「……知らない、天井だ。」
開口一番がそれだった。やけに綺麗な部屋、整ったベッド、そして華奢な体に可愛らしい服。
「……。」
おかしい。俺は普通に自分の部屋で寝た。だが何だこの部屋は。
体もおかしい。やけに細い。後女物の服着るな、地獄絵図だろこれ。
女装趣味とかないぞ俺。
何となく気づいていた。女性に転生してしまったと。取り敢えず冷静に、騒がずに部屋を出た。
朝食も取ったので確認だ。
俺は完全に女になっている。幸い家族が出張かなんかでいない。ここからの生活への慣れはいるがまぁ、問題ない、多分…。
制服に着替え学校へ行く準備をする。どうやら前の俺と同学年くらいらしい。大人とかじゃなくて良かった。
学校への道すがら考える。これが現代の日本じゃないなら俺は落ち込む。
だがそれは杞憂で普通にビルや看板が立ち並んでいてしっかり日本語使ってあって一安心。
そして今更第二の試練。
「学校って、そういやどこ?」
一時間も駆けずり回りようやく見つけた。割と都会だから他の人に「この制服の学校知りませんか?」って聞くのすごい苦労したんだぞ!
無事(無事じゃない)学校につき教室へ入る。学生証で学年は確認済みだぜ、学校の場所ものせとけゴラァ。
入って早々第三の試練。まさかの同級生いじめられてる。
長くて綺麗な白髪をたなびかせた神秘的な子がくすくす嘲笑の対象になっていた。
水をかぶり綺麗な髪や顔、制服も台無しだ。
「……。」
くすくす、ゲラゲラ、笑い声がうるさい。
落ち着け俺。冷静に、冷静に…。
その子の手を取り全力ダッシュ!
悪いな今の俺のお父さん、お母さん。俺あんなクラス無理だわ。今もあいつらの俺への奇異の目が、視線がまとわりついている。
初日から最悪だぜ、俺。取り敢えず着替えられそうな保健室へ向かった。
ズッコケてこうなったとか何とか適当に事情を話し先生に許可を貰った。替えの制服鞄に詰め込んであって良かった。サンキューこの体の人。
「大丈夫?ごめんね、急にこんなことして。」
目の前の少女はポカンとしている。やがて口を開いた。
「……初めてです、助けられたのは。理由を聞いても?」
「……いや、何か、困ってそうだったし…。」
情けは人の為ならず、俺の好きな言葉です。こんな可愛い子ほっとけるわけねーだろ。いや違う、見た目じゃなくて、困ってる人ほっといたら俺超後悔するもん。化けて出るよ。
「……。ふふ。」
会って数分、初めて明るい笑顔を見せてくれた。
「面白い人ですね、気に入りました。私は月代ユキと言います。貴方の名前は?」
「齋藤ユーリィ、よろしく。取り敢えず着替えな。」
そう言って髪や顔を拭いてあげる。流石に腰まで伸びている髪を拭くのは大変だった…。
「ありがとうございます。では体もお願いします。」
「そこは自分でしなさい。」
無事着替え終わったので教室に戻る。正直もうね、帰りたい。
グッと我慢して再度入場。さっきのあいつだ、変な奴、とかクラスメイトが話している。聞こえてますよ、めちゃくちゃ。
ユキは自分の席に戻っていた。今回は何もなかった。
俺も自分の席に座った。
ホームルームが終わり授業が始まった。こんな授業楽勝だぜ、とか思ってたが普通に問題が難しい。練習問題のレベルじゃねぇだろふざけんな。
二時間目、三時間目、どんどん時間は過ぎていく。朝以降ユキは無事だった。ひそひそ何か話されてるし近づかれないのはまぁ、うん…。
昼休みに入った。各々弁当を食べたり駄弁ったりして教室が騒がしくなっていた。
ユキだけ地味にハブるのやめろ。いや地味とかじゃねぇ、ガッツリだわ。数メートル周りから距離空けられてる。
まあ、俺には関係ないがな!
ズカズカ進みユキに話しかける。
「ユキ、ご飯食べよう。」
ユキは少し驚いていたがすぐさっきまでの顔に戻り
「良いですよ。」
そう言って受け入れた。
弁当を食べ進める。今日のメニューはご飯、唐揚げ、卵焼き、プチトマトだった。
「……そう言えば…。」
「何?」
ユキが弁当を頬張りながら話しかけてきた。リスみたいで可愛い。
「私の教科書破られて使えないので見せてくれませんか?」
誰だ無事とかほざいたの。とんでも被害被ってんぞ。
「……災難だったね。私で良ければいつでも見せるよ。」
「ありがとうございます。優しいんですね。」
……女だから私とか言ってみたけど、違和感すごい。
「ついでにその唐揚げ下さい。」
「ダメ。」
この子ちょくちょく距離おかしいね?
その後、机をくっつけて教科書を見せ、五時間目、六時間目も終わり長い一日がやっと終わった。
──よくできましたね、ユーリィ。貴方をずっと待っていましたよ。