またUAが伸びるたび、いったいどう検索して見つけてくれるのだろう?と思います。
お気に入りぜんぜんいないのにね。不思議っ!
渡り廊下の真下。校舎と中庭の出入りによく使われる出入り口の柱の影で俺と相羽六は息を整えていた。
「で、話はしてくれるだよな?」
「彼らは私を追ってきた魔法使いよ」
「…あのさぁもうちょっと実のあること教えてくれない?弱点とか、倒す算段とかそもそも倒していいのかとか。
だいたい俺も魔法とやらが使えるようになったっぽいし…その辺のレクチャーとかさぁ!」
時間が足りない。分からないことが多い。敵は時期にくる。
…大丈夫。マイナス面はよく見えている。解への足掛かりが少し足りていないだけだ。
「…ごめんなさい。あなたを魔法使いにしてしまった。こんなつもりじゃなかったの。本当よ。誰にも迷惑かける気なんてなくて…兄さんを取り戻したかっただけなのに…」
泣き出した。
ちょっと待て。ちょっと待てよこのアマ。せめて言うこと言ってから泣きやがれ!
「お、おい、泣くな。そんなことはどうだっていいんだ。
別に魔法使いになったとかは気にしてねぇから、使い方とかそっちをさ!」
「ひっく、ごめんなさい…魔法にはいくつか種類があるんだけど、現実世界ではほとんど使えないの」
「だけど俺は使えたし、お前の兄貴も使ってたろ」
「ううん、そういうことじゃないの。魔法使いにとって現実世界は呪われているから。だから現実世界で魔法使いに魔法を当てるとギフトが発動して魔力をすべて失ってしまうの」
なるほどつまり俺とあと狼神とやらの回避魔法は攻撃じゃないから大丈夫ってか。
そう考えれば近未来予知はかなり恵まれている。向こうも俺が魔法使いであると知っている以上もう魔法は使わないだろう。
となれば。なんだ女抜いて三対一のケンカかよ。
思ったよりずっと軽いじゃないか。しかも回避魔法はおそらく狼神よりこちらの方が優先度が高い。
メガネは明らかに回避ではない。慢心はできんが先は明るそうだ。
「あの…」
勝算を出すのに考え込んでしまったようだ。
「私の兄さん見たでしょ」
「十ってやつか」
「うん、私の兄さんよ。でも今はゴーストトレイラーに記憶を変えられしまって…」
「ゴーストトレイラーね」
「亡霊の先導者と呼ばれているコミュニティよ彼らは魔法使いの理念を覆そうとしているの」
戦争、といっても国家間でなく組織間か。どちらかというと抗争が近そうか。
「普通人間は魔法を見ると怯え恐れ拒絶する。あなたみたいなのはごく稀なのよ。魔法使いは昔からずっと人間に恐れられてきたの。だから自分たちの存在を隠すことにした。
だけど、それをよく思わない人たちもいた。彼らゴーストトレイラーみたいにね。
ほとんどの魔法使いは人間との共存を願っているのよ。すばる魔法学院でも人間との関係を円滑にするためにいろんなことを学ぶわ」
「魔法学院ね…」
そこそこ重要な話だ。今でなければ。長期的にみてもしくは俺の今後の身の振り方を鑑みてこれ以上ない重要案件だ。
しかし、いやもう狼神は殺すし。今を生き残るために、奴らを倒すために必要な話じゃないだろ。
「これはすばる魔法学院の制服」
「相分かった。その話はまた後でな」
今話している余裕はないため、強引に話を打ち切る。
「何やってんの武?」
背後から五十島がやってきた。
「げ、五十島…」
竹刀と日誌を抱えている。あとちょっと怒っていらっしゃる。
「部活はどうしたの?!その子だれ?!」
「あーこいつは相羽六。何を隠そう魔法使いさんだ」
「え!?ちょっと武くん!」
「てことで五十島、もうすぐ怖い魔法使い襲ってくるから逃げろ!」
真顔で言えた俺はかなり奇人だと思った。
「ちょ、武?!」
「いいからいいから」
強引に押せば五十島はたいてい引いてくれる。五十島をUターンさせ校舎内に戻していく。
念のため竹刀は借りておく。竹刀二刀流とかこの場合役に立たないだろうけども。
「みーつけた」
また背後から声がかかった。狼神とメガネだ。
二人しかいない…十がいないのは好都合だが開けた場所でマッチョを相手にするのはよろしくない。地の利は求むるべきだ。
十がいない以上周囲のものを凍らされる心配もない。方針は屋内へだ。
「え…?」
五十島が困惑顔で振り返った。なんだよ信じてなかったのかよ。…そりゃそうだ。信じ込んでいても今後の付き合い方を考えなくてはならない。
「もう逃がさねぇぜ」
回復しきった様子の狼神たちは向かってくる。
周囲を再度確認するとまだ距離のあるところに伊田一三が見えた。誰か肩にかついでいる。服的にさっきのパーカー女だろう。
なにしてんだあいつ、超グッジョブ!
