ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「ピカピカ!」
「クオっ!」
「見つけた、凄いスピードで南西に逃走中!」
「よし、作戦通りポイントXに追い込むぞ。マコト、リーフ、先回り頼む」
「任せといて!」
「気をつけてね!」
森の中、私たちが追いかけているのは一匹のポケモン。
旅を再開した私たちは、すぐさま黒焦げになった木と、不思議なポケモンのおとしものを見つけた。
解析の結果、その正体はとんでもないポケモンだった。
バリバリバリッ!
木々の向こうから、青白い光が瞬く。
「来るよ!」
「分かってる!」
次の瞬間――。
バリバリバリッ!!
「うわっ!?」
森を駆け抜ける雷。
私たちの間を縫うように電撃が走り、木々が次々と焦げていく。
その中心を、一匹の獣が駆け抜けていった。
黄色の体に黒い模様。
白い鬣。
そして、背中から伸びる雲のようなたてがみ。
「ライコウ……!」
「ピカピカ!」
「10万ボルト!」
ピカチュウが電撃を放つ。
バチィッ!!
ライコウが振り返る。
一瞬。
ほんの一瞬だけ、こちらを見た。
そして――。
バチンッ!
自らの身体から電撃を放ち、ピカチュウの電撃を相殺する。
「ピカッ!?」
「嘘だろ……!?」
そのままライコウは走り去っていく。
「逃がすな!」
「分かってる!」
私たちは再び走り出した。
◆
ライコウは速い。
とにかく速い。
ただ速いだけじゃない。
木々を避け、崖を飛び越え、川を渡り、こちらが進む道まで予測しているかのように走っていく。
まるで森そのものが、ライコウのために道を開けているようだった。
「このままだと追いつけない!」
「だからポイントXだ!」
ソウジが叫ぶ。
「クオン!」
「リオル、お願い!」
私はリオルを抱き上げる。
「波動でライコウの位置を――」
……。
……感じない。
いや。
感じる。
遠い。
速い。
そして何より――。
「……雷みたい」
「え?」
「ライコウの波動。すごく不安定なの。捕まえようとすると、すぐに遠くへ飛んでいくみたいな……」
「雷は、一ヶ所に留まらないからな」
ソウジが呟く。
「ならば、こちらから逃げ道を塞ぐしかない」
「ポイントXまであと少し!」
「任せて!」
マコトが先行する。
「ポッチャマ!」
「ポチャ!」
マコトとポッチャマが森を抜け、開けた場所へ飛び出した。
そこには――。
「来た!」
私たちが先回りしていた。
目の前には行き止まり
左右は岩壁。
後ろからはソウジたち。
逃げ道はどこにもない。
「これなら……!」
ライコウがこちらを見る。
黄金色の瞳。
その瞳の奥には、怒りも恐怖もない。
ただ、雷のような強い意志があった。
「……すごい」
一瞬、見惚れてしまった。
その瞬間。
ライコウが地面を蹴る。
「ピカチュウ、アイアンテール!」
「ピカッ!」
白い閃光がライコウへ迫る。
ライコウは横へ跳ぶ。
「そこ! バブルこうせん!」
マコトのポッチャマが水流を放つ。
「リオル、しんくうは!」
リオルも波動を込めて、衝撃波を放つ。
理想的な挟み撃ち。
ライコウは空中で身体を捻り、全ての攻撃をかわす。
しかし――。
「今だ!」
ソウジが叫ぶ。
「ルカリオ! はどうだん!」
ドンッ!!
ライコウの足元にルカリオの攻撃。
地面が爆ぜ、ライコウの身体が大きく跳ねた。
「やった!?」
「まだだ!」
ライコウは空中で身体をひねる。
そして、そのまま地面へ着地――。
した瞬間。
バリィィィィン!!
「きゃあああっ!」
森中に雷鳴が轟いた。
空が光る。
雲一つなかったはずの夜空が、一瞬で黒い雲に覆われていく。
「何これ……!?」
「ライコウが雷雲を呼んでいるのか!?」
「そんなことまで……!?」
ライコウが咆哮する。
「――オオオオオオオオンッ!!」
ゴロゴロゴロゴロ……。
遠くで雷が鳴る。
そして――。
ドォォォォン!!
