ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている   作:はらへりニャンコ

26 / 28
バタフリーをゲットした時から、この話をやることは決めていました。


第26話 悠情編Ⅷ/バイバイバタフリー

 

 

 

山越え、谷越え、川を越え……。

 

長い旅路の果てに、ライゼン山脈がいよいよ私たちの目の前に見えてきた。

 

「フリィ、フリー!」

 

「なんだか、森が騒がしいわね……」

 

「ああ。さっきからポケモンの鳴き声が止まないな……」

 

周囲では、野生のコラッタやポッポたちが落ち着きなく動き回っている。

 

何かに怯えているのか。

 

その不安な気持ちが伝わったのか、リオルたちパートナーポケモンも、どこか緊張した様子だった。

 

ここは一度休憩を取って、みんなを落ち着かせよう。

 

そう思った矢先――。

 

森の奥から、大量の波動を感じた!

 

「……あれは!?」

 

視線を向ける。

 

そこには――。

 

大量のバタフリーの群れが、大きなオニドリルに襲われていた。

 

「危ない!」

 

「いけ、バタフリー! 群れを救うんだ!」

 

「私たちも行くよ! アクロバット!」

 

「「フリー!」」

 

私とサトシのバタフリーが同時に飛び出す。

 

インベアテッド&ライト飛行。

 

背中合わせに密着した二匹は、互いを軸にするように回転しながら、高速で群れへと突っ込んでいく。

 

そして――。

 

「「フリーッ!!」」

 

二匹が放ったアクロバットが螺旋状の旋風となり、体格で勝るオニドリルを巻き込んだ。

 

「ギャアアアッ!」

 

オニドリルは、そのまま空の彼方へと吹き飛ばされていった。

 

「「フリー!!」」

 

群れの危機を救った二匹は、互いに離れてゆっくりと空を舞う。

 

その圧倒的な強さを目の当たりにしたバタフリーたちは、我先にと私たちの元へ集まってきた。

 

サトシのバタフリーの隣には、桃色のバタフリー。

 

二匹は互いに踊るように空を飛んでいる。

 

そして私のバタフリーはというと――。

 

一際大きなバタフリーに興味津々のようだった。

 

「二匹とも凄いじゃない! まるでムクホークみたい!」

 

「ふふん。エリカさんの本気リーフィアを倒した、自慢のバタフリーなのですよ」

 

私もバタフリーを褒められて、鼻高々である。

 

……まあ、実際にあの子は強い。

 

トキワの森で出会った時から、ずっと私たちを支えてくれたのだから。

 

「この大量のバタフリー……もしや、渡りのために集まってきたのか?」

 

「渡り?」

 

「ああ。タマゴを産むために、集団で南の海へ渡るらしい」

 

「……」

 

……そうか。

 

このイベントが来てしまったか。

 

「リーフ?」

 

「……私たちが今から行くライゼン山脈って、北だよね?」

 

「うん……」

 

サトシが答え――。

 

「「「あっ……」」」

 

マコトもソウジも、私の言いたいことに気づいたようだ。

 

バタフリーたちの恋のためには。

 

ここで、別れなければならない。

 

◆

 

「……」

「……」

「ピカァ……」

「アウッ……」

 

予定していた休憩地点よりも、かなり手前だった。

 

それでも、私たちは足を止めざるを得なかった。

 

「サトシ……リーフ……」

 

「二人とも、トキワの森で出会い、初めてゲットしたポケモンだと言っていたからな」

 

ソウジが静かに口を開く。

 

「別れるともなれば……ああもなるだろう」

 

バタフリーとの別れ。

 

ポケモンを知る者なら、誰もが知っているほど有名な話だ。

 

私だって、バタフリーをゲットした日から薄々と覚悟していた。

 

いつか、この子にも自分の生きる道が見つかるかもしれない。

 

その時が来たら、笑顔で送り出そう。

 

そう思っていた。

 

……それなのに。

 

実際に群れの中で飛んでいるバタフリーを目にすると、どうしても直視できなかった。

 

「ねぇ、サトシ、リーフ」

 

マコトが優しく声をかける。

 

「二人は、どうしたいの?」

 

「どうしたいのって……」

 

「バタフリーたちと、このまま旅を続けるか」

 

ソウジが続ける。

 

