空間の隙間からぽろりと落ちてきた「一枚の写真」に釘付けになった。

 

吸い寄せられるように、フリードはその写真を手に取る。

そこに写し出されていたのは、写実的でありながら狂気すら感じさせる異彩を放つ絵画の複写だった。

 

四つの顔――人間、ライオン、牛、ワシの面を持ち、四つの翼を生やした異形なる「生き物(ケルビム)」。

そして、その傍らで回転する、無数の目が刻まれた「車輪の中に車輪がある(オファニム)」という天上の光景。

旧約聖書の三大預言書の一つ、『エゼキエル書』第1章に鮮烈に描かれた、神の栄光と天の車輪のビジョンそのものであった。

 

フリード

「……エゼキエル書……。いや、それだけじゃない。この四つの生き物の描写と異象は……『ヨハネの黙示録』第4章における神の玉座の周りの光景とも完全に合致する……」

 

写真を見つめるフリードの手が、かすかに震えた。

天才飛行船乗りとして、そして学者として、彼は脳内で爆発的に知識の線を繋ぎ合わせていく。

 

フリード

「ヨハネの黙示録……世界の終末と、新たな天と地の到来を告げる書だ。

預言書において、これらの車輪や生き物は『次元を超越する神の乗り物』であり、『旧い世界の解体と再構築』の先触れとして現れる……。

もしこれが……俺たちの世界に起きている現象の『意味』を示しているのだとしたら……」

 

ドット

「ふ、フリード……? どういうことだよ……! この世界がどうなるって言うんだよ!?」

 

フリードはゆっくりと顔を上げた。その瞳には、世界の構造そのものが揺らぎ始めていることへの戦慄が宿っていた。

 

フリード

「……俺たちが生きているこの『ポケットモンスター』の世界そのものが、役割を終えようとしているのかもしれない。

ここは『仮想世界』……誰かの観測によって作られた世界だ。だが、その世界のプログラム……いや、『世界の理(ことわり)』そのものが最後の終末(黙示録)を迎え、すべての構成データ――つまり俺たち人間やポケモンという存在が、解体されて『現実』という次の次元へと『こぼれ落ちて』再配置されているんだ」

 

サトシ(25番)、リコ(906番)、ロイ(910番)、ドット(914番)。

番号順に並べられたポケモン図鑑のコードは、この世界を構成していた要素が分解され、現実世界の肉体へと翻訳されるための「遺伝子(データ)の刻印」に他ならなかった。

 

ロイ

「じゃあ……僕たちの世界は消えちゃうの!? ホゲータや、みんなはどうなっちゃうの!?」

 

フリード

「わからない……。だが、これはただの事故や異変じゃない。全世界規模で定められた、避けられない『世界の再編(黙示録)』だ……!」

 

圧倒的な真実の重みに、その場の空気が凍りつく。

リコは胸元を強く締め付けられるような痛みを覚えた。

 

現実世界で出会った天文学者・青空輝美。

彼女が書いていた本――『2つ目の地球は本当に存在するのか?』。

すべては繋がっていた。自分たちが「アニメ」「ゲーム」と呼ばれる仮想の地球(世界)から、もう一つの現実の地球へと、世界のシステムそのものによって「移行」させられているのだ。

 

(残された時間――あと8時間30分)

 

リコの意識の限界を示すカウントダウンが、脳内で刻一刻と刻まれていく。

目覚めの瞬間が来れば、彼女は再びあの冷たい現実世界の警察やメディアの渦の中へと引き戻される。

そして、48時間後にはロイが、やがてドットが、そしてライジングボルテッカーズの全員が、ポケモンの姿を強制的に混ぜ合わされた「異形」として、現実世界へと追放されていくのだ。

 

ロイ

「嫌だ……! 嫌だリコ! 僕、みんなと離れたくないよ……っ!」

 

