おかげで早く書けました。
主人公は未だ原作より魔法が下手で、伊田はちょっと強くなってます。
なお次回。…もう書きたくねぇよラブコメ。
崩壊世界に行った約一月後の11月。
幻術魔法によって校庭に現れた巨大な塔。
ここで系統魔法一斉試験が行われる。
学院長、四条桃花はこの試験の成績次第では相羽十の奪還作戦に参加することを認めるといった。
もちろんそれは学院の外、崩壊世界で行われる血みどろの戦いだ。それは俺、七瀬武の望むところでもあった。
「それでは、系統魔法一斉試験。回避魔法の部始めます」
続けて人氏誠は俺たちのいる丘の下のほうを指した。
「あれは、幻術魔法で創り出した町です。みなさんの目的はあそこに見える城を目指すということです」
なるほどわかりやすい。
「以上、ではスタート」
みんなすぐには走り出さない。
いきなり言われて戸惑っているのだろう。
ルールは至極単純だがこれは試験だ。
当たり前にそれだけではない。
事前情報では怪我をすると強制棄権をさせられるという。
つまり怪我をする何かがあるということだ。
「どうしたんです?早くいった方がいいですよ?」
人氏先生の言葉にみんなは気を取り直し走り出した。
俺も説明の間も探していたある人物をつけるように動いた。あいつの化身は目立たないしわかりにくいんだよなぁ。
「さて、どんな妨害が来るのかね…」
噂をすればなんとやら。
顔がガトリングのデカい蜘蛛が二体現れた。
「気持ち悪っ!ていうか気持ち悪っ!!」
というかいきなりピンチ!ガトリングとか視えても避けられねぇよ!
家屋の上からも来た!
即座にカメラの君、赤坂クンの手を強く握る。
ズガガガガッ!
斉射音を後ろに聞きながら赤坂くんとダッシュでその場を離れた。
「おい七瀬!あの状況で手を掴むなんて何考えてやがる!」
「避ける手段だバカ野郎。あそこで掴んでなかったら俺も他と一緒にやられてただろうが。それにこれはあれだ。五十島の写真とったお詫び、まだしてもらってなかったし。これはその分」
そう、赤坂はいつぞやの盗撮のお猿さんだ。
ちなみにこいつ、他の奴らと違って実はAクラスで、能力もかなりのチートだ。
「あ、あれは…でもちゃんと写真を全部返しただろ!あれで終わりじゃなかったのかよ!」
「はっ!写真は返してもらったが許すとは言ってない。お前が勝手に終わった気になってただけだろ
いいじゃないか、減るもんじゃなし、時間停止とかいうクソスキル、ちっとは俺のために役立てろ」
そう、赤坂の能力は時間停止。たしか停止回避と呼ばれるものだ。
最も効果時間は息を止めている間だけで、その間周りのものの形が変わらないため攻撃には直接絡められない。
しかも息を止めると強制発動らしく、実質剣もまともに振れない残念君だ。
さっきも俺の手を離せないからそのまま俺を引きずってあの化け物から離れたのだろう。
逃げ足だけなら誰にも負けない。まさに盗撮猿野郎。それが赤坂輝彦。
「はぁ…お前は一体どこの貴族様だっての。もうホントそういうとこ大っ嫌いだわ。これでチャラなんだろ?
じゃーな」
「え?あ、ちょっ、おい!」
気づいたら消えていた。
くっ…まあいい。予想はしていたし一回限りの保険程度だ。あんなやつ。
…言葉を選べば良かった。これは悔やまれる。
不意に見覚えのある筋肉が歩いていた。
「な、なななっ!ゆ、幽霊?!」
「あ?」
「いやそりゃあ掃除用具いれごと飛びかかって圧死とか、結構エグいことしましたよ?でもだからってお前、化けて出てくることねぇだろ?!」
「なんだお前?俺は見ての通り生きてるぜ」
「…は?いやだってお前、掃除…ロッカーだぞ?あれ結構重いし俺と合わせて100kgは余裕で超えんぞ?しかも高低差あって加速度ついて、おまけに階段の下まで真っ逆さまだぞ?死なねぇわけねぇだろ」
つまらない冗談はよせ。いや幽霊も面白くないしこれはアレだな。
「…お前、あの化け物たちの仲間だな。人の記憶盗み見てそれに化ける、あのよくあるやつ!」
「ああ?何言ってんだテメェ!…たく、頭おかしいんじゃねぇのか?とっとと消えねぇとぶっ飛ばすぞ」
「んだとコラぁ!ぶっ飛ばされたのはテメーだろうが!」
俺の言葉も無視して狼神鷹雄は立ち去って行った。
「…ホントに行きやがった」
化け物なら攻撃をしかけるはずだ。
狼神に化けきっていてもシステマチックに動くとしても。
だとすればあれは本物?
