ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
地下墓地を進んでいくと、少しずつ周囲の様子に変化が現れ始めた。
「ベトォォォォ!」
「……まただ」
遠くから聞こえてくるポケモンの鳴き声。
先ほどまで、この地下墓地にいたのはゲンガーやゴースといったゴーストタイプのポケモンばかりだった。
壁や天井をすり抜け、突然目の前に現れる彼らを避けるため、私たちは波動で周囲を探りながら慎重に進んでいた。
けれど、しばらく進むと――。
ゴーストタイプのポケモンたちの波動が、次第に遠ざかっていった。
どうやら、この辺りにはもういないらしい。
これで、突然襲われる心配はなくなった。
……なくなった、のだが。
「くちゃい……!」
「クゥン……」
今度は、別の問題が発生した。
「この臭い……」
鼻を押さえる。
ベトベトンやドガース、さらにはコラッタ。
様々なポケモンの臭いが、部屋一帯に充満している。
「うぅ……」
呼吸するたびに、鼻の奥へ嫌な臭いが入ってくる。
ポケモンたちが普通に呼吸している以上、酸素の心配はしなくてもよさそうだ。
でも。
それはそれとして。
「呼吸したくない……!」
「クオン……」
リオルも私に同意するように顔を顰める。
「異臭の正体はポケモンたち?」
私は周囲を見回す。
「でも、一体どこから……?」
臭いさえ我慢すれば、先ほどまでより落ち着いて探索できる。
そして、落ち着いて考えられるようになったことで――。
ようやく、推理する余裕も生まれてきた。
やはり手がかりは、あれだ。
私はポケットへ手を入れる。
先ほど拾った小さなボタン。
取り出して、ライトで照らす。
「……」
ボタンだと思っていたものに刻まれたマーク。
それを私は知っている。
「……嘘」
私は言葉を失った。
これがあるってことは……。
「まさか……」
波動の探知を強める。
意識を集中させる。
この地下にいるポケモン。
壁に床、天井。
そして――。
人間。
「……いた」
数分ほど探したところで、反応を捉えた。
そんなに離れていない。
大勢の人間が集まっている。
何かの作業をしているようだ。
さらに、その中には外からやって来た人間と話している者もいる。
「……まさか」
私は手の中にあるものを見る。
そして、確信する。
「アイツら……諦めてなかったの……!」
私はリオルたちを連れて、波動で捉えた場所へ向かって走り出した。
◆
迷宮の奥。
そこには、墓場には到底似つかわしくない金属製の扉があった。
古びて所々が錆びついている。
しかも、その扉には明らかに後から取り付けられたと思われる電子ロックまで設置されていた。
私は足音を殺しながら扉へ近づく。
そして――。
「出てきて、リオル、フシギソウ、オコリザル」
「クオン!」
「ソウ!」
「ムッキー!」
三匹が姿を現す。
「……いくよ」
私はポケットから、赤いRのバッジを取り出した。
それを扉の取っ手付近へ近づける。
ピッ。
小さな電子音。
ガチャッ。
ロックが外れた。
「今!」
リオルとオコリザルが同時に飛び出す。
「アウッ!」
「ムッキー!」
ドォン!!
二匹の蹴りが扉を吹き飛ばした。
「な、何だ!?」
扉の向こう。
古びた雑誌を読んでいた黒ずくめの男が、目を丸くしてこちらを見ていた。
「フシギソウ、ねむりごな一杯!」
「ソウッ!」
ふわっ――。
白い粉が部屋中へ広がっていく。
数秒後。
大きな音を立てて、天井の機械が動き始めた。
ゴォォォォ……。
換気扇が回り始め、室内に充満したねむりごなを外へと吸い出していく。
白い粉がなくなったのを確認してから、私たちは部屋の中へ突入した。
そこにいたのは――。
黒ずくめの人間たち。
半分ほどはねむりごなを吸って倒れている。
残りの人間たちは、ガスマスクを装着していた。
そして、その中でも特に目立つ二人がガスマスクを外した。
金髪の女と緑色の髪をした男だ。
「っ……アンタは!」
「いつぞやのバイオレンスガール!」
「いつぞやはこっちのセリフよ!」
私は二人を指差す。
「またシルフ占領を企んでるのね! ロケット団のヤマトにコサンジ!」
「二つ訂正しよう!」
緑髪の男が立ち上がる。
「一つ! 俺はコサンジじゃなくてコサブロウだ!」
「そんな細かいこと、今どうでもいいでしょ!」
「二つ! もうシルフに用はない!」
「じゃあ、なんでポケモンタワーの地下で集まってるのよ!」
「はぁ?」
ヤマトが呆れたような顔をする。
「何言ってるの、アンタ?」
「ここはヤマブキシティの地下水路よ」
「……え?」
「ほら、大雨が降った時に雨水が溢れないように逃がすためのアレよ」
「地下水路……?」
私は周囲を見回す。
そういえば、お墓っぽくない。
「……いつの間にか、ヤマブキシティへと戻っていたんだ」
地下迷宮が複雑すぎて気づかなかった。
でも、それならなおさら疑問だ。
どうして、こんな場所にロケット団が?
