書いてて悶絶するレベル。
女子の考えてることなんて、分からないってばよ…
「あ〜魔力吸い取られるんじゃ〜」
やばい。この脱力感気持ちよくなってきた。癖になりそう。
「武くん!ただトワイライトに魔力を与えてるんじゃダメだよ!もっと魔力をコントロールして。せめてカートリッジを開かないとっ」
うむ。相羽六の言うとおり気持ちよくとも失敗は失敗である。
俺たちは今自主練中だ。
理由は単純。下手すぎる。
ちなみに相羽は一番下手くそな俺についてくれている。
デイブレークも知ってるしわりと助かる。
だいたいみんなで練習とか天才七瀬武こと俺には似合わないんだよ。もっとこう、夜中に隠れて猛特訓とか。…してるけども。デイブレークは超必ですし。
武器って難しい。
先人曰く、安定して起動できない兵器は兵器として欠陥とかなんとか。
なんだよ、曰くとか言って超曖昧じゃん。
ちなみに全くどうでもよくないがどちらも成功率は一割切ってる。しかも成功と言ってもカートリッジを開くだけだ。天才?なんのことですかね。
「オーケーオーケー分かってる。超分かってるけどできないもんはできないんだよ!それができないってことだ」
…これは格言じゃなかろうか。かなり核心をついてる気がする。気がしただけ。
「おおおうわぁっ!」
あ、やばい。俺の直感がそう言っている。
そそくさと隣で火を出していた伊田一三から距離をとる。
「だあだあっ!」
これだけ離れれば大丈夫だろう。火に遊ばれている伊田は唯一火を操る動物人間としてどうなのだろう。
横からピンクっぽい光がさして眩しい。
そちらを見ると五十島くるみが魔法を成功させたようだ。
魅惑のボディが眩しい。
おいなんだよあの胸。聞いてねぇぞ。もちろん見てはいる。見逃せない。見放せない。目を離せない。
「おぉ〜」と男子の歓声があがる。
「おい五十島!変身するなら子供にしとけっ!」
「えっ!武ロリコンだったの?!」
「ちげーよバカ!周り見てからしゃべれバカ!」
こっちの気も知らないで、よくもそんなことが言えたな。
どうも、独占欲丸出しのきも男です。
「…え。きゃあっ!こ、こっち見んな!」
照れて隠す姿って逆に背徳感があるよな。
…しかしロリコンか。なるほどロリコンがいたら子供に変身しても意味ないんじゃないだろうか。
むしろダボダボの服と相まって最強になる。ダメじゃん。
だいたい自分に変身してどうするんだよ。
ロリコンから熟女好きまで狙えるくらいしか思いつかないんだけど。…言ったら半殺しくらいされそう。
「うわわぁー!?」
五十島の要望に応えるように伊田は炎があたりに広がって目隠しになる。
俺のいた場所も含めて。
直感?気づきましたよ。ええ気づきましたとも。だがよけれるとは言ってない。視えても避けれないものは避けれないんだよなぁ…あ、これも格言で。
俺が偉人すぎててやばい。
「えっへへ。またやってもうたわ」
照れ笑いじゃ済まねぇぶっ飛ばすぞこの野郎。
「ちょっと!こっちまで火が飛んできたわよ!
…あーもう毛先焦げちゃったじゃない」
毛先で済んだなら無問題だろ。
今の炎、結構火災ですよ。向こうなら余裕で火事。
「ほっときゃそのうち伸びるやろ」
「何ですって!ちょっと、武もなんか言ってやってよ」
ほっとけば伸びる。
「大丈夫、毛先くらいたいして変わらん分からん」
言わない俺は超大人。
怒らせるのが怖いわけじゃない。
俺は命を賭けて戦える戦士だ。女の一人や二人、どうってことない。…ただ、そう、これは戦略的撤退なのだよ。
ちなみに「大丈夫、それくらいで五十島の美しさは損なわれないよ」と迷った。なにそれ吐きそう。
「…武、後で覚えときなさいよ」
え、あれ?怒ってる?
砂糖かなんか、吐いときゃ良かった?
