東方輪廻談 ~ナガト幻想郷忍伝~   作:Takuma218

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第九話 壊れない遊び相手

「やめなさい、フラン!」

 

レミリアの声が、荒れた庭へ響き渡る。

 

「あっ、お姉様」

 

フランは空中に浮かんだまま、嬉しそうに振り返った。

 

その手には、紅い大鎌が握られている。

 

「今、いいところなんだから邪魔しないで!」

 

「それは遊びじゃないわ。今すぐ武器を消しなさい」

 

「どうして?」

 

フランの笑顔が消える。

 

「この人とは遊んでいいんでしょう?」

 

「そんなこと、一度も言っていないわ」

 

「でも、お姉様が連れてきたんじゃない」

 

フランの周囲に浮かぶ魔弾が、ゆっくりと明滅する。

 

「私とは遊んでくれないのに」

 

一瞬だけ、レミリアの表情が揺れた。

 

「フラン、それは……」

 

言葉に詰まったレミリアの横で、咲夜が一歩前へ出る。

 

「フラン様。これ以上続けるというのであれば、私も――」

 

「待て」

 

俺はフランを見たまま、咲夜を制した。

 

「手助けは要らない」

 

「何を言っているの、ナガト!」

 

レミリアの声が鋭くなる。

 

「相手は吸血鬼なのよ。今のあなたでは――」

 

「今、フランが見ているのは俺だけだ」

 

空中のフランは、大鎌を抱えながら興味深そうに俺たちの会話を眺めている。

 

「ここで人数を増やせば、余計に手がつけられなくなる」

 

「だからといって、あなた一人で戦わせるわけにはいかないわ!」

 

「それに、俺はまだ負けていない」

 

レミリアが言葉を失う。

 

俺はフランから目を離さず、続けた。

 

「俺が止める」

 

しばらく、返事はなかった。

 

レミリアの深紅の瞳が、俺とフランを交互に見つめる。

 

その奥で、紅い光が僅かに揺らいだ。

 

「……分かったわ」

 

やがて、レミリアが絞り出すように答えた。

 

「ただし、あなたが戦えなくなったら、私が止める。これは譲らないわ」

 

「ああ」

 

「咲夜。パチェを呼んできて」

 

「ですが、お嬢様――」

 

「私がここにいるわ。早く」

 

咲夜は僅かに迷った後、俺を見る。

 

「……すぐに戻るわ、長門」

 

「ああ。頼む」

 

咲夜が頷き、その姿が消えた。

 

「それから、ナガト」

 

レミリアが俺を睨みつける。

 

「死んだら許さないからね」

 

「善処しよう」

 

「善処じゃなくて、絶対よ!」

 

その声を聞いて、フランが待ちきれないように大鎌を振り回す。

 

「もう、お話は終わった?」

 

紅い刃が、曇天の下で弧を描いた。

 

「それじゃあ――続きをしよっか!」

 

フランが翼を広げる。

 

枝のような翼に連なる七色の結晶が、強い光を放った。

 

その姿が消える。

 

いや――違う。

 

一瞬で、俺との間合いを詰めたのだ。

 

紅い大鎌が、横薙ぎに迫る。

 

身体を沈め、刃の下へ潜り込む。

 

頭上を通過した刃が空気を裂き、赤い髪を巻き上げた。

 

そのまま懐へ入り、フランの胸元へ掌底を放つ。

 

だが、触れる寸前にフランの身体が浮かび上がった。

 

俺の頭上を飛び越え、背後へ回り込む。

 

振り返るより早く、首筋に冷たい気配が触れた。

 

身体を前へ投げ出す。

 

直後、紅い刃が背中を掠めた。

 

上着が裂け、浅い痛みが走る。

 

俺は地面へ片手をつき、身体を回転させた。

 

後ろ回し蹴りがフランの脇腹へ向かう。

 

フランは大鎌の柄で蹴りを受け止めた。

 

鈍い音が響く。

 

小柄な身体は、僅かに揺れただけだった。

 

