ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
本日は二回投稿です!
「見てみてリオル、グレーバッジだよ!」
お月見山にて、私はゲットしたばかりのグレーバッジを相棒に見せびらかしていた。
数日ぶりの再会。
お姉ちゃんから課された修行を終えたリオルは、あちこち傷だらけだった。
けれど、以前より背が伸びて、身体つきも逞しくなったように見える。
……いや、実際に逞しくなっている。
え?
親バカな私の見間違いかもしれない?
それはない。
「リオルもかっこよくなったねぇ……うりうり」
「オォウ」
頭を撫でてやると、リオルは嬉しそうに目を細める。
ああ……。
やっぱり可愛い。
数日離れていただけなのに、こうして触れてみると妙に懐かしい。
「リーフ。もういいかしら?」
「あー、もうちょっとだけ」
「仕方ないでしょ。まだリオルの試練は終わっていないんだから」
「ほへ?」
お姉ちゃんは「おほん」と、わざとらしく咳き込んでから、真剣なトレーナーの顔になった。
「まずはニビバッジゲット、おめでとう。旅に出る前の約束は覚えている?」
「うん。リオルは私がジムバッジを二個集めるまで、お姉ちゃんが育てる、だよね」
「ええ。リーフ、強くなったわね」
「えへへ……」
真正面からそんなことを言われたので、私は顔を赤らめて照れてしまった。
旅に出て、まだほんの少し。
それでも、こうしてお姉ちゃんから成長を認めてもらえるのは嬉しい。
「約束通り、リオルはこれからあなたのポケモンよ。その前に、修行の成果について伝えておくわ」
「修行の成果……ゴクリ」
「聞いて驚きなさい。あなたのリオルは、なんと……!」
ドゥルルルルル、ダン!
「ポケモンセンターに預けられても、泣かなくなったわ!」
「リオルゥゥゥ! 素晴らしいじゃなぁい!」
「オ、オォ……」
思わずリオルを抱きしめる。
これをサトシやシゲルが聞いたら、
「はぁ、それだけ?」
と呆れるかもしれない。
しかし私からすれば大きな成長。
いや、メガシンカ+キョダイマックス並みの進化と言ってもいいのだ。
色違いのリオルは本当に目立つ。
そして彼は、それを嫌う。
人目が多い場所に行くと、周囲から珍しがられて視線を集めてしまう。
だから人が集まるポケモンセンターでは、私が付きっきりでいないと大泣きしてしまうのだ。
ポケモンを預けることすら難しい。
それが今では――。
ジョーイさんを信用できる。
治療も落ち着いて受けられる。
私がその場にいなくても、ちゃんと待っていられる。
これから旅を続けるなら、とても重要なことだ。
何日も一緒に旅をする以上、怪我や体調不良は避けられない。
そのたびに私が付きっきりでなければ駄目、というわけにはいかないのだから。
「よーしよしよし! 偉いねぇ、凄いねぇ!」
「オ……オゥ……」
「これこれ、リオルが引いてるわよ。それに、話はまだ終わっちゃいないんだから」
「はっ」
そうだった。
まだ試練があると、さっき言っていたばかりではないか。
「ご、ごめん。続けて」
「それから先の修行は、レベルアップよりも技と能力ポイントの強化を重点的に行ったわ。詳しいことは図鑑を見て確かめて」
滅多に使っていないポケモン図鑑をリオルへと向ける。
すると、今のリオルが使える技がずらっと表示された。
からげんき、きあいだま、シャドークローにつるぎのまい……。
わざマシンで覚えられそうな技は、一通り習得したみたいだ。
「おお……」
思わず声が漏れる。
旅立つ前と比べると、明らかに戦える技の幅が広がっている。
お姉ちゃん、本当にガチで育ててくれたんだなぁ。
余談だが、この世界でポケモンに技を覚えさせる方法は、大きく分けて三つある。
一つ目はレベルアップ。
即ち、成長と共に自然に覚える技。
一番ベタな方法である。
タマゴ技も、この種類に当てはまるのだろうか。
二つ目は、わざマシンやわざレコードといった道具を使って、人為的に覚えさせる方法。
値段は張るが、レベルアップでは覚えない技を覚えるには手っ取り早い。
そして三つ目が、私のバタフリーのアクロバットみたいに、独自の特訓をしたり、今回のリオルのように技を知っている者から修行をつけてもらったりする方法。
確実性はない。
その代わり、実戦経験や能力ポイントも一緒に稼ぐことができる。
