ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「ばんごはん〜」
さて、今夜私が頂くのは、ミガルーサのホイル焼きです。
自然に剥がれ落ちたミガルーサの切り身と、今朝採れたばかりの小さなキノコ。
それにバターと醤油を加え、アルミホイルで包んで焚き火にシュート。
魚の旨みを余さず堪能できる、お手軽キャンプ飯だ。
おまけにミガルーサは手頃な動物性蛋白質として、隣町のハナダシティでも養殖が進んでいる。
ニビシティで安く買えて良かった。
リオルたちにはポケモンフーズ、ニビあられ味。
風味豊かな、ご当地ポケモンフーズである。
ご飯も炊けたし、そろそろいいかな。
「いただきます」
焚き火から取り出し、アルミホイルを開く。
ふわっ。
バターと醤油の芳醇な香りが、私の嗅覚を刺激する。
箸を入れると、ふっくらとしたミガルーサの身が簡単にほぐれた。
中から現れたのは、美味しそうな白色の断面。
「ワァ〜」
駄目だ。
涎が止まらない。
早速いただきます。
身を口に入れた瞬間、魚の凝縮された旨みとキノコの旨みが口いっぱいに溢れ出す。
それを引き立てるバターと醤油の追撃。
最高だ。
身とキノコを、炊き立てで粒の立った白米に乗せて、お行儀悪くがっつく。
美味い。
人間の原始的生存欲求を刺激する、絶妙な塩味だ。
ペロリと平らげてしまった。
「ふぅ……」
満足。
さて、食後のお茶でも――。
隣を見る。
リオルとフシギソウが、物欲しそうな目でこちらを見ていた。
「……」
ええい。
そんなつぶらな瞳で私を見るな。
ポケモンセンター送りになってしまう。
仕方がないので、別に焼いていたミガルーサと小さなキノコを二匹にも分けてやる。
「はいはい。どうぞ」
「オォウ!」
「フーシ!」
二匹は嬉しそうに食べ始めた。
「はは、こやつらめ」
◆
食後。
砂糖を入れたお茶をチビチビ飲みながら、空を見上げる。
満天の星が、夜空に煌めいていた。
ここは、先ほどお姉ちゃんとバトルをした洞窟から少し進んだ場所。
天井が開けていて、キャンプには最適なスポットだ。
空気が澄んでいるのか、小さな星の光までバッチリ見える。
前世では、人里離れた山までキャンプに行って、こういった夜空をコーヒー片手にただボーッと眺めたものだ。
この世界に生まれ変わってからは都市部や住宅街に住んでいたので、夜空を見上げても大抵は都市の光に邪魔されて、星はよく見えなかった。
それが今は――。
星の光を邪魔するものは何もない。
「綺麗だなぁ……」
「オォン」
「フー……」
隣では、リオルとフシギソウも空を見上げている。
バタフリーは今日2回も負けて疲れたのか、既にボールの中でおねんねだ。
お月見山の絶景を、私たちは眠くなるまで楽しんだ。
◆
道行くトレーナーたちとバトルしたり、山の中でキャンプを楽しんだりすること数日。
私たちは、ハナダシティへと続く四番道路を進んでいた。
天気は快晴。
のんびり歩くには絶好の旅日和だ。
こういう長閑な日には、ポケモンも穏やかに――。
「シャーッ!」
「コージョ!」
「ギャー!」
……なっていない。
むしろ、どいつもこいつも気が荒ぶっておられる。
朝からアーボやサンド、オニスズメの群れが、私の鞄を奪おうと襲いかかってくるではないか。
「ちょっ、なんで!?」
仕方がないので、リオルとフシギソウ、バタフリー。
そして私のマッハパンチで追い払う。
しかし、襲撃は止まらない。
それどころか――。
「なんか、どんどん増えてない!?」
凶暴化したポケモンたちが、次々とこちらへ寄ってくる。
「ぎゃあああ!」
「ああっ、僕のリュックが!」
「私のポーチがっ!」
異変は、私たちの周囲だけに起きているわけではなかった。
道行く人々を見れば、野生のポケモンに襲われ、持ち物を奪われている。
「……ソウ」
「うん」
私は改めて周囲を見渡す。
「明らかに、何かがおかしいよ」
異常なポケモンたちを観察してみる。
彼らは住処である草むらから飛び出し、トレーナーの持ち物を奪っている。
しかし、妙なのはその後だ。
奪った鞄を持ち帰るわけではない。
少し進んだところで隠れると、戦利品を地面にぶちまける。
