何でも屋を始めてから約1年以上が経過した。
時系列で言うとすれば、大体高校2年の冬くらいって言えばいいか。
これまではいろいろあった。依頼した人たちは俺が男だってみんな叫んではいなかったけど、驚きはしたな。
万魔殿からの依頼やらトリニティ、百鬼夜行、ヴァルキューレ、山海経、後は人探しやら企業間での軋轢を制御したりと何でも屋としては上出来じゃないかと思った。けどそれとは裏腹にニュースで男がいると噂され始めた。ちょっと派手に動き過ぎたか。………まぁバレてないだけマシかと放っておくことにした。
そんなある日———
「ただいま」
「おかえりなさーい!お仕事お疲れ様です!今日の夕飯はなんですか?」
「カレーと味噌汁」
「カステラといちごミルクを所望します!」
「自分で買ってこい。てか偶にくらい自分で作れよ料理できんだから」
「嫌ですよめんどくさーい!てか構ってくださいよ!終わったんでしたら。出来れば膝枕させていただいて、頭を撫でながら甘い言葉を囁いて下さい!」
がめつコイツ。
机に突っ伏し両足をバタバタと動かしながら子供の様にこちらに構ってくるのは、【連邦生徒会長】その人である。
まぁこうしても埒が明かないので仕方なく撫でる事にした。
そしたら満足そうな笑みでこっちに視線を向けた。
なんだか妹を相手にしているみたいだ。
◇◆◇◆◇◆
「ご馳走様でした、相変わらず零斗さんが作る料理は格別に美味しかったですね〜」
「それ他の人にも言われるけどホントに美味しいのか?自分基準で作ってるから分からんけど」
「美味しいですよ!自信持ってください!あなたが作ってくれたお弁当も残さず全部食べてるんですからね!」
「そりゃ良かったよ」
そう、俺は毎回連邦生徒会に行くコイツに弁当作ってるんだ。健康でいてもらわないと業務や生活に支障をきたすからな。
◇◆◇◆◇◆
「まじで2人で寝るん?いやダブルベットだからスペース的には大丈夫なんだけどさ…」
「え〜いいじゃないですか〜。お泊まりして寝落ちするまで駄弁るとか青春の鏡ですよ〜。ねー」
「俺男、お前女、分かる?」
「竜華キサキ」
なんでお前が分かるんだよ。
「一緒に寝てたの分かるんですよ?会長パワーを舐めないでください!」
「アイツが勝手に潜ってきたからであって俺が誘ったわけじゃ」
「ぐぬぬっ…頑固ですね!良いじゃないですか!もうここまで来たなら潔く一緒に寝るんですよぉ!!」
「はぁ……」
この後攻防が数分続いたからか正直結構めんどくさい感情の方が勝ってきたわ。コイツもよくもまぁ飽きずにやるわ。
「はいはいもういいから、寝るから。お前もやめろ」
「やったー!!」
しいたけお目目をキラキラさせながら喜ぶその姿はさながら玩具を買ってもらった子供の様であった。
そうしたのも束の間、瞬時にベットに潜り込み空いたスペースに手でぽんぽんと叩きながら催促してくる。
「さあ!早く寝ましょう!具体的に言うなら寝落ちするまでおしゃべりしましょ!」
「そんな喋らないって、明日も早いんじゃないのか…?」
そんなことを言いながらもベットに潜り込む。それと同時に電気を消し部屋は暗闇で包まれる。
「うぐっ…」
「早いのかよ、じゃあさっさと寝るぞ。おやすみ〜」
さっさっと意識を落とす為に目を瞑る。寝ないでください!?なんて言いながら揺すってくるものだから布団の中に入ってカタツムリ状態になる。
そうすると対抗してあいつも布団の中に入ってきた。しかもなんか詰め寄ってきてる気がする。狭ぇし暑い。
「ぐぬぬぬ〜」とかいってきた辺りで揺さぶったりしてこなくなったから結構早めに寝られそうだ。
◇◆◇◆◇◆
朝、俺はいつもと違う息苦しさと暑さと共に目を覚ました。
眠気で視界が定まらない中寝ているはずの奴を手探りで探すがその姿は無く、隣には空っぽのスペースだけがある。
いつもより暑苦しかったので自分に掛かっていた布団を剥ぐ。
布団は勢いよく俺の体から離れ、俺の首から下の姿が露わになる。