「さっきより速いね!」

 

フランが嬉しそうに笑い、大鎌を振り下ろす。

 

半歩退いて刃を避け、その側面へ掌を添えた。

 

軌道の逸れた刃が、地面へ食い込む。

 

その隙に拳を放つ。

 

だが、フランは柄を軸に身体を浮かせ、俺の拳をかわした。

 

空中で一回転し、踵を振り下ろしてくる。

 

両腕を交差させて受け止めた。

 

凄まじい衝撃が腕を抜け、足元の地面へ亀裂が走る。

 

「ぐっ……!」

 

踏み留まり、その足首を掴もうとする。

 

フランは身を捻って逃れ、再び大鎌を振るった。

 

一撃ごとに、速さと重さが増している。

 

俺が避け、受け流すほど、フランは加減を捨てていく。

 

素手では持たない。

 

俺は両手を開いた。

 

掌から黒い物質が伸び、二本の棒を形作る。

 

右手の黒棒で大鎌を受け、左の一本をフランの肩へ振るう。

 

甲高い音とともに、紅い刃と黒棒がぶつかった。

 

フランが目を丸くする。

 

「今度は棒が出た!」

 

左の黒棒が肩へ届く寸前、フランは後方へ逃れた。

 

「それも、その目の力?」

 

「答える必要はない」

 

「やっぱり面白い!」

 

フランが再び飛び込んでくる。

 

大鎌と二本の黒棒が、立て続けに打ち合った。

 

右からの一撃を受け流し、左で胴を狙う。

 

避けられる。

 

踏み込みながら右を突き出す。

 

フランは大鎌の柄で黒棒を弾き、そのまま刃を返した。

 

紅い光が目の前を横切る。

 

俺は黒棒を交差させ、刃を受け止めた。

 

衝撃で腕が痺れる。

 

それでも、素手で受けるよりは耐えられた。

 

大鎌を押し返し、懐へ入る。

 

黒棒を振り下ろす。

 

フランが身を捻り、紙一重でかわした。

 

振り下ろした黒棒が地面へ食い込む。

 

その横から、大鎌が薙ぎ払われた。

 

右手の黒棒で受ける。

 

紅い刃が黒棒へ深く食い込んだ。

 

「何――」

 

次の瞬間、黒棒が真ん中から切断された。

 

勢いを失わない大鎌が、俺の胸元へ迫る。

 

折れた黒棒を捨て、身体を反らす。

 

刃が服の表面を切り裂いた。

 

フランが勝ち誇ったように笑う。

 

「壊れちゃった!」

 

「ああ」

 

開いた右の掌から、新たな黒棒を伸ばす。

 

フランの笑みが、一瞬だけ止まった。

 

生成したばかりの黒棒を、下から突き上げる。

 

「わっ!」

 

フランが咄嗟に大鎌を戻した。

 

黒棒が柄を打ち上げ、構えが崩れる。

 

左の黒棒を横薙ぎに振るう。

 

フランは空中で身体を反らし、迫る一撃をかわした。

 

そのまま翼を動かし、俺の頭上へ逃れる。

 

「また出した!」

 

「壊されるなら、作り直せばいい」

 

「それ、ずるくない?」

 

「お前に言われたくはない」

 

フランは一瞬きょとんとした後、楽しそうに笑った。

 

「それもそうだね!」

 

頭上から、大鎌が振り下ろされる。

 

俺は黒棒を投げ捨て、素早く印を結んだ。

 

「土遁・土流壁!」

 

地面が盛り上がり、せり出した土壁がフランの前に立ちはだかる。

 

大鎌が土壁を切り裂いた。

 

だが、その勢いが僅かに落ちる。

 

俺は崩れた壁の脇へ抜け、両手を打ち合わせた。

 

「風遁・烈風掌!」

 

突風が土と砂を巻き上げた。

 

フランの身体が押し戻され、砂塵の中へ隠れる。

 

俺はその中へ踏み込み、新たな黒棒を生成した。

 

