ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている   作:はらへりニャンコ

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第38話 地下迷宮のぬしポケモン

 

 

 

 

 

ヤマブキの地下に潜んでいたポケモン達を束ねる主。

 

古文書に曰く、鉄を司る忘れられし神。

 

地方分類・未確認。

 

どこにいるのか、誰も知らず。

 

ただその存在だけが語り継がれている幻のポケモン。

 

メルメタル。

 

その巨体が、ゆっくりと動いた。

 

全身のナットが、ガチャン、ガチャンと音を立てる。

 

そして――。

 

「――――!!」

 

ドォン!!

 

巨大な剛腕が振り下ろされた。

 

「リオル、大丈夫!?」

 

「オウ!」

 

リオルは紙一重で拳をかわす。

 

拳が床へ叩きつけられた瞬間、石畳が砕け、鈍い衝撃波が地下水路を駆け抜けた。

 

「……今の、当たったら洒落にならない!」

 

リオルが振り返る。

 

「クオン!」

 

その瞳には、恐怖よりも闘志が宿っていた。

 

「よし……いくよ!」

 

私は拳を握る。

 

「ビルドアップ!」

 

「オオウッ!」

 

リオルの全身から波動が溢れ出す。

 

筋肉が膨れ上がり、身体を包む波動が強くなる。

 

「けたぐり!」

 

「クオオウッ!」

 

リオルが一気に地面を蹴る。

 

低い姿勢から滑り込むようにメルメタルの足元へ潜り込み、その巨大な脚――いや、脚と呼んでいいのかも分からない鋼鉄の部位へ強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

ドゴォン!!

 

「――――!!」

 

メルメタルの巨体が、わずかに揺れる。

 

「よし!」

 

鋼タイプのメルメタルには、こうかばつぐん。

 

この一撃なら――。

 

「……え?」

 

しかし。

 

メルメタルは倒れない。

 

傷らしい傷すら、ほとんど見えない。

 

「やっぱり……硬い!」

 

リオルが距離を取る。

 

その時だった。

 

ガチャン。

 

メルメタルの胴体にあるナットが、一斉に回転し始めた。

 

「……何?」

 

ギギギギギ……。

 

不気味な音が地下水路に響き渡る。

 

「リオル、離れて!こうそくいどう!」.

 

「クオン!」

 

リオルが地面を蹴った。

 

次の瞬間――。

 

「――――!!」

 

ドゴォォォォン!!

 

メルメタルの周囲から、鋼鉄の嵐が巻き起こった。

 

無数の鋼鉄片が渦を巻き、まるで巨大な竜巻のようにメルメタルの周囲を薙ぎ払っていく。

 

「速い!」

 

リオルはこうそくいどうで逃げる。

 

しかし。

 

「え……?」

 

鋼鉄の嵐が、追ってくる。

 

しかも――。

 

速い。

 

「嘘、流石に速すぎない!?」

 

リオルとの距離が、みるみる縮まっていく。

 

「リオル、もっと速く!」

 

「ク、クオンッ!」

 

ギュンッ!

 

リオルが加速する。

 

それでも逃げ切れない。

 

「――――!!」

 

ドゴォォォン!!

 

「キャイン!」

 

鋼鉄の嵐がリオルを直撃した。

 

小さな身体が宙へ舞い、そのまま壁へ叩きつけられる。

 

「リオルー!」

 

私は駆け寄ろうとする。

 

だが。

 

メルメタルは追撃してこなかった。

 

「……?」

 

メルメタルは踵を返す。

 

そして――。

 

先ほどまでロケット団のアジトだった場所へ戻っていった。

 

崩れた瓦礫を、巨大な腕で次々とどかしていく。

 

ガラガラガラ……。

 

やがて、その下から現れたのは――。

 

「……車?」

 

原型をほとんど失った、車両らしきスクラップだった。

 

メルメタルはそれを掴み上げる。

 

じっと眺める。

 

そして。

 

コクン。

 

満足そうに頷いた。

 

「……」

 

次の瞬間。

 

バリッ。

 

「……え?」

 

バリバリッ!

 

「食べてる……」

 

メルメタルは鋼鉄のスクラップを、まるで菓子でも食べるように噛み砕いていく。

 

その身体に光が走る。

 

「――――」

 

「しまった!」

 

私は思わず叫んだ。

 

「傷が……癒えてる!」

 

さっき、けたぐりで与えたダメージが――。

 

みるみるうちに消えていく。

 

「こんなの……反則じゃない!」

 

けれど、それ以上に気になることがある。

 

さっきの攻撃。

 

あれは、おかしい。

 

メルメタルは鈍重な鋼鉄の巨体。

 

なのに、こうそくいどうを使ったリオルに追いついた。

 

しかも、あの鋼鉄の嵐は――。

 

「……あんなパワーにスピード、普通じゃない」

 

私はメルメタルを睨む。

 

けれど、考える時間すら与えてくれなかった。

 

「――――!!」

 

メルメタルの頭部が光る。

 

「来る!」

 

ドォォォォン!!

