ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている   作:はらへりニャンコ

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ついに10000UAを突破しました!

投稿し始めてから三週間、まさかこんなにも多くの人に読んで貰えるとは思っていませんでした。これからも応援、よろしくお願いします!


第22話 悠情編Ⅳ/マコトと北風の化身

 

 

 

 

 

「……スヤァ……」

 

「グゴゴゴゴ……フガッ……」

 

「……寝れない」

 

とある湖に面した洞窟。

 

景色もよく、ロケーションとしては最適だと思った私たちは、そこで夜を明かすことにした。

 

だが、問題が一つ。

 

寝心地が最悪だった。

 

敷くものが見つからない硬い床。

 

そして、同行者のイビキ。

 

……気になるのは私だけだろうか。

 

ポケモンたちはというと、気持ちよさそうに眠っている。

 

「……ん?」

 

ふと周囲を見回す。

 

――マコトがいない。

 

どこへ行ったのかと思ったが、すぐに見つかった。

 

洞窟の外。

 

湖の前に、ポツンと一人で座っていた。

 

せっかくなので、焚き火の残り火で白湯を作り、持っていくことにした。

 

「こんなところにいたら風邪ひくよ、マコト」

 

「ありがとう、リーフ……」

 

白湯の入ったカップを持ったマコトは、どこか元気がなかった。

 

心配になった私は彼女の隣に座り、一緒に湖を眺める。

 

月明かりが湖面に反射し、静かな水面が淡く輝いている。

 

「ねぇ、マコト。何を考えていたの?」

 

「ああ、うん。ちょっと家族のことをね」

 

「家族?」

 

私はマコトを見る。

 

「確かマコトは、シンオウ地方のトバリシティから来たんだよね?」

 

「うん。そうだよ」

 

そう言うと、マコトはスマホロトムを取り出した。

 

何回かタップとスワイプを繰り返した後、私に画面を見せる。

 

写真の中には、長髪の優しそうな女性が写っていた。

 

その女性は、マコトの相棒であるポッチャマを優しく撫でている。

 

その姿は、いつもマコトがポッチャマを撫でている時と瓜二つだった。

 

「私のママよ。ポッチャマはママから貰ったの」

 

「へえ、優しそうなママじゃない」

 

「優しいだけじゃなくて、強いよ」

 

マコトは少し誇らしそうに笑う。

 

「これがママのエンペルト。負けたところを見たことがないんだ。凄いでしょ?」

 

「うん。凄いね」

 

会話が途切れる。

 

辺りは静寂に包まれた。

 

数秒。

 

数十秒。

 

あるいは、数分後だっただろうか。

 

マコトが、ポツリポツリと話の続きを口にした。

 

「……私も、ママみたいな凄いトレーナーになれると思ってた」

 

「……」

 

「でも、実際は違った」

 

マコトは湖を見つめたまま、続ける。

 

「シンオウ地方のジム巡りをしていたけど、なかなか勝てなくて……ポケモンリーグにも間に合わなくなっちゃって」

 

「……」

 

「中途半端に終わっちゃったんだ。私の挑戦」

 

マコトは、少しだけ悲しそうに笑った。

 

「それで、どんな顔してママに会えばいいのかわからなくなっちゃって。だから、カントーまで飛び出して来たわけ」

 

「……そうだったんだ」

 

「……辛気臭い話しちゃったね」

 

マコトは立ち上がる。

 

「そろそろ寝ようか」

 

「……私にも、お姉ちゃんがいるんだ」

 

思わず口から言葉が飛び出した。

 

マコトが振り返る。

 

「凄いトレーナーのお姉ちゃんが」

 

何を伝えたいのか。

 

私自身にも、よく分からない。

 

ただ――。

 

マコトを、このまま放っておきたくはなかった。

 

その心にだけ従って、私は続きを口にする。

 

「この前、お姉ちゃんとバトルしたんだけど……結果は惨敗」

 

「……」

 

「ハッキリ言って、手加減されていた」

 

苦笑する。

 

「経験値的な意味なら、あのバトルをすることに、お姉ちゃんとしては意味なんてなかったんだろうな」

 

そこで、一度言葉を区切る。

 

「でも――」

 

私は湖を見る。

 