ロイがリコの青いパーカーの袖を強く掴む。

ドットもまた、溢れ出る涙を拭おうともせず、リコの耳と尻尾をじっと見つめていた。

 

リコ

「ロイ……ドット……フリードさん……」

 

残された8時間30分という束の間の幻覚(夢)の中で、リコは自分の頭上の緑の猫耳をぎゅっと伏せ、フワフワとした小さな尻尾を抱え込むようにして、大切な仲間たちの温もりをその目に焼き付けようとしていた。

 

終末のカウントダウンは、もう誰にも止められない。

フリードの手にある写真の裏側に目を凝らすと、そこには黒いインクで掠れた筆跡が残されていた。

 

『2027年7月22日 この世界は自動的に消去されるだろう 預言者エクス 1996年・没』

 

フリード

「2027年……7月……!?」

 

フリードの表情が引きつり、呼吸が荒くなる。

胸に押し寄せる不穏な予感に突き動かされるように、フリードは甲板を飛び出し、船の奥深くにある自らの倉庫へと向かって駆け出した。リコ、ロイ、ドットもその背中を必死に追いかける。

 

暗く静まり返った倉庫の最奥。埃の舞う棚の隙間からフリードが取り出したのは、古びた羊皮紙の束だった。そこにもまた、同じ筆跡で容赦のない「真実」が刻み込まれていた。

 

『2016年6月11日 選ばれし1025人のポケモンマスターの回収が開始するだろう』

『2027年7月19日 10年に渡った選ばれしポケモンマスター・1025人分の回収が完了するだろう 預言者エクス1996年・没』

『この予言は絶対にねじ曲がることはない。捻じ曲げれば終わりが待っているだろう』

 

ドット

「2016年から……もうずっと前から、この『回収』は始まってたっていうのか……!? 1025人……ポケモン図鑑の最後のナンバーと同じ数……!」

 

ロイ

「今は……今は2023年だよね!? 2027年まで、あと4年しかないじゃん……! 4年後に、この世界が全部消えちゃうの……!?」

 

ロイの声が大きく裏返る。

2016年に始まった回収の刻限。2023年という現在を経て、2027年7月19日に最後の1025人目の回収が完了し、そのわずか3日後の7月22日にこの世界(システム)そのものが完全消去される――回避不可能な終末のタイムライン。

 

フリード

「予言者エクス……1996年といえば、この『ポケットモンスター』という世界が産声をあげた年だ……。その始まりの時点で、世界の『寿命』と『回収のシステム』はすでにプログラムされていたんだ……!」

 

「ねじ曲げれば終わりが待っている」という冷酷な警告。

運命に抗うことすら許されない絶対のシナリオに、ドットは崩れ落ちるように膝をついた。

 

(残された時間――あと8時間)

 

リコの意識の限界を示すカウントダウンが容赦なく削られていく。

現実世界の冷たいベッドの上で目覚める瞬間が、刻一刻と近づいていた。

 

リコ

「(私たちがどうあがいても……ロイも、ドットも、サトシさんも……1025人みんなが現実世界へ『回収』されて、この世界は消えてしまう……?)」

 

頭上の緑の猫耳が痛々しく萎れ、フワフワとした短い尻尾がキュッと丸まる。

2023年の現在から、未来の2027年の崩壊に向けて動き出した巨大な歯車。

逃れられない運命の重圧を背負いながら、リコと仲間たちはただ、薄暗い倉庫の中で息を潜めることしかできない。

 

「待て……オリオはどこに行った!?」

 

フリードの悲痛な叫びが、狭い倉庫の中に響き渡った。

船内のエンジニアであり、ブレイブアサギ号の心臓部を支えるオリオの姿が、どこを探しても見当たらない。

 

焦燥に駆られたドットが、震える指先で壁の「こぼれ落ちる順番」のリストを上から下へと必死にスクロールしていく。

 

ドット

「あった……! あったぞ! 番号『601』……オリオの名前だ!!」

 