「わ、忘れた…」
小声である。
「くるみ〜っ!授業始まるよ!」
相羽が俺たちに教えてくれた。
違うか。くるみに。なんだよくるみって。
「なんや?お前らいつの間に仲良くなってん?」
「仲良くないわよ!あの子が馴れ馴れしいだけっ」
「へ〜」とにやける伊田は気持ち悪い。たぶん俺も。
くるみちゃん、友達作るの下手だからな〜。
催促する相羽と言い合いながら更衣室へと向かって行った。
体育かったりいな。なんて思いながら、きっと今の俺は充実している。
「あ、そうだ」
と、隣で着替えてる六から声がかかった。
「じゃーん。占い魔女っ子さんの、占いチケットだよっ。しかも二枚!」
じゃーん。と言われても。
「占い?興味ないわ」
さっさと流して着替えを進める。
「うっ…普通の占いじゃないんだから。すごい人気でなかなか手に入らないんだけどね。ヴァイオレット先生が、行けなくなったからって二枚もくれたの」
「ヴァイオレット先生って英語の?」
なんでまた二枚も用意していたのかしら…
よく知らないけど、普通行っても一回よね?
「そうなの!一緒に行こうよ」
「お一人でどうぞ」
だいたい、人気でなかなか手に入らないのになんで二枚も持ってたのよ。胡散臭いわ。
「何を占って貰う?恋占いをしてもらう子が多いみたいだよ!」
「恋?」
「うん。恋占い」
………。
「まぁ…そこまで言うなら、もらっといてあげるわ」
所詮占いだもの。ぜんぜん信じてないし。気にしてない。
そう、気にしてないの。
だから六がどーしてもっていうから、行ってあげるだけ。
わざわざ遠ざけるなんて、意識しすぎで逆に信じてるっぽいし。
…ただちょっと、ほんのちょっとだけ。最近武と六の仲が縮まったような、まるで共通の秘密を持ってるみたいで不安…なんてことはぜんぜんないわ。ぜんぜんなかった。なかったけど試しに一回くらい行ってみるだけよ。
…私はいったい何と戦ってるのかしら。
「くるみ?」
いけない、少し考えすぎていたみたい。
「なんでもないわ…っ。………なにそれ?」
デカい。
おかしいわ。私たちまだ高1。15才よ。
「もしかして、毎日牛乳飲んでるとか?」
「牛乳?あまり好きじゃないけど…」
「じゃあ、背筋のストレッチしてるの?」
「してないよ?背筋のストレッチってなに?」
「とぼけてるの?」
「とぼけてないってば」
おかしい。そんなはず、そんなはずないわ。
「その胸!」
「え、胸?!」
だいたい私たちは同い年よ?こんなに差が出るなんて、谷間ができるなんて…
「まさか、誰かに揉んでもらってるの?!」
「えぇ!なにいってるのくるみ!そんな分けないでしょ!」
照れて両手で隠しながら背を向ける。
女相手でこの反応は…白か。
「もしかしてくるみは…誰かに揉んでもらってるの?」
「ふえぇ、も、揉んでもらってないわよ!武にだって触らせてないんだから!」
「あ…武くん…?」
「さ、最低!」
ダメだ想像しちゃいそう…
恥ずかしくて、逃げるように先に出た。
「やっほ、相羽、五十島!体育終わったんだ」
確かプールだったよな。隣に無駄に熱いのがいるだけに羨ましい。物理なとこがミソ。
「え?あぁ、うん」
二人してなんか挙動不審だ。
「どないしてん?二人とも。ゆでダコみたいになっとんで」
まさしく。ちなみに伊田の顔も意地が悪い感じになってる。
「な、なんでもないわよっ!」
吠える五十島の隣で相羽が小さくなってる。
ぜんぜんなんでもなくない。
「なにカッカしとんねん。もっかいプール入って頭冷やした方がええんとちゃうか?」
なるほど名案だ。俺もカッカするからプール入りたい。あとウォータースライダー乗りたい。
五十島とは付き合い出した理由的に行く気しないし、女子いるとこに混じると五十島怒るし、かといって野郎だけだと集まりが悪い。結果あまり泳いでない。泳げるのに泳げないって感じ。
「何ですって!」
こいつら仲いいなーと眺めていると女子が二人ほど通って行った。
「ホラ、あの子よ」「あぁ〜裏切り者の妹?」「声が大きいよ」
なるほど、これは確かに一刻も早く助け出したくなるかもしれない。いや、オマケの理由程度だとは思うけど。
当の相羽は小さくなっている。時期に逃げ出すんじゃないの?
