ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている   作:はらへりニャンコ

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第17話 香水とジムバトル

 

 

 

 

 

ヤマブキシティとタマムシシティは、カントーでも一、二を争う大都市だ。

 

当然、その間の道のりも整備されている。

 

ヤマブキシティに着いた翌日、私たちは特に大きなトラブルに遭うこともなく、タマムシシティまでやってきた。

 

――なんか旅を始めてから、まともに街の観光をしたことがないな。

 

そんなことを考えながら、タマムシジムの門を開く。

 

中は明るく――そこにあったのはバトルコート……ではなく。

 

たくさんの若い女性たち。

 

少数だけいる男性たちは、なんとなく居心地が悪そうにしている。

 

そして、たくさんの棚に並べられているのは、色とりどりの液体が入った瓶。

 

なんか壮大なロゴと一緒に、値札にはゼロがびっしり並んでいる。

 

……あれ?

 

おかしいな。

 

ジムの場所、間違えたかな?

 

そう思って入口まで引き返してみる。

 

しかし、看板に書かれているのは間違いなく――

 

『タマムシジム』

 

おかしいな。

 

トキワの森で頭に受けた衝撃の後遺症が、今になって発動したのかな?

 

「あの~、ジムチャレンジャーですか?」

 

「あ、はい。ここ、ジムですよね?」

 

話しかけてきたのは、私より少し年上の女性だった。

 

胸元の名札には、

 

『エリカフレグランス・タマムシジムアドバイザー』

 

と、小さくお上品な字で書かれている。

 

「はい。ここはエリカさんの副業である香水店も兼ねているんです。バトルコートへご案内しますね」

 

……

 

なるほど。

 

そういうことか。

 

◆

 

「エリカさん、チャレンジャーの方をお連れいたしました」

 

「あら、ようこそチャレンジャーさん。ジムが分かりづらくてごめんなさいね」

 

案内されたのは、色とりどりの木々が満開に咲いたスタジアム。

 

ジムリーダーのエリカは、バトルコート脇でマダツボミやナゾノクサたちに水をやっていた。

 

「はい、すごく驚きました……」

 

「ふふ、よく言われます。早速バトルを始めましょう……と言いたいところですが、少々お待ちくださいませ。観客を集めたいので」

 

「観客……ですか?」

 

「ええ。近頃この辺りが物騒なのはご存知ですか?」

 

エリカは穏やかな笑みを浮かべながら続ける。

 

「それで、私たちポケモントレーナーの実力をバトルの形で示し、住民の皆さんを安心させるために、ジムバトルを公開するようリーグ本部から通達があったのですよ」

 

なるほど。

 

香水店がメインなのかなと思ったけど、ハナダジムと違ってジムリーダー業もしっかりやっているみたいだ。

 

これは、いいバトルが期待できそうだ。

 

「はい! 対戦、よろしくお願いします!」

 

「あらあら、礼儀正しくてよろしいですね。素晴らしいバトルを期待します」

 

◆

 

「ではこれより、ジムリーダー・エリカ対チャレンジャー・リーフのポケモンバトルを行います!」

 

観客席はかなりの人で埋まっていた。

 

近所の住民だけではない。

 

遠くから香水を買いに来ていた女の子たちが、物珍しさに観戦に来ている。

 

さらに、次にジムへ挑もうとしているトレーナーたちは、研究のためか一番近くの席からこちらをじっと見つめていた。

 

「バトルルールは3対3! 交代はチャレンジャーのみ! メガシンカ等の特殊戦術は、双方とも禁止とします!」

 

「では、始めましょう……。私、負けませんわよ」

 

「さあ、みんな、やろうか!」

 

互いにモンスターボールを構える。

 

バトルコートの熱気が、一気に高まっていく。

 

「レディ!」

 

「行こう、バタフリー!」

 

「咲きなさい、ラフレシア!」

 

「フッフリー!」

 

「ラッフー!」

 

こちらの一番手は、タイプ相性の良いバタフリー。

 

今回は活躍してもらうからね。

 

「バトル開始!」

 

「まずは、しんぴのまもり!」

 

バタフリーが銀色に輝く鱗粉でできた光の膜を身にまとい、状態異常への備えを整える。

 

「アシッドボムです!」

 

「アクロバット!」

 

どく状態にするのは諦めたのだろう、ラフレシアが頭の花から毒とは違う劇薬をばら撒く。

 

しかし、バタフリーのスピードには追いつけない。

 

そのまま距離を詰めたバタフリーは、風をまとった突撃をラフレシアへ叩き込み、大きく吹き飛ばした。

 

「あまいかおりで動きを止めるのです!」

 

「フー!」

 

大きく吹き飛ばされたラフレシアだが、諦めない。

 