 

巨大な光線が放たれた。

 

「ラスターカノン!」

 

「クオン!」

 

私はリオルを抱き上げる。

 

「きゃあああ!」

 

全速力で駆ける。

 

背後から、光線が壁を削りながら迫ってくる。

 

ドゴォォォン!

 

「ひっ!」

 

石壁が吹き飛ぶ。

 

「ここはダメ!」

 

とにかく、このままじゃ勝てない。

 

この地下迷宮では逃げ場が少なすぎる。

 

一度、迷宮の手前まで戻って態勢を立て直さないと。

 

「リオル、もう少し――」

 

ゴチン!

 

「ア痛ァ!?」

 

「ロトッ!?」

 

そんなことを考えながら全力で走っていると、額に何かが勢いよくぶつかってきた。

 

「いたた……」

 

私は額を押さえながら、ぶつかってきたものを見る。

 

「……ロトム?」

 

そこにいたのは、オレンジ色のプラズマポケモン。

 

ロトムだった。

 

「ロト! ロトロトォ!」

 

どうやら、ぶつかってきた私に怒っているらしい。

 

「ごめんごめん!」

 

ロトムの怒りは収まらないのか、何度もこちらへ体当たりをしてくる。

 

「そんなことより、今は逃げないと!」

 

「ロト?」

 

ロトムがぴたりと止まる。

 

そして。

 

私の背後を見る。

 

「……?」

 

その視線を追う。

 

そこには――。

 

「――――」

 

メルメタル。

 

「ロト……?」

 

メルメタルは満足そうに、扇風機を食べていた。

 

バリバリ。

 

「ロト……」

 

続いて、洗濯機。

 

バリボリ。

 

「……」

 

ロトムの身体が震え始める。

 

冷蔵庫にも手を伸ばしたメルメタル。

 

バリバリ。

 

「ロ……ロ……」

 

辺りに響くのは、メルメタルが家電を食べる音だけ。

 

「……ロトオォォォォォ!!」

 

怒号。

 

いや、悲鳴に近い叫びだった。

 

ロトムの身体から、激しい炎が噴き出す。

 

「えっ!?」

 

炎がロトムを包み込み――。

 

「ロトォ!」

 

姿が変わった。

 

「って、家電に入らずフォルムチェンジ!?」

 

本来、ロトムは家電などに入り込むことで、その姿やタイプ、使える技まで変化する。

 

その筈、なのだが。

 

目の前のロトムは、家電に頼ることなく炎を纏い、ヒートロトムへと姿を変えていた。

 

「ロトォォォ!!」

 

ゴォォォォォ!!

 

灼熱の炎が一直線に放たれる。

 

「あれはオーバーヒート!」

 

「――――!!」

 

ドゴォォォォン!!

 

メルメタルが炎に包まれる。

 

「やった!?」

 

炎が晴れる。

 

そこには――。

 

無傷に近いメルメタル。

 

「……そんな」

 

こうかはばつぐん。

 

それなのに。

 

「でも!」

 

私はリオルを見る。

 

「私たちもいくよ!」

 

「オオウッ!」

 

復活したリオルが地面を蹴った。

 

「つるぎのまい!」

 

「オウッ!」

 

さらに波動が膨れ上がる。

 

「もう一度、けたぐり!」

 

「クオオオオウ!!」

 

ドゴォン!!

 

メルメタルの巨体が大きく傾く。

 

「ロトロトロト!」

 

ロトムの体から無数の青白い炎が飛び出す。

 

追撃のおにびが鋼鉄の身体にまとわりつき、その動きを鈍らせていく。

 

「今!」

 

リオルが懐へ潜り込む。

 

「リオル、けたぐり!」

 

「クオオッ!」

 

ズドン!!

 

波動を纏った一撃が、メルメタルの鋼鉄の身体へ叩き込まれる。

 

「――――!!」

 

メルメタルが吠える。

 

初めて。

 

明確に、苦しそうな反応を見せた。

 

「効いてる!」

 

けれど。

 

次の瞬間。

 

「――――!!」

 

メルメタルの身体が大きく膨らんだ。

 

「……何!?」

 

ゴゴゴゴゴ……。

 

地下水路そのものが震え始める。

 

「来る!」

 

私は叫ぶ。

 

直後。

 

メルメタルの頭部が、眩い光に包まれた。

 

「はかいこうせん!?」

 

ズドォォォォォン!!