そして――。
保存食。
飲み物。
ポケモンフーズ。
そういった食料だけを選んで持っていく。
しかも持ち帰ることすらせず、その場で包装を破いて勢いよく食べている。
「……なるほど」
道路のあちこちには、奪われた鞄やトレーナーカード、空のモンスターボールなどが散乱している。
その一方で、食べ物の包装や食いちぎられたペットボトルの残骸だけは大量に残されている。
辺り一帯には、様々な食品の匂いが混じっていた。
そして、その匂いがさらに別の野生ポケモンを呼び寄せる。
結果、パニックは止まらない。
むしろ広がっている。
結論。
彼らは――。
物凄く腹を空かせている。
「腹が減りすぎてちょっと具合が悪いんだよォー」
そんな叫びが聞こえてきそうなくらいには腹ペコだ。
「木の実……かな?」
彼らが普段食べている木の実が、不作なのだろうか。
だとすれば、この異常行動にも説明がつく。
「何かできることはないかな」
私はポケモン図鑑を取り出した。
こういう時こそ、調べてみよう。
◆
四番道路の奥深く。
木の実の群生地。
本来なら、ここに住むポケモンたちの命を繋いでいる神聖な木々。
しかし今、その木々は――。
黒ずくめの人間たちによって占領されていた。
少しでも熟している木の実があれば、問答無用で根こそぎもぎ取る。
野生のポケモンのことなど眼中にない。
ただ、あるだけ貪る。
それは知恵を持つ人間というより、本能に従う獣に近かった。
「いた! この辺を荒らしていたのはあなたたちね!」
私は茂みから姿を現す。
大勢の人間の波動を感じる。
どうやら、彼らがこの事件の犯人らしい。
「なんだあ、このガキンチョは?」
「俺たちは食事中なんだよ! あっちいけ!」
「あなたたちが木の実を独占するから、今、大変なことになっているのよ!」
私は腰に手を当てて怒鳴る。
「誰なの!?」
「……ん?」
喧しい声を聞きつけ、奥から二人の男女がやってきた。
金髪の女。
そして緑髪の男。
手には、他の団員たちと同じく齧りかけの木の実。
そして、黒ずくめの衣装には赤々と刻まれた――。
『R』。
「ムシャムシャ……なんだかんだと言われたら……」
「答えないのが普通だが……ゴックン」
「「まあ、特別に答えてやろう!」」
「地球の破壊を防ぐため!」
「地球の平和を守るため!」
「愛と誠実な悪を貫く!」
「キュートでお茶目な敵役!」
「ヤマト!」
「コサブロウ!」
「宇宙を駆けるロケット団の二人には!」
「ショッキングピンク、桃色の明日が待ってるぜ!」
「なーんてな!」
「ラッチューノ!」
「ロケット団……!」
まさか。
おつきみ山にいないと思ったら、出た先にいるとは……。
「あれ?」
だとしたら、こんなところで何をしているんだろう。
木の実を集めても本部へ送るわけではなく、全部この場で食べている。
周囲のポケモンたちが暴走していることにも気づいていない。
……おかしいな
すると、下っ端の一人が口を開いた。
「遡ること数日前――」
「俺たちロケット団ヤマブキシティ支部のアジトは、何者かに襲われた……」
「シルフカンパニー襲撃のためにせっせと作って、一週間前にようやく完成した秘密基地だったのに……」
「それが、あのうるさいニャースを連れたエリート団員が捕まえてきたポッチャマが暴れたせいで、隠してあった入り口が壊れてしまったんだ……」
「そっから先は滅茶苦茶だ!」
「ポッチャマを探しにやってきたトレーナーは、やたらめったら機械を壊すし!」
「化け物みたいな強さの女トレーナーに、俺たちのポケモンは全滅だ!」
「ポケモンを失った俺たちは、ヤマトさん、コサブロウさんたちと一緒に裏口を使って、命からがら逃げ出したんだ……」
「あのおっかない女どもがいたんじゃあ、おちおちタマムシシティの本部アジトに逃げ帰ることもできねぇ!」
「俺たちはここで息を潜めて、本部からの救援を待っているだけなんだ……」
「こら!」
ヤマトが怒鳴る。
「一から十まで説明するな!」
「あ、わかりやすい説明ありがとうございます」
「褒めるな!」
見れば彼らの顔は暗く、黒一色の悪の衣装は汚れだらけ。
……じゃなくて!
