ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
本当は2話構成にする筈が、なんか中途半端になっちゃったからって纏めた結果がコレだよ!
マーシャドーは、ボロボロになった私たちをじっと見つめていた。
「えっと……」
「……」
何かを伝えたいのか、マーシャドーは拳を突き出し、身振り手振りで何かを訴えている。
「……?」
ダメだ。
マーシャドーの波動が読み取れない。
先ほどまで一緒にいたメルメタルに尋ねてみても、どうやら何をしたいのかまでは分からないらしい。
その時だった。
「キミを試したいんじゃないかな?」
「ダイゴさん!」
地獄に仏、混沌にダイゴ。
やってきたダイゴさんは、マーシャドーとメルメタルを交互に見つめると、何かを察したように頷いた。
「恐らくマーシャドーは、キミの持つスーパーレインボーバッジの真価に気がついていたんだろう。地下で、何か視線を感じなかったかい?」
「そういえば……オコリザルが進化した時……!」
あの時。
確かに、何かの気配を感じた。
「マーシャドー……あなただったのか」
「僕にも、マーシャドーが何を考えているのかは正確には分からない」
ダイゴさんはマーシャドーを見ながら続ける。
「ただ一つ言えることがある。キミは、メルメタルとの戦いを通して――マーシャドーの試練を受ける資格を得たんだ」
「試練……」
ダイゴさんは、懐から小さな銀色の石を取り出した。
それを私の手のひらへ、そっと乗せる。
「使い方は、そのうち分かるはずさ」
銀色の石が、淡い光を放つ。
「それを使って、マーシャドーの試練に挑むんだ」
「……分かりました!」
私は石を握りしめた。
その向こうで、マーシャドーが静かに拳を構えた。
◆
暗い地下通路。
傷を治したリオルとマーシャドーが、静かに向かい合っている。
「……」
「……」
小さな格闘タイプの二匹は、何も喋らない。
語る言葉は拳に乗せる。
そんな空気が、二匹の間に生まれていた。
「……!」
先に動いたのはマーシャドーだった。
身体を低く沈める。
次の瞬間、その姿が――消えた。
「……っ!」
マーシャドーは床に落ちた影へ足を滑らせるように潜り込み、一瞬で距離を詰める。
先制技、かげうちだ。
「ファストガード!」
「アオン!」
リオルが両腕を交差させる。
ガキィン!!
黒い拳とリオルの守りが真正面からぶつかった。
「ぐっ……!」
リオルの身体がズズズッと後退する。
速い。
しかも重い。
「クオン!」
マーシャドーがさらに踏み込む。
「シャドークロー!」
「オォン!」
リオルの影が大きく膨らんだ。
その影から、鋭い黒い爪が飛び出す。
マーシャドーの動きを一瞬だけ止める。
「今!バレットパンチ!」
「オォォン!」
リオルが踏み込む。
銀色の拳がマーシャドーへ迫る。
しかし――。
マーシャドーは身体を捻った。
紙一重。
バレットパンチをかわす。
そのままリオルの足元へ、影が伸びる。
「……!」
マーシャドーが影へ潜った。
「どこ!?」
次の瞬間。
「後ろ!」
「クオン!?」
背後から飛び出したマーシャドーの拳が、リオルの脇腹を狙う。
「こらえて、リオル!」
ドゴッ!!
「クオッ!」
リオルが腕で受け止める。
それでも勢いまでは殺せず、数メートル吹き飛ばされる。
「クオン!」
リオルは地面を転がりながらも、すぐに立ち上がった。
足が震えている。
治療はした。
けれど、メルメタルとの戦いでスタミナはほとんど残っていない。
さっきのように、こうそくいどうを繰り返す戦い方はできないし、何度もあの強烈な攻撃を喰らう訳にはいかない。
でも――。
今の私たちには、私たちのリズムがある。
「焦らないで、リオル」
「……オウ」
リオルが頷く。
マーシャドーが再び影へ入る。
「来る!」
「……!」
影が動く。
右、左、前。
いや――。
「下!」
リオルが身体を捻った。
ズバァッ!!
マーシャドーの蹴りが、頭上を通り過ぎる。
「今!」
「シャドークロー!」
リオルの影から黒い爪が伸びる。
マーシャドーが咄嗟に腕で受け止めた。
ギギギギッ!!
黒い爪と黒い腕がぶつかり、火花が散る。
「バレットパンチ!」
リオルの両腕が銀色に輝く。
ガキィン!!
