むかしむかし
戦乱の絶えないとある小さな国に、長門という名の少年がおりました。
彼は天より与えられたかのような「神の瞳」を持ち、世界に平和をもたらす者になるだろうと、周囲から深く期待されました。
青年になった彼は親友や仲間と共に平和を目指す組織を作りました。
世界をより良くしようと意気込んだのも束の間、それを快く思わない人物の陰謀により、目の前で親友が非業の死を遂げます。
この裏切りと絶望に、彼の心は深く沈みました。
彼は残された仲間と共に組織を作り変え、「世界に痛みを知らしめること」こそが平和への道だと信じるようになりました。
その歪んだ理想によって多くの罪なき人々の血が流れ、数えきれないほどの悲劇が生まれました。
その歪んだ理想の果てに、心身ともに疲弊した彼の前に現れたのは、かつての自分と同じように希望を信じる一人の少年でした。
その言葉に、かつて見失った希望を見出した彼は、少年へ未来を託し、自らの命と引き換えに多くの人々を蘇らせました。
こうして彼は一度この世を去りました。
しかし、その眠りは長くは続きませんでした。
彼は死者の身のまま現世へ呼び戻される禁術によって、無理やり起こされ、再び戦場に立たされます。
そして一人の忍が振るう封印の剣によって、今度こそ長い戦いを終えようとしていました。
-プロローグ-
光が、遠のいていく。
俺の身体はもう限界だった。
その忌まわしい術によって現世へ縛りつけられたこの身体を、今まさに
「……これで、やっと終わるのか」
長かった。あまりにも長すぎた。
争い、奪い、壊して……何を得た?
“痛みを知らしめることで理解に至る”――それが俺の信じた道だった。
だが、その痛みの果てにあったのは、虚しさだけだった。
――その時、少年が現れた。
かつての俺と同じ光を瞳に宿し、
かつての俺が信じきれなかった「希望」という言葉を口にする少年。
――ナルト
お前の言葉が、俺の中の“神”を打ち砕いた。
「……ふっ、だが、二作目ってのはたいがい駄作になる。俺のようにな」
乾いた笑みが零れる。
「師にも、認めてもらってない。――だがな、シリーズの出来ってのは三作目……完結編で決まるんだ」
十拳剣の封印が、ゆっくりと俺の身体を呑み込み始める。
イタチは何も言わず、ただ静かに俺の言葉を聞いていた。
その沈黙を破るように、俺は続けた。
「駄作を帳消しにするぐらいの、最高傑作になってくれよ……ナルト」
その言葉を最後に、俺は笑った。
あれほど憎んだ世界に、初めてほんの僅かな希望を見た気がした。
もしあの少年が“痛み”のない平和を描けるのなら――それでいい。
……これで、ようやく眠れる。
弥彦や小南、自来也先生のもとへ行ける。
そう思った瞬間、光は闇へと変わった。
静寂が訪れ、世界の音がすべて遠ざかる。
その魂は十拳剣の封印へ沈み、今度こそ現世から切り離される――はずだった。
だが、長門の魂はあまりにも複雑な力によって弄ばれすぎていた。
穢土転生による“強制的な生還”。
そして、十拳剣による“封印”。
生と死の境を繰り返し越え、さらに封印へ呑み込まれた魂は、本来辿るべき道から外れてしまった。
すべての感覚を失うはずだった彼の意識が、次に感じたもの。
それは、封印の底にある冷たい闇でも、死後の穏やかな光でもなかった。
膨大で、底知れない、未知の魔力の奔流。
彼の物語は、彼自身の意志とは無関係に、次の舞台へと強引に引きずり出されたのだ。
長門の新たな“シリーズ”が、今、始まる。