ロイ

「601……!? ちょっと待って、601番のポケモンって……!」

 

フリードがドットの手元から紙を奪い取り、ポケモン図鑑のデータベースと照合した。

601番――それは「ギギギアル」。機械と歯車を司るポケモン。

 

フリード

「嘘だろ……!? そのポケモンマスターに関係するポケモンの番号になっているなんて……。何だこれは!」

 

フリードの顔から血の気が引いていく。

ただランダムに番号が割り振られているわけではなかった。

船の整備士であり、誰よりも機械や歯車を愛するオリオには、彼女の『存在の象徴』とも言えるギギギアルのナンバー(601番)が刻まれ、すでに現実世界へと「回収」されてしまったのだ。

 

リコ

「オリオさん……! もう現実世界に落とされちゃったの……!?」

 

ドット

「関係性……属性……存在の記憶……! このシステムは、ただ人を回収するだけじゃない。その人間が持つ一番強い要素に対応するポケモンの姿を強制的に付与して、現実世界へ弾き出してるんだ……!」

 

自分自身にはニャオハ(906番)。

ロイにはホゲータ(910番)。

ドットにはクワッス(914番)。

そしてオリオにはギギギアル(601番)。

 

(残された時間――あと7時間30分)

 

リコの意識を仮想世界に繋ぎ止める時間は、刻一刻と削られていく。

仲間が一人、また一人と「意味を持った番号」と共に消えていく恐怖の中、ブレイブアサギ号のエンジン音が響く。

が…

 

リコの両目に大きな涙が溢れ出し、そのままボロボロと頬を伝ってこぼれ落ちた。

 

ロイ

「リコ……!? どうしたの……っ!?」

 

泣き出したリコに、ロイとドットが慌てて駆け寄る。

しかし、リコは首を振ると、涙に濡れた顔を上げて二人を見つめた。その瞳には、絶望ではなく、かすかな光が宿っていた。

 

リコ

「オリオさん……消えてなくなっちゃったわけじゃないんだよ……! 私と同じなんだ……!」

 

ドット

「え……? 同じ……って……」

 

リコ

「私、さっき現実世界で目を覚ましたとき、すごく怖かった……。でも、あの世界には本当に私がいたの。そして今、601番のオリオさんも……あの現実世界のどこかに落とされて、生きてるんだ……!」

 

自分が現実世界に落とされたように、オリオもまた、ギギギアルの特徴を身に宿した姿で現実世界のどこかに生きている。

そして、このあと48時間でロイが、やがてドットやフリードたちが追放されたとしても――それは永久の別れではない。

 

リコ

「みんなが現実世界に落とされちゃうのは、すごく寂しくて怖い……。でも、みんながあっちに行ったら……私、絶対にみんなを探し出すよ! 現実世界で、もう一度オリオさんやロイ、ドットと再会できるんだ!!」

 

リコの頭上で萎れていた緑の猫耳が、涙をぬぐうとともにピンと持ち上がった。

フワフワとした短く小さな尻尾が、彼女の決意に呼応するように強く揺れる。

 

フリード

「そうか……『回収』っていうのは消滅じゃない。別の世界への移送なんだな……」

 

フリードが静かに息を吐き、口元に笑みを浮かべた。

 

ロイ

「じゃあ……僕が48時間後にあっちに行っても、リコが僕を見つけてくれるの!?」

 

リコ

「うん! 絶対に見つける! だからロイも、ドットも、怖がらないで……!」

 

(残された時間――あと7時間)

 

現実世界へのカウントダウンは止まらない。

けれど、運命の暗雲の中に「再会」という確かな希望の光を見出した少女の瞳には、もう迷いはない。

(残された時間――あと2分)

 

現実世界への引き戻しが目前に迫り、視界がかすかに歪み始める中、ドットの指先がリストの終盤でぴたりと止まった。

 

ドット

「待って……! これ、数字がおかしい……! 見て、ここ!」

 

