ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
早朝、ニビシティに到着すると、街の入り口でお姉ちゃんが待っていてくれた。
なんでも、ここ最近ニビシティの周辺で不審者が目撃されているらしく、新人トレーナーが絡まれる事件まで起きているとのこと。
ロケット団の有る無しに関わらず、治安悪いなぁ。
早いところリオルと再会したくなってきたよ。
「リオルはおつきみ山で修行の総まとめ中だから、ここにはいないわ。私のエルレイドがついているから、心配しなくてもいいわよ」
リオルも強くなっているみたいだ。
私もニビジム戦、頑張らなければ。
「ダーネ!」
「フッフリー!」
「うふふ、フシギダネたちもやる気十分みたいね」
「よし、頑張ろうか! その前に朝ご飯!」
「ダ、ダネ……」
◆
「ごめんくださーい」
重たい扉を開けてジムに入ると、トキワジム同様、中は薄暗かった。
ジムのルールなのかな?
ジムリーダーさん、目悪くならないの?
すると突然、天井の電灯が眩く輝いた。
うおっ、眩し!
目が眩む!
光に目が慣れると、はっきりとジムの奥にいる男が見えた。
半袖ジャージに鋭い糸目。
間違いない。
ここのジムリーダーだ。
「きたな、チャレンジャー! 俺はニビジムジムリーダーのタケシ! 強くて硬い石の……」
そこから先の言葉を言う前に、タケシは固まった。
これは私を見てるんじゃない。
私の少し後ろの――
「お・ね・え・さーん! 私は貴方にフォーリンラーブ!」
「あらあら、出会って一秒でナンパされちゃった」
あらま。
お姉ちゃんのメロメロボディにタケシが落ちてしまった。
両目にハートを浮かべ、両手をガッシリ掴んでいる。
「お姉ちゃーん、惚気てないでなんとかしてー……」
「ごめんなさいね、ジムリーダーさん。私、軟派な男はお断りなの」
「グオッフグリ!」
まともな人間が言うとは思えない奇言を吐きながら、タケシは助走も無しに宙を舞い、地面にぶつかった。
こうかはばつぐんだ。
……
「……失礼。取り乱しました」
タケシは深々と頭を下げる。
なあなあにしない辺り、しっかりしているなぁ。
見習いたいものである。
「いえ、お気になさらず……あの、ジムバトルに来たのですが……」
「ああ、それならちょうどバトルコートの整備が終わったところだ。早速始めよう」
私とタケシはバトルコートに向かい合って立つ。
お姉ちゃんは観客席で応援だ。
「ルールは二対二。交代はチャレンジャーのみ可能だ。早速一体目のポケモンを出したまえ」
「はい! 行こう、バタフリー!」
「フリフリー!」
「バタフリー……君もトキワシティ側から来たトレーナーだな?」
「あら、よく分かるわね」
「ええ。あそこには岩タイプに有利なポケモンがほぼいないので、相性不利でもレベルの高いポケモンを出すトレーナーが多いのです」
タケシはボールを構える。
「だが、手加減はしないぞ! イシツブテ!」
「ゴロッ!」
名前通り、石の塊みたいなポケモンがバタフリーの相手だ。
虫・飛行タイプのバタフリーは、岩タイプの技が四倍弱点。
一発でもまともに当たったら終わる。
「作戦通りいくよ! 高く飛んで!」
「イシツブテ、いわおとしで撃ち落とせ!」
天井近くまで飛んだバタフリー目掛けて、岩を投げつけるイシツブテ。
投げつけられた岩の軌道はかなりばらけている。
まっすぐバタフリー目掛けて飛んでくるもの。
山なりの軌道で、上から落とそうとするもの。
一見すれば、初心者には回避不能な岩の雨。
しかしバタフリーは臆することなく、大きな羽に力を込める。
「アクロバット!」
「何!?」
バタフリーは縦横無尽に、俊敏に、そして華麗に羽ばたき、迫りくる岩を次々と避けていく。
「ねむりごなを振りかけて!」
そのままイシツブテの頭上まで飛んでいくと、眠り効果のある鱗粉を振りかけた。
イシツブテは睡魔に勝てずに、眠り込んでしまった。
「起きるんだ、イシツブテ!」
「サイケこうせん、連続で!」
極彩色の光線が何発も直撃し、イシツブテは目を覚ますことなく倒れた。
「まさかバタフリーがアクロバットを覚えるとはな。長いことジムリーダーをやってきたが、初めて見たぞ」
「トキワの森で特訓しました。うまくいってよかったです」
トキワの森を見上げると、木々の枝や蔦が複雑に絡み合い、まるで迷宮のようになっていた。
それを見た私は閃いた。
これ、特訓に使えるんじゃないかと。
休憩の合間合間に、私はバタフリーに緑の迷宮をぶつかることなく飛び回るよう指示しておいた。
サトシのバタフリーが進化してからは、二匹一緒に飛ぶことで特訓の効率はグンと上がった。
その結果、本来ならわざマシンを使って覚えるひこうタイプの技、アクロバットを会得したのだ。
威力、スピード、命中率の全てに優れており、攻防一体の強力な技だ。
「なるほど。ただ闇雲に挑んできた初心者というわけではないようだ」
タケシは次のボールを構える。
「だったら、君に相応しいポケモンで戦おう! こい、イワーク!」
「グオー!」
タケシが二番手に繰り出したのは、岩が数珠繋ぎになったようなポケモン、イワーク。
にしても長い!