「ちょっとその剣…何こいつら?」
「だから恐い魔法使いだって。襲いくるマッチョ。超怖そうだろ?だから下がっとけ」
必要以上に五十島に緊張感を与えてはいけない。茶化すように応えてやった。
「さぁ、同じ回避能力者同士ケリをつけようぜ」
「ハッ!さっきボコボコにされたくせによく言うぜ」
「あぁそうだ。だが今度は違う。一対一じゃない、二対二の足手まとい付きだ」
「…嫌なやつ。五十島、相羽連れてダッシュで屋上だ。頼んだぞ、急げ!」
混乱したままのようだったがどうにか走り出してくれた。それを確認しつつも切りかかって引きつける。
「女のために二対一か。健気なこったなぁ!」
「…そうでもねぇぜ」
背後でアタッシュケースを振りかぶっていたメガネを伊田が一瞬速く殴り飛ばす。
「ガッ!」
「なに!?」
「なんや七瀬ピンチやないか」
予想通りパーカー女担いだ伊田がやってきた。
「バッカお前、こっちくんの見えてたから。お前も頭数に入ってたんだよ。つか来るの遅いし」
「助けてもらっといて礼の一つもなしかいな」
「いや、ありがとう。五十島ともう一人には中に逃げてもらったけど、お前の抱えてるそいつともう一人敵がいる」
「なるほどなぁ…ほんならさっさとこいつら倒さなあかんちゅうわけや」
「いや、そのもう一人が一番強い。合流を優先しよう」
まずは行動の指針を決めておく。十がドッ○ンすぎるんだよなぁ…
とりあえずこの騒音から離したからまだ安全だとは思うが…見えないのはかなり不安だ。
「蛍がやられただと…貴様何をした!」
「応える義理はない!」
不意打ち気味に狼神を突きで突き飛ばす。意味が重複しててへんてこな日本語だこと。
苦しげな表情をしながらも立ち上がるんだからマッチョはキチガイ。
ター○ネーター相手にまともに相手してやる理由なぞない。
「行くぞ伊田!」
一つ階段を登って渡り廊下を渡る。部活棟に屋上は無いからだ。土地勘が無ければまずそのまま四階のまで行ってしまうだろう。しかも三階にも四階にも渡り廊下がないため二階まで戻ってこなければならなくなる。
おそらく武はそこまで考えての屋上指定だろうと関心しながら五十島くるみは相羽六を連れて渡り廊下を走っていた。
「あなた達なんなの?!」
「武くんの言った通り、私たちは魔法使い…彼らは私を追ってるの」
なんであんたは名前で呼んでるのよ!と思いながらもまずは胸にしまっておく。武が名前の呼ばれ方に無頓着なことを知っているからだ。
「じゃあいったいどうして武が戦ってるの?あなたいったいどういう関係なわけ?」
五十島くるみにとって今最も重要な質問に、しかし相羽六は首を振った。
「わからないわ…いきなり魔法使いにさせられて彼らと命懸けの戦いに巻き込まれて…でもそこには一つも文句を言わないの」
命懸けの戦い、と言われて五十島は内心で舌打ちをした。そうだ命懸けの戦いなのだ。
あの武が今それに巻き込まれて、逃げるはずがない。このままではダメだこのままでは……
そんなものに武を巻き込んだ相羽六が憎たらしいがそんなことを言って仕方がない。建設的に行くべきだ。
「いったいどうやって武を魔法使いにしたわけ?」
「たぶん…索敵用の虫を撃った時だと思う…」
「何で虫を撃ったら武が魔法使いになるわけ?!」
「子供のうちに魔法を受けると細胞が活性化して魔法使いになってしまうことがあるの!大人になるとそうでもないんだけど…」
「…なら私も魔法使いにして」
三階と四階の間の踊り場で立ち止まる。
「そんな、なにも関係ない一般人を巻き込むなんて…」
「でも、武を巻き込んだ。もう一人増えちゃてもたいして変わらないでしょ?」
「こんなところで会うとは奇遇だな」
階下から剣を携えた男が登ってくる。
「兄さん…」
「え、お兄さん?」
仲のいい雰囲気ではない。どころか隣の六は銃を構えてさえいる。
「兄さんお願い!正気に戻ってよ!」
「俺はお前の兄などではないと何度も言っているだろう!」
男は苛立ちをあらわにして剣を抜く。
ついていけないついていけないついていけない!