気に入らない。
「あーあー聞こえてるっての!言いたいことがあるんなら面と向かって言いやがれよ!」
「ちょ、ちょっと武!」
五十島の静止はこの際無視する。
俺は陰口が大っ嫌いだ。言いたいなら堂々と胸を張って言え。言いたくないなら黙ってろ。
噂も嫌いだ。ロクに合ってもねぇのにまるで真実のような面をするし、誰も彼もが自分にとって面白い話に寄せていく。
自分の人生が退屈だから。テメェのつまんなさを、他人に押し付ける。自分の限界に溺れて、他人に夢を見ているんだ。知りもしないで、知ることもできないで、白昼夢を見る。
気に入らない。
二人の女子生徒はこちらを見はしたが、相手にしないとばかりに先へいく。
その姿はまるで、噂した自分たちが表面上だけ悪いそれが正しくて、咎めた俺が正義ぶってるだけで間違っている。そう言ってるように感じた。
気に入らない。そう、だけどそれが真実だ。
人間なんて、魔法使いだって、所詮は主観的で偽善ぶって自分本位にものをはかる。客観なんて言葉は虚構の偶像。
テレビの中のアイドルだ。
どこかに存在しているはずのそれは、でもここにはない。
俺の元にも。ない。
「なんや感じ悪いなぁ」
「そーだな」
「武、大丈夫?」
「大丈夫、ていうか何で俺なんだよ。相羽にきいとけよ」
なんで俺が心配されてんの?沸点低いかまってちゃんみたいじゃん。…あんまり違ってない気がするぞ。
「わ、私は大丈夫。ごめんなさい!その、私のせいで…」
「いや、別にお前のせいじゃねぇだろ。どう考えてもあいつらが悪い」
あとこの空気にしたって意味なら俺も。言わないけどね。
「ありがとう…でも、私ちょっと先に行くね」
「あ、おい!」
そのまま相羽は行ってしまった。
「一人にさせてあげなさい。優しさが辛い時だってあるわよ」
むぅ、そう言われると納得するしかない。
「結局、あいつらなんやったんや?」
「彼女たちはウィザードブレスな所属している子たちですねぇ」
伊田の疑問に答えたのは一氏先生だった。
「一氏先生…!」
この人、また魔法を使ったな。明らかに彼女たちを見る機会はなかった。
間違いなく過去か何かを読めている。
条件は分からないがとにかく目を合わせるのは避けよう。
無駄にならないといいなぁ。
「さて、少しおさらいをしましょうか」
話が長くなりそうだと中庭に場所を変えた。
たしかに、座れるって素晴らしい。
「今、コミュニティは50以上あると言われています。その中でも国際魔法師協会に加盟していて、規模が大きく議決権がある七つがセブンスコミュニティと呼ばれています。
まずウィザードブレスを筆頭にエクリプス、クラブオズ、エンシェントペンドラゴン、スプリガン、ビショップオブザキャメロット、そしてフェニックス財団。
敵対するゴーストトレイラーはこれらに含みませんが、コミュニティはそれぞれ特徴があり、トレイラーに対する意見にも違いがあります。
そのトレイラーを最も敵視しているのが我々ウィザードブレスです」
なんだよみんな、無駄にかっこいいコミュ名付けてんのな。これ考えたのヒゲはやした厳ついおっさんだと思うとちょっと笑える。
いや、モモたんみたいな感じかもしれないのか。
うちの五十島も年齢詐欺るしな。逆方向だけど。
「知っての通り相羽さんもその一員なのですが、お兄さんのことで一部の人に裏切り者扱いされてしまってるんです」
「…そうだったんですか」
途中で読めてはいたがコメントしにくいな。
相羽の言ってた記憶操作を信じるなら裏切りどうこう以前だが、それを知らないウィザードブレスも多分にいるのだろう。噂ってそんなもん。
だから大嫌いなんだが、実際に被害を受けてる奴にかける言葉なんてロクなもんがない。
頑張れだとか気にすんなだとか、あるいはお前は悪くないだとか。
励ましにも気休めにもなりはしない。
事実を全て知ってる本人には、そこに確かにある罪にも気づいているからだ。
例えば相羽十を連れ戻すのにかかる労力、資金。
敵対組織から連れ戻すにはちょっとやそっとでは全くきかないだろう。
あるいは死ななかったこと。死ねば良かったのだ。
そうすれば連れ戻す必要はおろか敵に利用されることすらなかったのだから。