魔力の気配を捉え、突き出す。

 

硬い感触。

 

捉えたのは身体ではなく、大鎌だった。

 

「こっちだよ!」

 

砂塵の向こうで、フランが片手を離す。

 

小さな拳が迫った。

 

頬へ衝撃が走る。

 

身体が横へ流れた。

 

踏み留まるより早く、フランが大鎌を握り直す。

 

避けきれない。

 

俺は黒棒を引き寄せ、その表面へ雷の性質を与えたチャクラを流し込んだ。

 

青白い雷光が走る。

 

大鎌と黒棒が衝突した。

 

乾いた音とともに雷光が弾け、フランの指が僅かに緩む。

 

刃の軌道が逸れた。

 

その隙を逃さず、黒棒の先端を腹部へ突き込む。

 

刺し込めば、黒棒を通じて相手の魔力を乱せる。

 

動きを封じるには、僅かでも身体へ食い込ませればいい。

 

「うっ――!」

 

フランの身体が折れた。

 

だが、先端は皮膚を貫けなかった。

 

硬い。

 

さらに押し込もうとしたが、フランは身を捻って穂先から逃れた。

 

俺は黒棒を引き戻し、続けて肩へ振り下ろす。

 

だが、その一撃は翼に阻まれた。

 

枝のような翼と黒棒がぶつかり、吊り下がった結晶が激しく揺れる。

 

至近距離で、フランが顔を上げた。

 

大鎌が戻ってくる。

 

俺は片手を開いた。

 

「――神羅天征!」

 

斥力が、砂塵ごとフランを吹き払った。

 

紅い刃が遠ざかる。

 

フランは庭の上を飛ばされ、靴の踵で地面を削りながら踏み留まった。

 

ようやく、息を継ぐ間ができた。

 

目の奥が鈍く痛む。

 

あれだけの勢いで迫るフランを止めるには、出力を抑えてはいられない。

 

次に天道を使えるまで、また間が空く。

 

「また、それ!」

 

フランは大鎌を持ち直した。

 

「近づくと、飛ばすんだね!」

 

俺は黒棒を構えた。

 

今の一撃で、諦めるはずもない。

 

フランが地面すれすれを飛んでくる。

 

大鎌を受け流し、横へ抜ける。

 

追ってきた柄を黒棒で弾く。

 

その瞬間、フランが大鎌から片手を離した。

 

「捕まえた」

 

小さな手が、俺の腕を掴む。

 

振りほどこうとしたときには、両足が地面から離れていた。

 

フランは俺を掴んだまま急上昇する。

 

庭が遠ざかる。

 

まだ、天道は使えない。

 

フランが腕を振り抜いた。

 

身体が地面へ向けて投げ出される。

 

俺は落下しながら身を捻り、眼下へ顔を向けた。

 

黒棒を手放し、印を結ぶ。

 

肺へ息を吸い込んだ。

 

「風遁・大突破!」

 

口から吐き出した暴風が、地面へ叩きつけられる。

 

土砂が吹き飛び、その反動で落下の勢いが鈍った。

 

だが、止まりきらない。

 

俺は最後に背を地面へ向け、身を丸めた。

 

衝撃が全身を突き抜ける。

 

肺に残っていた息が押し出された。

 

「まだまだ!」

 

舞い上がる土煙の向こうから、フランが迫る。

 

大鎌の刃は、真っすぐ俺の胸へ向けられていた。

 

左腕へ修羅道の力を集中させる。

 

皮膚が硬質な装甲へ変わり、掌の内側から黒い筒口が現れた。

 

狙いを定める。

 

小型の弾が、連続して放たれた。

 

フランが目を見開き、大鎌を振るう。

 

一発目が刃に弾かれた。

 

二発目が脇を抜け、背後で爆発する。

 

三発目は足元で炸裂した。

 

爆風を受け、フランの身体が大きく傾く。

 

俺は地面を転がって距離を取り、立ち上がった。

 

左腕に鋭い痛みが走る。

 