なに?!兄妹喧嘩?!そんなので銃とか剣とか頭おかしいんじゃないの?!
「え…ちょっと…」
「五十島さん逃げて!」
相羽さんは襲いかかる男との間に割り込むように一歩前に出た。
「きゃっ?!」
足が竦んで縺れて階段に尻もちをついてしまう。
マズイマズイマズイ!
恐怖と混乱で頭が回らない。
私に注意がいって隙ができた相羽さんも蹴り飛ばされる。
「どうやらその女は魔法使いじゃないようだな」
男がこちらを見やる。
“あの時”がチラつく。
「あ…」
足元が凍りついている。
魔法だ。本当に使っている。
「兄さんっ!」
「一般人に邪魔はされたくないからな」
まだ怯んでいる相羽さんに刃を向ける。
「これで終わりだ」
ダメだ足が動かない。このままじゃ相羽さんが殺される!
魔法を受けたことに気がついた。なんでもいい!何か魔法が使えれば…!
ポケットからお気に入りのルージュが転げ落ちた。反応するように魔方陣が現れる。
「なに?!」
男が目を見張る。
なにが起きたか分からない。周囲を見回しても変化が見られない。
肩の重みで気がついた。…胸が大きくなっている。
「きゃあ!なによこれ!」
「…生物魔法」
若干気まずそうに相羽さんが答えてくれた。
「そんなに落ち込むな!上等な時間稼ぎだったぜ!」
三階から音を立てて駆け上がってくる人影には見覚えがあった。聞き馴染んだ声だった。
「…武!」
竹刀を構えて十に突きこむが躱される。
攻撃する分に予知が発動しないのが残念すぎる。
狼神の言を信じるなら俺の魔法は回避魔法らしいから仕方がないか。
体勢が悪いとふんだのか距離を稼がれる。
「数の暴力ってなかなか効くぜ。これは実体験だ」
言うまでもなくさっきの。プレッシャーが違うんだよプレッシャーが!
「くっ…」
十はこちらに記憶張りながらも引いていく。だが他には散漫じゃないですかねぇ。
そこに着いた時思わず俺はニヤリとした。
「やっちまいな!」
小物感バリバリのセリフで勝利する。俺の数少ない夢の一つだ。
「なに?!」
「おおおぉぉぉ!」
伊田が貸した竹刀を出鱈目に振り回す!形も何もないが奇襲は大成功だ。
左肩に当たったが浅い。剣を取り回されて伊田の竹刀を折られる。
「な、なんやて!?」
とっさに距離をとった伊田へ十は氷を向けるが構わず俺は走りこむ。
伊田の方へ顔を向けて気がついたようだ。
伊田は炎をちらつかせている。
「こいつ魔法使いか?!」
十は即座に魔法を消して伊田へ刃を突きつけにかかる。
「わわっなんやぁ!」
ちぃっ!合わせていてもそりゃビビるかっ。
仕方なしに足を止める。
膠着は一瞬。
「そっちかぁぁぁ!」
階下から怒声が響く。五十島と五十島の元へ駆け寄った相羽を含めた全員の気がそれた。
剣に怯えていた伊田が一番に反応して折れた竹刀の根元で剣を払う。
「!」
俺と十はほぼ同時立ち直った。
だがとった行動がまずかった。走りよる俺に十は伊田を投げ込む。
「ぬわっ」
「邪魔っ!」
その隙に逃げられる。五十島が動けない以上狼神を無視できない。
「ちっ。伊田!五十島の足溶かすために水持ってきてくれ!俺はあいつらの足止めをする!」
「わかった!気張れや七瀬ぇ!」
誰にものを言ってやがる。
「五十島。…もう大丈夫。私が来た!」
「…ぷっ。マンガに当てられすぎよ、バカ」
むぅ。やはり最初に言うべきだったか。まぁいいなけなしの時間をとった価値はあった。
下をみるとまだ来ていないようだ。さすがマッチョ。声のデカさにも定評がある。いったいさっきのはどこで叫んだんだ?下からだと思ったけど、もしかして別棟だったりすんの?…まさか、な。