目に飛び込んできたのはスヤスヤと寝息をたてながら俺の胸元をベットがわりにする例の奴であった。
しかもコイツ少し谷間見えてんだよな。警戒心持てよ少しは。てかデカいな。
「………なにしてんだ?」
「うーん…やぁ…まだ寝ます………」
「……………」
俺の体に腕を回して抱きつき、身を捩らせ体を密着させながら頭をグリグリと胸元に擦り付けてくる姿を見ると、最早早朝の眠気など消え失せ、鮮明になった頭で目の前の現状を直視するが、なにも考えたくない。
もういいやと思い、そう思い立ちコアラの様にしがみつくバカを抱えて自室から出ていく。
いつもの様に朝食を作り、〝食べさせて〟やら〝あーん〟をねだってくる奴に脳死で食べさせて、完食した。これが介護か……。
「いや流石におかしくね?てめぇは早く着替えろ」
流石に着替えの段階で正気に戻った零斗は着替えを持ち出してから、やつの着替えと共にコアラもどきを自室へ叩き出す。
自分のベットにボフンッと着弾したのを確認したのち、すぐさま扉を閉めた。
あの後アイツはちゃんと連邦生徒会に仕事しに行った、行く時に「送って〜」なんぞ言い出した時、これ程まで神秘に感謝した覚えがないと思う。良かった。神秘で転移が使えて。
◇◆◇◆◇◆
今日はクリスマス。
俺の世界だとリア充共がキャッキャッウフフしてるのが見てとれてたけど、この世界だと普通の日常と変わらない。強いて言えばイベントが盛りだくさんだって事だな。
「……さぶっ」
「零斗さーん!早く行きましょーよー!」
コイツ元気過ぎだろ。仕事終わったばっかだぞ?何でそんな元気にいられる?
「今日は零斗さんとデートなんですから!」
ナチュラルに心読んでくんな。てかデートじゃねぇわ。
そう、今日は初めて女性と二人っきりで出掛けることになった。「今日はクリスマスなので早く終わらせましょう!」と会長が言った後、書類が吸引されるかのように無くなったので、早めに出掛けることにした。
そして零斗と連邦生徒会長が歩いているとヒソヒソと声がした。
「あれ?あそこにいるの連邦生徒会長じゃない?」「ホントだ。しかも隣に歩いているのって」「お…男だ…初めて見た」「イケメンすぎない!?」「私には分かる。あの服の下には相当鍛えていると!」「キッショ…何でわかんだよ」「あれが噂のデート……ってやつか?」「私たちがこうして友達と待ち合わせしてる時にイチャコラと!!!」「許せんぞ!連邦生徒会長!!」
何かこっち見てくるな。もう気にしないけど。
「……」ニマニマ
「……なんだよ」
「初めて女性と二人っきりで出掛けてるからって緊張してるんですかぁ〜」
「はっ倒すぞ」
◇◆◇◆◇◆
街の明かりで照らされた夜道を歩く。
道中で会話もするが以前と内容変わらない。どこにでもある様な会話しかなかった。このギヴォトスの行く末を案じている者達の会話とは思えぬほど普遍的な内容であった。
「次はここへ行きましょうよ!」
「待てって!」
そのあとはいろいろと楽しんだ。雪合戦したり、二人で食べたり、二人でイルミネーションを見たり、そして———
「何か欲しいものはあるか?」
「そうですねぇ〜。じゃあアレがいいです!」
「どれだよ」
今日はクリスマスなのだから存分に我儘を言ってやろう、そう思うのに時間はかからなかった。できれば物がいい、形をもって確かに私を手繰り寄せる様な、そんな物がいい。
「せっかくのお出かけですからね〜しかも?私も高校生な訳ですし〜そう言う王道的なロマンティックな展開があって欲しいな〜なんて思う訳ですが……」
「あーうん、まぁ良いよ?ちなみにどんなやつ?アクセサリーとか?」
「はい、実は欲しいものは決まってるんですが、まあ実際に見て零斗さんが決めてください!ほら行きますよ〜!」
「うおっ!?急に走るな転ぶ転ぶッ!」
頭の中に地図でも入っているかのように迷いなく俺の手を引いて走って行く。アクセサリーかぁ…まあこいつなら大体似合うだろうし大丈夫か?
