ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
山越え、谷越え、川を越え……。
長い旅路の果てに、ライゼン山脈がいよいよ私たちの目の前に見えてきた。
「フリィ、フリー!」
「なんだか、森が騒がしいわね……」
「ああ。さっきからポケモンの鳴き声が止まないな……」
周囲では、野生のコラッタやポッポたちが落ち着きなく動き回っている。
何かに怯えているのか。
その不安な気持ちが伝わったのか、リオルたちパートナーポケモンも、どこか緊張した様子だった。
ここは一度休憩を取って、みんなを落ち着かせよう。
そう思った矢先――。
森の奥から、大量の波動を感じた!
「……あれは!?」
視線を向ける。
そこには――。
大量のバタフリーの群れが、大きなオニドリルに襲われていた。
「危ない!」
「いけ、バタフリー! 群れを救うんだ!」
「私たちも行くよ! アクロバット!」
「「フリー!」」
私とサトシのバタフリーが同時に飛び出す。
インベアテッド&ライト飛行。
背中合わせに密着した二匹は、互いを軸にするように回転しながら、高速で群れへと突っ込んでいく。
そして――。
「「フリーッ!!」」
二匹が放ったアクロバットが螺旋状の旋風となり、体格で勝るオニドリルを巻き込んだ。
「ギャアアアッ!」
オニドリルは、そのまま空の彼方へと吹き飛ばされていった。
「「フリー!!」」
群れの危機を救った二匹は、互いに離れてゆっくりと空を舞う。
その圧倒的な強さを目の当たりにしたバタフリーたちは、我先にと私たちの元へ集まってきた。
サトシのバタフリーの隣には、桃色のバタフリー。
二匹は互いに踊るように空を飛んでいる。
そして私のバタフリーはというと――。
一際大きなバタフリーに興味津々のようだった。
「二匹とも凄いじゃない! まるでムクホークみたい!」
「ふふん。エリカさんの本気リーフィアを倒した、自慢のバタフリーなのですよ」
私もバタフリーを褒められて、鼻高々である。
……まあ、実際にあの子は強い。
トキワの森で出会った時から、ずっと私たちを支えてくれたのだから。
「この大量のバタフリー……もしや、渡りのために集まってきたのか?」
「渡り?」
「ああ。タマゴを産むために、集団で南の海へ渡るらしい」
「……」
……そうか。
このイベントが来てしまったか。
「リーフ?」
「……私たちが今から行くライゼン山脈って、北だよね?」
「うん……」
サトシが答え――。
「「「あっ……」」」
マコトもソウジも、私の言いたいことに気づいたようだ。
バタフリーたちの恋のためには。
ここで、別れなければならない。
◆
「……」
「……」
「ピカァ……」
「アウッ……」
予定していた休憩地点よりも、かなり手前だった。
それでも、私たちは足を止めざるを得なかった。
「サトシ……リーフ……」
「二人とも、トキワの森で出会い、初めてゲットしたポケモンだと言っていたからな」
ソウジが静かに口を開く。
「別れるともなれば……ああもなるだろう」
バタフリーとの別れ。
ポケモンを知る者なら、誰もが知っているほど有名な話だ。
私だって、バタフリーをゲットした日から薄々と覚悟していた。
いつか、この子にも自分の生きる道が見つかるかもしれない。
その時が来たら、笑顔で送り出そう。
そう思っていた。
……それなのに。
実際に群れの中で飛んでいるバタフリーを目にすると、どうしても直視できなかった。
「ねぇ、サトシ、リーフ」
マコトが優しく声をかける。
「二人は、どうしたいの?」
「どうしたいのって……」
「バタフリーたちと、このまま旅を続けるか」
ソウジが続ける。
「それとも、アイツらの旅立ちを見届けるか。バタフリーの渡りは今日行われる。決めるのは今日までだぞ」
「俺、そんなの嫌だ……」
サトシが俯く。
「バタフリーは……大切な友達なんだ……」
「私も……」
私も、バタフリーを見る。
「トキワの森で出会って、仲良くなって。それからずっと、一緒に旅をしてきて……」
あの子は、可愛い見た目とは裏腹にバトルが大好きだった。
いつもバトルの一番手を務めて。
どんな強敵にも恐れずに立ち向かって。
エリカさんのリーフィアとの戦いでは、最後の最後まで諦めずに戦ってくれた。
強いだけじゃない。
あの子は、とても優しい。
トキワの森での初遭遇だって、私の頭の上に落ちてきたのがきっかけだった。
痛みに頭を押さえる私を、心配そうに見つめていたっけ。
……あの日から。
ずっと一緒だった。
「……なあ、バタフリー」
サトシが、ゆっくりと声をかける。
「お前は、どうしたい?」
「フリィ?」
桃色のバタフリーと一緒にやってきたバタフリーが、サトシを見る。
必死に隠そうとしている。
けれど、その声の奥には明らかな悲しみがあった。
それをバタフリーも察したのか、サトシの側へ近づこうとする。
けれど――。
桃色のバタフリーとの間で、止まってしまった。
「……」
その姿を見て、サトシは何も言わなかった。
いつの間にか、私の周りにも心配してくれたバタフリーたちが集まってくれた。
そして。
私の頭の上には――。
初めて会った時と同じように、私のバタフリーが乗っていた。
「バタフリー……」
私は、そっと頭の上のバタフリーに手を添える。
「あなたの決める道だよ」
「……」
「どっちを選んでも、私は笑顔で応援するから」
バタフリーは、しばらく私の頭の上に止まっていた。
やがて――。
ふわり。
ゆっくりと飛び立つ。
そして、一匹のオスのバタフリーの元へ向かっていった。
「……」
それがあなたの選択なんだね。
私は、空を飛ぶバタフリーを見つめる。
そして――。
「……わかった」
一度、深く息を吸う。
「どうか私のバタフリーを、よろしくお願いします」
深々と頭を下げる。
涙を見せないように。
声が震えないように。
最後まで笑顔でいられるように。
「こいつ、とってもいいやつだから。よろしくな!」
隣では、サトシも覚悟を決めていた。
◆
夕日が沈み始める。
赤く染まった空の下。
バタフリーたちの渡りが始まった。
大量のバタフリーが空を埋め尽くしていく。
夕焼けの空を流れるその光景は、まるで――。
天へ昇っていく、巨大な滝のようだった。
「元気でねー!」
「風邪引くなよ!」
「さよならバタフリー! さよならー!!」
「バイバイ……」
声が詰まる。
それでも。
私は精一杯、声を出した。
「ううん……ありがとう、バタフリー!!」
「フリィ! フリィィィ!!」
バタフリーが振り返る。
そして、何度も羽ばたく。
「……!」
私も手を振る。
サトシも。
マコトも。
ソウジも。
みんなで、手を振り続ける。
バタフリーの群れが、夕焼けの彼方へ消えていく。
その姿が完全に見えなくなるまで。
私たちは、ずっと手を振り続けた。
「……行っちゃった」
サトシが呟く。
「元気で……やっていけるよね……」
鼻をすすりながら、私は呟いた。
「グスッ……」
「……ああ」
ソウジが、静かに答える。
「きっと大丈夫だ」
「人はポケモンを育てることはできても……産み出すことはできないんだから」
「……」
誰も、何も言わなかった。
ただ、夕焼けの消えた空を見上げていた。
そして――。
その日の夕飯は、いつもよりしょっぱかった。
みんな誰が好きですか?
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リオル
-
フシギソウ
-
バタフリー
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マンキー