転生という概念がこの世にあることはよく知っているつもりだった。
生を終えた後に死の世界を通じて生まれ変わるとか、宗教の世界じゃよくある話だからね。
こういう話をするってことは大体わかると思う。そう、私は多くの例にもれず転生してしまったのである。しかもなんか変な竜にだ。
いろいろ整理しよう。まず私はこうなる前は確かに人間だった。死んだ記憶はないし、転生させますって言いながら神様が出てきた、なんていう記憶もない。目覚めたら竜になっていたのである。
あまりに突然のことだったので理解が追い付いていないが、まあ要するに多分転生して竜になったのである。
今の私の見た目は、人間の時の面影なんて一切残っていない。細長くて白い体に、なぜか下半身に接続されている桜。それから、なぜか生えている腕で持っている七支刀。これが今の私の姿だ。
いやぁ、我ながら変な生物になってしまったと思う。これ竜って言っていいのかな。私の記憶にある竜ってもっとかっこいい感じだと思うんだけど。空も飛べないし。動きにくいったらありゃしない。
だがまあなってしまったものは仕方ない。こうやってぼうっと自分を観察してるだけだとつまらないし、周りには何かないのだろうか。
ざっと周りを見てみると......うん、一面雲。雲の上に生える桜と謎生物って、はたから見たら神聖かもしれないけど、いざこういう立場になるとつまんないな。
なんかやれることはないものか。
適当に雲を手元の七支刀で突っついてみると、なんか風がぶわーってなって雲がどいてくれた。
おお、風出せるのね。便利そう。
おかげで雲の下が見えるようになったのでのぞいてみれば、一面緑。くそでかい山あり谷ありのなんかTHE自然って感じの地形がそこには広がっていた。
それだけじゃない、山のふもとにはなんか小さい建物が建っていた。藁でできた感じの、なんか小さい建物だ。
よくよく目を凝らしてみれば小さい生き物がいる。なんか人間っぽいねあれ。ずいぶん小さく見えるのは、私がでかすぎるだけなんだろうか。
私の姿が目に入ったのか、人間たちがひれ伏している。ちょっと気分がいい。やっぱ崇め奉られるのってうれしいものなのかね。
ちょっとうれしくなって顔を近づけてみると、人間たちの先頭にいるやつが何やら言っているのが聞こえた。
声が小さすぎて聞き取りずらいよ。何々?ここのところ日照りが続いていて作物が育たない?雨降らして?
ほほー、いかにも神様に頼むことっぽいお願い来たな。でも私そういうのできるのかなぁ。
とりあえずやってみようと思い、七支刀でいい感じに雲をかき集めてみる。だけど雲を集めるだけじゃ曇るだけだった。そりゃあそう。
となると何か影響を雲に与えないといけないのかなぁ。でもどうやればいいんだろ。
......ええい考えても仕方ない!何とかなれーッ!
やけくそで刀を固まった雲に振り下ろしてみると、何と雷が雲に向かって走り、たちまちとんでもない豪雨が降り始めた。
おお成功した。...ってちょっと待て、よく見たら雨強すぎて人間とか作物とか水流で流しちゃってるやんけ。
慌てて雲の量を減らしてみると、今度はいい感じの雨になった。人間たちを見てみれば結構喜んでいた。
神っぽいことできて私もうれしいよ。
さっき話しかけてきた人間がまた何か言っていたので聞いてみると、祀り上げて崇めるし建物も作るからうちに来てくださいと言っていた。
崇められるの楽しいから行きたい!でも足元桜だけど移動できるのかな。...なんか無理そう。しょうがない、断ろう。
その旨を人間たちに伝えたら、人間たちが何やら相談を始めた。そして相談が終わったのか、またさっきの人間が私に何か言ってきた。
何々?運ぶためのヒトガタを作るから力を分けてほしい?私も動けるならうれしいから上げたいけど、具体的に何を上げればいいの?血?力を循環させているものだから?別にいいけど、そんなので作れるのかぁ?
とりあえず適当に血を分けてやって見守ってたら、ほんとにできちゃった。くそでかわら人形って感じの外観のやつが。すごいな人間は。
そいつに桜を持ち上げてもらって人間たちの住む場所の近くに移動。私はそこで暮らすことになった。
暮らし始めて思ったけど、やっぱほかのだれかと一緒に住むって一人暮らしよりよっぽどいい。すごい楽。
だって食と住全部揃えてくれるんだよ?前住んでた雲の上の霞恋しくなったって言ったら頑張って取ってきてくれるし、私が快適なようにって毎年建物立て替えてくれるし、何なら私が暇だって言ったらわざわざ祭り開いて踊りを捧げてくれるし。正直雲の上住んでた時よりよっぽど楽だった。
でも一つさみしいことがある。それは寿命の差だ。
私は竜だし、よくわかんないけどどうも神様っぽい枠の生き物らしい。だから寿命が超長い。というか永遠に生きれるかもしれない。でも人間はただの生き物だ。だから寿命がある。生まれたと思って喜んだらちょっと大人っぽくなってるし、目を離したすきに爺さんになって死んでることもある。
私に話しかけてくれる人間も死んじゃって代替わりし続けてて、30代目になってから数えるのをやめた。
始めてあった人間たちの集団にいた人間たちなってみんな死んじゃって、今は子孫たちだけ。人数も多いからいちいち覚えていられないし、何より一方的に崇められる立場だから若干距離がある。もうかかわるのやめようかなって思うくらいにはさみしい。
そんな愚痴を今何代目か忘れた話しかけてくれる人間にしゃべってみたら、じゃあ永遠の寿命をくださいって言われた。いや無理だが。私にそんな力ないよ?
何々?それは私が知らないだけ?私の血には人に永遠の寿命を与える力がある?
えなにそれは。初めて知ったんだけど。何で知ってるの?あのしめ縄ロボ作ったときに気づいたって?知ってると思ってた?いや知らなかったよ!
とりあえず話しかけてくれる人間に永遠の命をやる。...ぱっと見はあんまり変わってないね。
でも時間が進むにつれ、私の血の力はやばいってことが証明された。本当にその人間はずっと生きてた。
なんかずっとしゃべってくれる人間がいてくれて、とてもうれしかった。
うれしくなって、もっといろんな人間に長生きしてほしくなって、私は血をいろんな人間に渡した。人間たちはみんなたちまち不死になって、私もハッピーになるはずだった。
でも、意外と甘くなかった。
なんと不死になった人間たちの一部が、謎の病気にかかって死ぬようになり始めたのだ。それと同時に病気にかからなかった人間たちはしわしわになり、私に近い、けれどしわしわで人間サイズのなんか変な生き物になってしまった。
話しかけてもその謎生物からは返事はなく、ただ私を崇めるようにぺこぺこお辞儀をするだけだった。そのうち私が住んでいる場所には人間と謎のぺこぺこ生物だけになってしまった。...すごく、悲しかった。
そうして悲しんでいると、遠くからすごく光っている私の同族っぽい人型のやつが現れた。
話を聞いてみると、お前は竜胤の呪いをばらまきすぎて人に害を与える神と認定されたから罰を与える、けど悪意はなさそうだから自分の独断で処刑じゃなくて追放にしてあげる、とのことだった。
正直仕方ないと思った、だって殺しちゃったのは事実だし。
でも一人じゃさみしいからこのぺこぺこ生物たちは連れて行っていいか聞いた。いいよって言われた。
もう面影はないけれどこいつらももとは私の知っている人間だから、OKが出てちょっとうれしかった。因みに私を追放した奴は釈迦って名乗ってた。ごめんなさい、でも殺さないでくれてありがとう。