「それで、この辺りを荒らしていたのね!」
私はロケット団を指差す。
「許さないんだから! 大人しくお縄につきなさい!」
「うるさいガキンチョね!」
ヤマトが木の実を握りしめる。
「私たちは今!」
コサブロウも叫ぶ。
「腹が減りすぎてちょっと具合が悪いんだよォー!」
「それは周りのポケモンたちもよ!」
というか――。
父さんと母さんの会社を襲おうだなんて、ぬけぬけと!
絶対に捕まえて、しょっぴいてやるんだから!
「世界の怖さを知らないお子ちゃまに、お勉強をつけてやる!」
コサブロウがラッタに指示を飛ばす。
「ラッタ! かみつく!」
「ラッチュー!」
ラッタが牙を剥き、一直線に突っ込んでくる。
「リオル、いわくだき!」
「オォウ!」
ラッタの鋭い牙が届くより早く、リオルが踏み込む。
「せぇいっ!」
ドゴォン!
渾身のいわくだきがラッタを捉えた。
「ラッチュ……」
ラッタはそのまま吹き飛び、木に激突。
その場で戦闘不能になった。
「な、何よ、そのポケモンは!?」
ヤマトが目を見開く。
「まさか……リオルか?」
コサブロウがリオルを凝視する。
「珍しいポケモンだ!」
そして――。
「ここで捕まえてサカキ様に献上すれば、今回の失態を帳消しにしてくれるかもしれない!」
「……は?」
嫌な予感がする。
ロケット団員たちが一斉に動いた。
網。
棒。
捕獲用の道具。
次々と取り出し、リオルを囲んでいく。
「私のリオルに、何してるのよ!」
「へへへ……珍しいポケモンを手に入れれば、俺たちだって――」
「……」
私は拳を握る。
……人間相手なら。
こちらもルール無用でいいよね?
「リオル!」
「オォン!」
「――いくよ!」
私は一気に駆け出した。
昔ヤマブキ格闘道場で学んだ技を勢いよく振るう。
「はっけい!」
ドゴン!
「ローキック!」
バキッ!
「クロスチョップ!」
ドォン!
「からの――かわらわり!」
「ベフォッン!」
「視界がモノクロになる〜!」
「なんなの、このガキ! ポケモンの技を使うなんて!」
「チィッ!」
コサブロウが後退する。
「お前ら、逃げるぞ!」
その瞬間――。
「うわあぁ!」
ドゴォン!
何者かに突き飛ばされたコサブロウが、地面を転がる。
「え?」
私とリオルが振り向く。
そこにいたのは――。
「キーッ!」
「マンキー!?」
犯人はマンキーだった。
空腹の限界に達したのか。
木の実の湧きどころを、卑劣な略奪者から取り返すため。
野生ポケモンの群れと共に、突撃してきたのだ!
「「「「「うわあああああ!?」」」」」
ロケット団員たちが吹き飛ばされる。
「シャーッ!」
「コージョ!」
「ギャー!」
「キーッ!」
「ちょ、ちょっと待って!」
一瞬にして、辺りは大乱戦に陥った。
ポケモンたちが縦横無尽に駆け回り、ロケット団員たちは逃げ惑う。
砂煙が立ち込め、視界まで悪くなっていく。
「リオル!」
「オォ……!」
私たちは完全に蚊帳の外だった。
いや。
さっきまで振り上げていた拳の行き先すら見失っている。
「……」
「オォン……」
二人で呆然と乱戦を眺める。
これは――。
私たちがどうこうできる状況ではない。
「ええと……」
私はポケモン図鑑を取り出した。これには近くの街への通信装置がついている。
「とりあえず、ジュンサーさんに通報しようか……」
「オ、オウン……」
リオルも困ったように頷いた。
・ヤマトとコサブロウ
現在ムコニャはサトシとピカチュウを追いかけています。彼らもそのうち出す予定だけど、リーフには彼らを絡ませていきたい。
・今更だけどリーフの原作知識について
サトシくんやムコニャが捕まえたポケモンについてはギリ覚えている。
旅の同行者のポケモンやどこでどんなポケモンが出現するかは曖昧。
劇場版に至っては全て忘れている。
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