 

巨大な破壊光線が放たれる。

 

「ロトッ!?」

 

狙いはロトム。

 

「ロトム、避けて!」

 

「ロ……!」

 

だが、攻撃に集中していたロトムには間に合わない。

 

ドォォォォン!!

 

「ロトオオオオ!!」

 

ロトムが吹き飛ばされる。

 

「ロトム!」

 

私は叫ぶ。

 

その瞬間。

 

「クオオオオオオ!!」

 

リオルが飛び込んだ。

 

「リオル!?」

 

ズドォォォォォン!!

 

リオルが、ロトムを庇う。

 

破壊光線が真正面からリオルを捉えた。

 

「ク、クオオオオオッ!!」

 

「リオル!」

 

光線の熱が、リオルの身体を焼いていく。

 

足が震える。

 

それでも。

 

倒れない。

 

「負けるな……!」

 

私は拳を握る。

 

「リオル、負けるな!」

 

リオルが振り返る。

 

その目が、私を見る。

 

「クオン……!」

 

私は気づいていた。

 

さっきまでの私なら。

 

もっと強く。

 

もっと早く。

 

もっと効率よく。

 

そう考えて、勝つことだけを焦っていた。

 

でも――。

 

今は違う。

 

リオルがいる。

 

ロトムがいる。

 

そして、私がいる。

 

「相手がどれだけ強くても!」

 

私は叫ぶ。

 

「どれだけ不利でも!」

 

リオルの波動が強くなる。

 

私たちは、私たちのリズムで――!

 

「「ウオオオオオオオオ!!」」

 

二つの声が重なった。

 

リオルの身体から、凄まじい波動が噴き出す。

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

「クオオオオオオ!!」

 

全身に残された力。

 

傷ついた身体。

 

それでも立ち続けた意志。

 

すべてを乗せた――。

 

「きしかいせい!!」

 

ドゴォォォォォン!!

 

リオルの拳が、正面からはかいこうせんを押し返していく。

 

「クオオオオオオオオオ!!」

 

一歩。

 

また一歩。

 

リオルが前へ進む。

 

そして――。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

ドォォォォォン!!

 

はかいこうせんを完全に押し返した。

 

そのままリオルが、メルメタルへ突っ込む。

 

「ロトオォォォォォ!!」

 

ロトムも飛び上がる。

 

ゴォォォォォォ!!

 

二度目のオーバーヒート。

 

一度目の反動で威力が落ちているはず。

 

それでもその火力は衰えていなかった。

 

「――――!!」

 

メルメタルの身体が炎に包まれた。

 

「今度こそ……!」

 

炎の中へ、リオルのきしかいせいが突っ込む。

 

「クオオオオオ!!」

 

ドゴォォォォォン!!

 

爆炎と衝撃が、地下水路を揺らす。

 

私は腕で顔を覆う。

 

「……!」

 

炎が晴れる。

 

そこに立っていたのは――。

 

メルメタル。

 

身体には無数の傷。

 

それでも。

 

まだ立っている。

 

「……嘘」

 

メルメタルが、ゆっくりと腕を振り上げる。

 

リオルも構える。

 

ロトムも炎を纏う。

 

「……まだ、やるの?」

 

メルメタルの拳が――。

 

止まった。

 

「……?」

 

「……」

 

「……」

 

やがて。

 

メルメタルは腕を下ろした。

 

静寂。

 

先ほどまでの激しい戦闘が嘘のように、地下水路が静まり返る。

 

「終わった……の?」

 

リオルがゆっくりと構えを解く。

 

ロトムも炎を収め、元の姿に戻る。

 

その時だった。

 

メルメタルの足元。

 

その巨大な影が――。

 

不自然に揺れた。

 

「……?」

 

影から、黒い何かが飛び出す。

 

「……!」

 

黒い身体。

 

仮面のような顔。

 

そして――。

 

「マ……」

 

私は目を見開いた。

 

「マーシャドー!?」




・地下迷宮のボス、メルメタル
地下通路に捨てられたゴミに惹かれたメルタンが集まってメルメタルへと進化、地下中の屑鉄を漁りなら徘徊していました。

何故かマーシャドーの力で強化されていたみたいだが……?

みんな誰が好きですか?

  • リオル
  • フシギソウ
  • バタフリー
  • マンキー
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