約束のネバーランドの世界に転生したのでノーマンの出荷を回避する 作:M1tarash1
「あら……?」
門の管理人室で書類を整理していたイザベラは、胸元から取り出した懐中時計型の受信機を見て、不自然に細い眉をひそめた。画面に表示されている光点が、奇妙な動きをしていたからだ。
本来なら、今ごろトラックの荷台で『出荷』を待っているはずのコニーの光点。
それが、あろうことかトラックから離れ、門の脇の敷地内を移動している。
それだけではない。その光点に重なるようにして、もう一つの光点がぴったりと寄り添っていた。
(コニーが動いている?……いいえ、誰かが連れ出した?)
イザベラの脳裏に、冷ややかな計算が走る。
さらに、門の入り口側から、新しく二つの光点が急速に近づいてくるのが見えた。
(……合計、四人)
イザベラの唇から、優雅な微笑みが完全に消え失せる。
その内二人は、おそらく──エマとノーマンだろう。それはいい。私の手の平の上だ。
だが、計算外なのは、すでに門の奥に侵入し、コニーをトラックから連れ出してハウスの方へと引き返そうとしている「もう二人の光点」だ。
(エマとノーマンは、今まさに門に到着したばかり。だとしたら、コニーを連れ去ったこの『もう一人』は誰……?)イザベラは冷徹に、ハウスの子供たちの顔を思い浮かべる。
レイか? いや、あの子は計画の全貌を知っている。
今ここでコニーを個人的に救うような、そんな無意味なリスクを冒すはずがない。
(ドンやギルダか? いや、彼らにはママの目を盗んでここまで完璧に先回りする知略も度胸もないはずだ。
私の知らない『駒』が、ハウスの中に隠れている……?)
全身から冷たい怒りと、捕食者としての愉悦が湧きあがる。
イザベラは静かに管理人室のドアを開け、雨の降る門へと足を踏み出した。
──その頃、中庭の茂み。
コニーの手を引きながらハウスの勝手口を目指していたソラは、心臓が凍りつくような衝撃に足を止めた。
抱えていたコニーの耳を見ながら気づいた。
(しまった……! 発信機だ!!)
(原作知識で知っていたはずなのに、なぜ今まで気づかなかったんだ…!)
ママの手元にある受信機に筒抜けになる。当然、コニーの隣にいる自分の存在も、位置情報でママにバレる。
「コニー、ごめん、ちょっと痛いけど我慢してくれ!」
ソラは震える手で、ポケットから盗み出しておいた裁縫用の小さなハサミを取り出した。衣服に隠し、コニーの耳の裏の皮膚に刃先を押し当てる。
(頼む、間に合ってくれ……! ママがここに追ってくる前に!)
雨の音に紛れ、ソラは必死にコニーの発信機を取り除こうと指を赤く染めていた。
ママにはまだ、自分の正体(ソラ)はバレていない。
だが、この発信機を処理できなければ、数分後にはママに直接捕まり、コニーもろとも『即時出荷』の未来が確定する。
天才たちの裏をかくどころか、本物の怪物(イザベラ)の逆鱗に触れてしまったことを、ソラは本能で理解していた。