ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている   作:はらへりニャンコ

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第30話 悠情編XII/全てを閉ざすもの

 

 

 

 

 

かつて美しく輝いていた虹色の岩は、禍々しい黒色へと変色していた。

 

その頂に立つのは――。

 

陰より導くもの。

 

マーシャドー。

 

その瞳には、計り知れない闇が宿っていた。

 

「お前も潰してやる!」

 

クロスが叫ぶ。

 

「ルガルガン! ブレイククロー!」

 

「グルルァァッ!」

 

ルガルガンが、マーシャドーへと飛び掛かる。

 

その爪が振り下ろされる――。

 

その瞬間。

 

マーシャドーから、あまりにも邪悪な波動が溢れ出した。

 

「――ッ!」

 

「伏せて!」

 

私は咄嗟に叫んだ。

 

次の瞬間。

 

ズンッ!!

 

黒い波動がルガルガンを真正面から貫いた。

 

「グ……ガァ……!」

 

ルガルガンの身体が、空中で止まる。

 

そして――。

 

その瞳から、光が消えた。

 

「……え?」

 

クロスが呆然と呟く。

 

ルガルガンはゆっくりと振り返った。

 

「グルルルル……」

 

「ルガルガン……?」

 

次の瞬間。

 

「ガァァァッ!!」

 

ルガルガンが、クロスへと襲い掛かった。

 

「ガフっ…」

 

クロスは反応できずに、首を噛み切られた。

 

主人の息の根を一撃で止めたにも関わらず、ルガルガンは止まらない。

 

目の前のクロスだったものに躊躇なく喰らい付き、そのまま爪で引き裂いていった。

 

……一度は人に懐いたポケモンが、こうもなるか。

 

「ヒッ……」

 

「見ちゃダメ!」

 

咄嗟にマコトの目を塞ぐ。

 

何が起きたのか、なんとなく察してしまったマコトは全身が震えていた。

 

「マーシャドーの奴……」

 

ボン爺が震える。

 

「人間とポケモンを引き離すつもりか!」

 

「そんな……!」

 

クロスの野郎は最低だった。

 

それでも、あのルガルガンはずっとクロスに忠実に従っていた。

 

それが、こうも簡単に。

 

まるで最初から存在しなかったかのように、主人へ牙を剥くとは。

 

「……!」

 

マーシャドーが、ゆっくりと顔を上げる。

 

そして再び、禍々しい波動を放った。

 

今度の標的は――。

 

この場に集まった野生のポケモンたちだった。

 

「ギャアアアァ……!」

 

「グルル……!」

 

「ガァァ……!」

 

ゴローニャ。

 

エレブー。

 

ピジョット。

 

その他、数え切れないほどの野生ポケモンたちが、次々と黒い波動に飲み込まれていく。

 

その瞳から、次々と光が消えていく。

 

「酷い……」

 

私は息を呑んだ。

 

「無理やりポケモンの心を閉ざしている……!」

 

そして――。

 

「ギャアアアアアッ!!」

 

野生ポケモンたちが、一斉に私たちへ襲い掛かった。

 

「くっ!」

 

「ルカリオ、はどうだん!」

 

「ラァァッ!」

 

「ピカチュウ、10万ボルト!」

 

「ピィーカァーチュー!」

 

ソウジのルカリオが波動を放ち、サトシのピカチュウが雷撃を走らせる。

 

だが――。

 

相手は多すぎた。

 

一匹を倒しても、すぐに次が襲い掛かってくる。

 

私たちは、少しずつ後退していく。

 

そして――。

 

気づけば、崖際まで追い詰められていた。

 

「このままじゃ……!」

 

「こうなったら、マーシャドーから虹色の羽を取り戻すしかない!」

 

ボン爺が叫ぶ。

 

その視線の先。

 

マーシャドーは、黒く染まった虹色の岩から一歩も動いていない。

 

その周囲には、ニドクインやレアコイルたちが展開している。

 

まるで、マーシャドー自身が動く必要すらないと言わんばかりに。

 

「……」

 

あれだけのポケモンを操りながら――。

 

マーシャドーは、ただそこに立っている。

 

それだけなのに。

 

近づくことすらできない。

 

◆

 

「グオオオオオッ!」

 

誰もが恐怖で立ち竦む中、真っ先にとびだしていったのはサトシのリザードンだった。

 

「グオウ!」

 

だいもんじが地上のサンドパンやルガルガンを焼きつくす。

 

しかしアーボックが飛びかかり、リザードンの首を絞め、そのままへし折ろうと万力の力を入れる。

 

「リザードン!」

 

「ピッカ!」

 

「待ってサトシ!」

 

急いで飛び出したサトシとピカチュウに手を伸ばすが、その手は虚しく空を切った。

 

「……私たちもいくよ、ポッチャマ」

 

「マコト!?」

 

無茶だ、全身が震えているのが波動を使わなくてもわかる。

 

クロスのように、ここで人生が無惨な形で終わるかもしれないのだ。

 

今のマコトは、既に心が……

 

「大丈夫だよ、リーフ」

 

マコトが私の手を強く握り返してくれた。

 

「今の私には、ポッチャマに、リーフに、そしてみんながいる」

 

「どんな試練だって、私たちとポケモンは力を合わせて乗り超えてきたんだから!今回も大丈夫だよ!」

 

「マコト……」

 

「……そうだな。俺たちの絆は、幻のポケモンが相手でも消えない!」

 

「アオウ!」

 

ルカリオも勢いよく吠える。

 

「アウ!」

 

