ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
「リザード、きりさく!」
「ガオガエン、じごくづき!」
リザードとガオガエンが、激しくぶつかり合う。
爪と拳が交錯し、互いに一歩も譲らない。
鍔迫り合いの状態から、ガオガエンが腰を前に出した。
「かえんほうしゃ!」
「ガァ!」
至近距離から放たれた炎が、リザードを包み込む。
だが――。
リザードは怯まなかった。
むしろ、その炎すら自分の力へと変えるかのように踏み込み、ガオガエンを力ずくで押し返していく。
クロスが、さらに指示を飛ばす。
「じしんだ!」
「ガァァ!」
ドォォン!!
ガオガエンが地面を踏み鳴らす。
大地そのものが激しく揺れ、足元にあった虹色の岩が次々と砕けていく。
「うわっ!」
山肌から浮き上がった岩盤が、振動によって崩れ落ちる。
逃げる間もなく、動きを封じられたリザードの上へと巨大な岩盤が落下した。
「リザード!」
「負けるな、リザード! かえんほうしゃ!」
「ザアアアアッ!」
ゴォォォォッ!!
リザードの口から、燃え盛る炎のブレスが放たれる。
巨大な岩盤が炎に吹き飛ばされ、その向こうからリザードの姿が現れた。
「グアア!」
自由になったリザードは、休む間もなくガオガエンへと突っ込んでいく。
すでにバトルが始まってから、十分以上。
戦況だけを見れば、一見互角に見えた。
だが――。
「DDラリアット! 繋げて、みだれひっかきだ!」
「ガァァ!」
ガオガエンが猛然と襲い掛かる。
実際に吹き飛ばされているのはサトシのリザードばかりだった。
すでに五つ以上の技を繰り出している。
それにもかかわらず、クロスのガオガエンには疲労の色が見えない。
まるでリザードを嬲るかのように、執拗に追い詰めていく。
「また新たな技を……!」
マコトが息を呑む。
「ポケモンが一度のバトルで使える技は四つ。それ以上の技を使えば、体への負担が大きくなると言われている……!」
ソウジも険しい表情で戦況を見つめる。
「でも、あのガオガエン……ちっとも動きが鈍ってない!」
私は思わず声を上げた。
「どんな体力してるの!?」
「そうだ……!」
クロスが叫ぶ。
「俺たちは強い!」
その声は、次第に大きく、激しくなっていく。
「俺は正しい! 俺たちこそがホウオウに会うべきなんだ!」
「……」
その姿に、マコトが怯えたように一歩下がる。
「あいつ……怖い」
震える声。
「強ければ、何をしてもいいって……心の底から信じてるんだ……」
私は、そんなマコトを優しく抱きしめる。
そして、戦い続けるサトシとリザードを見つめた。
「大丈夫」
マコトの頭をそっと撫でる。
「サトシとリザードは、これまでぶつかりながらも、どんな壁だって超えてきたから」
私は二人から目を離さない。
「きっと今回も、二人は諦めてなんかいない!」
「……!」
サトシがリザードを見る。
傷だらけになりながらも、リザードは立っていた。
「燃えろ、リザード!」
サトシが拳を握る。
「お前の思いを、クロスに届けるんだ!」
「ガアアアアアアッ!!」
その瞬間。
リザードの身体から放たれる熱が、さらに強くなった。
周囲の空気が歪む。
山頂に散らばっていた小さな石が、熱によって次々と赤く染まり――。
やがて、溶け始めた。
「……綺麗」
マコトが目を見開く。
溶けた虹色の岩の破片が、光を放ちながら流れていく。
そして――。
まるで何かに導かれるように、その光がリザードへと集まっていく。
「リザード……?」
サトシが呟く。
リザードを包み込む炎が、次第に色を変えていく。
赤から。
橙へ。
そして――。
蒼へ。
「ウ……オオ……!」
炎が蒼く染まった。
虹色の光が渦を巻き、リザードの身体を包み込んでいく。
そして――。
再び固まった虹の光が、巨大な翼のように広がった。
天翔る火竜の剛翼。
その姿が、光の中から現れる。
「ウオオオオオオッ!!」
「リザードンに進化した!」
「ピカピーカァ!」
「グオオオオオッ!」
進化したリザードンが、咆哮を上げる。
その身体から放たれる熱気が、周囲の空気を一気に震わせた。
ガオガエンが勢いよく突っ込んでくる。
「ガァァァ!」
だが――。
リザードンは、その腕を掴んだ。
「グオッ!」
「なっ!?」
次の瞬間。
リザードンはガオガエンごと、大きく飛び上がった。
「ウオオオオオ!?」
空高く舞い上がった二匹。
そして――。
ドォォォン!!
