ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
皆さんのおかげで執筆できています、本当にありがとうございます!
ヤマブキシティとタマムシシティは、カントーでも一、二を争う大都市だ。
当然、その間の道のりも整備されている。
ヤマブキシティに着いた翌日、私たちは特に大きなトラブルに遭うこともなく、タマムシシティまでやってきた。
――なんか旅を始めてから、まともに街の観光をしたことがないな。
そんなことを考えながら、タマムシジムの門を開く。
中は明るく――そこにあったのはバトルコート……ではなく。
たくさんの若い女性たち。
少数だけいる男性たちは、なんとなく居心地が悪そうにしている。
そして、たくさんの棚に並べられているのは、色とりどりの液体が入った瓶。
なんか壮大なロゴと一緒に、値札にはゼロがびっしり並んでいる。
……あれ?
おかしいな。
ジムの場所、間違えたかな?
そう思って入口まで引き返してみる。
しかし、看板に書かれているのは間違いなく――
『タマムシジム』
おかしいな。
トキワの森で頭に受けた衝撃の後遺症が、今になって発動したのかな?
「あの~、ジムチャレンジャーですか?」
「あ、はい。ここ、ジムですよね?」
話しかけてきたのは、私より少し年上の女性だった。
胸元の名札には、
『エリカフレグランス・タマムシジムアドバイザー』
と、小さくお上品な字で書かれている。
「はい。ここはエリカさんの副業である香水店も兼ねているんです。バトルコートへご案内しますね」
……
なるほど。
そういうことか。
◆
「エリカさん、チャレンジャーの方をお連れいたしました」
「あら、ようこそチャレンジャーさん。ジムが分かりづらくてごめんなさいね」
案内されたのは、色とりどりの木々が満開に咲いたスタジアム。
ジムリーダーのエリカは、バトルコート脇でマダツボミやナゾノクサたちに水をやっていた。
「はい、すごく驚きました……」
「ふふ、よく言われます。早速バトルを始めましょう……と言いたいところですが、少々お待ちくださいませ。観客を集めたいので」
「観客……ですか?」
「ええ。近頃この辺りが物騒なのはご存知ですか?」
エリカは穏やかな笑みを浮かべながら続ける。
「それで、私たちポケモントレーナーの実力をバトルの形で示し、住民の皆さんを安心させるために、ジムバトルを公開するようリーグ本部から通達があったのですよ」
なるほど。
香水店がメインなのかなと思ったけど、ハナダジムと違ってジムリーダー業もしっかりやっているみたいだ。
これは、いいバトルが期待できそうだ。
「はい! 対戦、よろしくお願いします!」
「あらあら、礼儀正しくてよろしいですね。素晴らしいバトルを期待します」
◆
「ではこれより、ジムリーダー・エリカ対チャレンジャー・リーフのポケモンバトルを行います!」
観客席はかなりの人で埋まっていた。
近所の住民だけではない。
遠くから香水を買いに来ていた女の子たちが、物珍しさに観戦に来ている。
さらに、次にジムへ挑もうとしているトレーナーたちは、研究のためか一番近くの席からこちらをじっと見つめていた。
「バトルルールは3対3! 交代はチャレンジャーのみ! メガシンカ等の特殊戦術は、双方とも禁止とします!」
「では、始めましょう……。私、負けませんわよ」
「さあ、みんな、やろうか!」
互いにモンスターボールを構える。
バトルコートの熱気が、一気に高まっていく。
「レディ!」
「行こう、バタフリー!」
「咲きなさい、ラフレシア!」
「フッフリー!」
「ラッフー!」
こちらの一番手は、タイプ相性の良いバタフリー。
今回は活躍してもらうからね。
「バトル開始!」
「まずは、しんぴのまもり!」
バタフリーが銀色に輝く鱗粉でできた光の膜を身にまとい、状態異常への備えを整える。
「アシッドボムです!」
「アクロバット!」
どく状態にするのは諦めたのだろう、ラフレシアが頭の花から毒とは違う劇薬をばら撒く。
しかし、バタフリーのスピードには追いつけない。
そのまま距離を詰めたバタフリーは、風をまとった突撃をラフレシアへ叩き込み、大きく吹き飛ばした。
「あまいかおりで動きを止めるのです!」
「フー!」
大きく吹き飛ばされたラフレシアだが、諦めない。
バタフリー目掛けて花の蜜をふりかけ、その動きを鈍らせる。
その隙を逃さず、ラフレシアはアシッドボムを打ち込んだ。
「おいかぜを起こしつつ、後退!」
バタフリーが力強く羽ばたく。
巻き起こされた風がバトルコート全体を包み、バタフリーの動きを後押しする。
しかし、あまいかおりとアシッドボムを受けた影響が残っている。
この状態でバトルを続けるのはキツそうだ。
「戻って、バタフリー! ここは任せた!」
ボールに戻ったバタフリーと入れ替わるように、フシギソウが飛び出す。
「行こう、フシギソウ!」
「フーシ!」
おいかぜが残っているうちに、一気に決めるよ!