バタフリー目掛けて花の蜜をふりかけ、その動きを鈍らせる。

 

その隙を逃さず、ラフレシアはアシッドボムを打ち込んだ。

 

「おいかぜを起こしつつ、後退!」

 

バタフリーが力強く羽ばたく。

 

巻き起こされた風がバトルコート全体を包み、バタフリーの動きを後押しする。

 

しかし、あまいかおりとアシッドボムを受けた影響が残っている。

 

この状態でバトルを続けるのはキツそうだ。

 

「戻って、バタフリー! ここは任せた!」

 

ボールに戻ったバタフリーと入れ替わるように、フシギソウが飛び出す。

 

「行こう、フシギソウ!」

 

「フーシ!」

 

おいかぜが残っているうちに、一気に決めるよ!

 

「リーフストーム!」

 

「のしかかり!」

 

「フーシーギー!」

 

フシギソウが蔓を思い切り伸ばし、天井に突き刺す。

 

そのまま少し後退し、ピンと張った蔓を一気に引っ張る。

 

すると――

 

フシギソウの身体が、おいかぜに乗って空高く舞い上がった!

 

「嘘、今のを避けた!?」

 

葉っぱの嵐を飛び越えたフシギソウは、そのまま勢いよくラフレシア目掛けて落下する。

 

ズドンッ!

 

「ラ、フー……」

 

「ラフレシア、戦闘不能! フシギソウの勝ち!」

 

ワァーッ!

 

観客席から歓声が飛び交う。

 

鈍重なイメージのあるフシギソウが、空高く飛び上がったことが新鮮だったのだろう。

 

「……あんなにパワフルな動きをするフシギソウは、初めて見ました。お見事です」

 

「ありがとうございます。自慢のフシギソウです」

 

「これほどの相手なら……咲きなさい、モジャンボ!」

 

「モッジャ!」

 

「お疲れ、フシギソウ。一度戻って」

 

私はボールを構える。

 

「……行こう、マンキー!」

 

「キーッ!」

 

エリカさんが次に繰り出したのは、巨大なモジャンボ。

 

私は三匹目のマンキーを出していく。

 

「参ります。つるのむち!」

 

「ビルドアップで防御!」

 

モジャンボが青い蔓を振り回し、マンキーを激しく打ち付ける。

 

しかし、ビルドアップで力を増したマンキーには、その衝撃が大きなダメージにはならない。

 

「アクロバット!」

 

「しびれごな!」

 

おいかぜに乗ったマンキーが、一気に距離を詰めてモジャンボを殴りつける。

 

攻撃はしっかり通った。

 

だが――。

 

マンキーの拳がモジャンボの身体を打ち抜いた瞬間、周囲に舞っていたしびれごなが大量に巻き上がった。

 

「キーッ!?」

 

マンキーの動きが止まる。

 

「マンキー!?」

 

「しびれごなの影響が出ましたね。ギガドレインで縛りつけるのです!」

 

「モジャモジャ!」

 

まずい!

 

マンキーが蔓に捕まった。

 

まひ状態では拘束を振りほどくこともできず、ギュウギュウと締め上げられてながら体力を奪われていく。

 

「からげんきよ、マンキー!」

 

「キ、キ、キィ……!」

 

なんとか振りほどこうとするマンキー。

 

しかし、身体が痺れて上手く動かせない。

 

「つばめがえしです、モジャンボ!」

 

モジャンボは、マンキーを捕まえている蔓とは別の蔓を振り上げる。

 

そこへ鋭い飛行タイプの力をまとわせ、一気に振り下ろした。

 

「お願い、マンキー! 頑張って!」

 

「キ、キ……キィーッ!」

 

つばめがえしがマンキーに直撃する、その瞬間。

 

マンキーが、ギリギリで拘束を抜け出した。

 

そして、残された力をすべて拳に込める。

 

「今だ、マンキー!」

 

マンキーが渾身の一撃を叩き込む。

 

だが――。

 

モジャンボの蔓が、その一撃を真正面から受け止めた。

 

「キーッ!」

 

そのまま勢いに押し負け、マンキーは弾き飛ばされる。

 

地面を何度かバウンドし――

 

ドサッ。

 

「……キー……」

 

マンキーは、ぐったりと倒れ込んだ。

 

「マンキー、戦闘不能! モジャンボの勝ち!」

 

これで勝負は――2対2。

 

一進一退の戦いだ。

 

「……よし」

 

私はモンスターボールを握りしめる。

 

ここからが本番だ。




・ヤマブキ、タマムシ、クチバ間はかなり短い。
実際の距離はそこそこあるのだが、道が整備されているので歩きやすく、そこまで時間はかからない。
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