ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「オラッ、雑魚ども! そこを退け!」
「何するんだ、君!」
「弱い奴らがいつまでもコートを占領するな! ここは今から俺が使うんだ!」
禍々しい波動を追いかけた先。
騒動の中心に、奴はいた。
クロス。
赤と黒の虎のようなポケモン――ガオガエンを繰り出し、バトルコートにいた先客たちを無理やり追い出している。
「見つけたぞ、クロス!」
「くくくっ……来たか」
どうやらクロスは、私たちが追っていることに気づいていたらしい。
慣れた手つきでバトルコートを占領していた。
「お前の噂は、ここに来るまで飽きるほど聞いてきた。自分で捕まえた弱いポケモンを捨てて殺しかける。倒した相手を徹底的に罵倒する。特訓と称して、ポケモンの生息地を破壊する……」
ソウジの言葉を聞きながら、ここへ来るまでの旅路で見た光景が頭をよぎる。
ボロボロに崩された、ニドランの巣だったはずの場所。
家族を守ろうとして深く傷ついたニドキング。
壊された住処の前で、泣き続けることしかできないニドランたち。
そんな子供たちを、悲痛な顔で抱きしめていた母親のニドクイン。
「アンタなんかポケモントレーナーじゃない。ただの犯罪者よ!」
「言ったはずだ! この世界の罪は、ただ一つ――弱いことだけ! 弱者は何をされても抵抗できず、怯えるだけなんだ!」
そう言い放つクロス。
その波動の奥に、ドス黒いものを感じる。
アレは……。
不用意に覗いちゃいけないものだ。
「あなたが、どんな経緯でその結論に至ったのかはわからない。でも、私たちはその所業を――」
「グオウ!」
許すわけにはいかない。
そう言い切ってバトルコートへ立とうとした私を、サトシのリザードが止めた。
「リザード?」
「リザード、お前……まさか、あいつを止めたいのか?」
「……グオウ」
雨の降る森の中。
あんなにボロボロにされた。
決して癒えない傷をつけられた。
それでも彼は、かつての主人に立ち向かおうとしている。
牙を向けてでも、その凶行を止めようと。
その後ろ姿には、一切の怯えも恐怖も感じられなかった。
「……すまない、リーフ。このバトルは俺たちに譲ってくれ!」
「うん。あんなもの見せられたら……ね。いいよ、勝ってきて!」
「負けるんじゃないよ!」
「リザード、今の君なら勝てる! サトシを信じるんだ!」
――アイツを倒す。
ただ一つの共通した想いを胸に、サトシとクロスはバトルコートで向かい合った。
リザードとガオガエン。
二匹の炎が燃える音だけが響くバトルコート。
そして――。
動いたのは、両者同時だった。
「「かえんほうしゃ!」」
「グガァ!」
「ガォォ!」
爆熱がフィールドを焦がす。
燃え盛る炎の中、両者は相手を倒さんと突撃した。
「きりさく!」
「じごくづき!」
鋭い爪と鍛えられた拳が、轟音を立ててぶつかり合う。
吹き飛ばされたのは――リザードの方だった。
「グチャグチャにしてやれ! ヒートスタンプ!」
「かわせ、リザード! あなをほる!」
天高くジャンプしたガオガエンが、勢いよく地面へ着地する。
その衝撃で、フィールド上の炎が一気に消し飛んだ。
しかし――。
リザードの尻尾の炎は、消えていない。
着地の衝撃で一瞬動きが止まったガオガエンへ、地中からリザードが突撃する!
