magician's war.   作:頑張れって感じの木偶

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説明回つまらない…
思わず新設定入れちゃったぜ(いまさら


第二話後編

 編入の話は存外にもあっさりと終わった。

 そう仲良くもない母さんが肯定的とは言わないまでも否定的ではなかったのがよかった。

 もともと半家出中だったのだ。どうせなら寮生の方が体裁もいいだろう。

 月光は五十島の頭がいっぱいらしい。ほとんど無視していたから大雑把にしか分からない。

 もしもあいつがこの学校に進学してきたら、トレイラーになることも辞さない所存だ。

 …魔法で殺せば完全犯罪だったのではなかろうか。

 まぁいい。五十島も編入したことを知った以上、どうせ奴もここにくる。

 そうなれば戦死する機会はいくらでもあるだろう。

 

 

「では次。あなた方の系統魔法を発動させてみてください」

 新学期。

 俺たちはすばる魔法学院のCクラスで魔法の授業を受けていた。

 先生は担任も兼ねている一氏誠。どことなくできる人オーラを振りまいているメガネだ。

「おい、『発動させてみてください』って言われても…どないすればいいねん」

 後ろから身を乗り出して伊田一三がひそひそと相談してきた。

「ねぇ」

 と同調するのは隣に座っている五十島くるみだ。

「知らねぇけど、こんな感じ。なんかこう、フッて」

 と超感覚派の答えは俺こと七瀬武。

「おお、七瀬くんはしっかり発動していますね。良い感じです。

 では他の二人はまず化身を出してください」

「あ、はい」

 といって五十島が立ち上がる。

 律儀なことだ。

「化身は分かっていますね?魔法使いが魔力を外に出す時に媒介とする道具のことです」

 ふむふむ。全くわかっていなかった。

 ていうか知るわけないじゃん。

 一般人には無縁のことですよ。

「私のはこれ」

 リップクリームを両手で持って見せた。

 昔から使っている物だ。前に見たことがある…気がする。

「俺の化身は…これや」

 微妙にもったいつけながらキメ顔で掲げたのはしゃれこうべの指輪だ。なにそれかっこいい。

「君のはなんでしょう?」

 俺の?フッ…俺のは…俺の…は…

「ないな」

 くそぅ。俺も伊田みたくドヤ顔でカッコいい何かを見せびらかしたかった!

 ていうかもうあれでいいじゃん。竹刀。特徴すぐ折れる。

 だめだそれ以前にカッコよくない。むしろダサい。

「え?ふむ…君の系統魔法は…」

 何かが一氏氏の目のあたりに集まった気がした。

 うっすらと目に魔方陣が浮かんでいたからビンゴだろう。

「なるほど、回避魔法ですねぇ」

「あぁ、そうだな」

 読まれたな。何を読まれたかが気になるところ。

 思考ならそこまで気にすることじゃないんだが…

 過去や本心なら早めに手を打っておきたい。

「相羽さーん!」

「はい」

 先生は俺の考えをよそに相羽を呼び出した。

「七瀬くんに付き添って売店に行ってきてください」

「売店…ンなとこで化身って売ってる物なのか…」

「ははは、要は愛着を持って媒介にできればいいですからね。売店で自分に合った物を探してきてください。

 ですがここの売店はすごいですよ。楽しみにしておくといいです」

 売店で楽しみってなんだよ…

 値段か可愛い女の子か美味しいお菓子か…

 トゥイーテoーでもいたら驚く。

 思わぬ楽しみができたぞ。

「ふーん。でもなんで相羽?」

「君の知人の中では一番の適任者でしょう。

 それに君は相羽さんを舐めすぎています。彼女の魔法の知識と技術は間違いなく上級者のそれですよ。

 話を聞いて少し思い知っておくといいでしょう」

 …まぁ伊田や五十島に来てもらってもとは思うけどな。

 当の本人は照れ笑いしてるしどうにもすごそうに見えない。

「はい。行こう、武くん」

 

「あの二人、意外と仲ええよな」

 不本意そうにチラと目をやる

「そうね。人間不信の塊にしては気を許してると思うわ」

 

 