「リーフストーム!」
「のしかかり!」
「フーシーギー!」
フシギソウが蔓を思い切り伸ばし、天井に突き刺す。
そのまま少し後退し、ピンと張った蔓を一気に引っ張る。
すると――
フシギソウの身体が、おいかぜに乗って空高く舞い上がった!
「嘘、今のを避けた!?」
葉っぱの嵐を飛び越えたフシギソウは、そのまま勢いよくラフレシア目掛けて落下する。
ズドンッ!
「ラ、フー……」
「ラフレシア、戦闘不能! フシギソウの勝ち!」
ワァーッ!
観客席から歓声が飛び交う。
鈍重なイメージのあるフシギソウが、空高く飛び上がったことが新鮮だったのだろう。
「……あんなにパワフルな動きをするフシギソウは、初めて見ました。お見事です」
「ありがとうございます。自慢のフシギソウです」
「これほどの相手なら……咲きなさい、モジャンボ!」
「モッジャ!」
「お疲れ、フシギソウ。一度戻って」
私はボールを構える。
「……行こう、マンキー!」
「キーッ!」
エリカさんが次に繰り出したのは、巨大なモジャンボ。
私は三匹目のマンキーを出していく。
「参ります。つるのむち!」
「ビルドアップで防御!」
モジャンボが青い蔓を振り回し、マンキーを激しく打ち付ける。
しかし、ビルドアップで力を増したマンキーには、その衝撃が大きなダメージにはならない。
「アクロバット!」
「しびれごな!」
おいかぜに乗ったマンキーが、一気に距離を詰めてモジャンボを殴りつける。
攻撃はしっかり通った。
だが――。
マンキーの拳がモジャンボの身体を打ち抜いた瞬間、周囲に舞っていたしびれごなが大量に巻き上がった。
「キーッ!?」
マンキーの動きが止まる。
「マンキー!?」
「しびれごなの影響が出ましたね。ギガドレインで縛りつけるのです!」
「モジャモジャ!」
まずい!
マンキーが蔓に捕まった。
まひ状態では拘束を振りほどくこともできず、ギュウギュウと締め上げられてながら体力を奪われていく。
「からげんきよ、マンキー!」
「キ、キ、キィ……!」
なんとか振りほどこうとするマンキー。
しかし、身体が痺れて上手く動かせない。
「つばめがえしです、モジャンボ!」
モジャンボは、マンキーを捕まえている蔓とは別の蔓を振り上げる。
そこへ鋭い飛行タイプの力をまとわせ、一気に振り下ろした。
「お願い、マンキー! 頑張って!」
「キ、キ……キィーッ!」
つばめがえしがマンキーに直撃する、その瞬間。
マンキーが、ギリギリで拘束を抜け出した。
そして、残された力をすべて拳に込める。
「今だ、マンキー!」
マンキーが渾身の一撃を叩き込む。
だが――。
モジャンボの蔓が、その一撃を真正面から受け止めた。
「キーッ!」
そのまま勢いに押し負け、マンキーは弾き飛ばされる。
地面を何度かバウンドし――
ドサッ。
「……キー……」
マンキーは、ぐったりと倒れ込んだ。
「マンキー、戦闘不能! モジャンボの勝ち!」
これで勝負は――2対2。
一進一退の戦いだ。
「……よし」
私はモンスターボールを握りしめる。
ここからが本番だ。
・ヤマブキ、タマムシ、クチバ間はかなり短い。
実際の距離はそこそこあるのだが、道が整備されているので歩きやすく、そこまで時間はかからない。
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