「それとも、アイツらの旅立ちを見届けるか。バタフリーの渡りは今日行われる。決めるのは今日までだぞ」

 

「俺、そんなの嫌だ……」

 

サトシが俯く。

 

「バタフリーは……大切な友達なんだ……」

 

「私も……」

 

私も、バタフリーを見る。

 

「トキワの森で出会って、仲良くなって。それからずっと、一緒に旅をしてきて……」

 

あの子は、可愛い見た目とは裏腹にバトルが大好きだった。

 

いつもバトルの一番手を務めて。

 

どんな強敵にも恐れずに立ち向かって。

 

エリカさんのリーフィアとの戦いでは、最後の最後まで諦めずに戦ってくれた。

 

強いだけじゃない。

 

あの子は、とても優しい。

 

トキワの森での初遭遇だって、私の頭の上に落ちてきたのがきっかけだった。

 

痛みに頭を押さえる私を、心配そうに見つめていたっけ。

 

……あの日から。

 

ずっと一緒だった。

 

「……なあ、バタフリー」

 

サトシが、ゆっくりと声をかける。

 

「お前は、どうしたい?」

 

「フリィ?」

 

桃色のバタフリーと一緒にやってきたバタフリーが、サトシを見る。

 

必死に隠そうとしている。

 

けれど、その声の奥には明らかな悲しみがあった。

 

それをバタフリーも察したのか、サトシの側へ近づこうとする。

 

けれど――。

 

桃色のバタフリーとの間で、止まってしまった。

 

「……」

 

その姿を見て、サトシは何も言わなかった。

 

いつの間にか、私の周りにも心配してくれたバタフリーたちが集まってくれた。

 

そして。

 

私の頭の上には――。

 

初めて会った時と同じように、私のバタフリーが乗っていた。

 

「バタフリー……」

 

私は、そっと頭の上のバタフリーに手を添える。

 

「あなたの決める道だよ」

 

「……」

 

「どっちを選んでも、私は笑顔で応援するから」

 

バタフリーは、しばらく私の頭の上に止まっていた。

 

やがて――。

 

ふわり。

 

ゆっくりと飛び立つ。

 

そして、一匹のオスのバタフリーの元へ向かっていった。

 

「……」

 

それがあなたの選択なんだね。

 

私は、空を飛ぶバタフリーを見つめる。

 

そして――。

 

「……わかった」

 

一度、深く息を吸う。

 

「どうか私のバタフリーを、よろしくお願いします」

 

深々と頭を下げる。

 

涙を見せないように。

 

声が震えないように。

 

最後まで笑顔でいられるように。

 

「こいつ、とってもいいやつだから。よろしくな!」

 

隣では、サトシも覚悟を決めていた。

 

◆

 

夕日が沈み始める。

 

赤く染まった空の下。

 

バタフリーたちの渡りが始まった。

 

大量のバタフリーが空を埋め尽くしていく。

 

夕焼けの空を流れるその光景は、まるで――。

 

天へ昇っていく、巨大な滝のようだった。

 

「元気でねー!」

 

「風邪引くなよ!」

 

「さよならバタフリー! さよならー!!」

 

「バイバイ……」

 

声が詰まる。

 

それでも。

 

私は精一杯、声を出した。

 

「ううん……ありがとう、バタフリー!!」

 

「フリィ! フリィィィ!!」

 

バタフリーが振り返る。

 

そして、何度も羽ばたく。

 

「……!」

 

私も手を振る。

 

サトシも。

 

マコトも。

 

ソウジも。

 

みんなで、手を振り続ける。

 

バタフリーの群れが、夕焼けの彼方へ消えていく。

 

その姿が完全に見えなくなるまで。

 

私たちは、ずっと手を振り続けた。

 

「……行っちゃった」

 

サトシが呟く。

 

「元気で……やっていけるよね……」

 

鼻をすすりながら、私は呟いた。

 

「グスッ……」

 

「……ああ」

 

ソウジが、静かに答える。

 

「きっと大丈夫だ」

 

「人はポケモンを育てることはできても……産み出すことはできないんだから」

 

「……」

 

誰も、何も言わなかった。

 

ただ、夕焼けの消えた空を見上げていた。

 

そして――。

 

その日の夕飯は、いつもよりしょっぱかった。

みんな誰が好きですか?

  • リオル
  • フシギソウ
  • バタフリー
  • マンキー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。