いやあり得ない。そうでなくともやつはトレイラーの側だ。ここにいる理由がない。
答えの出ないまま先へ進んだ。
その一幕を人氏は空から眺めていた。
「人氏先生、始まりましたか?」
「はい、四条学院長」
ドガーンッ!
町のあちこちで爆発が起こり煙がたちこめている。
回避魔法の能力者ではそうそうこうはならない。
妨害用の罠によるものだ。
「おやおや、今年も派手に洗礼を受けている子がいるようですね。
昨年は怪我人が多くて、兵藤先生が困っていましたけど、今年は少なめでお願いしますよ」
「分かってます。そういえば、七瀬くんが狼神に気づいて驚いていましたよ。彼のあんな顔はなかなかレアで面白かったです」
くっくっく、と普段から澄まし顔の人氏誠には珍しく笑っている。
「狼神の反応は?」
「もちろん、相手にしていませんでしたよ。記憶が書き換えられているのですから」
「戦争に勝つためには一人でも多くの魔法使いが必要です。敵もそうする以上、こちらもしない手はありませんからね」
そう納得させるように学院長は言い、他の階の視察へと飛んでいった。
「…別に不平をいった覚えもないんですけどねぇ…」
試験は各階で行われている。
一階では生物魔法。
身の丈以上もある草木でできた巨大な迷路で五十島くるみは迷子になっていた。
「なにこれ…また行き止まり!もういや!ここどこ?!こんなの魔法とぜんぜん関係ないじゃないっ!」
二階では破壊魔法。
伊田一三は大量のゾンビに追いかけられていた。
「うわぁぁっ!こっちくるなやボケェ!」
五階では神速魔法。
相羽六は素早い敵を撃ち抜いている。
「これで14」
そして四階回避魔法。
俺は建物の二、三階分はあろうかというほどのサイに襲われている。
「ぬあぁぁぁっ!」
「さて、私たちも始めましょうか。トワイライトの力、見せてもらうわ」
若い魔女はトランプを放った。
「バッカじゃねぇの!バッカじゃねぇのっ!」
俺は全力で走ってサイから逃げる。
こんなもん直感どうこうじゃねぇってばよ。
建物と建物の間の小道を見つけるや否や、即飛び込む。
ズガガガガッ!ドガガーン!
急停止したサイはあくまでも俺の方へ突進するが建物に阻まれて止まる。
「けほっこほっ!
ははっ、バッカじゃねぇの?人間様の知恵に敵うと思ってんのかよ脳筋サイ野郎!」
オスかメスかは知らない。
そういう時はだいたい野郎だ。語呂がいい。
調子に乗って、かつ確実を期すためにサイを切り殺そうとすると足が埋まった。
「は?」
全くの予想外だ。
沈み切る前に【浮遊】を使うが弱くて落ちる。
「はあぁぁっ!?」
懸命に【浮遊】を行使し続けたおかげで怪我という怪我はない。
「な、強制排除?暗黒魔法ですか?!」
人氏誠も知らない、四条桃花にとっても予想外の事態だ。
最下層、一階の生物魔法の会場で五十島くるみは突然の異変に戸惑っていた。
「…何が起こってるの?」
そのため気づかなかった。
後ろに突然ゴーレムが降って湧いたことに。
ゴーレムもわざわざ好機を逃すことなく拳を振り上げる。
「バカがっ!」
狼神鷹雄がそこにいたのは全くの偶然だった。
助けに動いたのも咄嗟の良心と勢いだった。
五十島を突き飛ばしてゴーレムの拳から外す。
ゴーレムの拳の余波から吹き飛ばされるが体制を立て直す。
「チッ!アウトライダー!」
化身でもある愛用のバスターソードをさらに強化させ、ゴーレムを一刀両断する。
「ぼけっとしてんじゃねぇよ!