リザードンが、ガオガエンを地面へと叩き落とす。
「ちきゅうなげだ!」
「ガァッ……!」
地面に大きな衝撃が走る。
リザードンはゆっくりと降下し、地面へ着地した。
そして――。
サトシを見つめる。
その瞳は、進化前と変わらない。
優しく、まっすぐな瞳だった。
「……!」
サトシの脳裏に、突然何かがよぎる。
「これは……」
◆
――逃げ場のない炎の迷宮。
煙と熱に包まれ、今にも消えそうな三つの命。
そこへ現れた、虹。
雷を止め。
炎を吹き飛ばし。
水を流す。
やがて、虹が支配した三つの力。
そのうちの一つが、流れ込んできた。
それは星を駆け巡り、世界を温めるもの。
天にあり、地にあり。
人とポケモン。
すべての命が持つ力。
――熱。
◆
「――進化したところで、雑魚は雑魚だ!」
クロスの怒声が響く。
「ガオガエン! トドメのだいもんじだァ!」
「ガアアアアアッ!」
ガオガエンのベルトから、凄まじい炎が噴き出す。
その炎には、まるでクロスの狂気が乗り移ったかのように、暗い色が混じっていた。
すべてを燃やし尽くそうとする、血のように赤い炎。
サトシとリザードンは、それをまっすぐ見つめていた。
やがて。
サトシが、強く拳を握る。
「リザードン」
そして――。
「かえんほうしゃ!」
「ウオオオオッ!」
リザードンの口から、凄まじい炎が溢れ出す。
炎と炎が、真正面から激突した。
「ハハハッ!」
クロスが笑う。
「この程度の炎なら、ガオガエンで押し切れる!」
だが――。
その笑みが消えた。
「……なんだ?」
リザードンの炎が、少しずつガオガエンの炎を押し返している。
「なんだ……なんなんだ、その炎は!!」
爆炎・業火・焼却。
どの言葉を並べても、その炎を表すには足りない。
リザードンの炎は火山のように激しく。
激流のように勢いよく。
そして何より――。
稲妻のように鋭かった。
「ウオオオオオオッ!!」
「ガァ……ガアアアアアッ!!」
炎の壁が、さらに押し込まれていく。
「馬鹿な……!」
クロスが後ずさる。
「ありえない……!」
「俺たちが……負けるはずがないんだ……!」
そして――。
「負けるわけにはあああああぁ!!」
ドゴォォォォン!!
リザードンの炎が、ガオガエンの炎を完全に押し切った。
爆炎がクロスとガオガエンを包み込み、そのまま二人を岩肌へと吹き飛ばした。
「ぐああああっ!」
ドォン!!
岩盤に叩きつけられたガオガエンは、ズルズルと岩肌を滑り落ちる。
そして、地面に倒れ込んだ。
「……」
動かない。
立ち上がらない。
「……」
クロスもまた、呆然とその場に立ち尽くしていた。
「やったな、リザードン!」
サトシが駆け寄る。
「ウオウ!」
リザードンが嬉しそうに鳴いた。
「……」
その光景を、マーシャドーは静かに見つめていた。
「ホッホッホ」
ボン爺が笑う。
「マーシャドーも、誰が虹の勇者に相応しいか、見届けたようじゃな」
そして、サトシを見る。
「サトシくん。今こそ、虹色の羽を!」
「……ああ!」
サトシは胸元から虹色の羽を取り出すと、ゆっくりと虹色に輝く岩へ向かって歩き始めた。
◆
「羽を……」
クロスが、ゆっくりと顔を上げる。
「ホウオウを……よこせえええっ!!」
「うわっ!」
「ピカピ!?」
突然、クロスが起き上がった。
そして――。
サトシの手から、虹色の羽を奪い取る。
「クロス!」
そのまま虹色の岩へ向かって走り出した。
「サトシ!」
「いかん!」
ボン爺が叫ぶ。
「羽の色が!」
私たちも慌てて追いかける。
だが、間に合わない。
クロスは虹色の岩の頂上へと駆け上がると、握りしめた羽を掲げた。
「俺は……!」
その声が震える。
「俺は……俺は……!」
羽が、少しずつ色を失っていく。
「俺は俺は俺は――」
虹色が、黒へと染まっていく。
「オレは……!」
クロスは、それに気づいていない。
いや――。
気づこうともしなかった。
「オレタチハ、ツヨクナクチャイケナインダァ!」
半狂乱のまま、クロスは黒く染まった羽を岩の頂へ突き刺した。
「オレタチヲミトメロ……!」
その顔には、もはや先ほどまでの余裕も、怒りすらもなかった。
「ホウオオォォッ!!」
その瞬間――。
ズガァァァァン!!
虹の岩から溢れ出した黒い稲妻が、四方へと突き刺さった。
「きゃあああっ!」
「うわあああっ!」
私たちの身体が、黒い雷撃によって吹き飛ばされる。
「ピカァッ!?」
「ピカチュウ!リザードン!」
サトシの叫び声が響く。
青かった空が、一瞬にして暗く染まっていく。
雲が渦を巻き、虹色の光は次々と闇に飲み込まれていった。
「な、なんなの……これ……」
私は、震えながら空を見上げる。
その中心に――。
マーシャドーがいた。
マーシャドーは、光を失った羽を静かに掴む。
そして――。
天へ向かって、闇の柱を突き刺した。
みんな誰が好きですか?
-
リオル
-
フシギソウ
-
バタフリー
-
マンキー