ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
いざ、ホウオウ探しの旅へ!
と意気込んだ私――だったのだが。
「……暇だ」
絶賛、タマムシシティの病院で読書に勤しんでおります。
リオルも私の隣のベッドで、同じように安静中だ。
……ポケモンって、人間と同じ病室でいいのか?
まあ、この世界ではポケモンセンターがあるくらいだ。
多少の融通は利くらしい。
「……暇だ」
入院生活、暇すぎる。
サトシは一日で退院したらしい。
今はゲットしたヒトカゲと一緒にランニングでもしていることだろう。
なのに私は――。
「全身打撲、低体温症、軽度の脳震盪。おまけに崖から落下」
「……」
「一週間は絶対安静」
「……はい」
医師からそう宣告されてしまった。
リオルも怪我がまだ残っているため、一緒に入院中。
ちなみにヒトカゲは、すでに元気になっているらしい。
あの子だけでも助かったのは、本当に良かった。
クロス。
あの男がどうなったのかは知らない。
考えたらムカムカしてくるから、知りたくもない。
今は、それを考えるより自分の身体を治すことが先だ。
「……暇だ」
そう思いながら、ちょうどお見舞いに来てくれたマコトが持ってきてくれた本へ視線を戻した。
その時。
コンコン。
病室の扉がノックされた。
「はい?」
「リーフー!」
「……え?」
聞き覚えのある声。
扉が開く。
そこから顔を出したのは――。
「お母さん!?」
「久しぶりね、リーフ!」
「久しぶりっていうほど久しぶりじゃないでしょ」
「それでも、娘が入院してるって聞いたら飛んでくるのが母親よ」
お母さんは笑顔で病室へ入ってくる。
その後ろから――。
「よう、リーフ」
「……お父さん?」
父さんまで入ってきた。
「えっ、なんで!?」
「出張が終わったからな」
「いや、そうじゃなくて! お父さん、セキエイ高原まで出張してたんでしょ!? そんな簡単に帰ってこれるの!?」
「娘が崖から落ちたと聞いて、仕事を放り出してきた」
「仕事を放り出してきた!?」
「もちろん、最低限の引き継ぎはしてきたぞ」
「そういう問題!?」
思わずツッコんでしまう。
……でも。
二人の顔を見ていると。
胸の奥が、少しだけ温かくなった。
「……心配かけて、ごめんなさい」
「本当にね」
お母さんが私の頭を撫でる。
「あなたが入院したって聞いた時は、心臓が止まるかと思ったわ」
「お母さん……」
「でも、生きててくれて良かった」
「……うん」
その言葉に、私は小さく頷いた。
父さんもベッドの横まで歩いてくる。
そして――。
「まあ、説教は後だ」
「えっ」
「今回は十分、ソウジ君から説教されたと聞いているからな」
「……はい」
「なら、今は土産を渡そう」
「お土産?」
父さんが持っていた袋を取り出す。
「出張先で見つけたんだ」
「私に?」
「いや」
父さんは袋から、細長い箱を取り出す。
そして――。
私ではなく、隣にいたリオルへ差し出した。
「お前にだ」
「オオ?」
リオルが首を傾げる。
箱を開ける。
そこに入っていたのは――。
赤いスカーフ。
鮮やかな赤色の布が、丁寧に折り畳まれている。
「リオル用のスカーフだ」
「……!」
リオルの目が輝いた。
「オオオ!」
「気に入ったか?」
「オウ!」
リオルは嬉しそうにスカーフを受け取る。
……。
めちゃくちゃ嬉しそう。
尻尾までブンブン振っている。
「よかったな、リオル」
「オウ!」
「旅をしているなら、こういうものがあった方がいいだろうと思ってな」
父さんが笑う。
「それに、赤はお前によく似合うと思った」
「オオ……」
リオルはスカーフを大事そうに抱えた。
……可愛い。
これは反則だ。
私も欲しい。
「……私には?」
「もちろんある」
「やった!」
父さんがもう一つ、箱を取り出す。
今度は私に渡してきた。
「開けてみろ」
「うん」
箱を開く。
「……わぁ」
中に入っていたのは――。
青い結晶。
細長いクリスタルが、ネジのように捻れた、不思議な形をしている。
光を受けるたびに、青く淡い輝きを放っていた。
「綺麗……」
「ペンダントだ」
「これ……何の結晶?」
「出張先で見つけたものだ。詳しいことは分からなかったが、店の人間が珍しい品物だと言っていた」
父さんは少し照れくさそうに言う。
「お前が旅に出た記念に、ちょうどいいと思ってな」
「……」
私はペンダントを手に取る。
青い結晶が、私の指先で小さく揺れた。
「ありがとう、お父さん」
「大事にしろよ」
「うん」
ペンダントを首に掛ける。
胸元で揺れる青い結晶。
なんだろう。
不思議と落ち着く。
「似合ってるわよ、リーフ」
「本当?」
「ええ」
お母さんが微笑む。
その隣では――。
「オオオ!」
リオルが赤いスカーフを首に巻いていた。
「……リオルも似合ってる」
「オウ!」
「なんか、二人とも旅人っぽくなったわね」
「そう?」
「ええ。とてもよく似合ってる」
お母さんの言葉に、私は少しだけ照れながら笑った。
赤いスカーフを巻いたリオル。
青い結晶のペンダントを身につけた私。
こうして並んでいると――。
なんだか、本当に旅の仲間みたいだ。
「……早く退院したいな」
「駄目よ」
「即答!?」
「医者の言うことを聞きなさい」
「はい……」
「それに」
お母さんは私の頭をもう一度撫でる。
「退院したら、ホウオウを探しに旅立つんでしょ。サトシくんが嬉しそうに言っていたわ」
「……うん」
父さんも頷く。
「それまでに、身体を治しておけ」
「分かった」
私は胸元の青い結晶を握る。
そして、隣にいるリオルを見る。
赤いスカーフが、少しだけ揺れた。
――今回の旅では、たくさん無茶をした。
エンテイに会って。
クロスと戦って。
崖から落ちて。
……入院までした。
でも。
それでも私は、旅をやめるつもりはない。
ホウオウを探す。
そして――。
もっとたくさんのポケモンと出会う。
そのためにも。
今はしっかり休もう。
「よし」
私はベッドに身体を預ける。
「退院するまで、大人しく寝てます」
「最初からそうしなさい」
「はい……」
「アウ……」
リオルまで呆れたような顔をしている。
……なんで?