そしてトレーナーの力量が上がれば上がるほど、ポケモンの特性や戦い方に合わせた技を身につけさせやすくなっていく。
つまり――。
トレーナーが強くなれば、ポケモンもさらに強くなれるということだ。
こんなに強くなってしまっていいんだろうか。
いや。
このくらいやらなきゃ女の子の一人旅は危険だという、お姉ちゃんの判断なのだろう。
ありがたく好意にあずかろう。
「技の把握は終わったかしら?」
「うん!」
「じゃあ、早速最後の修行に入るわよ」
「最後の修行……もしかして、私たちもやるの?」
「ええ。最後は私とあなたでポケモンバトルよ」
◆
お月見山の開けた場所を舞台に、お姉ちゃんと向かい合う。
こうして初めてお姉ちゃんと真正面から向き合ってみて分かる。
これが世界レベルのトレーナーの波動。
なんて強大で、壮大なんだろうか。
普段は優しくて頼れるお姉ちゃん。
けれど、バトルフィールドに立った瞬間、その雰囲気が変わった。
まるで別人だ。
「私とのバトルって聞いてビビった?」
「全然。むしろ楽しみにしていたもん」
そう。
お姉ちゃんは、いつも私のすぐ近くにいた。
私の憧れ。
そんなお姉ちゃんと向かい合って、真剣勝負ができるのだ。
私の心は奮い立っている。
「リーフも一端のトレーナーの顔をするようになったわね……。バトルルールは三将戦。三戦全てやるわよ」
公式のバトルでは、互いの手持ちが全て倒れるまでバトルするのが基本だ。
しかし、トレーナーは様々なルールでバトルを行う。
その中でも三将戦はポピュラーなルールで、剣道の団体戦のように先鋒・次鋒・大将を決め、1対1のバトルを三回行うのだ。
つまり――。
一勝して終わり、ではない。
三戦全てを戦って、初めて試練終了というわけだ。
「行こう、バタフリー!」
「フリフリー!」
「出番よ、ヒノヤコマ!」
「ヒノォ!」
私の先鋒はバタフリー。
対するお姉ちゃんの先鋒は、カロス地方の鳥ポケモン、ヒノヤコマだ。
「まずは小手調べよ。ニトロチャージ!」
ヒノヤコマが炎を纏い、一気に加速する。
いきなり攻撃しながら素早さまで上げてくるのは、小手調べにしてはオーバーキルすぎない!?
「ア、アクロバットで追いかけて!」
バタフリーが翼を羽ばたかせ、ヒノヤコマを追う。
しかし、炎を纏ったヒノヤコマの身体とぶつかった瞬間――。
吹き飛ばされたのは、バタフリーだった。
やっぱりパワーもスピードも向こうが有利。
だったら、バタフリー十八番の搦め手しかない!
「距離をとってサイケこうせん!」
「逃がさないで、ひのこ!」
極彩色の光線と火球がぶつかり合い、空中に鮮やかな花火を咲かせる。
「エアスラッシュも追加! 押し切って!」
口からは極彩色の光線。
羽からは真空の刃。
二つの飛び道具がひのこを押し切り、ヒノヤコマへと届いた。
しかし――。
ヒノヤコマには大したダメージになっていない。
「つつくよ!」
ヒノヤコマの反撃が来る。
そう思った瞬間。
ヒノヤコマが、その辺の岩に頭からぶつかった。
「……え?」
勝手にダメージを受けている。
「もしかして……」
どうやら、サイケこうせんの効果で混乱しているようだ。
「今だよ! もう一度サイケこうせん!」
「フーリィー……!」
ヒノヤコマがふらつきながらこちらを向く。
もう一度、先ほどの同時攻撃を撃てれば――。
そんな都合の良いことを許してくれるほど、お姉ちゃんは甘くなかった。
「ニトロチャージ!」
「えっ!?」
今度はまっすぐ突っ込んでくるヒノヤコマ。
「繋げて、つつく!」
炎を纏った嘴がバタフリーを捉える。
「バタフリー!」
そのままバタフリーは空から叩き落とされた。
地面に落ちた身体は、ぴくりとも動かない。
戦闘不能である。
「……お姉ちゃん、容赦なさすぎ」
「このくらいやらないと試練にならないからね」
お姉ちゃんは涼しい顔でボールを構え直す。
ようやく分かった。
うちのお姉ちゃんの辞書には、手加減なんて言葉はない。
バタフリーの力を出し切った。
それでも、先鋒戦を取られた。
だったら、こちらも今の全てを出し切らなければ、この試練は突破できないだろう。
あと二戦。
私は両手で自分のほっぺたをペチペチと叩く。
「ムン!」
気合いを入れ直した。
さあ――。
バトルの続きをしよう。
・お姉ちゃんの秘密
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