「バトルをしている時のお姉ちゃんは、テレビで見た時より、何倍も楽しそうだった」

 

「……」

 

「お姉ちゃんにとっては、強さも勝ち負けも関係ないんだと思う」

 

少しだけ笑う。

 

「私が全力で挑んできてくれたことが、嬉しかったんじゃないかな」

 

そして、マコトを見る。

 

「だからさ。マコトのママも……マコトの話を聞いたら、きっとどんな話でも喜んで聞いてくれると思うよ」

 

「……」

 

「多分だけど」

 

「……」

 

「ああ、人様の家族を勝手に決めつけているわけじゃなくてね!?」

 

いかん。

 

説教臭くなってしまった。

 

私の悪い癖だ。

 

「リーフ……」

 

マコトが、私を見つめている。

 

寝袋に戻ろうとしていたはずなのに、その場で立ち止まっていた。

 

いつの間にか、焚き火の火は消えている。

 

暗い霧の中を照らすのは、湖面に映る月と星の光だけ。

 

「……」

 

「……」

 

互いに言葉が続かない。

 

き、気まずい!

 

早く寝袋に入って朝を待ちたい!

 

その時だった。

 

――チャプ。

 

水面が揺れた。

 

「……ん?」

 

――チャプ……。

 

湖の上を、何かが歩いている。

 

「え……?」

 

マコトが息を呑む。

 

鈴のような、軽やかな音が響いた。

 

霧の向こうから、一匹のポケモンが姿を現す。

 

長く伸びた紫色の鬣。

 

白く美しい身体。

 

そして、額に輝く青い飾り。

 

その姿が湖面を進むたび、周囲の空気が静かに澄んでいくような感覚がした。

 

「……あれは」

 

ホウオウ伝説に登場する三匹の伝説のポケモン。

 

その一匹。

 

――スイクン。

 

スイクンは、こちらを見た。

 

その瞳は静かで、しかし――。

 

ただの野生のポケモンとは明らかに違う。

 

長い年月を生きてきたかのような、神秘的な威厳。

 

私たちが何をするでもなく、ただそこにいるだけで、その場の空気そのものが変わっていく。

 

エンテイとは、まるで違う。

 

あちらが大地を震わせるような力強さなら――。

 

スイクンは、静寂そのものだった。

 

「……」

 

スイクンはもう一度こちらを見る。

 

そして――。

 

霧の森の奥へと、その姿を消していった。

 

「……行っちゃった」

 

「……うん」

 

私たちは、しばらくその場から動けなかった。

 

まるで、夢でも見ていたかのように。

 

◆

 

「ええっ!? スイクンを見たの!?」

 

「うん。霧でよく見えなかったけどね」

 

翌朝。

 

スイクンを見たことをサトシたちに話すと、大層驚いていた。

 

スイクンは、ホウオウ伝説に登場するポケモンたちの中でも、特に目撃情報が少ないらしい。

 

そのため、目撃者の証言だけでも十分な価値があるのだとか。

 

「なあなあ、スイクンってどんなポケモンだった!? 凄かったか!?」

 

興奮気味にサトシが聞いてくる。

 

「うん、凄かった」

 

私は少し考える。

 

「いや……凄いっていうより、清らかだったな」

 

「清らか?」

 

「うん。エンテイとは全然違った」

 

あのエンテイが大地の化身だとするなら。

 

昨夜のスイクンは――。

 

「まるで、北風の化身みたいだった」

 

「北風の化身……か」

 

ソウジが興味深そうに呟く。

 

「エンテイに続き、スイクンまでもか……」

 

そして、少しだけ笑った。

 

「これはきっと、何かいいことが起きるかもな」

 

――ソウジの言う通りだった。

 

私たちが辿り着いた次の街。

 

そこで開かれていたバトル大会に参加した私たち。

 

そして――。

 

見事に優勝したのはサトシ。

 

サトシのヒトカゲは、勝利の喜びを噛み締めるようにサトシへと元気に駆け寄った。

 

その直後――。

 

眩い光に包まれた。

 

光が晴れた、その先に立っていたのは――。

 

ヒトカゲよりも一回り大きくなった、赤いポケモン。

 

「リザード!」

 

