俺だけ反転できる件   作:天叢

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原作開始
第弍拾話 先生


……私のミスでした。

 

声が聞こえる。

 

落ち着いた様な、達観した様なそんな声だった。

 

私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。

 

結局この結果に辿り着いて初めて、あなたと彼の方が正しかった事を悟るなんて…。

 

目をやると一人の少女が、そこにはいた。だが純白の白鳥の羽根の様な服には血が滲んでいた。

 

……今更図々しいですが、お願いします。先生。

 

きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。

 

何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で同じ選択をされるでしょうから。

 

ですから…大事なのは経験でなく、選択。

 

あなたにしかできない選択の数々。

 

あなたにしか救えない生徒がいる事を。

 

———責任を負う者について、話した事がありましたね。

 

あの時の私には分かりませんでしたが…今なら理解できます。

 

大人としての責任と義務。そしてその延長線上にあったあなたの選択。

 

それが意味する心延えも。

 

だから先生。

 

私が信じる大人である、あなたにならこの捻れて歪んだ先の終着点たちとは、また別の結果を。

 

そこへつながる選択肢はきっと見つかるはずです。

 

だから先生どうか…彼女達を———

 

彼(・)と一緒に助けてください。

 

このキヴォトスと私の初(・)恋(・)の人に———

 

よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「せい、先生!!」

 

“うひゃぁ!?”

 

少女の頭に浮かぶ天使の様な天輪。鋭く尖った耳に細縁の丸眼鏡の姿をした少女に大人の女性はまだ寝惚けてまとまらない思考を回す。

 

「どうやらお疲れのご様子でしたので…」

 

その少女は気まずそうにこちらの顔を見る。

 

どうやらこの場所に私は呼び出されて以降、気がついたら眠ってしまっていたようだと自覚した。

 

「もう一度改めて現状をお伝えしますね」

 

「私の名前は七神(なながみ)リン。学園都市【キヴォトス】の連邦生徒会長直属の幹部です」

 

少女の名前は七神リン。

 

そう私は覚えた後、気になる単語があった。

 

学園都市【キヴォトス】とは一体何なのか。言葉の意味的に何処かの都市であることは確実なのだが、そんな所に私は何故呼び出されたのだろうかと疑問に思う。それにあの光景、あの子とは何処かであった気がする。気のせいだと思うけど。

 

「そして、おそらくあなたは私たちがここに呼び出した先生の様ですが………」

 

その疑問を私が口にするよりも先にリンが貴方の立場を告げる。そうだった、私は【先生】。

 

ここキヴォトスに今日から着任する先生になったんだった。

 

「……あぁ。推測型でお話ししたのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです」

 

“?????”

 

「………見るからに混乱してますね。分かります。こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください。どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります。学園都市の命運をかけた大事なこと………ということにしておきましょう」

 

一先ずはリンちゃんについて行くことにした。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

エレベーターに上がって行くと———

 

“うわぁ!”

 

「【キヴォトス】へようこそ。先生。キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です」

 

“数千!?”

 

数千!数千って言ったよこの子!

 

リン「これから先生が働くところでもあります」

 

“oh……”

 

「きっと先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが………でも先生なら、それほど心配しなくていいでしょう。あの連邦生徒会長がお選びになった方ですからね……それは後でゆっくり説明するとして」

 

チン

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!…うん?となりの大人の方は?」

 

「主席行政官。お待ちしておりました」

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求しています」

 

“この子たちは?”

 

「あぁ、面倒な人たちに捕まってしまいましたね」

 

そう言ってリンは頭を抱える。

 

「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。こんな暇そ…大事な方々がここを訪ねてきた理由は、分かっています。今、学園都市に起きている混乱の責任を問うため………でしょう?」

 

“なんか怖いよ?リンちゃん?”

 

「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」

 

「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

 

「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不正流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」

 

“おぉ、なんか凄いことになってるんだね…… ”

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」

 

「………はぁ」

 

ため息つかないのリンちゃん。

 

「連邦生徒会長は今、席におりません。行方不明です」

 

「…え!?」 

 

「…!」 

 

「やはりあの噂は…」

 

三者三様の驚きと納得を見せる。

 

「結論から言うとサンクトゥムタワーの最終管理者が居なくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回出来る方法を探していましたが……先ほどまでそのような方法は見つかっていませんでした」

 

「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官」

 

そしてリンの視線がこちらに向く。

 

“ん?”

 

「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

 

“え!?私が?”

 

「この方が?」

 

「ちょっと待って!そう言えばこの先生はどなた?どうしてここにいるの?」

 

「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」

 

「はい。こちらの先生はこれからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

 

「行方不明になった連邦生徒会長が指名……?ますますこんがらがってきたじゃないの……」

 

“こんにちは!”