「相羽の化身はいつから使ってんの?」

「ん?…あぁ、私とアーサーは初等科六年の時からの付き合い」

「…え、銃に名前つけてんの?」

 結構引く。

 ていうかアーサーってアーサー王?なんかカッコいいじゃないか。

「そうよ。化身や自分の武器に名前を付ける人って多いのよ」

 引いたことには気づかれなかった。

 ふむ、文化の違い…かな。なら思い切って俺もカッコいい名前を考えよう。

 ペンドラゴンとかエクスカリバーとかランスロットとか…

 円卓から離れろよ。

「兄さんも自分のサーベルにランスロットって名前をつけてたの」

 あ、つけてるやついた。

 兄妹で円卓囲んでて仲いいですね。

 だから円卓から離れろよ。

「あれは化身じゃないけどすごく大切にしてたの」

 言われてみれば当然だ。

 自分の命を託したり自分の体の一部として扱うほどに大切な物だ。愛着をもって名前を着けるのもアリだろう。文化の差というには少し違いがなさすぎる。

「そういやツガナシってどんな字書くの?栂無?」

「あぁ、漢数字の10よ。ちなみに私は6。みんなまず読めないっていうの」

 ふふふっ、と笑う姿は照れと一緒に自慢というか思い出というかそういう何かも一緒に隠しているように見えた。

「…あぁ、一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ九つ十!…なんで十だけつが付かないのでしょうか?っていうの、昔あったな」

 たしか『いつつ』につが二つ付くからって○休さんが言ってた。

 たしかにつがなしだ。

「へ〜、そんなのがあるだ。兄さんが帰って来た時、教えてあげたら喜ぶかも!『これで自己紹介が楽になる』とか言ってさっ」

 いや、むしろ面倒だろ覚えて貰えるとは思うけどさ。

 やっぱりこいつ、どっかズレてると思うんだよなぁ。

「そういえば兄妹で魔法使いなんだな。両親も?」

「えぇ、そうよお父さんもお母さんも魔法使い。だから、いわゆる魔法貴族ってやつなの。魔法貴族ってわかる?」

 確か家族から魔法を受けて魔法使いになったやつのことだ。

「ん、分かる。」

「コミュニティの中にはそういう生まれながらの素質を重要視するところもあるから、武くんも自分の入るコミュニティを選ぶ時は参考にしてみてね」

 コミュニティを選ぶ時は、か。

「え、俺たちってウィザードブレスじゃねーの?!」

「うん。ここすばる魔法学院ではいろんなコミュニティの人達がいるし、ウィザードブレスもそうしたコミュニティの一つなの。

 確か武くんたちはまだどこに入るとも言ってなかったよね?」

 強制的にウィザードブレスというわけじゃないのか。

 この学校の立ち位置がよく分からないな。

 だがまぁそういうことならウィザードブレスはないな。

 どうにも胡散臭い。

 第一魔法使いの主流派が人間と共生だなんて信じられない。自分たちの力を隠してする生活するのが共生だなんて、それじゃあまるで魔法使いが異常者か何かだ。

 人間はもっと自分本位で主観的な生き物だ。

 魔法使い至上主義のトレイラーの方がよっぽど納得できる。

「…ああ。じゃあ仮に俺がトレイラーに入るって言ったら、どうなると思う?」

 弾かれたようにこちらを見る相羽の目は見開かれていた。

「仮にだよ、仮に」

「…仮に武くんがそんなことを言ったら、学院長に止められると思う。それでも聞かなかったら…よくて退学。悪くて…」

 言いにくそうな表情でなんとなく察することができた。

「…記憶操作か」

「学院長がそんなことをするとは思えないけど…最悪は。今は一人でも多く仲間が欲しいから。殺すってことは多分ないと思う」

 それはまた胸糞なことで。

 空気が悪くなってしまった。

 たぶん、俺がどうこうではない。

 兄のことを想っているのだろう。

 なにせ現在進行形で記憶操作されているのだ。心配なことこの上ないだろう。

「兄貴、強いんだろ?だったら簡単に死にゃしねぇし、そのうち帰ってくるさ」

 そんな強いやつをどうやって連れて帰るのかは知らない。

 あまりにも無責任な励ましだ。

 だけど俺と相羽はその程度にしか知り合っていない。

「…うん、そうだね。ありがとう」

 戦争中だと言う。だったら、命があると分かっているだけ充分に恵まれている。そう思った。

「…でも!俺は現存世界で基本魔法が使えることを言わなかったことは、かなり根に持ってるからな!」

「ご、ごめんなさい…っ。その、つい説明を忘れちゃってて…」

 これに関しては絶許だ。何かしろというわけじゃないけど。決して話を変えたかった訳じゃない。

 

 

「こんにちはーっ」

 相羽がカウンターに声をかけると右目にデカイ傷を負ったおっさんが出て来た。

 これはおやっさんだな。

「おう、六ちゃん。今日は何が入り用だい?」

「私じゃなくて彼の物を探しに来たの」

「初めて見る顔だな、坊主」

 それはそうだろう。俺も初めて見た。

「どーも。坊主こと七瀬武です。髪はフサフサです」

「はははっ!面白いことを言うなぁたかし!