すると。
「遡ること数日前――」
突然、下っ端の一人が語り始めた。
「俺たちロケット団のアジトを、ポケモンリーグが一斉摘発しに来たんだ……」
「えっ」
「ポケモンリーグ四天王も総動員した大規模な摘発を前に、俺たちはなす術もなくやられていった……」
「アポロ様を始めとした幹部陣は皆逮捕」
「サカキ様も行方をくらまし――」
「ロケット団は、壊滅したと言っていいだろう……」
「いや、ちょっと待って」
なんだか話が重い。
「だが!」
下っ端が拳を握る。
「天は我らを見放さなかった!」
「……?」
「ヤマブキシティまで逃げてきた我らを待っていたのは――大量のガラクタ!」
「どうやら、どこかの業者が勝手に不法投棄しているみたいだが――」
「俺たち、なんでもできるロケット団の精鋭にとってみれば、宝の山!」
「……」
「俺たちは、こいつらを再利用する!」
「……」
「アジトを作る!」
「……」
「兵器を作る!」
「……」
「売れるものを作る!」
「…………」
「すべては――ロケット団再興のために!」
「こら!」
ヤマトが怒鳴った。
「一から十まで説明するな!」
「あ、わかりやすい説明ありがとうございます」
「褒めるな!」
つまり。
シオンタウン周辺に漂っていた異臭の正体は、不法投棄された大量のゴミと、そのゴミに集まってきたポケモンたちの臭い。
地下から聞こえていた謎の音は――。
「ゴミを集めて、ものづくりをしていたロケット団の音だったわけね」
「そういうことだ」
「……」
私は頭を抱える。
「って、兵器作り!?」
「ソウ!」
「ムッキー!」
フシギソウとオコリザルが前へ出る。
二匹とも、やる気満々だ。
「流石に見逃せないわよ!」
ヤマトが不敵に笑う。
「うふふっ。私たちは、どこぞの失敗続きの連中とは違うわよ」
コサブロウも胸を張る。
「反省できるロケット団だ!リオルへの対策ももちろんバッチリ!いくぜお前ら!」
「ラッチューノ!」
「ゴルァ!」
二つのモンスターボールが開く。
「ラッタに……ゴルバット!」
ラッタはともかく。
ゴルバットは新顔だ。
「リオル対策ってことは……」
「ゴルバット、エアカッター!」
「キーッ!」
ブンッ!
無数の風の刃が部屋中を駆け抜ける。
「やっぱり、それね!」
風の刃がフシギソウとオコリザルを切り裂いた。
「ソウッ!」
「ムキッ!」
二匹が苦しそうに後退する。
「お前のポケモンが、ひこうタイプに弱いことは調べがついている!」
コサブロウが叫ぶ。
「ラッタ! あの時の借りを返すぞ! ついばむ!」
「ラッチューノ!」
ラッタが地面を蹴る。
「速い!」
「ソウ!?」
鋭い牙がフシギソウへ迫る。
「フシギソウ!」
ガブッ!
「ソォォ!?」
「これでどうだ!」
ラッタの追撃を受け、フシギソウが大きく吹き飛ばされる。
「……大丈夫!」
私は拳を握る。
「私たちなら――」
以前の私なら。
ここで「勝たなきゃ」と焦っていた。
もっと強い技を。
もっと強いポケモンを。
もっと効率のいい方法を。
でも。
今の私は違う。
「オコリザル!」
「ムッキー!」
「嫌な音!」
「ムキィィィ!!」
オコリザルが、部屋の隅に積まれていた鉄板へ爪を突き立てる。
ギィィィィィィィ――!!
「キーッ!?」
「ラッチュ!?」
耳をつんざくような嫌な音が、部屋中へ響き渡る。
ゴルバットが苦しそうに翼を止めた。
「ゴルバット!?」
「今よ!」
私は叫ぶ。
「フシギソウ、天井を使ってのしかかり!」
「ソウッ!」
フシギソウがつるを天井へ突き刺す。
身体を一気に引き上げ――。
「いっけぇ!」
「ソウッ!!」
ドォン!!