マーシャドーが弾き飛ばされた。
「いける!」
けれど――。
マーシャドーは空中で身体を捻り、音もなく着地した。
「……!」
まだ、余裕がある。
◆
「……あれが、シャドースチームか」
離れた場所で、ダイゴさんは戦いを見つめていた。
その隣には、ロトムとメルメタル。
「ロトロトロト!」
ロトムは、先ほど自分を庇ってくれたリオルを元気に応援している。
「相手の力を利用して、自分を強くする……厄介な技だね」
ダイゴさんの視線がリオルへ向く。
「リオルが強化技を使えば、むしろマーシャドーを有利にしてしまう」
だからこそ、リオルはつるぎのまいもビルドアップも使っていない。
攻撃技だけで真っ向からマーシャドーに食らいついている。
「……大丈夫、リーフくん」
ダイゴさんが、静かに言う。
「キミは、本来の自分を取り戻したんだ」
「今のキミたちの全てを――ぶつけるんだ」
ダイゴさんは小さく微笑むと、横にいる鋼鉄の巨人へ視線を向けた。
「……さて」
「――――」
メルメタルがダイゴさんを見る。
「行く当てがないなら、僕と一緒に来ないかい?」
「――――」
メルメタルはしばらく黙っていた。
やがて――。
コクン。
静かに頷いた。
「ありがとう」
◆
戦いが始まって、数分。
それでも。
マーシャドーには、疲労の色がまったく見えない。
「知ってはいたけど……強すぎ」
ライゼン山脈での戦いでは、四人がかりでようやく倒した幻のポケモン。
そんな相手と、今度はリオルが一匹で戦っている。
「クオン!」
「……!」
リオルが息を整える。
傷は増えている。
呼吸も荒い。
それでも、その目から闘志は消えていない。
そして何より――。
まだまだ、私たちの力はこんなもんじゃない。
その時だった。
私のポケットが、突然金色に輝いた。
「これは――?」
私はポケットから、スーパーレインボーバッジとダイゴさんから受け取った銀色の石を取り出す。
二つが共鳴するように、眩い光を放っている。
「何……これ……?」
その瞬間。
私の中へ、見たことのない景色が飛び込んできた。
◆
「――虹の石、星の砂、聖なる火山に捧げて守り神を讃えよ」
ライゼン山脈、その山頂。
虹がかかった空の下で、褐色の肌がよく似合う若い男が、マーシャドーへ語りかけていた。
「俺の家に伝わる古い歌だ。といっても、その守り神様を直接見たことはないんだけどな」
マーシャドーは何も答えない。
ただ、男の隣に立っている。
「こうやって遠く離れた異国の地まで儀式の材料を取りに来るのは、リザードン乗りの一族である俺たちくらいだろう」
男は空を見上げる。
「でも、俺はここに来て良かったよ」
そして、マーシャドーを見る。
「綺麗な虹を見れたし――何より、お前と拳をぶつけられたからな」
マーシャドーが、わずかに拳を握る。
「懐かしいな」
男は笑う。
「小さい頃は、よくこうやって友達とゼンリョクの相撲を取っていたんだっけ」
「……」
「ハハッ。相変わらず、お前はダンマリだな」
男はマーシャドーの拳へ、自分の拳を軽くぶつけた。
「でも、それが――お前の役割なんだろうな」
男は虹を見上げる。
「カントーの守り神様――」
◆
「全身、全霊、全力……」
景色が消える。
気づけばそれを唱えていた。
私は目の前のリオルを見る。
「私たちの絆よ」
スーパーレインボーバッジが、さらに強く輝く。
「ライゼンの虹の如く――」
溢れ出した黄金の光が、私たちの力へと変わっていく。
「気高き光となれ――!」
リオルの身体から、凄まじい波動が噴き出した。
「クオオオオオオオオ!!」
波動と波動が重なる。
まるで二つの力が、一つの答えを探すように絡み合っていく。
そして――。
カチリ。
私の中で、何かがはまった。
「……これだ」
私たちは両手を前に突き出した。
「私たちなら――できる!」
「オオオオオオ!!」
マーシャドーも、ゆっくりと構えを変えた。
その瞬間。
七つの星が、マーシャドーの脚へ集まっていく。
「……!」
星が巨大な光となり、マーシャドーの脚を包み込む。
ズズズズズ……。
空気が震える。
地下水路の壁に亀裂が走る。
「……来る!」
マーシャドーが大地を蹴った。
ドォン!!