私、ちゃんと反省してるのに。
◆
その後は医師の言いつけを守り、ベッドの上で大人しくしていた私。
退院後、久々に走ろうとして思いっきりコケたのを笑ったサトシ――。
後で覚えてなさいよ。
私とリオルのリハビリ。
旅に必要な道具の補充。
その他、結構大事な用事。
それらを済ませた私たち四人は、タマムシシティを旅立った。
行き先は、ここから北。
ホウオウが住むという伝承が残る、ライゼン山脈である。
ライゼン山脈の登山道へ向かう途中の街に、ソウジが伝説のポケモンに関する書物を見つけた図書館があるらしい。
まずはそこで情報収集。
そして、登山に必要な準備を整えてから、本格的なホウオウ探しを行う計画だ。
そこまでの道のりは、長かった。
一人旅なら、気づかずに通り過ぎるような場所も。
四人がいれば、誰か一人は気づく。
そして大抵――。
それに巻き込まれて、大騒ぎになる。
例えば。
「「「最強のヒンバス!?」」」
「なんでもこの湖最強のポケモンらしい。ギャラドスに乗って捕まえようとしたトレーナーは、そのまま下流でポケモンと共に流されていたのを保護されたようだ……」
とびきり強いポケモンがいると聞いてやってきた湖。
釣り糸を垂らして掛かるのを待つが、待てども待てども一向に釣れず――。
「あーもう焦った〜い! こうなりゃ素潜り漁よ、ポッチャマ!」
~数分後~
「ブクブクブク……」
「ポチャチャア……」
「「「マ、マコトー!」」」
痺れを切らして湖に飛び込んだマコトとポッチャマが、アッサリ返り討ちにあったり。
◆
「バタフリー、かぜおこし!」
「フリフリィー!」
「カァ!」
「今だ、モンスターボール!」
「……カイロス、ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
サトシが、私の知る物語では捕まえていないはずのポケモンをゲットしていたり。
◆
「教えてやる! ポケモンの外見ばかり気にしていても、本当の魅力は見えてこないと!」
「な、なぁ、ソウジ。一旦落ち着けよ……」
「これが落ち着かずにいられるか! どいつもこいつも着膨れしては本来持つ個性を蔑ろにしよってからに……。そこに直れ! 俺が本当の美というものを叩き込んでやる!」
辿り着いた街で見た、奇妙な衣装を着たポケモンたちを前に、ソウジが意外な一面を見せたり。
◆
「キーッ!」
「「「キー! キー! キー!」」」
「ええと……マンキー? あなたの周りで踊っているオコリザルたちは一体……何?」
「進化前のマンキーが、オコリザルたちのリーダーになっている……」
「どうする? こいつらみんなゲットする?」
「そんなことしたら、ポケモンの預け先が滅茶苦茶に壊されるぞ……」
目を離した隙に、私のマンキーが森のオコリザルの群れをボコボコにした結果、ボスになっていたり。
◆
「まったく、あなた達との旅はほんと退屈しないわね……トラブルを起こさない日は無いのかしら?」
「いいじゃないか。旅は楽しい方、面白い方がいいに決まっているぜ」
「ここ数日、ポケモンの様々な姿だけでレポートが埋まっている。研究者としては最高だな」
「ふふっ、みんなとの旅もいいものね」
いろんなポケモン。
いろんな人。
いろんな出来事。
出会いと別れを繰り返しながら――。
私たちは、旅を続けていった。
リオルのスカーフはポケダンに出てくるリオルが付けていたものをイメージしてください。
みんな誰が好きですか?
-
リオル
-
フシギソウ
-
バタフリー
-
マンキー