「グオッ!?」
そのままガオガエンの巨体が、再び宙へと打ち上げられた。
「もう一度、かえんほうしゃ!」
「ニトロチャージでかわせ!」
リザードが追撃の炎を放つ。
しかしガオガエンは、全身から炎を噴き出し、その勢いを一方向へ集中させることで、紙一重で攻撃をかわした。
そのままガオガエンはリザードへ接近し――。
「じごくづきの連打だ!」
「グアッ! グッ……!」
「リザードの力を出し切れていない。やはりお前はトレーナー失格だ!」
「何を!」
「ポケモントレーナーは、ポケモンの力を引き出すためにある! 弱いトレーナーに生きる資格なんてねぇんだよォ!」
クロスの発言。
それは、ある意味では世界の真理なのかもしれない。
強い者が勝ち、弱い者が負ける。
この世界には、そういう側面が確かに存在する。
でも――。
そんな世界を、私たちは認めない。
「サトシ! そいつの言葉に耳を貸しちゃ駄目!」
「そんなの、お前が目指すポケモンマスターじゃないはずだ! お前はお前のバトルをしろ!」
「サトシ……! リザード……!」
「ザァ……ザアアアッ!」
自分は、ここにいる。
そうサトシに呼びかけるように、リザードは尻尾の炎を激しく燃え上がらせた。
そして――。
ガオガエンを追い払う。
「リザード……」
サトシは、改めてリザードを見る。
その目に、先ほどまでの迷いはもうなかった。
「……そうだ」
拳を強く握る。
「俺が目指すのは、そんなポケモントレーナーなんかじゃない!」
そして――。
「俺を誰だと思ってやがる、俺はマサラタウンのサトシ、ポケモンマスターになる男だあああっ!」
「グオオオオオッ!」
サトシと共に吠えたリザードが突撃する。
真っ直ぐ、横から、後ろから。
時には上から、そして地中から。
ニトロチャージによって素早さが上がったはずのガオガエンが対処できないほどのスピードで、リザードは蒼く染まった爪を振るう。
「きりさく、あなをほる、りゅうのまいの三連結!」
「いいぞ! ガオガエンもクロスも、全く反応できていない!」
これなら倒せる。
そう思った。
しかし――。
クロスは、ニヤリと笑った。
「……ガオガエン。つばめがえしと、DDラリアット」
「ガオオオッ! ガッ!!」
つばめがえしによってリザードの動きを正確に捉える。
そして、その直後。
DDラリアットがリザードを上空へと吹き飛ばした。
「グガッ……!」
「ああっ、リザード!」
「五つ目、六つ目の技!?」
「反則よ!」
「負けなきゃなんでもいいんだよッ!」
クロスが叫ぶ。
「ガオガエン!フレアドライブ、きしかいせい!」
「ガオオオオッ!」
ガオガエンは、更なる禁じ手を使う。
自らを炎で包み込み、限界まで力を振り絞る。
爆炎を纏った巨体が――。
空中で逃げ場のないリザードへと突撃した。
「ガアアアアアッ!!」
「リザード! リザァドォ!」
墜落するリザード。
それでも諦めまいと立ち上がろうとする。
しかし、その爪は虚しくバトルコートを引っ掻くだけだった。
「ははは! やはり俺の言うことが正しいんだ!」
クロスが高らかに笑う。
「ガオガエン! その屑に引導を渡してやれ! じごくづき!」
「駄目エエエエエッ!」
気づいた時には、駆け出していた。
疾走・悲鳴・到着・闇・激痛・暗転
――沈黙
◆
「リー……フ……?」
わけがわからない。
自分は、クロスと戦っていたはずだ。
それがどうして。
なぜ――。
彼女が倒れている。
「イヤアアアアアッ!」
「……あいつ、なんてことを!」
マコトの悲鳴。
ソウジの怒声。
「このバトルは中止だ! そこのお前、早くジョーイさんとジュンサーさんを呼んでこい!」
けれど――。
周りの音が聞こえない。
目の前の世界が、真っ黒になったみたいだ。
「おいおい、まだバトルは終わっちゃいねぇぞ?」
クロスが嘲笑う。
「トドメだ、ガオガエン!」
世界の時間が、ゆっくりになっていく。
ガオガエンがリザードの首を掴む。
そして、勢いよく振り回し――。
「…………」
その動きを、一人の人間が止めた。
「……え?」
◆
マコトは。
ソウジは。
そして、クロスは。
目の前の光景が信じられなかった。
「ごめんね。驚かせてしまって」
いつもの彼女とは、明らかに違う。
「疲れただろう。少し休んでいて」
「……ガァ」
限界だったのだろう。
リザードを手放したガオガエンは、その場に力なく膝をついた。
土煙の中。
ガオガエンを止めた人影は、ゆっくりと視線をクロスへ向ける。
「リーフ……なの……?」
マコトの声が震える。
白い帽子と水色の服は、本来なら立っていられないほど血に汚れている。
それでも――。
彼女は立っていた。
そして、穏やかな声でクロスへ問いかける。
「君はなぜポケモンと一緒にいる?」
「何言ってるんだ、お前? 俺がモンスターボールで捕まえたからだよ」
「その球体に、ポケモンを封印するほどの力は存在しない」
淡々とした言葉。
「ポケモンが望まなければ、人はポケモンと共に過ごすことはできない」
「……」
クロスの顔から、僅かに笑みが消える。
「もう一度聞く」
穏やかでありながら、決して揺るがない声。
「君は、なぜポケモンと一緒にいる?」
その言葉が、静まり返ったバトルコートに響き渡った。
「……ッ……!」
クロスは答えられなかった。
答える言葉を持たなかった。
やがて――。
「……チッ」
ガオガエンをモンスターボールへ戻す。
そして、逃げるようにその場を去っていった。
誰も、彼を追わなかった。
ただ一人。
彼を見送った彼女は――。
「……」
再び、意識を手放した。
「「リーフ!!!」」
みんな誰が好きですか?
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リオル
-
フシギソウ
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バタフリー
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マンキー