巨大な雷が、ライコウへ落ちた。
「ライコウが雷に打たれた!?」
「違う!」
ソウジが叫ぶ。
「雷を……受けているんだ!」
雷を全身に浴びながら、ライコウがこちらを見る。
その身体が、青白い光に包まれていく。
「……綺麗」
思わず呟いた。
恐ろしいはずなのに。
目を逸らせない。
まるで、空から降りてきた雷そのものが獣の姿をしているようだった。
「今しかない!」
ソウジが叫ぶ。
「全員、一斉に攻撃だ!」
「ピカチュウ、10万ボルト!」
「ポッチャマ、ハイドロポンプ!」
「リオル、しんくうは!」
「ルカリオ、はどうだん!」
「「「「行けぇぇぇぇッ!!」」」」
四つの技が、一斉にライコウへ迫る。
電気。水。真空。波動。
それぞれ違う力が重なり、森を照らす。
ライコウは逃げようとする。
しかし――。
「逃がさない!」
マコトのポッチャマが水流で足元を濡らす。
「今!」
ピカチュウの電撃が地面を走る。
ライコウの動きが、一瞬だけ止まった。
「リオル!」
「クオォ!」
リオルのはっけいが直撃。
さらに――。
「ルカリオ!」
接近したルカリオがインファイトで追撃する。
ドォン!!
土煙が舞い上がる。
「やった……!」
誰もがそう思った。
しかし。
土煙の向こうから、何かが立ち上がる。
「……!」
ライコウだった。
身体には傷一つない。
それどころか――。
その目が、鋭くこちらを睨んでいた。
「……まだ、立てるの?」
ライコウが低く唸る。
そして。
「オオオオオオオオンッ!!」
バリバリバリバリッ!!
周囲に大量の電撃が走った。
「うわあああ!」
「伏せろ!」
私たちは咄嗟に身を伏せる。
雷が森を駆け巡る。
木々が次々と焦げ、地面が弾ける。
「ライコウが逃げるぞ!」
顔を上げる。
ライコウは、すでに森の奥へ向かっていた。
「待って!」
私も走り出す。
あと少し。
私はモンスターボールを取り出す。
そして、投げた。
しかし、モンスターボールはライコウの身体をかすめただけだった。
カチンッ。
地面に落ちる。
そして――。
ドォォォォン!!
目の前に雷が落ちた。
「きゃあああっ!」
視界が真っ白になる。
「クオッ!」
「リオル!」
「ピガアアアッ!」
「ピカチュウ!」
「ポチャ!」
「ポッチャマ!」
「クワンヌ!」
「ルカリオ!」
雷が消えた時。
そこには、もうライコウの姿はなかった。
ただ、焦げた地面と、僅かに漂う静電気だけが残っている。
「……逃げられた」
マコトが呟いた。
◆
「いやー、凄かったな、ライコウ!」
「ピカチュウ~」
その日の夜のキャンプは、反省会だった。
……と言っても、そこまで深刻なものではない。
むしろ、ライコウ凄いね会議とでも言った方がいいかもしれない。
「みんなと旅をして、少しは強くなれたかなって思ったけど……まだまだだったね」
「ポチャチャア」
マコトがポッチャマを撫でる。
その顔には悔しさが残っていた。
「雷もだけど速かった。単純なスピードじゃなくて、道なき道を突っ走る速度がさ」
「だな。あんなに強いでんきタイプ、初めて見たぜ」
「でんきタイプ、か……」
ソウジが、ぽつりと呟いた。
その声が、妙に寂しく聞こえた。
ソウジは鞄から一冊のアルバムを取り出す。
そして、ゆっくりと一枚目のページをめくった。
「……?」
気になって覗き込む。
そこには、幼い子供と一匹のポケモンが写っていた。
黒い毛。
青い身体。
そして、子供に寄り添うようにして眠っている。
「その子はレントラー? 仲良いね」
「ああ」
ソウジは写真を見つめながら、懐かしそうに目を細める。
「小さい頃、僕の両親は仕事で家にいなくてね。そんな僕の側に、いつもいてくれたポケモンだった」
写真の中の幼いソウジは、レントラーに抱きついている。