不謹慎だと言われても、単純な原理はそこにある。
「武ったら!なにぼうっとしてるの?」
「や、別に。気の毒だし、同情くらいしてやるかなって。…今の俺じゃどうにもなんねぇしな」
それが、少し悔しかった。
ついスラックスを握りしめてしまい、気づかれないようにすぐ離す。シワがついてなければいいが。
「…そうね。行きましょ!次の授業に遅れるわよっ。もー、武って私がいないと本当にダメなんだから」
そんなことはないぞ。
世話してくれるからそれを前提に動いてるだけ。楽だもの。
「なんや、カミさんぶって…あだだだっ」
「先生!ありがとうございました!」
黙って伊田の腕を極める五十島。
手際が良すぎてビックリ。いやマジで。
というか、伊田のやつさっきまで寝てただろ。一氏先生も気づいてる風だったけど。
その後みんなと別れて適当な教室を覗く。探検楽しい。
気を許していてもいなくても、一人になりたくなることがある。というかだいたいいつも。
団体行動のできない社会不適合者です。
「可愛いよなー五十島って〜!」
「これ買いだなっ!」
「俺こっちのがいい!」
「いや、これだろ!」
etc…etc…
毎度毎度どこに行ってもどいつもこいつも…!
この教室の中にはまだ男子しかいない。
違った猿もいた。
この猿、どこにでも出没するからおちおちプールにも行けなくなるんだよ俺が!
「やめろクソ猿ども!それは立派な盗撮だ。余裕で訴えるぞオラ」
「なんだよ七瀬っ!お前もこっち側だろ?幼馴染だからってそんなにカッカするなよ。彼氏ってわけでもないんだろ?」
なんだよこっち側って。どっち側だよ。エロいとは思ってるよ。特に今朝の格好とか。
「いや彼氏だから。てかお前ら気づいてなかったのか。童貞め」
俺もなのは秘密。
「なにー!幼馴染って聞いてたのにっ!なんだその羨ましすぎる設定!」
「…まぁそういうことなら、仕方ないか。…ほらこれで全部だよ。持ってけドロボー」
わさっとするくらい出てきた。
あっさり諦めてくれるのは助かるがね。
「…多すぎね?」
「なんだよ全部出したんだからいいだろ?じゃあな」
うんまぁそうなんだけどね。
あれこれボヤきながら猿どもは去って行った。
入れ違いに相羽がやってくる。
「お、相羽じゃん」
「…そう、だったんだ…」
「は?何が?…いや、これは違う。これは違うぞ」
名誉ために言わせてもらうが俺が撮ったんじゃない。
「違うの?さっき、武くんとくるみが付き合ってるって」
なんだそっちか。
「あ、それはあってる。てかお前も気づいてなかったのか」
これだけ気づかれないと意味がないんじゃなかろうか。
ちょっと自信無くすわ。
…いや、こいつは激鈍なだけだ。たしか学院長室で振っとけとかなんとか言ってたし。
「うん…ごめん、知らなくてっ!」
「え?おい…」
言うだけいって去って行った。
え、俺逃げられた?ちょっと悲しいぞ。
「どうしたの武?」
また入れ違いに五十島がやってくる。
なんだよ代わる代わる。ぜんぜん一人になってないし。
「俺もよくわからん。お前と付き合ってるって言ったら逃げてった」
「…そうなんだ。私たち付き合ってるのよね?」
「なんだよ、好きなやつでもできたの?」
「そんなことない!そんなことないけど…」
「なら付き合ってるんじゃねぇの?」
たしかそういう約束だったはずだ。
「そう…よね。もう少しで授業始まるわよ?」
「…気になるし…追いかけたほうがいいのか?」
そう言うと五十島はムッとした。
「知らない!」
あ、写真。…バレてないよな。いや、バレたか。怒ってたし。そりゃこんだけあれば目立つわな。クソ猿どもめ…
本当に時間もなかったし写真を片付けておとなしく教室に戻る。
授業中、視線を感じた。相羽の方を向くと必ず目を逸らされる。授業終わりはダッシュで逃げられる。何だってんだよ。
「七瀬武。そのお相手に片想い?」
私、五十島くるみは今占いをされている。
暗い部屋に深くローブのフードを被ったいかにもな女性。
なかなか雰囲気がある。
「ち、違うわよっ。恋人よ!」
何か魔法を発動させながらトランプに手をかける。
そうしてめくったカードの意味は私には分からない。