 俺は加藤だ。みんなはおやっさんと呼んでるよ。よろしくな」

 やはりおやっさんか。なんか全体的にそんな感じがする

「武だ。どうぞよろしく。おっさん」

 憎まれ口は忘れない。それが俺のアイデンティティー。

 年上の余裕で笑われてしまった。

「で、今日は何がいるんだ?」

「武くんの化身。彼、回避魔法を使うの」

「なるほど、じゃあこっちだ」

 

「いや、ここは売店とは言わない。武器屋とか武器庫とかもっと物騒な名前であるべきだ」

 案内された場所はまさにそんな感じ。

 蝋燭の明かりがさらに物々しい。

「おおっ?意外と余裕そうじゃあねぇか、たかし!みんな初めてここに来た時はもっと驚くもんだぜ?」

 いやかなり驚いてるから。

 なんでもありそうな感じが心踊る。

「ほぅ、なんだワクワクしてるのか?やっぱり男はこうでなくちゃな!

 さぁ行くぞたかし!冒険の始まりだ!ハハハッ!」

 ドンと背中を叩かれた。

 痛いし武だし。ボケてんのかこのおっさん。こうなったら意地だ。武と呼ぶまでゼッテーおやっさんとは呼んでやらない。

 

「さてと、何がいいかな…」

 俺も勝手に物色してみる。行動するのが大切なのだ。

「あ、俺剣道してたから、一つは日本刀っぽいのがいい」

「日本刀かぁ…ならこいつはどうだ?長さも竹刀とそう変わらない」

 そう言って投げ渡されたのは鍔?のあたりにトリガーのある剣だ。

「どう?」

「見た目より全然軽い。慣れれば片手でも振れるぞこれ」

 たしかに長さもいい感じだ。

「ねぇ、それって…」

 相羽が鞘についた魔法陣を指差した。

「あ、これなに?」

「その剣の前の持ち主も回避魔法の能力者だった」

「そうなんだ!ならいいじゃない」

 得心いったような相羽だが何がいいのか分からない。

 一氏先生の言葉が蘇った。たぶん今俺はちょっと渋い顔をしているのだろう。

「前の持ち主ねぇ…」

「彼女は先の大戦で魔力を失った。今頃は人間として生きているはずだ」

「もしかして、十五人の偉大な魔法使いの一人だったりして」

「ふふっ」

「え、本当なの?!すごーい!」

 そんなこと言われてもよく分からんので抜いてみる。

 ソリはほとんどない。刃はなかなか鋭いが西洋の剣らしく斬るというよりは叩き切るという感じだろう。

 その分受けやすそうで悪くはない。

「あ、柄にもなんかあるぞ」

 相羽に尋ねてみる。

「これ、魔法陣じゃない?」

 やっぱりか。うん、俺もそう思ってた。

「回避魔方陣だ」

 おっさんが助け舟をくれた。

「てことは!…この剣は魔剣ですね?」

「魔剣!」

 なんかカッコいいぞ。好感度が急上昇だ。

「ええ、化身に自分の魔法陣を付けておくと相乗効果をもたらしてくれることがあるの」

 相乗効果とな!単なる足し算や掛け算じゃない、倍々の力だぜ!何でもいい感はある。

「でも、たしか…」

「あぁ、他人の魔法陣のかかれている化身は危険だ。腕の一本や二本は吹っ飛ぶかもしれん」

 他の剣を抜きながらおっさんが相羽に応え合わせをしてやる。

「それは怖いな」

「ただなその剣は…回避魔法の能力者なら魔法を発動しても大丈夫なようだ」

「ようだって、試したんですか?」

「いいや」

「武くん、これ危ないよ」

 たしかに危ない。が、おっさんの言い方が気になる。

 試したわけでもない。今気づいたように大丈夫なようだって、それじゃ今知ったとしか思えない。

 …なら、そんな危ないもんをどうして俺に試させた?

 おっさんに目を向けるとまるで今も試しているような目をしている。気に入らない。

 

 ブンッ!とおっさんが剣をぶつけてきた。

 強張った身体が壁に叩きつけられる。

 しくじった。

 おっさんの剣は止まらない。

「危ねえじゃねぇかっ!」

「当然だ!」

 何が当然だ。話にならない。

 話をする気もないのだろう。

 苦し紛れに回避魔法、直感回避を発動する。

 その攻撃を躱したところでおっさんの攻撃が止まった。

 が、その代わりに何かが吸い取られるような感覚になる。

「そのまま離すなよ!」

 無茶なことを言ってくれる。

 とにかく全力で堪えているとトリガーが反応した。それでもまだ吸い続けられる。

「かなりの魔力量だな。ろくに訓練もせずこれとは、今後に期待ができる」

 呑気に言ってくれやがって!

