ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「行こう、フシギダネ!」
「二番手はこの子だよ!」
「「ダネダネ!」」
おや、次鋒はどちらもフシギダネである。
滅多に野生にはいないはずのポケモンだが、お姉ちゃんはどこでフシギダネをゲットしたのだろうか。
「うーん、名前も言えない秘密の場所で、名前も言えない秘密のポケモンたちの番人をしていたけれど、正々堂々実力を見せてゲットした、って言えば良いのかな?」
「あ、うん……」
なんだその説明。
でも、心当たりはある。
このフシギダネ、さてはサトシくんのフシギダネだな。
どうやらニビシティへと向かわなかったサトシくんの代わりに、お姉ちゃんがゲットしたみたいだ。
よく見ると、頑固な波動を感じる。
気難しそうな子だ。
それなのに、お姉ちゃんには素直に従っている。
さすが世界レベルのトレーナー。
この調子だとゼニガメを始め、他のポケモンもサトシくんは捕まえなかったり、別のトレーナーの手持ちになっていたりするのかもしれない。
カントー地方でサトシくんが出会ったポケモンたちは、進化を拒んだり、小さかったり、指示をまともに聞かなかったり、臭かったりする問題児ばかり。
それでも、みんな試合で成果を残してきた実力派ばかりだ。
私もおこぼれ……って言って良いのかな?
……に預かれるのかも。
「ダーネ! ダネダネ!」
「おっと、いかんいかん」
今はバトルに集中だ。
「いくよ、フシギダネ! アシッドボム!」
「蔦で避けて!」
お姉ちゃんのフシギダネが、身体から液体の塊を飛ばしてくる。
アシッドボム。
まともに受ければ、特防を大きく下げられてしまう危険な技だ。
一発たりとも喰らいたくない。
私のフシギダネは自慢の蔓を伸ばし、洞窟の天井へと突き刺した。
そのまま、虫ポケモンが糸を辿るようにスルスルと登っていく。
「わお。いつの間に、そんな芸当ができるようになったの!?」
「ぶっつけ本番だよ!」
自分でも驚いている。
でも、やってみれば案外できるものだ。
「はっぱカッター!」
「ダネッ!」
天井近くまで登ったフシギダネが、上空から葉っぱの刃を連射する。
遮蔽物のない空間。
逃げ場の少ないお姉ちゃんのフシギダネは、飛んでくる葉を避けながら顔をしかめた。
「グッ……!」
効果はいまひとつ。
それでも数を撃てば、少しずつダメージは蓄積する。
何より、上からの攻撃ならこちらは反撃されにくい。
「このまま決めるよ! 飛び降りて、のしかかり!」
「ダネッ!」
天井に突き刺していた蔓を外す。
私のフシギダネは、そのまま重力に身を任せて落下していく。
狙いは真下のお姉ちゃんのフシギダネ。
これが決まれば大ダメージだ!
「だったら、こっちも切り札を!」
お姉ちゃんの声が響く。
「はなびらのまい!」
「ダネダネェ!?」
お姉ちゃんのフシギダネの蕾から、桃色の花びらが一気に噴き出した。
まるで竜巻。
洞窟内を花びらの嵐が埋め尽くし、落下する私のフシギダネへと襲いかかる。
「フシギダネ、負けないで!」
「ダ、ダネ……!」
はなびらのまい。
初めて見る大技だ。
しかも、あの威力。
私のフシギダネは空中で怯み、落下速度を緩めてしまう。
このままじゃ押し返される。
でも――。
「諦めないで、フシギダネ! あなたならできる!」
私の声に、フシギダネが顔を上げた。
「そうだよ。あなたは強い」
初めて出会った時。
私の言葉を聞いても、どこか怯えていた。
私を信頼していいのか分からない。
そんな目をしていた。
でも今は違う。
一緒に旅をして。
一緒に戦って。
一緒に勝って。
そして、一緒に負けて。
少しずつ積み重ねてきたものがある。
だから――。
「私たちなら、できる!」
「ダ……ダ……ダネーッ!!」
フシギダネから青い光が迸った。
「これは……!」
光が身体を包み込む。
今まで蓄積されてきた力。
戦いの経験。
そして、私たちが一緒に過ごしてきた時間。
それら全てが、フシギダネの中で一つになっていく。
硬い蕾が光の中で大きく膨らみ――。
「フーシー……ソウッ!」
光が弾け飛んだ。
短く伸びた牙。
一層厚みを増した四肢。
そして、背中に広がる大きな葉。
「フシギソウ……!」
進化した私のフシギソウは、はなびらのまいを正面から押し切った。
そのまま落下の勢いを乗せ――。
ドォン!
「ダネーッ!」
お姉ちゃんのフシギダネが地面を転がる。
それでも立ち上がろうと足に力を込めるが、身体が思うように動かない。
のしかかりの衝撃。
そして、はなびらのまいを使った反動。
二つのダメージが重なり、まともに動けなくなっているようだ。
「決めるよ! タネばくだん!」
「フシュ!」
フシギソウが背中に力を集める。
巨大な種が形成され――。
「ソウッ!」
ドォォン!