お目当てと思われる店の中へ入る。
特に変わった雰囲気ではなくよくある様なアクセサリー店だ。
手を引かれ連れて行かれながら歩く、そしてとある商品の前でその歩みは止まった。
「チョーカー?」
そこにあったのは真っ白なチョーカーだった。特に装飾もなくシンプルなデザインのチョーカーであった。
「どうです?自分で言うのもなんですが結構似合うと思うんですけど?」
確かにな。キヴォトスでも元の世界にもそういう奴がいたからな。けど似合うと思うので、それを買うことにした。
「ああ、似合うと思うよ。てかお前なら大体なんでも似合うだろうから心配すんな、んじゃ会計行くぞ〜」
「は〜い!」
会計でどちらがポイント貰うか問題が発生したが俺の不意打ちスマホ決済により不毛な争いは決着、払った時の「ああ〜!?」などと叫んだ。最後までがめついなコイツ。
「も〜!!」とポカポカと背中を殴打して来る奴から逃げる様に店内を出る。
あいつも引かれる様に出てきて、すぐさま———
「ん!」
真白いチョーカーを握った手を俺に突き出した。
「……着けろってこと?」
「ん!」
「いや自分で「ん!!!」……はい」
根負けして、手の中にあるチョーカーを受け取る。
「じゃあ、ほら上向いて」
俺の言葉に従う様に斜め上に顔をあげ、俺を見つめる様な体制になる。
向けられる視線に思わず顔を逸らしたくなるがチョーカーを首へ着ける。
「んっ…」
真っ白なチョーカーが陶磁器の様に美しい首に巻かれ、カチャリと装着される。
「どうだ?」
数度愛しい物に触るかの様にチョーカーを撫でた後柔らかい笑みを浮かべ———
「大切にしますね、零斗さん」
「ッ……」
綺麗だな。ホントに。いつもあんなにふざけてるのに今は美しく見えてしまう。こんなに心が動いたのはいつぶりだろうか。
◇◆◇◆◇◆
「今日はちょっと話があってきました」
ある日会長は突然こっちについて来いと言わんばかりに零斗の手をとった。
そして少し歩いた時、着いた先は二人で秘密に会う時の海岸線沿いの砂浜で歩いていた。
「………私、最近不思議に思っていたんです」
そう言うと会長は今まで思いが全て吐き出すように言った。
「キヴォトスの為に今まであなたが怪しい行動をしないか少し警戒しながら生活していたんです。けれど、あなたと生活していて、あなたが私と同じくらいキヴォトスをよくしてくれているのを横から見て、この人は絶対に信用できると思い始めました」
「そこで最初に会った頃から思った事があったんです。連邦生徒会に戻っても、忙しくてこっちに来れない時もあなたに会いたくなる。声が聞きたくなって、話がしたくて、姿が見たくなって、笑顔が見たくて、戦闘しているあなたを見たくて、あなたに甘えたくて、あなたと二人きりの、なんでもないこの時間が、私にとって掛け替えのないものだと。そんな風に思ってしまうのは、どうしてなんだろうって。それは分かってしまえば単純で、それは認めるには恥ずかしいものでした。…………伝えるって決めても、照れちゃいますね。でも、聞いてください」
「——私、あなたが好きなんです」
それから彼女の口が止まる事はなかった。
「強さを信じてくれる所が好きです。弱さを認めてくれる所が好きです。正しくあろうとする所が好きです。間違いを許してくれる所が好きです。私が甘えても嫌な顔せず撫でてくれる所が好きです。素敵な所、だめだめな所、好きな所、嫌いな所、全部全部、愛しくて堪らないのです。何もなくとも、ただあなたの傍にいたい。生まれて初めて、私は『恋』をしたんです。だから、どうか。私の『初恋』を叶えてくれませんか?」
「……」
どう答えたらいいのかわからなかった。初めてこんなに情熱的に自分の事を思ってくれている人がいるなんて思わなかった。けど、自分はまだ分からない。この世界で触れ合ってきた者が少ないが故に考えてしまう。自分はホントにこの手をとっていいのか分からなかった。彼女の思いを無下にしたくない。どうすればいいのか分からなかった時。
