事件です事件です。
学校から帰ってたんすよ、ちらっと路地裏覗いたんすよ、同年代くらいの子がいたんすよ。
しかもめちゃくちゃ傷ついてる。顔とか首とか腕とか……青アザだらけで見てられない。
ど、どうしよ?警察?いや病院?家に帰した方が良い?
兎にも角にも話しかけないと始まらない。
「お、おーい。大丈夫?」
出来る限り優しく声をかけた。肩をビクッと震わせこちらに顔を向けた。
「……何?」
「えーっと、心配になって声かけちゃった…。こんな時間に危ないよ?」
もう日が傾き始めてる。流石にこんな場所に放っておけない。
「別に……どうでも良いでしょ…私に構わないで。」
ふい、とそっぽを向いた。……こういう奴ほど構いたくなるんだよなー…。
「……良かったら、私の家に来ない?今誰もいないし。」
目の前の少女が驚いた。
「は?何でそうなるの?構わないでって言ったじゃん。」
「良いから良いから。」
ぐいっと手を引いて家に連れて行こうとした、が手を振り払われた。
急に青ざめ呼吸が浅くなっている。
「や、やめて…来ないで…。」
じりじり後退している。明らかに様子がおかしい。
「お、落ち着いて…。」
「いや、いや…。」
そのまま座り込んでしまった。どんどん呼吸がおかしくなっている。まともに息を吸えていない。
……黙って見過ごせる訳がない。ゆっくり近づきそっと背中をさすった。
「大丈夫、大丈夫。何もしないから落ち着いて、深呼吸。吸って、吐いて。吸って、吐いて。」
少しづつ落ち着きを取り戻した。その間ずっと背中をさすってあげた。
「どう?大丈夫そう?」
「……ごめんなさい、迷惑をかけて。」
「嫌がるなら強制はしないよ。でも、このまま見てるのも癪だし、やっぱり家に来てほしいな。」
少女は黙り込んだ。
長い長い沈黙の後、ようやく口を開いた。
「……私、家に帰りたくないの。帰ったらひどいことされるから。……貴方は何もしない?」
「うん、何もしないよ。約束する。」
そっと手を握って安心させるように笑いかけた。
「……じゃあお願い、私を連れて行って。」
「うん。」
少女をゆっくり立ち上がらせ、そのまま家に帰った。
気づけばもう日が暮れていた。
家に上がり、まずは応急処置をした。ちょうど家にあった消毒液で傷口を消毒し、包帯を巻いた。
次に食事を振る舞った。ご飯、焼き魚、味噌汁。簡単で素朴な物だったが少女はパクパク美味しそうに食べた。
そしてお風呂にも入らせた。包帯を濡らさないよう丁寧に体を洗ってあげた。
一通り済ませ今は居間で落ち着いていた。最初は警戒していたがすっかり柔らかくなった。
「……ねえ。」
少女が口を開いた。
「何でここまでしてくれるの?何が望み?」
少し試すような視線も含まれていた。じっと紫の瞳がこちらを見つめる。
「別に何も?助けたいから助けたぢけだよ。」
そう言うと少女は驚いた。目を見開いている。
「嘘、嘘…。そんな人いなかった。私が助けを求めても助けてくれる人なんて…。」
「じゃあ私が助けるよ、助けられなかった分も含めて。君が求める限り、何度でも。」
少女はポロポロ涙を零していた。俺は黙って抱きしめた。
「色々聞きたいな、君のこと。名前だってまだ聞いてないし。」
「……本当に助けてくれるの?」
「うん、君が望むなら。家が怖いなら、帰りたくないなら、ここにいていいよ。ここが君の新しい家だよ。」
「……マーゴ、宝生マーゴ。名前、聞きたかったんでしょ?」
「私はユーリィ、齋藤ユーリィ。よろしくね、マーゴ。」
我が家に家族が一人増えた。