真上から落下したフシギソウが、ラッタを押さえ込んだ。
「ラッチュ!?」
「しまった!」
コサブロウが頭を抱える。
「ゴルバットは耳が敏感なんだ! いやなおとにはポケモン一倍弱い!」
「音には音で対抗よ!」
ヤマトが叫ぶ。
「催眠装置を持ってきなさい! トレーナーごと催眠音波で――」
「た、た、た、大変だぁ!!」
「うるさい!」
戦闘中に、下っ端の一人が駆け込んできた。
私がやってきた方向とは反対側。
巨大なシャッターの隣にある扉からだ。
「お前!」
コサブロウが振り返る。
「確か、臭いがキツいからって、コイルを連れてベトベトンの群れを追い払いに行ってたんじゃ……」
「そうよ!」
ヤマトが叫ぶ。
「ちょうどいいわ! ありったけの兵器を持ってきなさい!」
「そうだ、みんな気をつけろ!」
下っ端は青い顔をしながら叫ぶ。
「何よ?」
「見たことのないポケモンが、こっちに――!」
その言葉を最後まで聞くことはできなかった。
轟音。
ズガァァァァン!!
鋼鉄製のシャッターが、外側から吹き飛んだ。
「「「えっ?」」」
バラバラになったシャッターの残骸。
その向こうから――。
何かが入ってくる。
「……」
銀色の身体。
巨大な腕。
人間より遥かに大きな体躯。
それは、倒れているシャッターの残骸を掴んだ。
そして。
自分の身体へ押し付ける。
「……?」
バリ。
「……」
バリバリ。
「え?」
バリボリ。
「…………」
おおよそ、生き物が出してはいけない音が響き渡る。
「て、鉄のシャッターを……食べてる?」
誰かは呆然と呟いた。
「――――」
謎のポケモンは答えない。
ただ、食べる。
鋼鉄を。
まるで菓子でも食べるかのように。
「な、何よコイツ!?」
ヤマトが悲鳴を上げる。
「撃て!」
コサブロウが叫ぶ。
「撃て撃て! ありったけの兵器で攻撃するんだ!」
ロケット団員たちが一斉に武器を取り出す。
弾丸、爆弾、電気、ビーム、超音波。
様々な攻撃が、謎のポケモンへ殺到する。
ドドドドドッ!
しかし。
「――――」
銀色の身体には、傷一つつかない。
「そ、そんな……!」
謎のポケモンは、ゆっくりと歩き出す。
そして。
下っ端が持っていたバズーカのような兵器を、ひょいと奪った。
「え?」
パリ。
「……え?」
バリッ。
「ショックブラスターがぁぁぁ!?」
謎のポケモンは、兵器すら食べてしまった。
「大事な商品が!」
「せっかく直したトラックが!」
「というか、アジトそのものがぁぁぁ!!」
侵入者の食事は止まらない。
家電製品。
機械。
トラック。
柱。
目についたものを、片っ端から食べていく。
「やめろぉぉぉ!」
ロケット団員たちがポケモンを繰り出す。
しかし。
「――――!!」
巨大な腕が振り回された。
ドゴォォォン!!
一回転しただけで、ロケット団員もポケモンも紙切れのように吹き飛ばされる。
さらに、その衝撃で壁が崩れ始めた。
「うわぁぁぁ!」
「逃げろぉぉぉ!」
「「やな気持ちぃぃぃ!!」」
◆
「……あれは……」
私は、崩れ落ちるアジトから三匹を回収し、地下水路の外へ脱出していた。
瓦礫の向こう。
さっきまでロケット団のアジトだった、瓦礫の山を見つめる。
「ロケット団を襲ってる……」
あのポケモンなら。
ロケット団のアジトを襲うことも。
壊滅させることもできる。
しかも、あの異常な食欲を考えれば――。
「食事のため……?」
そう考えれば、襲った理由にも納得できる。
でも。
私は、あのポケモンを見た瞬間から感じていた。
「……違う」
何かがおかしい。
あの身体から感じる力。
あの異様なオーラ。
あれは、ただの野生ポケモンじゃない。
「一体、あなたはなんなの……?」
その時。
ドォォォン!!
瓦礫が吹き飛んだ。
「――――!!」
銀色の巨体が姿を現す。
その周囲には、まるで巨人のような巨大なオーラが渦巻いていた。
リオルが身構える。
「……」
私も一歩下がった。
あの力は。
これまで戦ってきたどのポケモンとも違う。
そして、そいつは。
まるで私たちを試すかのように――。
ゆっくりと、その剛腕を振り上げた。
「――――!!」
「……来る!」
地下水路に、巨大な衝撃音が響き渡った。
・ロケット団、いつの間にかボコボコに。
27話でワタルが語っていた仕事というのがコレ。
本来ロケット団全戦力≒ポケモンリーグ四天王のパワーバランスが保たれていたのですが、たまたまやってきたダイゴさんに喧嘩を売ったのが運の尽き。
本気を出したシルフとデポンによって資金と物資の流れを押さえられたことで弱体化、更に全てのアジトの情報が流出してしまい、結果四天王の猛攻を耐えきれませんでした。
みんな誰が好きですか?
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リオル
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フシギソウ
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バタフリー
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マンキー