この体になって大分経った。
今ではすっかりいじめもなくなり平和に過ごしている。……のだが、最近皆の視線がおかしい。
おかしいというか、何か妙にじめじめしているというか…。仲良くしてくれるのは良いけどちょっと怖い。
後、コソコソ俺の話されてるのも気になる。ユキたちと一緒にいたら微笑ましい目線向けられたりもする。さながら推しでも見てるような…。
そんな時変な噂が耳に入った。
ユーリィにお似合いなのは三人のうち誰かという話だった。
耳を立てて聞いてみれば片やユキ、片やエマ、片やヒロといった感じで…。中には三人全員だろという輩もいた。
俺は混乱してきた。どういうことだってばよ、マジで。ユキたちは何も気にしてないし…。後俺が受けとかほざくのやめろ。
俺はただ、皆にも愛想良くしてただけなのに……なぜこんなことに。
「ユーリィ、どうかしましたか?」
俺の顔を見てユキが尋ねてきた。どうかしまくってる、とは口が裂けても言えなかった。
「何でもないよ…。」
「そうですか。あ、それください。」
今は昼休み、弁当を食べているのだが毎回ユキにおかずを取られる。
「はい、あーん!」
エマはそれを見て毎回おかずをあーんしてくれる。
「全く…正しくないぞ、三人共。」
ヒロも何やかんや言いながらおかずをくれる。そういう所が、好き。
「ハムスターみたいで可愛いね!」
もっきゅもっきゅ食べているとエマにそう言われる。すごい心外だぜ……俺はペットかなんかか。
「確かに、可愛いですね。」
「ふふっ、た、確かに…。」
ユキとヒロにもからかわれた。何だよ、良いだろ別に、と抗議の目線を送る。
「「「……。」」」
急に皆黙り込んでしまった。何だよ、何か言えよ。
「そういう所ですよ。」
「そういう所だよ。」
「そういう所だぞ。」
どういう所だよ。
何やかんやあり弁当を食べ終えた。いつもよりおかずを口にねじ込まれたが…まぁいい。
「そう言えば…。」
唐突にユキが口を開く。大体こういう時は碌なことにならん。
「ユーリィは私たちの中で誰が好きですか?」
こてん、と首を傾げ聞いてきた。言わんこっちゃない。
「も、もちろんボクだよね!」
「私を選ぶのが正しい。」
「私ですね。」
ずずい、と近づいてきた。圧が、圧がすごい…。
他のクラスメイトの視線も集まってきている。皆ざわざわしている。
ユキに一票、エマに晩飯賭ける、ヒロに花京院の魂を賭けるなどなど…。
皆この状況をどこか楽しんでいる。俺は全然楽しくない。
「……。」
口籠っている間にも三人はじっと見つめてきている。
「ぜ、全員じゃだめ、かな?」
精一杯愛嬌を振りまいて言った。上目遣いで手を胸の辺りでぎゅっと握る。我ながらキモい。
「「「……。」」」
しばしの沈黙。そして……
「だと思いました。」
「ユーリィちゃんらしいね。」
「正しくないが、まぁ、良い。」
割とあっさり受け入れられた。え、良いの?逆に良いの?
「では改めて…好き、と言ってください。」
とんでもない要求だ。他の二人も黙って促してきている。
……やるしかないのか…。
すぅ、と息を吸い覚悟を決めた。
「ユキ、エマ、ヒロ。皆好きだよ。」
精一杯の笑顔でそう言った。三人が固まった。
「……本当にそういう所ですよ…。」
「うわー……ずるいなぁ…。」
「……正しくなさすぎる…何だその顔は…。」
皆顔が赤かった。他のクラスメイトも沸き立っていた。
「……。」
今更恥ずかしくなってきて俺も赤面した。
三人共それを見て唾を飲み込んだ。
目線が捕食者のそれだ、すごい怖いぞ。
「これはお仕置きですね。」
「だね。」
「だな。」
そのまま屋上まで引きずられていった。
その後三人からこっぴどく色々言われた。
余談だけど裏で俺のその時の写真が取り引きされたとか…。撮ったやつマジで殴るわ。