「ガアア!」

 

「進化した! やったな!」

 

◆

 

旅を続けた私たちは、ようやくお目当ての図書館がある町に辿り着いた。

 

図書館には様々なジャンルの本が所狭しと並べられており、お目当ての本を探すだけで日が暮れてしまいそうなほどだった。

 

「……見つけた。おそらく、この本だ」

 

そして二日目。

 

ようやく見つけたホウオウ伝説の書物を、私たちは開いた。

 

「ずいぶん古い本ね。読めるの?」

 

「ある程度、勉強はしてきたつもりだ。やってみる」

 

古い言葉で書かれた文章。

 

その隣に描かれているのは――。

 

かつて古代の人々が想像した、七枚の翼を持つ虹色の蛇。

 

「これ、本当にホウオウなの? 俺が見たやつとは全然似てないぜ」

 

「目撃者の噂話を元に描かれた姿で、これがホウオウについて描かれた最初期の絵らしい。おそらく、天空に住むといわれる伝説のポケモン、レックウザと混同したんだろうな」

 

ソウジがページをめくる。

 

次のページには、鎧を纏った兵士やポケモンたちの上空を飛び、巨大な樹へと向かっていく赤い鳥の姿が描かれていた。

 

「ホウオウは、人とポケモンが発する幸せな波動からエネルギーを受け取る。逆に、邪悪な気持ちの波動には力を奪われ、黒く染まると言う」

 

「黒い、ホウオウ……」

 

「虹色の羽。悪しき心に触れる時、色を失う。色を失いし虹、遍く命に禍を齎す。人々は戸惑い、争い、赤き血を流した……」

 

「虹色の羽が、戦争を引き起こしたのかよ!」

 

「それだけ、ホウオウと虹色の羽が持つ力が強大なのだろうな」

 

ソウジは、さらに解読を進めていく。

 

「戦乱は広がり、人はポケモンを従え、更に血を流した。……なんだこの単語は……『勇者』? 読めない……。ホウオウに会いて、虹に色を取り戻す。世界に命が満ちて、人とポケモンは刃を手放した……」

 

ソウジは、ふう、と短く息をついた。

 

どうやら、ひと通りの解読は終わったらしい。

 

「これ以上は文字が滲んでいて読めないが……間違いない。これがホウオウ伝説なのだろう」

 

「ホウオウと、勇者……」

 

改めて、私たちは本を見る。

 

描かれたホウオウは雄大で、素晴らしく、それでいて――。

 

「……あれ?」

 

違和感。

 

私は本を手に取ると、最初からページをめくり、再び読んでみた。

 

「どうした?」

 

「ねぇ、ソウジ。翻訳は間違ってないんだよね?」

 

「当然だ。三回は読み直した」

 

本からはホウオウの素晴らしさとは別の感情が伝わってきた。

 

なんだろう……よくわからない。

 

「ーーそうだよね。ごめん、私の勘違いかも」

 

「それよりも、この虹色の羽が悪い奴に渡ったら戦争が起きるかもしれないんだろ? それを予防する方法は書かれてないのか?」

 

それなら、こっちの本に書かれていた。そういってソウジは違う本を取り出すと栞で挟んだページをめくった。

 

「ライゼン山脈の山頂、虹色の花に虹色の羽を捧げよ。さすれば、影の試練を超えし者、真の虹の勇者とならん……」

 

「虹色の花…急ごうぜ!そこにホウオウの羽を届けるんだ!」

 

サトシが思いっきり立ち上がった、その瞬間。

 

(へぇ、そいつはいいことを聞いた……)

 

「そこにいるのは誰!?」

 

「うわっ、リーフ!?」

 

「静かにして!」

 

意識を集中し、周囲の波動を探る。

 

急いで図書館から立ち去る波動が一つ。

 

この、赤くて血生臭い波動は――。

 

「クロス……この町にいる!」

 

「何っ!?」

 

私たちは図書館を飛び出し、彼の波動を追いかける。

 

クロス……あの最低野郎……。

 

今度こそ、逃がさない!




マコト回。ヒカリ達ヒロインをイメージしたキャラだというので、挫折からの再起をテーマに書きました。

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  • リオル
  • フシギソウ
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