その身体が、一気に空高く舞い上がる。
七つの星が光の尾を引き、夜空を駆け抜ける流星のような軌跡を引いた。
「行こう、リオル!」
私は右腕を高く突き上げる。
「限界なんか――突き穿て!!」
「オオオオオオオオオ!!」
リオルがバレットパンチを天へ掲げる。
白銀の光が、一気に溢れ出した。
その光がリオルの身体を包み込み、さらに私の周囲へと広がっていく。
二筋の光が、リオルを中心に螺旋を描き始める。
それはまるで――。
私とリオルの絆そのものだった。
二本の線が、一本の螺旋へ。
一筋の巨大な光へ。
そして、リオルの拳へと収束していき、その形を現していった。
鏡のように燦然と輝く聖槍と化した光を、リオルは軽々と構える。
狙いは、七つの星をその身に宿したマーシャドー。
「クオオオオオオオオオオ!!」
リオルが地面を蹴った。
ドォン!!
白銀の槍が、マーシャドーへと一直線に突き進む。
「超絶ゥ――!」
七星を宿した蹴りが、空から流星の如く降り注ぐ。
「螺旋ッ――!」
絆を模った鋼鉄の螺旋が、全てを貫く嵐になる。
「連撃ィィィ!!」
「ウオオオオオオオオオオ!!」
二つの力が――。
真正面から激突した。
ズドォォォォォォォォォン!!
地下迷宮そのものが揺れた。
石壁が震える。
天井から無数の石が落ちる。
銀の螺旋と、星の蹴撃がぶつかり合い、凄まじい光の奔流となって地下空間を埋め尽くしていく。
「クオオオオオオオオ!!」
「オオオオオオオオオ!!」
リオルとマーシャドー。
二匹の全力が、一歩も譲らない。
押し込み、押し返し、再び押し込む。
そして――。
パァン!!
二つの力が弾け飛んだ。
轟音が消え、光が消え、静寂が戻る。
◆
煙がゆっくりと晴れていく。
「……」
私は目を凝らす。
そこにいたのは――。
リオル。
そして、マーシャドー。
二匹とも、大地に立っていた。
「クオン……」
リオルが荒い息を吐く。
マーシャドーも肩で息をしている。
やがて二匹はゆっくりと振り返った。
互いを見つめる。
「……」
「……」
言葉はない。
けれどもう十分だった。
マーシャドーが、一歩。
リオルへ近づく。
そして小さな手を差し出した。
リオルが、その手を握る。
その瞬間。
マーシャドーの手のひらから、オレンジ色の結晶が現れた。
それを、リオルの小さな手にそっと握らせる。
「……!」
リオルが結晶を見る。
マーシャドーは、ほんの一瞬だけリオルを見つめ――。
小さく頷いた。
そして黒い影へと身体を沈める。
次の瞬間--
マーシャドーの姿は、もうどこにもなかった。
ただ、リオルの手の中に残されたオレンジ色のクリスタルだけが、静かに輝いていた。
◆
あの後、ジュンサーさんたちがやってきて、ロケット団員たちは次々と逮捕されていった。
……もっとも、あのヤマトとコサブロウとかいう二人と、そのポケモンたちは逃げ切ってしまったみたいだけど。
私が地下を探索している間、地上ではダイゴさんが違法なゴミ処理業者をボコボコにしていたらしい。
地下に集まっていたベトベトンたちも各地へと散らばり、地下から異臭や物音がすることも、もうないだろうとのことだった。
そして今。
私は、シルフカンパニーの開発室前にいた。
「できたわよ、リーフ」
「お母さん!」
作業を終えたばかりのお母さんから、完成したばかりのそれを受け取る。
白を中心に、小さく緑色が入った腕輪。
その中央には七色に輝くスーパーレインボーバッジが埋め込まれていた。
「これが私の……Zリング!」
私はさっそく腕に嵌めてみる。
思っていたよりも軽い。
ほとんど重さを感じない腕輪は、ピタリと私の腕にフィットした。
「それにしても、まさかリーフがZ技使いになるなんてね」
お母さんが感心したようにZリングを見る。
「メガシンカ使いになるほうが先だと思っていたわ」
「僕も少し驚いているよ」
隣にいたダイゴさんが、Zリングへと視線を向ける。
「スーパージムバッジの製造方法は、偶然にも古代のZリングと非常によく似ていた」
「古代のZリングと……?」
「うん」
ダイゴさんは頷いた。
「だからこそ、スーパーレインボーバッジを獲得したリーフくんに、マーシャドーが試練を課したのは、必然だったのかもしれないね」
地下迷宮から外に出たあの後。
ダイゴさんは、私が見た記憶と古い文献を頼りに調査を進めてくれた。