デカい!
ゴツい!
かすっただけでも痛そうだ!
「バタフリー、おもいっきりねむりごな!」
「りゅうのいぶきで吹き飛ばせ!」
青い光線が鱗粉を吹き飛ばす。
かなりの量をばら撒いているのだが、イワークには直撃せず、周囲に散らばるだけだった。
「ロックブラスト!」
先ほどのイシツブテとは比較にならない量の岩を、イワークはマシンガンのように撃ってくる。
バタフリーは必死に避けようとするも、一発が羽に当たり、動きが鈍ったところに残りの弾丸が次々と命中していった。
「ああ! バタフリー!」
そのままバタフリーは目を回して地面に落ちていった。
戦闘不能だ。
「ジムリーダーたるもの、同じ手はくらわないさ。さあ、二匹目のポケモンを出してこい」
「バタフリー、ありがとう……。行くよ、フシギダネ!」
「ダネッ!」
フシギダネが勢いよく飛び出してくる。
先ほどとは打って変わって、こちらが岩タイプに有利な相性だ。
「そちらが本命か。だが、俺たちは負けない! イワーク、かたくなる!」
「つるのムチ!」
鋭く蔦を叩きつける。
だが、防御を固めたイワークには通用しない。
弾かれた蔦が地面を叩き、砂埃が飛び散る。
「まだまだ、いっぱい続けて!」
「無駄だ! アイアンヘッド!」
イワークは姿勢を低くし、銀色に輝く頭で突進してくる。
フシギダネは蔦で受け止めるが、勢いを殺しきれずに吹き飛ばされた。
「りゅうのいぶきだ!」
「避けて!」
青白い光の奔流が、逃げるフシギダネを追いかける。
だが、鈍足であるはずのフシギダネには追いつけず、むしろ距離を離されていった。
「どうしたイワーク、動きが鈍いぞ!?」
イワークの異変は治まらない。
やがて、口から放たれていたりゅうのいぶきは消えてしまった。
「イワークがおかしい……まさか!?」
◆
「なーる。そういうことね」
観客席で観戦していた彼女はいち早く気づいていた。
フシギダネとイワークの激突で生じた砂埃。
その中に、小さく光るものが混じっていた。
バタフリーが大量にばら撒いた、ねむりごなである。
地面に落ちていたねむりごなが、バトルの衝撃で再び宙へ舞い上がり、イワークの口の中へと入っていたのだ。
タケシの方向からは、照明の角度の関係で粉を見分けることができず、リーフの作戦に気づくのが遅れた。
「特にアイアンヘッドで頭を下げた際に、粉をたくさん吸い込んじゃったのが大きいわね。これがアイアンテールだったら問題なかったんだろうけど……。ジムリーダーとして威力の低い方をチョイスしたのかしら?」
動きが鈍ったのを好機と見たフシギダネは、その場に立ち止まる。
「せいちょう!」
身体に力を込める。
一度。
二度。
さらに力を高める。
そして――
「いっぱい、はっぱカッター!」
「ダネッ!」
攻撃力を高めたフシギダネが、勢いよく力を振るう。
大量の葉がイワークの巨体をまともに捉え――
おもいっきり吹き飛ばした。
どうしても技とポケモンに限りのあるタケシ戦では搦手に頼らざるを得ない。
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