「もうすぐ、あなたの彼に困難が訪れるでしょう」
「困難?」
確かに、あの常時『我に七難八苦を与えたまえ!』と言わんばかりの男ならあり得る。
だが彼女の物言いはそれを含めても不安になるだけのものがある。
「彼の浮気に注意しなさい」
「え、嘘っ!…そんな、武が浮気なんて…」
ここ最近、急に六と仲良くなったのが思い起こされる。
「望まない結果の方が、人生には多いのよ?お嬢さん」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…ッ!」
全力で校内を駆け回る。
あのあと、占いの結果に落ち込んでいた私のもとに六が来た。
どうにも申し訳なさそうな感じが不安を掻き立てる。
『あ、あのさ…くるみって武くんと付き合ってたんだね。私知らなかった。今日偶然聞いて…』
『だから?』
『あの、…私、くるみに謝らなきゃならないことがあって…』
『なに?』
『あのね。怒らないでね。その、最初はただの事故だったの。私が勘違いしちゃって、抱きついちゃったの。その…すぐ突き飛ばしちゃったんだけど』
『…それがなに?』
なかなか要領を得ない。
よくはないがそれくらいは無いこともないし目くじらを立てるほどでもない。よくはないけど。
『…それでね、嬉しかったんだ。受け止めてくれたことが。それだけじゃない。武くん、口であれこれ言いながら…たぶん内心でも思ってるんだろうけど、なんだかんだで心配してくれて気にかけてくれて…』
ここで一度言葉を区切った。
なによこれ、これじゃまるで…
『私、武くんのことが好きなのっ!』
走る走る走る。
武、武はどこ?
見つからない。
『それ、もう武に言ったの?』
六は静かに首を振った。
『ううん。まだ。でも、いつかは言うつもりだから。先にくるみに言っておこうと思って…』
『そう。つまり挑戦状ってことね?…私、負けないから」
言葉はなかったけど、六の目には、普段からは信じられないほどのー強い意志を感じた。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ!…武っ!」
「へ?うわっ!」
五十島が飛びついてきた。
え、直感回避でなかったけど?これタックルじゃないの?
思いっきり危険だろ。
「なに?どーしたの?」
「抱きとめてよ、バカ」
「無理言うな。人の重さ知ってんの?」
「女の子に重いとかいうな!それに、六のことは抱きとめたんでしょ?」
相羽?
……。あぁ、初めて会った日のことか。
「いや、あれはタックルじゃなかったし」
だいたい抱きとめたんじゃなくて抱きしめられたんだ。
受け身なところが重要。今もだけど。
「…キス」
「は?」
「キスして!」
「なんでだよ」
なに?情緒不安定なの?
それとも言いたくねぇけど発情期かなんか?
「六のこと抱きしめたの黙ってた。だからその罰」
なんで罰でキスなんだよ。
「そんなのでファーストキスをくれてやれるかバカ」
額にチョップをくれてやって五十島ごと起き上がる。
重いけど軽い。
人の死体は驚くほど重いと聞く。
だからこれは生きた人の重みだ。やっぱり重い。
「…だめなの?」
「付き合ってても、好き合ってる訳じゃないだろ。後悔するからやめとけ」
男に言い寄られ続けて、ストーカー被害にあって、男性恐怖症になった。俺はそんな五十島くるみの男除けでスケープゴート。あいつに言われるまでもなく、分を越えるわけにはいかない。
「…いつもそう。わかった気になって、ぜんぜん分かってない!あの時だって、簡単に振っとけとか言うし…!」
学院長室での一件を思い出す。
「私だって、私はっ!武のことが好きなのっ!ずっと、ずっと前から!」
叫んだ。心の叫びだ。
相羽のことを言えない。確かに俺は激ニブだったのかもしれない。
いやだって分からないだろ。恋人ごっこしてたんだしさ。
どこからそうなのか分かんねぇよ。
「…そっか、ありがと。くるみ」
そう言っておいた。
くるみの顔は真っ赤だ。
きっと俺も。
「いつぶりに名前で呼んだっけな」なんて思った。
くるみは、「中学以来よ」と聞いてもないのに答えてくれた。