「大丈夫ですよ。零斗さん」
「…………?」
「元々キヴォトスは重婚OKですから、何人女性が居ても大丈夫です。(まぁこの重婚制度、私しか知りませんけどね)けどもし、あなたが好きな人が私以外にいた場合は、……私を一番大事にしてくれるのでしたら、考えなくもないですよ。偉そうですけど」
「………」
「私、怖いんですよ」
会長は僅かに震えていた。
「少し、未来を見たんですよ。例えば、一人の少女が巨大な兵器を起動させたり、トリニティの方では多数の死者が出たり、その子の為に生け贄になったり、空が赤くなってキヴォトスをめちゃくちゃにしたんです。あなたの姿が見えなかったんですけど、もしかすると考えるととても怖いんです。この世で一番大切なあなたが死ぬなんて耐えられません。…もしも、この捻れて歪んだ先の終着点に辿り着いてしまったら……」
「……」
「なので」
「そんな悲しいこと言うな」
「………え?」
「国のトップがそんなんでやっていけんのかよ。いいか?返事は保留にさせてもらうけど、俺が思い描く未来にはお前もいるからな?何自分は勝手に居なくなるみたいなこと言ってんだよ。ふざけんな。もしお前が言う捻れて歪んだ先の終着点に辿り着きそうになろうとも、俺がそうさせない。そうさせる前に俺がその最悪の未来を反転させてやる。お前と俺が別れる時であろうともまたここキヴォトスに戻ってくるんだろ?いや、俺がお前を連れ戻してやる。だからそんな悲しいこと2度と言うな」
「!………はいっ!」
◇◆◇◆◇◆
何でも屋に戻ってきた零斗と会長は最後の言葉を交わしていた。
「あの……」
「なんだ?」
「ここ、キヴォトスから少しの間離れる前に証を付けさせて……貰えませんか?」
会長は顔を赤らめながらモジモジしながらそう言った。
「……は?」
「さっきの話を話してもどうしても怖いんですよ。あなたを失うのが、なので、最後に証を付けさせてもらえませんか?」
覚悟が決まった眼でこっちに視線を向けた。
「…………分かった。その代わり、絶対に最悪な未来にはさせないと誓う」
「むぅ…そこは「責任を取る」んじゃありませんか?」
「ははっ!そうだな…」
そしてベッドで2人は視線を交わす。
「あの……やっぱ無しって事にはできn」
ドサッ…
「………何してんだ?お前」
何故俺を押し倒した?
「やっぱりこうなりますか。仕方ありません。こっちから攻めますね」
「だから待てって!」
「いただきます♡」
「うおおぉぉぉ!?!?」
そして二人は体を交わした。
◇◆◇◆◇◆
「……はぁ」
やっちまった。初めてのことだからって、遠慮がなかった。
「………フフッ」
「……なんだよ」
「いや?あなたに性欲があったんですね?」
「…………何が言いたい?」
「やめてと言ったのにやめてくれなかったり、萎えてもまた臨戦状態に入るとか絶倫過ぎません?」
「………」
「これで、初めては私のものですね♡」
「ッ……」
「あははは!顔赤らめて可愛い!」
「もういいから服着ろッ!」
◇◆◇◆◇◆
会長が居なくなって数日経過した。
「改めて………行っちまったな」
長かったような短かったような、そんな日々が続いていた。けど———
「次の目標が出来た」
そして零斗は【⬛︎々の試練】へと転移した。
「………さて!アイツが言ってた未来に行かせない為にここで俺は強くなる!待ってろよ!必ずそんな未来にはさせないし、お前をここへ連れ戻してやる!待ってろ!」
アロナ!!!
【⬛︎々の試練】を開始します。
次回 第二部 最終話
評価の必須な文字数無くした方がいい?
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無くせ
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そのままでいい
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どっちでもいい