「……親みたいなポケモンだったんだ」
「へぇ……」
「僕が吹雪で遭難した時も、ずっと側にいてくれてね」
ソウジは静かに笑った。
「自分だって寒かったはずなのに、僕を温めるように身体を寄せてくれていた」
「凄いポケモンだな」
サトシが写真を覗き込む。
「なあ、俺にも見せてくれよ」
ソウジの手が止まった。
「……今はもう、この世にいない」
「え……?」
焚き火の音だけが、やけに大きく聞こえた。
「その時の吹雪で、低体温症になってね。僕を助けた後……死んじゃったんだ」
「……」
サトシが言葉を失う。
マコトも、ポッチャマを撫でる手を止めた。
私も、何も言えなかった。
さっきまでのライコウとの戦い。
あの雷。
そして――。
ソウジのレントラー。
同じ電気を操るポケモンなのに、そこにある記憶は全く違う。
「悲しかったさ」
ソウジはアルバムを閉じず、その写真を見つめたまま続ける。
「何とかして、もう一度レントラーに会いたかった。幼かった僕は、何かできないかって手当たり次第に調べたんだ」
そして。
幼い少年は知った。
世界には、命を司るポケモンがいる。
永遠の命を持ち、それを他者に分け与えると言われる、カロス地方の伝説――ゼルネアス。
そして。
焼け落ちた塔と運命を共にしたポケモンたちを哀れみ、エンテイ、スイクン、ライコウとして蘇らせたと言われる――ホウオウ。
けれど。
どれだけ伝説を調べても。
どれだけ願っても。
失われた命が戻ってくることはなかった。
「……そこで僕は学んだんだ」
ソウジの声は静かだった。
「命は、一度失われたら戻らない」
焚き火がパチッと弾ける。
ソウジは、少しだけ顔を上げる。
「それでも伝説のポケモンたちは、レントラーを失った僕に前を向くきっかけを与えてくれた」
その目には、悲しみだけではないものがあった。
「人間の想像を遥かに超えた、不思議な力を持つポケモンたち。僕は、それが知りたくて……ポケモン博士を目指しているんだ」
「そうなんだ……」
私は、ソウジの言葉を聞きながら、さっきのライコウを思い出していた。
雷を全身に浴びても倒れなかった。
私たち全員の攻撃を受けても、傷一つ負わなかった。
そして最後には、雷そのものになったかのように森の中へ消えていった。
……伝説。
この世界では、それはただの物語じゃない。
実際に生きている。
人間の理解なんて簡単に飛び越えてしまう、現実の存在なのだ。
ポケモンが空想上のキャラクターだった世界の記憶を持つ私にとっては、ある意味、全てのポケモンが伝説みたいなものだけど。
この世界の人たちにとって、伝説のポケモンとは――。
現実と空想の狭間に生きる、超常的な存在。
それだけ大きな意味を持つのだろう。
私はリオルの頭を撫でる。
「……私たちも、いつかあんなポケモンと肩を並べて戦えるくらいになれるのかな」
「クオ……」
リオルが私を見る。
「なれるさ」
サトシが笑った。
「だって、俺たちはまだ旅の途中なんだから!」
「ピカ!」
「ふふっ」
その言葉に、少しだけ胸が軽くなった。
私は改めて、旅の目的地――ライゼン山脈を見る。
夜のライゼン山脈は、昼とはまた違った壮大さを見せていた。
あそこに、ホウオウが来るのだろうか。
エンテイを目撃し、スイクンと出会い。
そして、ライコウを追いかけた。
ならば――。
この先で、ホウオウにも会えるのかもしれない。
「……待っててね、ホウオウ」
私は小さく呟いた。
何処か遠くで一つ、雷の音が聞こえたような気がした。
ソウジ回。映画でライコウの出番が吠えただけだったので、レントラーと絡める形で出番を増やしました。
みんな誰が好きですか?
-
リオル
-
フシギソウ
-
バタフリー
-
マンキー