リオル……

 

あなたは、こんな時でも変わらないね。

 

「……わかった!」

 

私は震える足で、サトシの元へと駆け出した。

 

「みんな、いくよ!」

 

◆

 

「リオルはしんくうは、フシギソウはエナジーボール、マンキーはちきゅうなげ!」

 

「ポッチャマ、ドリルくちばし!ラプラス、れいとうビーム!」

 

「ルカリオ、はどうだん!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

ポケモン達の攻撃が、野生ポケモンを吹き飛ばす。

 

その一瞬に生まれた、わずかな隙。

 

「今じゃ、サトシくん!」

 

「分かった!」

 

サトシとピカチュウが、一気に駆け抜ける。

 

道の先。

 

黒く染まった虹の岩。

 

その頂に――。

 

マーシャドーが静かに立っていた。

 

「……」

 

マーシャドーは動かない。

 

サトシとピカチュウが近づいても。

 

周囲で戦いが続いていても。

 

まるで、この世界そのものが自分の掌の上にあるかのように。

 

「……」

 

ピカチュウが前へ出る。

 

「……!」

 

マーシャドーは両手に闇を集めた。

 

自分の身の丈程の大きさのあるシャドーボールを、マーシャドーは勢いよく投げつけた。

 

「かわしてアイアンテール!」

 

「ピッカァ!」

 

ピカチュウが、一気に飛び込む。

 

その一撃は、自分より何十倍も重い重量級のポケモンすら吹き飛ばすほどの威力。

 

だが――。

 

マーシャドーは、一歩も動かなかった。

 

ガキィン!!

 

その腕一本で、アイアンテールを受け止める。

 

マーシャドーは、まるで何事もなかったかのようにピカチュウを掴む。

 

そして――。

 

「……!」

 

ブンッ!!

 

ピカチュウを空中へ投げ飛ばした。

 

「チャア!」

 

マーシャドーの攻撃は止まらない。

 

空を舞うピカチュウへひとっ飛び。

 

空中で鋭く飛ぶ方向を切り替えると、猛烈な踵落としを叩き込んだ。

 

「うわっ!」

 

サトシが打ち落とされたピカチュウを受け止める。

 

「ピカチュウ、大丈夫か!?」

 

「ピッ……ピカ!」

 

ピカチュウは、すぐに立ち上がる。

 

「よし!」

 

サトシが拳を握る。

 

「まだまだいくぞ! 10万ボルト!」

 

「ピカピーカァ!」

 

ドォォォン!!

 

必殺の雷撃が、マーシャドーへ直撃する。

 

――だが。

 

マーシャドーは、動かなかった。

 

その腕を、ほんの少し振るう。

 

それだけで。

 

バチィィィン!!

 

雷撃が、霧散した。

 

「……!」

 

サトシが息を呑む。

 

「10万ボルトが……!」

 

マーシャドーは、ゆっくりと顔を上げる。

 

「……オオオオオオ……!」

 

初めて。

 

その口から、声が漏れた。

 

その瞬間――。

 

マーシャドーの周囲に、青い星のような弾が七つ出現した。

 

「な……なんだ、あれ!?」

 

七つの光球が、空中を漂う。

 

だが、次の瞬間。

 

それらは一斉に動き出した。

 

複雑な軌道を描きながら、四方八方からピカチュウへ迫ってくる。

 

「ピカチュウ、かわせ!」

 

「ピカッ!」

 

一発目。

 

二発目。

 

ピカチュウが紙一重でかわす。

 

三発目――。

 

「ピカッ!?」

 

ドンッ!!

 

直撃。

 

「ピカァ!」

 

さらに――。

 

ドン!ドン!ドン!

 

「ピッカァァァ!!」

 

次々と光弾が命中する。

 

空中へ吹き飛ばされたピカチュウへ、さらに最後の一発が追い打ちをかけるように着弾、爆発を起こした。

 

「ピカァァァッ!!」

 

「ピカチュウ!」

 

サトシが叫ぶ。

 

その瞬間。

 

マーシャドーの身体を、巨大なオーラが包み込んだ。

 

まるで巨人のように膨れ上がる闇。

 

その姿を見た瞬間、ボン爺の顔色が変わった。

 

「ゼ、ゼット技……!?」

 

マーシャドーが跳躍する。

 

「逃げろ、サトシくん!」

 

「ピカチュウ!」

 

サトシが叫ぶ。

 

「10万ボルトだ!」

 

「ピィーカァー……!」

 

ピカチュウが電気を集めようとする。

 

だが――。

 

遅い。

 

マーシャドーは、すでに目の前まで迫っていた。

 

「アアアアアアアッ!!」

 

「ピカァ……!」

 

ドゴォォォォォン!!

 

凄まじい一撃が、ピカチュウを捉える。

 

大爆発。

 

黒い煙と衝撃波が、山頂一帯を覆い尽くす。

 

「ピカチュウ!!」

 

サトシの叫び声が響く。

 

「ピカチュウー!!」

 

その声さえも――。

 

爆音に、飲み込まれていった。




・クロス、ここで死亡
当初の予定では映画通りにリザードンに助けられたり、ガオガエンととっくみあった結果右腕を失ったり、アローラ地方での過去を書こうかとしましたが、クライマックスには蛇足だよな?ということで没。

ぶっちゃけシンジの劣化だから扱いには困ってたんだよな……グロい描写を書く気はないし、地味に退場して、どうぞ。

みんな誰が好きですか?

  • リオル
  • フシギソウ
  • バタフリー
  • マンキー
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