タネばくだんが炸裂し、洞窟全体を揺らす。
「そこまで」
お姉ちゃんが手を上げた。
「フシギダネ、戦闘不能。勝者、リーフ」
「やったぁ!」
私は思わず拳を握る。
「凄い凄い! カッコいいよ、フシギソウ!」
「フーシ!」
フシギソウが胸を張る。
初めて出会った頃の緊張した気持ちは、もうそこにはなかった。
頼れる私のパートナー。
進化した身体から溢れる力を声に乗せ、洞窟中に響かせた。
これで一勝一敗。
試練の勝負は、いよいよ最後の一戦だ。
◆
お姉ちゃん的には、今のフシギソウのバトルで合格だったのかもしれない。
でも。
やっぱり最後は――。
私の相棒。
最高の友達と一緒に戦いたい。
「オォン!」
久々のバトルということで、リオルの波動も滾っている。
「よしっ、やるよ、リオル!」
「ウオォウ!」
「やる気十分。感心、感心」
お姉ちゃんがボールを構える。
「――いいよ。私たちも行こうか、ソウブレイズ」
「ソウ!」
現れたのは、誇り高き蒼黒の騎士。
ソウブレイズ。
その姿を見た瞬間、空気が変わった。
「……強い」
思わず声が漏れる。
お姉ちゃんも、手加減を一段階緩めたのだろう。
溢れ出す波動が、先ほどのヒノヤコマやフシギダネとは比べ物にならない。
強い。
単純な強さだけじゃない。
立っているだけで、こちらの身体を押し潰されそうなほどの圧力がある。
「……ウオォウ!」
隣に立つリオルが、私を見た。
そして、力強く拳を握る。
私を勇気づけてくれているのだろう。
彼も分かっている。
目の前にいるのが、とんでもない強敵だということを。
それでも、私と一緒に戦うつもりなのだ。
それが何より嬉しかった。
リオルと一緒に戦いたい。
リオルと共に勝ちたい。
その思いが、胸の奥からどんどん湧き上がってくる。
「……うん」
私はボールを握り直す。
「リオル、つるぎのまい!」
「オォウ!」
リオルが両腕を構え、身体から闘気を噴き上げる。
「ほのおのうず!」
「……っ!」
ソウブレイズから炎の渦が放たれる。
巨大な炎の輪がリオルを包み込んだ。
つるぎのまいで攻撃力を高めながら、リオルは炎の渦を切り裂こうとする。
しかし――。
炎は消えない。
むしろ勢いを増し、リオルの身体へと絡みついていく。
「リオル、抜け出して!」
「オォ……!」
リオルが必死に炎を振り払う。
だが、継続的に体力を削られていく。
「だったら、シャドークロー!」
「オォウ!」
リオルが一気に踏み込む。
影を纏った鋭い爪が、ソウブレイズへと迫る。
「受け止めて!」
「ソウッ!」
ソウブレイズは両腕を交差させ――。
なんと、リオルの腕をがっしりと掴んだ。
「なっ……!」
シャドークローはソウブレイズに効果抜群。
それなのに、真正面から受け止めた!?
つるぎのまいで攻撃力を上げているのに……。
能力の差がありすぎる!
「リオル、でんこうせっか!」
「ァオウ!」
リオルの身体が一瞬で掻き消える。
「……ソウ?」
ノーマルタイプのでんこうせっかは、ゴーストタイプのソウブレイズには当たらない。
でも、それでいい。
リオルの身体がすり抜ける瞬間、ソウブレイズに掴まれていた腕が自由になる。
そのまま背後へ回り込む。
「今だ! シャドークロー!」
「オォウ!」
死角から鋭い爪を叩き込む。
ザシュッ!
「ソウッ……!」
今度こそ直撃。
だが――。
「……まだ倒れない」
ソウブレイズは僅かに身体を揺らしただけだった。
「嘘でしょ……」
つるぎのまいを積んで、弱点を突いた。
それでも、これだけ。
レベル差って怖い。
「むねんのつるぎで吹き飛ばせ!」
「ソウッ!」
ソウブレイズの腕に蒼黒い炎が集まる。
そのまま、巨大な刃となって振り抜かれた。
「リオル、避けて!」
「キャン!」
間に合わない。
蒼黒の刃がリオルの腹部を捉え、そのまま勢いよく吹き飛ばす。
「リオル!」
洞窟の壁へ叩きつけられる。
「……っ!」
リオルがゆっくりと立ち上がる。
けれど、動きが明らかに鈍い。
まずい。
ほのおのうずで削られた体力が、こちらの想像以上に多い。
むねんのつるぎの一撃も重すぎた。
「リオル! 大丈夫!?」
「……オオオオォン!」
一際激しく、リオルが吠えた。
そうだよね。
あなたは相手が強いほど闘志が燃える。
きっと今だって、諦めずに勝利の可能性を探している。
そして――。
私も。
「……うん」
私は笑った。
「最後まで、一緒に戦おう」
「オォウ!」
なら、出し惜しみなんてするものか。
今の私たちができることを、全部やる!