 

「こ、こんにちは先生。私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや。挨拶なんて今はどうでもよくて!」

 

「そちらのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」

 

「誰がうるさいって!?私は早瀬(はやせ)ユウカ!覚えておいてください!先生!」

 

“よろしくね、ユウカちゃん”

 

「私はトリニティ総合学園3年、正義実現委員会の副委員長をしています。羽川ハスミと申します」

 

「トリニティ総合学園2年生、自警団に所属している守月(もりづき)スズミです。よろしくお願いします、先生」

 

「ゲヘナ学園1年生、風紀委員会所属の火宮(ひのみや)です。よろしくお願いします」

 

“うん、よろしくね。ハスミちゃん、スズミちゃん、チナツちゃん”

(みんな可愛くてスタイルもいいなぁ)

 

先生は話を聞きながらそんなことを考える。

 

「続けますと先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げたある部活の顧問としてこちらに来ることになりました。それが連邦捜査部【シャーレ】です。

単なる部活ではなく、一種の超法的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく、加入することすらも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です。なぜこれだけの権限を持つ期間を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが………。

シャーレの部室はここから30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に「とある物」を持ち込んでいます。

先生をお連れしなければなりません。モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど」

 

すると、ホログラムが出てきて、ピンク色の髪をツインテールにした子を映し出す。

 

「シャーレの部室?あぁ外郭地区の?今そこ大騒ぎだけど?」

 

「大騒ぎ?」

 

「矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。今そこは戦場になってるよ」

 

スナック菓子をつまみながら、モモカと呼ばれた生徒は心底面倒くさそうな表情でそう言い放つ。

 

「……うん?」

 

リンの表情が曇る。

 

「連邦生徒会に恨みを抱いて地域の不良たちを先頭に周りを焼け野原にしているみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?」

 

リン「……」

 

「それで、どうやらシャーレの建物を占拠しようとしているみたいだね。まるでそこに何か大切なものでもあるみたいな動きだけど?まぁでもとっくにめちゃくちゃな場所なんだから別に……あっ先輩。お昼ご飯のデリバリーが来たからまた連絡するね!」

 

そういうとモモカと呼ばれた生徒は一方的に通信を切る。

 

“大丈夫?深呼吸する?おっぱい揉む?”

 

「だ、大丈夫です。少々問題が起きましたが、大したことではありません。………今先生なんて言いましたか?」

 

“何も言ってないよ。それに目が笑ってないよリンちゃん”

 

突然の発言にリンは幻聴かなと思い、一先ずは聞かなかったことにした。

 

先生に声を掛けられると、リンはニッコリと笑ったが、いかんせん目は笑っていなかった。

 

「………」

 

「な、何?どうして私たちを見つめてるの?」

 

「問題は発生しましたが心配は無用です。ちょうどここには各学園を代表する、立派で暇そうな方達がいますので、私は心強いです」ニッコリ

 

「え?」

 

一瞬発言の意味を理解できなかったユウカが思わず口から漏らした。他の皆も口に出さないだけでユウカと同じ反応の様だ。

 

「さて、時間を持て余している暇はありません。キヴォトスの正常化のために、早速行くとしましょう」

 

「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!!」

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから………」

 

「それは聞いたけど………!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱い何だけど!なんで私が……!」

 

バババババッッ!!!

 

「痛っ!!痛いってば!!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」

 

「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません」

 

「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」

 

「今は先生が一緒なので、その点に気をつけましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です」

 

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので……。私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を」

 

「分かっているわ。先生、先生は戦場に出ないでください。私たちが戦ってる間は、この安全な場所にいてくださいね」

 

守ってもらえるのはありがたいけど、このまま何もしないと思うと嫌だな。少し頼ってほしい。だったら———

 

“私が指揮するから、みんなは今から私の指揮に従ってね!”

 

「えぇ!?戦術指揮をされるんですか?まぁ……先生ですし………」

 

「分かりました。これより先生の指揮に従います」

 

「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします」

 

「よし、じゃあ行ってみましょうか!」

 

“任せて!みんな!行くよ!”

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします……」

 

「……やっぱりそうよね?」

 

「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです」

 

「なるほど……これが先生の力……まぁ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か……」

 

“ふふん!”

 

先生は上機嫌に胸を張った。

 

「それでは次の戦闘もよろしくお願いします、先生」

 


 

 

「クソッ!あの大人が指揮した途端、こっちの戦力が減り始めてる!こうなったらあの大人を狙うしかない」

 

最悪あの大人は今油断してる。だったら今ここで!

 

ダンッ!

 

不良は先生に向けて銃を放った。

 


 

「!?マズイ!」

 

「先生!危ない!」

 

“え?”

 

不良が撃ってきた弾がこっちに弾が飛んできた。

 

終わったと思った瞬間———

 

「フッ………」ガキィン!

 

誰かが来て、弾を弾いた。

 

その姿は身長180cmくらいで、黒いスーツを着ている。他には左肩の部分に銃と刀をクロス状態、言わば×状態にしているエンブレムがあり、黒髪で目は黒紫色だけど右目は黄色の目をしていて、刀を装備している青年がいた。

 

“君は誰なの?”

 

私は重々しく口を開いた。そしたら彼はこう言った。

 

「初めまして、俺は」

 

何でも屋 青天月のリーダー

 

「朝霧零斗だ」

 

これが彼と私との最初の邂逅だった。

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