ドットが叫びながら指し示したのは、リストの中盤に刻まれた「678」の数字だった。

そこには、本来なら一人につき一つの番号が割り振られるはずの法則を破り、二つの名前が並んで刻まれていた。

 

678番:トウヤ

678番:トウコ

 

ロイ

「えっ……!? 同じ678番に、トウヤさんとトウコさんの二人がいる……!? どうして!?」

 

フリードが鋭い目つきでリストを覗き込み、即座に図鑑データと脳内の知識を照合させる。

 

フリード

「678番……『ニャオニクス』だ! ニャオニクスは雄(オス)と雌(メス)で姿も覚える技も全く異なるポケモン……! 一目で性別が判別できる特殊なポケモンは、一枠の番号に対して男女二人分が用意されているんだ!」

 

リコ

「二人分……!? じゃあ、1025人っていうのは……!」

 

ドット

「……『1025人』じゃない。『1025組』だったんだ! ニャオニクスやヒドゥイデ、ニドランみたいに性別差があるポケモンマスターたちが二人一組でカウントされているなら……実際に現実世界へ回収される人間は、1050人を遥かに超える……!!」

 

世界の「再構成プログラム」の規模は、彼らが想像していたよりもずっと大きく、そして綿密に組み上げられていた。

ただの1025人ではなく、ポケモンの「種族(ナンバー)」に引きつけられた幾千もの魂たちが、性別や属性の差異すらも完璧に翻訳された姿で、現実世界へと追放されていくのだ。

 

リコ

「1050人以上……。世界中のトレーナーたちが、みんなあっちの地球へ……」

 

(残された時間――あと10秒)

 

リコの身体が、まばゆい光の粒子となって崩れ始め、浮遊感が足元から襲いかかる。

頭上の緑の猫耳が寂しげに揺れ、フワフワとした短い尻尾が光の中に溶けていく。

 

ロイ

「リコ! 時間だ……っ!」

 

ロイが叫び、必死にリコの光手を掴もうと手を伸ばす。

 

リコ

「ロイ! ドット! フリードさん! 1025組……みんながあっちに落とされても、私、絶対に諦めない! どんな姿になってても、現実世界でみんなを見つけるから……!!」

 

ドット

「おう……! 48時間後、ロイが行ったらよろしく頼むぞ、リコ……っ!」

 

フリード

「ああ、現実世界(あっち)でまた会おう……!」

 

光の眩ましさがピークに達し、仲間たちの叫び声とブレイブアサギ号の景色が、一瞬で真っ白なノイズの中に消え去った。

 

【現実世界・都内 青空家】

 

「……ん……っ……」

 

静かな部屋の中、やわらかな布団の上で、リコはゆっくりと目を覚ました。

窓からは朝の光が差し込み、部屋の隅には天文学の専門書や小さな天体望遠鏡が整然と置かれている。

 

頭の上には、ピクピクと動く緑色の猫耳。

お尻の後ろには、短くフワフワとした尻尾。

現実世界の肉体へと戻った感覚とともに、喉の奥から小さく「ゴロゴロ……」という微振動が漏れ出た。

 

輝美

「あ、目が覚めたのね、リコちゃん」

 

ドアが静かに開き、エプロン姿の青空輝美が温かい湯気の立つスープを持って入ってきた。

 

リコ

「輝美さん……」

 

輝美

「よく眠れていたわよ。……なんだか、とても大切な夢を見ていたみたいね」

 

リコはベッドの上に身体を起こし、自分の小さな手をギュッと握りしめた。

もう、迷いや恐怖で泣くことはない。

 

仮想世界で見た「1025組」のリスト。

48時間後にやってくるロイ。そして、どこかにいるオリオ。

天文学者である輝美のもとで、世界の真実と「宇宙(次元)」の仕組みを学びながら、彼女はこれから現実世界へと落とされてくる仲間たちを迎え入れるための、第一歩を踏み出そうとする。

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