「相羽、五十島を見てて。伊田もいるし真夏だからすぐ溶けるとは思うけど、一応な」
「…一人で大丈夫なの?」
「十いなけりゃ俺一人でお釣りがくる。だいたいあのメガネ喧嘩したことないだろ…魔法なしなら楽勝だ」
なんせ地の利は我にある。
後ろ手を振って下へ降りていく。
さて、そこそこに準備はすんだ。理想の半分も用意できたのは筋肉がメガネに合わせていたからだろう。あと俺の手際。
案の定敵は二人だ。
去ったことで予想はしていたが十はなんらかの理由で撤退することになっていたのだろう。でなけりゃあの場面、挟み撃ちでもなく別れないしこんなところで会ったりしない。じゃあなぜ屋上なのか。…空でも飛ぶんじゃないかなぁ……。
ともかく二人だ。上に異常がない以上間違いない。二手に別れることなく愚直に前進。まさに飛んで火に入る夏の虫だ。
「ようやく見つけたぞ!まさか女たちの逃げ込んだ校舎に屋上が無いなんてな。すっかり騙されたぜ」
それはお前の脳みそが筋肉でできているからだ筋肉め。戦場の地図くらい頭に入れておけ!
罵詈雑言は脳内に留めて近くに持ってきた掃除用具入れその一からモップを取り出して投げつける。
手間だがそのニその三からも投げつける。回転やまっすぐを織り交ぜたらたまにモップ同士でぶつかった。
「しゃらくせぇ!」
筋肉が大剣でまとめて薙ぎ払う。
「チッ!」
まぁそうなるよな。ちゃんと全部手元に用意しといてまとめて投げれれば一つくらいは当てれた。
決して投げるのが下手だったわけじゃない。決して。
調子に乗って駆け上がってくるマッチョとメガネにバケツに入れた水と雑巾を引っ掛けてやる。
メガネにこうかはばつぐんだ。
「ぬっ」
「うわっ!」
顔にへばりつく雑巾が良い味出してウザい。なんのダメージにもならないだろうが目に入ったらいたいだろ三割の確率で追加攻撃!
そんなことはどうでもいい階段の半ばで足を止めた。フラついて周囲がよく見えていない。これが肝要だ。
「せーのっ!」
言いたくはないが掛け声なしで投げつけられるほど俺は脳筋じゃない。
俺は用具入れそのものを投げつけた。
「なっ!」
とっさに狼神が大剣で薙いだが剣ごと用具入れと下へ落ちていく。
とっさで切り方が悪かったな。あと俺の斜め投げが功を奏した。間違いない。
「ていく、つー!」
そのニを投げつける。
「クソッ!」
今度はメガネがアタッシュケースを開いた。中から蜂の大群が飛び出る。そのニを吹き飛ばしてまだ少しお釣りがある。
「なんじゃそりゃ!」
回避魔法が発動して予知する。
だからどうした。走馬灯のように頭は回るがこんなもん見えてもよけられない。速すぎる。ラストの用具入れを盾にするように振り回すがてんで間に合わない。
外れも多く二三しか当たらなかったがフラつくには十二分だ。
「いってぇ!なぁ!」
振り回した用具入れの勢いと重さに任せて狼神に突っ込む!
殺すならこいつだ。メガネは伊田でもなんとかなる!
「ば、バカ野郎!」
さすがの筋肉も用具入れ+人の砲弾は恐ろしいらしい。
ドガシャーン!!
「いってぇ…」
全身激痛だ。どこが痛いじゃない。どこが痛くないかだ。
「武!」
上から五十島たちがやってきた。
どうやら無事に溶かせたみたいだ。
ばか、まだメガネが…
「が、ぐ…ガァァァッ!」
メガネが呻きだした。
赤い何かがメガネの全身から溢れ出る。
「ギフト…」と相羽が呟いた。
そうかギフトか。あったなそんな設定。作戦に入れてたけど、魔法くらったら怖すぎ痛すぎで忘れてたわ。
ともあれ終わったんだ。
ゴロンと狼神と用具入れの上から転げ落ちて仰向けになった。
「ハッ、楽勝だぜ魔法使い」
相手魔法ほとんど使わなかったけど。
意識が暗転した。