「リオル!」
両手を前に突き出す。
「つるぎのまい!」
リオルが再び力を高める。
「続けて、ビルドアップ!」
筋肉が膨れ上がり、身体中から波動が噴き出す。
「そしてシャドークロー!」
「オオォォン!」
リオルの右腕に、巨大な蒼黒の刃が形成される。
その姿は――。
目の前にいるソウブレイズが持つ大剣に、どこか似ていた。
「さらに、でんこうせっか!」
リオルが地面を蹴る。
その瞬間。
ドンッ!
衝撃だけで、身体に絡みついていた炎の渦が弾け飛んだ。
速い。
今まで見たことがない。
これが――今のリオルの全力。
大地を蹴り、一瞬でソウブレイズとの距離を詰める。
「行けぇぇぇっ!」
「オオオオォォォン!」
私たちの全力。
四つの技を繋げた、渾身の連結攻撃。
四連結シャドークロー波動斬りだ!
「……っ!」
お姉ちゃんの目が初めて見開かれた。
「ソウブレイズ!」
ソウブレイズも動く。
「じごくづき! サイコカッター!」
蒼黒の斬撃と、紅紫色の閃光が真正面から激突する。
「オオオオオォォォ!」
「ソウッ!」
洞窟内が激しい光に包まれる。
衝撃で地面が揺れ、砂埃が舞い上がる。
リオルのシャドークローと、ソウブレイズのじごくづき。
二つの技が激しくぶつかり――。
「……っ!」
◆
「キャイン!」
「こらこらリオル、動かないの。バタフリーも無理に飛ぼうとしない。フシギソウ、宥めておいてくれる?」
「フーシ!」
私は傷ついたポケモンたちの手当てをしていた。
特に最後の激突で吹き飛ばされたリオルのダメージが凄まじい。
しばらくは絶対安静だろう。
そう。
最後の激突。
私たちは、あと一歩届かなかった。
じごくづきでシャドークローを相殺され、ガラ空きになった身体へサイコカッターを決められた。
私とリオルの敗北である。
全力で頑張っただけに、悔しい。
ものすごく悔しい。
お姉ちゃんは、連結技を使いこなし、更なる高等技術である技の同時使用を私に使わせただけでも十分合格だと言っていた。
それでも――。
負けるのは悔しい。
「……アオン」
リオルが優しく私に手を伸ばしてくる。
慰めてくれているのかな。
「……ありがとう」
私は、その手をそっと握った。
負けた。
けれど、リオルと一緒に最後まで戦えたことは嬉しかった。
「ここまで強くなっていれば、もう心配ないわね」
お姉ちゃんが立ち上がる。
「それじゃあ、そろそろ私は行くから」
「もう行くの?」
「ええ。イッシュ地方で大きな大会があってね。明後日にはクチバの港から出ないといけないのさ」
「相変わらず忙しいねぇ……」
「これが私の仕事みたいなものだからね」
お姉ちゃんは笑いながら、私たちに背を向ける。
「じゃあね、リーフ。次に会う時は、もっと強くなってなさい」
「うん!」
お姉ちゃんはハナダ方面へと去っていった。
エリートトレーナーは大変である。
私は特に予定もないし、今日はお月見山でキャンプしよう。
このお月見山はカントーでも絶好の夜景スポットだというし、早めにテントを建てて、のんびり天体観測と洒落込もうではないか。
◆
「やれやれ。我が妹ながら末恐ろしい」
おつきみ山を降りた四番道路。
彼女の足取りは軽やかだった。
「あのソウブレイズ、次の大会用に鍛えていたんだけど……まさか技の同時使用まで引き出されるとは」
相性は有利。
レベル差も35以上。
間違いなく、今のリオルではまともに戦うことすらできず、ボロ雑巾のように負けるだけだと思っていた。
それが――。
「あそこまで善戦するとはね」
特に最後の連結技。
連続して技を出すのは、才能のある新人トレーナーなら珍しくもない。
しかし、普通は二連が限界。
新人トレーナーであるリーフが見せた四連結をタケシが見たら、ひっくり返ったかもしれない。
そして、もう一つ。
「あの戦いで、リオルの成長速度が凄まじかった」
レベル40、下手をすれば50。
あのバトルの間、恐らく一時的なものだろうが、リオルのレベルは爆発的に上がっていた。
それが、彼女の導き出した結論だった。
「これは将来が楽しみだねぇ」
彼女はニヤリと笑う。
「くふふ……」
・バタフリー酷使しすぎ問題
イシツブテと戦い、イワークに負け、ヒノヤコマにも負け…
過労死枠が定まりつつある…
・お姉ちゃんのフシギダネはサトシのフシギダネ
カントー地方のサトシくんはたくさんポケモンをゲットしますが、全てを出すには毎回サトシくんとバトルする回だけで埋まりそうなので分散させていきます。どんなパーティになるかは未定。
・現在のレベル
三匹とも25前後。ですがこの作品はノリと勢いで書いているのでレベルが上下します。しかもわざマシンやタマゴ技はポンポン出てくる無法っぷり…
投稿時間何時くらいがいい?
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