…あ?お前、どこかであったか?」
「あんたこそ、どうしてここに?」
「お前、名前は?」
五十島の質問を無視してさらにきく。
戸惑いながらも助けられた手前、おとなしく答える。
「五十島…くるみ…」
狼神は怪訝な顔をしながらもやはり記憶に無いようだ。
「あなた狼神って人でしょ?六を追いかけてた…」
「むい?…むい…」
「相羽六よ!武と戦ってたじゃない!」
「武…?」
「七瀬武…あの竹刀振ってた男の子よ」
狼神は竹刀、剣道と連想して先ほどの変人を思い浮かべた。確かあいつも自分のことを知ってるようだった、と。
「…ちっ、やっちまったか…どうやら俺は強制退去のようだ」
「え?ちょっと!」
まだ聞きたいことはあったがそのまま消えてしまった。
入れ違いに伊田一三が迷路の通りから出てきた。
「あ、五十島!…いったいこれはどないなっとんねやろな」
「伊田くん…」
一人にならずに済んだ、と五十島くるみはそう思った。
一旦迷路の外に出ると七瀬、五十島、伊田、相羽といつものメンバーが揃った。
「ここも時期に消えそうね…」
「いったい何が起こったんや?訳が分かれへん。いきなり床が抜けた時はびっくりしたで」
ホントにな。紐なしバンジーとかこの俺を持ってしても理解ができない奇行だ。
「……」
「どうかしたのか五十島?」
「…狼神がいたわ」
「あの筋肉マン、やっぱりホンモノなのか…?
死んだはずじゃ…」
「何言うとるんや七瀬、あいつは別に死んどらんで」
「学院長もいってじゃない。三人は連行しました。って」
伊田の答えに相羽が付け加えた。
「…なんつー頑丈な生き物なんだ…」
あれだけやって、本当に死んでいなかったのか。
さすが筋肉超人だな。
「あれ?三人?」
「うん。パーカー着てた女の子と、メガネの人と、狼神くんで三人」
「…は?メガネも生きてんの?!ギフトで魔力なくなったって…」
「うん?魔力はなくなったから、もう普通の人間として現存世界で生活してると思うけど…」
なん…だと…
「魔力なくなっても死なねぇの?!魔力を全部吸い取られて死ぬとか、超テンプレじゃん!!じゃあなにか?あのあとメガネとまた一悶着あったのかよ」
全員俺一人で倒したと思って楽勝だぜ!とか言ってた俺超恥ずかしいじゃん!
「ううん、それは大丈夫。魔力を吸われたあとはしばらく気絶してたから」
最悪の事態は回避していたらしい。
「…そ、そいつは良かった」
「彼、私たちのことを覚えてなかったわ」
五十島の言葉を信じれば、俺はかなりの変人に映ったのではないだろうか。
「あいつ、殺しとくべきか…?」
恥を隠すためには一番の方法だ。
あとはほら、いつ寝返るか分からないし。
状況だけ見ると今寝返ってるけど。
「あ、私…一応助けられたから…」
そういう五十島の反応が俺は少し面白くない。
「そっか。なら見逃しといてやるか」
「お前はいったい何様やねん…」
俺様。いい響きだと思う。
言わないけどね。
「そうか…でもそうなるとあいつ…」
相羽十と同じで記憶を書き換えられてるってのが一番妥当だな。
「うん…」
直接口にはしなかったがやはり相羽も思い当たっていたらしい。
「なんやなんや、二人で分かりあってもうて」
「…黙っとくことでもねぇけど、あまり言いたいことでもねぇな。
行こう。お前がいるならこんなもん、ねぇのと一緒だ」
「いったいなんやねん…
にしてもこの迷路、どうやって攻略するんや?」
「燃やせばいいだろ」
当然の答えだ。ルールは破るためにある。横紙破りは俺の得意分野だ。
「迷路の大前提がぶち壊しじゃない…」
「五十島、悪いが俺は俺は迷路だなんて聞いてないぞ」
「私の試験はどうなるのよ…」
「たぶん大丈夫だと思うよ?単純に迷路を解けってだけだったら、魔法の試験にならないし。本来は生物魔法だけを想定してるんだろうけど…」
イレギュラー起こしたのは向こうの不手際だ。こっちの知ったことじゃない。
「…それならいいけど…」
伊田の炎で燃やしつつ目当ての建物へ一直線に進む。
燃やされるのも想定していたのか焼き壊してもすぐに消火されもとに戻った。火事にならなくて遠慮がいらない。
「もうすぐゴール!楽勝だぜ!」
「ここまできたら、もう大丈夫やろ」
そう言った瞬間遥か上空から巨大なゴーレムが降ってきた。
だからお前はなんでそういらんフラグを建てるのが上手いんだ…
「くるみ下がって!解除。フルメテオ!」
相羽の攻撃が炸裂する。
「なんや、効かへんで!ほんなら俺がっ!
フレイムナックル!」
十に放ったものより数段爆発力のある伊田の炎拳がゴーレムの腕に当たるが、やはりビクともしない。
「ダメだ効いてねぇ!」
「こいつ…魔法で強化されてるわ」
相羽が説明くれた。
んなバカな。ドッス○キャラだったりするわけかよ?冗談はサイズだけにしてくれ
「七瀬行くで!こいつでスーパーマグナム級ウルトラボンバーツインアタックや!」
無駄になげぇ!いいからはよ投げろや!