装甲の隙間から、火花が散った。

 

これ以上の連射はできない。

 

修羅道を解くと、左腕が元へ戻る。

 

フランは空中で体勢を整えながら、俺の腕を見つめていた。

 

「今度は何!? 腕が変わったよ!」

 

「……まだ続けるのか?」

 

「もちろん!」

 

大鎌を両手で握り直し、再び突進してくる。

 

俺も黒棒を生成した。

 

紅い刃と黒棒が激突し、火花が散る。

 

そこから先は、息を継ぐ暇もなかった。

 

庭を縦横に駆けながら、幾度となく打ち合う。

 

黒棒を折られるたびに作り直し、迫る刃を迎え撃った。散った破片が地面へ落ちる頃には、俺たちは既に別の場所で火花を散らしていた。

 

フランは笑っている。

 

こちらの打撃を受けても怯まず、さらに速く、重く、大鎌を振るってくる。

 

対して、俺の呼吸は次第に荒くなっていた。

 

受け流したはずの一撃に腕を持っていかれる。

 

踏み込もうとした脚が、僅かに遅れる。

 

その遅れを、紅い刃が拾っていく。

 

「さっきより遅くなったね!」

 

「お前が速くなっただけだ」

 

「どっちでも同じだよ!」

 

ひときわ激しい火花が散った。

 

黒棒で受けた大鎌を押し返せず、身体が地面から浮く。

 

俺は庭へ叩きつけられ、土を削りながら転がった。

 

「もう十分よ、ナガト!」

 

レミリアがこちらへ踏み出した。

 

俺は黒棒を地面へ突き立て、身体を起こす。

 

「まだだ」

 

「あなた――」

 

返事を待つ余裕はなかった。

 

フランが大鎌を振りかぶり、追ってくる。

 

斥力で離しても、また戻ってくるだけだ。

 

今度は、こちらから間合いを詰める。

 

その背後に館がないことを確かめ、俺は息を吸い込んだ。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

巨大な炎が、正面からフランへ迫る。

 

「わあっ!」

 

フランは大鎌を振り、炎を切り裂いた。

 

二つに分かれた火球が両脇を通過し、背後で爆ぜる。

 

炎と煙が視界を覆った。

 

俺はその隙に地面を蹴った。

 

煙の中へ黒棒を突き出す。

 

だが、手応えはない。

 

「もう、それには慣れたよ!」

 

真上から声がした。

 

見上げる。

 

フランは既に煙の外へ逃れていた。

 

その手を離れた大鎌が、回転しながら飛んでくる。

 

俺は身体を横へ投げ出した。

 

紅い刃が地面へ突き刺さり、深い亀裂を刻む。

 

大鎌は光の粒となって消えていった。

 

フランが両腕を広げる。

 

「棒で叩き合うのも楽しいけど、次はこれ!」

 

周囲に無数の魔弾が現れた。

 

紅、青、黄。

 

色とりどりの光が、フランの周囲を埋め尽くす。

 

腕が振り下ろされた。

 

魔弾が一斉に放たれる。

 

俺は黒棒を投げ捨て、右手を前へ出した。

 

餓鬼道の力を開く。

 

正面から迫った魔弾が形を崩し、掌へ吸い込まれていった。

 

だが、左右へ広がった光は、そのままこちらの側面へ回り込んでくる。

 

俺は吸収を続けながら地面を蹴った。

 

右から迫る光を屈んでかわす。

 

背後から来た一発を、振り返りざまに吸収する。

 

足元へ降り注ぐ魔弾を土流壁で受け止め、その陰から走り出した。

 

「逃がさないよ!」

 

フランが次々と魔弾を放つ。

 

進路を塞ぐように、新たな光が並んだ。

 

俺は走りながら印を結ぶ。

 

「風遁・真空大玉!」

 

圧縮された風の塊が、口から撃ち出された。

 

正面の魔弾へ激突し、幾つもの光が弾ける。

 

爆ぜた魔力が周囲の弾を巻き込み、目の前を塞いでいた一角が崩れた。

 

