約束のネバーランドの世界に転生したのでノーマンの出荷を回避する   作:M1tarash1

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06.対立

「──全員、救うだと?」

レイが吐き捨てるように言った。

その瞳には、俺に対する激しい怒りと、制御不能なイレギュラーへの強い警戒が混ざり合っている。

「ソラ、お前は何も分かっちゃいねぇ。ママは化け物だ。コニーの発信機が消えた時点で、ハウス内に『裏切り者』がいると確信してる。明日には抜き打ちの身体検査が始まって出荷されるぞ!」

「じゃなきゃコニーは死ぬんだ!」

俺が声を荒らげた、その時だった。

「……待って」

暗闇から、カサリと音がした。

振り返ると、そこにはいつの間にか部屋のドアを開けて立っていたエマと、その背後に佇むノーマンの姿があった。

二人の顔はまだ青白く、門で見た絶望の余韻が残っている。

だが、エマの目は、俺たちの会話を聞いて大きく見開かれていた。

「ソラ……レイ……? 今、なんて言ったの? コニーが……生きてるの?」

「エマ……」

俺が息を呑むと、エマは弾かれたように俺の胸ぐらを掴んできた。

その手はガタガタと震えている。

「教えてソラ! コニーは鬼に食べられてないの!? 無事なの!?」

「ああ、無事だ。ハウスの物置の奥に隠してある。傷の手当てもしたし、水も食料も渡してある」

その瞬間、エマの瞳に一気に光が戻った。

「よかった……! よかったぁ……!!」

涙をボロボロとこぼしながら崩れ落ちるエマ。

しかし、その安堵も束の間、レイが冷酷な声を突き刺した。

「よくねぇよ。エマ、目を覚ませ。ソラがやったのは、ただの自殺志願だ」

レイはエマの肩を掴み、現実を突きつける。

「今すぐコニーをママに返せ。そうしなきゃ、俺たちの脱獄計画が始まる前に、全員ここで殺される。コニー一人のために、残りの数十人の兄弟を巻き添えにする気か!?」

「そんなの嫌だ!!」

エマが叫んだ。悲痛な、だけど決して折れない叫びだった。

「コニーを返すなんて絶対にダメ! 生きてるなら、コニーも一緒に、みんなで一緒にここから逃げるの!」

「できるわけねぇだろ! 人数が増えればそれだけ足がつく! そもそもコニーをどこに隠し通すつもりだ!? 明日ママはハウス中を徹底的に捜索するぞ!」

レイとエマの意見が真っ向から激突する。

切り捨てる現実主義のレイと、全員救いたい理想主義のエマ。

俺はサラリーマン時代のディベートを思い出しながら、その間に割って入ろうとした。

だが、それよりも早く、ずっと沈黙を守っていたもう一人の天才が口を開いた。

「……二人とも、落ち着いて」

ノーマンだった。

彼は静かに俺たちの中心へ歩み寄ると、冷徹なまでに澄んだ瞳で俺を見つめた。

「ソラ。君がコニーを救ってくれたことには感謝する。だけど、レイの言う通りコニーがいない』という事実は変えられない。ママの捜索をすり抜ける具体的な算段は、君の頭の中にあるのかい?」

さすがはノーマンだ。

感情に流されず、一番のボトルネックを突いてくる。

「ある」

俺は頷き、懐から一枚のメモを取り出した。

原作の知識と、この3日間で死ぬ気で考え抜いた『偽装工作』のプランだ。

「ママは発信機の動きから、門にいた二人と、コニーを連れ去った一人が『別々のグループ』だと考えているはずだ。そして、コニーの発信機は森の奥で消えた。なら、ママにこう思わせればいい」

俺は3人の天才たちの顔を見回した。

「──『コニーを連れ去った外部の侵入者』がハウスの敷地内に潜伏し、今もコニーを人質にしてどこかに隠れている、と。

ママの警戒の矛先を、ハウスの子供たちではなく『外部の敵』に向けさせるんだ」

ノーマンが細い指を顎に当て、急速に脳内でシミュレーションを始める。

「なるほど……。ハウスの内側に裏切り者がいると疑われるより、外からの侵入者がいると思わせる方が、僕たちの身の安全は確保しやすい。ママは子供たちを守るために、一時的にハウスの監視を強めるだろうけど、内側への疑いは薄れる……」

「馬鹿言え! そんな綱渡りが成功するかよ!」

レイが机を叩く。

「もし失敗したらどうする!? 確実に逃げられるのは、予定通りエマとノーマンの2人だけだ。これ以上のイレギュラーは認めねぇ!」

「レイ」

ノーマンが静かに、だけど重い声でレイを制した。

「僕は、エマの願いを叶えたい。全員で逃げる。コニーが生きてるなら、なおさら置いていく選択肢はないよ」

「ノーマン、お前まで……!」

「ただし」

ノーマンは俺に視線を戻した。その笑顔の裏にある、ゾッとするほどの知性が俺を射抜く。

「ソラ。君の作戦に乗るよ。だけど、もし明日、君の偽装がママに見破られそうになったら──その時は、

僕が君とコニーを切り捨てる。残りの兄弟たちを守るためにね」

ゴクリ、と喉が鳴った。

これが特上、ノーマンの覚悟。

優しいエマの味方でありながら、そのためなら悪魔にでもなる男。

「……上等だ。サラリーマンの泥縄、舐めるなよ」

俺は不敵に笑ってみせた。

エマの優しさ、レイの冷徹さ、ノーマンの覚悟、そして俺の原作知識。四人の思惑が複雑に絡み合いながら、ハウスの運命を決める、嵐の朝が訪れようとしていた。

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