 もうそろそろ限界だ。

 絞り取られて意識が遠のき始めたところでようやく止まった。

「はぁっ!はぁ、はぁ…はぁー」

「武くん!」

 心配して駆け寄ってくる。

 たしかに今のは死ぬかと思った。だけど。

「…いい剣だな」

 このくらい貪欲でないと、このくらい身を削らないと、俺の欲しい勝ちは手に入らない。

「よーしよし、よく頑張ったな。この剣は能力者の力を最大限に引き出そうとするんだ。コントロールできなければ魔力を一気に搾り取られる」

「はぁ…」

 呼吸が整わなくてまともに返事ができない。

「初めてでカートリッジの再生にまで漕ぎ着けるとわな!化身はその剣にしろ」

「カートリッジ?」

「他人の魔力を使えるということなんだ」

 おっさんが用意していた弾をみせてもらった。三発ある。

「見ての通りカートリッジには三発、弾を込めることができる。他人の魔力で剣の形を変化させることができる特殊な弾だ」

「他人の魔力を弾に、ね。」

 加藤は何かを思い出すようにしみじみとした目で語った。

「トワイライト。その剣の名前だ。そう前の持ち主は呼んでいた」

「トワイライト…」

「黄昏だ。彼女は太陽と月が同時に見える時間が好きだと言っていた…昔のことだがな」

「…へぇ。ロマンがあるな。

 おっさん。何でか知らねぇが俺にこの剣使わせたいんだろ?」

「…ほぅ?だとしたら何だっていうんだ」

「俺もこいつは結構気に入ったし、一つはこいつにする。だからさ、みんなには内緒でもう一つ化身を用意してくれない?」

 

 ずっと思っていた。魔法を発動する媒介を一つしか所持しないことの危険性。それは例えるならマシンガン一つで他にはナイフもハンドガンも持たないようなものだ。

 ひとえに魔法が万能すぎるのもある。なんせ一つの武器で地雷からロケランまでのバリエーションを持てるのだ。

 でも、俺は怖い。武器を取られる。そんなつまらないことで負けるかもしれないなんて、嫌だ。

 死ぬなら殺されたい。そうならないために殺す。

 そうシンプルにいたい。

「武くん、やめた方がいいよ」

「いかにも初心者が考えるようなことだな。いいか坊主。

 化身を二つ所持するといことには相応のリスクがある。

 一つであればそれだけで能力者の力を十全に出せるが、二つであればその両方を用いない限り出せない。一つでは半分の力も出せない上に両方を用いても上手くかみ合わない限りはよくて7,8割といったところだろう」

 だから化身を変えることはあっても同時に使うことはほぼないんだ、と締めた。

 やはりデメリットは多分にあったか。それはそうだろう。でなければ複数用意しない理由はない。

「構わない。ある程度想像してたしな。呪われて寿命が縮むわけでなし、何も問題ないだろ」

「常に弱くなるのは呪われるのと変わらんぞ?」

「毎日全品半額って、昔見たことあるんだけどさ。あれってつまり、半額が低下ってことじゃん?

 三割だか四割だか知らねぇけど、いつもそうならそれはもう、俺の実力だ」

「そこまで言うなら分かった。こいつを持っていけ」

 刀の柄とでもいえばいいのか、刀身がないそれを投げてよこした。

「ありがと、おっさん。…こいつは?」

「銘はない。トワイライトがダメだった時勧めようと思っていたものだ。

 そいつは持ち主の魔力とイメージに反応して風の太刀筋を生む。技量によるが距離もとれるが…受けることができない。何せ刃がないからな

 だが隠し持ちたいならむしろ好都合だろう」

「あぁ最高だ。

 …暁、デイブレークだ」

 トワイライトと合わせるのならこれしかないだろう。

「お気に入りを二本もくれてやったんだ。これから楽しみにしてるぜ、武」

「任せとけ!…いい仕事だったぜおやっさん」

 

 

 戻ってきたCクラスは焦げた臭いが充満していた。

「いったいどうしたの?」

「たくっ!伊田くんの魔法が暴走しちゃったのよ!」

 五十島が憤慨している。気持ちは分かる。

 顔とか髪とか煤けてるし。

 一氏先生が「このクラスではよくあることだから、平気ですよー」とフォローしている。フォローになってない。

「ねぇ知ってる?!Cクラスって別名地獄クラスっていうんだって!」

「地獄クラス?」

「うん知ってる。みんな私のこと、地獄落ちっていってるもの…」

 …そうか、地獄クラスか。

「クックックッ…」

「た、武…?」

 ダメだ、笑が止まらない。

 地獄落ちって呼ばれて微妙な顔してる相羽の顔も、

 魔力を暴発させて教室黒焦げにしてバツの悪そうな伊田の顔も、

 その伊田の魔法で煤けた五十島の顔も、全部笑える。

「あっはっはっは!なんだ、やっぱり俺は地獄に来たんじゃないかっ!」

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