俺はそこへ飛び込んだ。

 

すぐに、左右から新たな魔弾が迫る。

 

掌へ雷のチャクラを集めた。

 

青白い雷光を一条に伸ばし、横薙ぎに払う。

 

触れた魔弾が、連鎖するように弾けていった。

 

それでも、空の光は減らない。

 

フランは途切れることなく、新たな魔弾を生み出していた。

 

俺は再び修羅道を開く。

 

左腕が装甲に覆われ、掌の砲口から小型弾が放たれた。

 

魔弾の群れへ突き刺さり、爆発する。

 

開いた穴を走り抜ける。

 

左腕に、先ほどより強い痛みが走った。

 

装甲が維持できず、途中から崩れていく。

 

視界が僅かに揺れた。

 

チャクラはまだ残っている。

 

しかし、肉体が追いつかない。

 

「ナガト!」

 

庭の端から、レミリアの声が飛んだ。

 

「フランに流水を当てなさい! 流れる水は、吸血鬼の魔力を乱すわ!」

 

「お姉様!」

 

フランが振り返り、頬を膨らませる。

 

「教えちゃ駄目でしょう!」

 

「これ以上続ける方が悪いのよ!」

 

「私だけずるい!」

 

「どちらがよ!」

 

姉妹が言い争っている。

 

今は好都合だった。

 

俺は素早く印を結ぶ。

 

「水遁・水乱波!」

 

口から吐き出した水流が、フランへ襲いかかる。

 

フランは驚き、上空へ逃れた。

 

水流が足先を掠める。

 

触れた瞬間、その飛行が僅かに揺らいだ。

 

一滴でも致命傷になるわけではない。

 

だが、確かに効果はある。

 

「もう! 水は嫌いなのに!」

 

フランが魔弾を撃ち返してきた。

 

俺は水を吐きながら横へ走り、光をかわす。

 

水流が庭を横切り、地面の窪みへ溜まっていった。

 

フランはさらに高く飛び、魔弾で水を弾き飛ばす。

 

その動きが止まった瞬間、次の印を結んだ。

 

庭へ広がった水へ、チャクラを流し込む。

 

「水遁・水龍弾の術!」

 

地面を流れていた水が持ち上がった。

 

幾筋もの水流が絡み合い、長い胴と巨大な顎を形作る。

 

水の竜が大きく口を開き、空中のフランへ迫った。

 

「わあ……!」

 

フランが一瞬、戦っていることも忘れたように目を輝かせる。

 

直後、水龍の顎が眼前へ迫った。

 

「わっ、待って!」

 

慌てて身を翻す。

 

顎はかわした。

 

だが、うねる水流が片脚を捉えた。

 

フランの身体が傾き、高度が落ちる。

 

翼の結晶が強く輝いた。

 

水を振り切り、辛うじて持ち直す。

 

水龍は大きく身をくねらせ、その後を追った。

 

フランが逃げ、水龍が追う。

 

庭の上空を旋回するたび、水飛沫が霧の中へ散っていく。

 

フランは進路を変えながら魔弾を放った。

 

一発。

 

二発。

 

水龍の頭部が削られる。

 

俺は地面の水を吸い上げ、形を繋ぎ直した。

 

その間に、ようやく呼吸を整える。

 

肩が重い。

 

左腕の痛みも引かない。

 

それでも、初めてフランを退かせることができた。

 

「もう、しつこい!」

 

フランの表情から、笑みが消えた。

 

ドレスの中へ手を入れ、一枚の札を取り出す。

 

その札を見たレミリアの顔色が変わった。

 

「フラン、それをどこで手に入れたの?」

 

「パチュリーのところ」

 

「やっぱり貴方だったのね!」

 

レミリアが声を荒らげる。

 

「それは弾幕勝負のためのものよ! こんなところで勝手に使うものじゃないわ!」

 

「だって、こっちの方が面白そうなんだもの」

 

フランが札を掲げた。

 

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