その結果、こんな仮説が浮かび上がったらしい。
昔、アローラからやってきたトレーナーがいた。
彼は守り神を崇め、古代のZリングを作り出す儀式に必要な虹の岩を求め、ライゼン山脈へ登った。
そこで彼は――マーシャドーと出会った。
拳を交えた二人は意気投合、そのトレーナーはマーシャドーにZ技とZリングの秘密を伝えた。
そしてマーシャドーは、ホウオウの聖火を浴びた虹の岩と、自らの得意技を組み合わせ――。
Z技『七星脱魂腿』を編み出した。
それが、ダイゴさんの立てた仮説だった。
「ロトロトロト!」
その時、開発室の扉が勢いよく開いた。
ロトムが飛び出してくる。
「ロトム!」
どうやら、この子の調査も終わったようだ。
あの後、共闘した私を気に入ってくれたロトム。
そのまま私の仲間になってくれた。
そして、この子には驚くべき特徴があった。
なんと――家電に入らなくても、フォルムチェンジできる特殊な個体だったのだ。
電気に加えて炎・水・草・氷・飛行の5タイプの力を使い分けられるのは大きい。
私たちの弱点を補ってくれる、頼もしい仲間だ。
「それでリーフ。今後はどうするの?」
お母さんが尋ねてくる。
私は少しだけ考えてから、笑った。
「うん。また旅に出ようかなって」
メルメタルとの戦い。
マーシャドーとの試練。
そこで私は、新しい力に目覚めた。
そして、新しい仲間とも出会った。
オコリザルが進化した時に気づいたこと。
自分たちのペースで進むことの大切さ。
私は少しだけ、前よりも強くなれた気がする。
そろそろ――。
新しいレポートを書き始めるとしよう。
◆
翌日、別れの時間が近づいた頃。
ダイゴさんが、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば……」
「?」
「調査に協力してくれたお礼が、まだだったね」
そう言って、ダイゴさんは一つのモンスターボールを取り出した。
「これを、キミに」
「私に?」
受け取ったモンスターボールが、手の中で揺れる。
そして――。
「ダンバァ!」
「わっ!」
ボールから飛び出してきたのは、小さな鋼のポケモンだった。
「てっきゅうポケモン、ダンバル」
ダイゴさんが紹介する。
「キミにあげよう」
「本当にいいんですか!?」
思わず声が大きくなる。
ダンバル。
進化すれば、メタグロスへと至るポケモン。
将来は、とんでもない強さになる。
そんなポケモンをもらってしまって、本当にいいんだろうか。
「もちろんさ」
ダイゴさんは穏やかに笑った。
「元々、新たなポケモンを探していたキミのために用意したポケモンだからね」
「……!」
私はダンバルへ向き直る。
「ありがとうございます!」
「ダンバァ!」
ダンバルは勢いよく頷いた。
元気いっぱいな子だ。
「これからよろしくね!」
「ダンバァ!」
小さな身体から、力強い声が返ってくる。
新しい仲間。
その存在に、胸が温かくなる。
「それじゃあ、旅を楽しんで!」
「はい! ありがとうございました、ダイゴさん!」
私は何度も頭を下げる。
そして、仲間たちへ向き直った。
「私たちも行こうか!」
「オオゥ!」
「ロトロト!」
「ダンバァ!」
腕には、Zリング。
腰のポーチには、モンスターボール。
そして、その中には五匹の仲間たち。
これから何が待っているのかは、まだ分からない。
それでも――。
「行こう」
私たちは歩き出す。
焦らず、急がずに。
私たちは、私たちの歩幅で進んでいく。
ゆっくりと。
私たちのペースで。
旅は、再び始まった。
・覚醒、Z技。
最初のリーグから敵味方問わずに切り札をガンガン使いたいなーと考えていたところ、マーシャドーの七星脱魂腿が目に止まりZ技を使わせるシナリオが思いつきました。
・新たな仲間、ロトムとメタング加入
相性補完も兼ねてこの二体に決めました。
この後シナリオ書いてたらダンバルの技レパートリー不足に絶望した。
・今後長編を書くなら独自展開を書けるかどうかを基準に決めます。なので書かない話もあります。
リーフに使わせたいZ技
-
ノーマル
-
くさ
-
ほのお
-
みず
-
でんき
-
むし
-
ひこう
-
いわ
-
どく
-
じめん
-
こおり
-
エスパー
-
ゴースト
-
ドラゴン
-
あく
-
フェアリー