「あ…」
伊田の投げた弾は見事にゴーレムの足に当たった。
「バカ!どこ投げてんよ!」
「あかん…やってもうた…」
「ギャグかよ!面白くねぇから!こんなとこでもノーコン発揮してんじゃねぇっ!」
マジで笑えねぇ…
「私があいつを引きつけるから、二人は攻撃の準備を!」
すかさず相羽がフォローに入る。
縁の下の力持ちすぎる。カッコいいぞ。
「私も手伝うわ」
直感回避に任せてゴーレムの足元までにじりよる。
伊田の炎共々ゴーレムの気を引いたがすぐに銃を連射する相羽の方へ逸れる。
「うどの大木とはあんたのことよっ!…うそ!」
岩でできたゴーレムに対して煽りになってない気がする。
かくして本当にゴーレムが五十島の方へ向かったのだからマジで驚きだ。
少しずつ弾から離れて行ったこともあってようやく拾えた。
「練習の成果、見せてやんよ!」
今までだって当然修行は続けてきた。
カートリッジの出し入れはほぼ完璧だ。
「やばいっ!」
ゴーレムが二人に近づきすぎだ!
「ぅおりやぁ!」
溜めていた炎を惜しげも無く放ってゴーレムの拳を横から逸らす。
「伊田くんっ!」
「どんなもんや!」
その間にカートリッジに装填を終える。
「ユニオン!『爆炎』!!」
火力を増したそれはゴーレムー袈裟懸けに焼き切った。
「武…」
「無事で良かった」
全くだ。怪我しちゃいかんとか、俺に対する挑戦状だよな。勝ったけど。
ゴーレムの骸は光となってトランプ一枚になった。
「トランプ?」
取ろうとしたが物理法則に反してそれは空高く消えて行った。
魔法具とか化身とかそういう類だったのだろう。確保できなかったのは少し悔やまれる。
「あれは…」
相羽六は見覚えこそあったが、それがどこでなのか、思い出すことができなかった。
「弱い。弱すぎるわ…
ずっと昔に見たトワイライトはこんなものじゃなかった…
あれはあの子が持つには過ぎたもの。
まぁいいわ。今日はここまで。
トワイライトは誰にも渡さない。
あれは、私のものよ」
スペードのエースを見つめるヴァイオレット教師は暗躍を続ける。
「大丈夫?モモたん?」
学院長室で四条桃花は兵頭ななみに肩を揉んでもらっている。
「トレイラーが潜り込んでいたのは分かっていたが、これほどの事ができるとは思っていなかった」
「疑わしいやつを締め上げるなら手伝うけど」
「締め上げるなんて、そんな勿体無いことできないよ」
そんな学院長の言葉に、兵頭は嬉しそうに笑った。
「モモたん、ちょっと怖ーいっ」
「七瀬くんたちはどうだった?」
「さぁ?そこで盗み聞きしてる坊やにでも聞いたら?」
少しトゲがあるのは二人きりを邪魔されたからだろう。
なんつぅ好き好きオーラだ。
仕方なしに扉を開けて部屋の中に入る。
「盗み聞きをした覚えはねーぞ。立ち聞きならしたけどな」
ちなみに、部屋に入らなかったのはそこの百合女がちょっと怖かったからだ。
「どちらもたいして変わらないよ。それで、どうだったんだい?」
いつもの丁寧語がないのはノックをして許可を得たわけでなし、あくまで私的に話しているということなのだろう。
「余裕だよ。ただトランプを使う魔法使いに気をつけろ。少なくともそいつは今回の首謀者一派の仲間だ」
「トランプを使う魔法使いか。…まだ少し絞りきれないね。
それにしても、あの混乱の中でよくゴールできたね。」
「…嘘つきは信用を失うぞ?
ま、全員合流できたのが良かったな」
「…そうだね。ならば約束通り、相羽十を奪還するチャンスを与えないとね」
そっちじゃねぇんだけど。
「まぁいい。言うこと言ったし、俺は帰るぞ。…兵頭先生怖いし」
あの人の前でモモたんって言ったら殺されそう。
マジでさっきから殺気が…ダジャレじゃないぞただの事故。
踵を返して部屋を出た。
「ようやく二人きりになれたねぇモモたん」
「よく言うよ。君が追い出させたのだろうに」
「…大丈夫よモモたん。モモたんならこの戦いを終わらせられる」
二人の表情には決意があった。
今日はいつもよりだいぶUAが多かったです。
その割にお気に入りとか感想がぜんぜん増えないんですよね。
精進します。