ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
セキチクシティ。
カントー地方でも住みやすい街として知られるこの町は、豊かな自然と便利な施設が共存している。
そんな街の外れに建つ豪華な武家屋敷こそ、毒タイプのセキチクジムだ。
「じゃあ、お先に挑戦させてもらうね」
「ああ、頑張れよ!」
「ピカチュ!」
サトシたちは、ジム戦の前にサファリパークへ行って、新しいポケモンをゲットするらしい。
ならばここは、お先に挑ませてもらおう。
私はセキチクジムの門をくぐった。
◆
武家屋敷の中へ入る。
「……」
静かだ。
人の気配がない。
「……違う」
私は立ち止まった。
足元。
床の真下から――誰かの波動を感じる。
しゃがみ込み、床を覗いてみると……。
「コンパン♪」
小さなコンパンが、こちらを見上げていた。
「フォッフォッフォ……」
どこからともなく、男性の声が響く。
「流石はスーパーバッジ保有者。さては、波動使いでござるな」
「……!」
私は波動を研ぎ澄ます。
声の位置を探る。
右。
左。
前。
後ろ。
……分からない。
どこから声がしたの!?
「オオゥ!?」
リオルも驚いたように周囲を見回す。
こんな経験は、初めてだ。
「真の隠れ身は、波動すらも誤魔化す」
声だけが、屋敷の中を漂う。
「この忍者屋敷に隠れた拙者を――見つけることができるかな?」
「……面白い」
どうやら、このセキチクジム。
そう簡単には、ジムリーダーのところまで辿り着けないらしい。
◆
そこから先は、驚きの連続だった。
「……?」
コロコロ……。
足元へ何かが転がってくる。
「ビリリダマ!?」
「ピカッ!」
慌てて飛び退く。
次の瞬間――。
ドォン!!
爆発。
「危なっ!」
さらに進めば――。
「ここに落とし穴が……」
波動で床の違和感を察知。
慎重に避ける。
「よし」
一歩踏み出した。
カチッ。
「……え?」
ガコンッ!!
「きゃああああ!?」
まさかの第二の落とし穴。
「オオオゥ!?」
リオルも一緒に落下する。
どうやら波動で探知できる罠だけではないらしい。
そして極めつけは――。
「……」
「……」
「……」
いつの間にか、背後に忍者が立っていた。
「勝負!」
「うわぁ!?」
このジム……心臓に悪い!
それでも、仕掛けと刺客をどうにか掻い潜り――。
私は屋敷の奥へと辿り着いた。
◆
そこに広がっていたのは、綺麗に整えられた庭。
白い玉砂利が敷き詰められ、その両端では弟子と思しき忍者たちが座禅を組んでいる。
そして、その中央に立つ黒装束の男。
この男こそ――。
「よくぞ参った、チャレンジャー!」
男が大きく胸を張る。
「拙者こそ、セキチクジムジムリーダーのキョウ!」
やっぱり、この人がジムリーダーか。
「お主の話はエリカ嬢から聞いておる」
キョウは私をじっと見つめる。
「拙者でも梃子摺るリーフィアを倒したとな」
「いえ。ポケモンたちのおかげですよ」
「ならば、そのポケモンたちの腕前――見極めるとしよう!」
キョウがモンスターボールを構える。
「ルールは3対3! 交代はチャレンジャーのみ!」
そして――。
「メガシンカやZワザなど、特殊戦術の使用は互いに禁止でござる!」
カントーのジムでは、基本的にメガシンカやZワザ、ダイマックス、テラスタルなどの特殊戦術と呼ばれる力は禁止されている。
ポケモンとトレーナー自身の純粋な実力を測るため――らしい。
「なら、この子で勝負しようか」
私はモンスターボールを取り出した。
「行こう、ロトム!」
「ロトロト!」
「いでよ、モルフォン!」
「モルフォォ!」
一番手はロトム。
フォルムチェンジの指示は出さない。戦況を見てから決める予定だ。
対するキョウさんのポケモンは――。
蛾とは思えないほど美しい羽を持つモルフォン。
「モルフォン、サイコキネシス!」
「モルフォォン!」
ギュオオオオッ!!
開始早々、強烈な念動力がロトムへ襲いかかる。
「ロトム、ひかりのかべ!」
「ロトォ!」
パァン!
ロトムの前に光の壁が展開される。
ドォン!!
念動力が壁へ激突し、そのまま弾き飛ばされた。
「今!」
「ロトォ!」
「でんげきは!」
バリバリバリッ!!
無数の電撃が広範囲へ散らばっていく。
「ちょうのまいでござる!」
モルフォンが左右へ舞う。
しかし――。
「ちょうのまいでも、全部は避けられない!」
電撃の一部がモルフォンを捉えた。
「モルフォォン!?」
「まだまだ!エアスラッシュで吹き飛ばせ!」
「モルフォォン!」
無数の刃が飛んでくる。
「ロトム、トリック!」
「ロトォ!」
次の瞬間――。
フッ。
ロトムの姿が消えた。
「なっ!?」
キョウが目を見開く。
モルフォンの視界から消えたロトムは、そのまま死角へ回り込む。
本来のトリックは、ポケモンの持っている道具を入れ替える技。
しかしロトムはその技術を応用し、相手の意識の隙間を縫うような瞬間移動を可能にしていた。
「もう一度、でんげきは!」
「ロトォ!」
バリバリバリッ!!
至近距離からの電撃が、モルフォンを直撃する。
「モルフォォン……!」
ドサッ。
「モルフォン、戦闘不能!」
「変わり身の術、お見事」
キョウが目を細める。
「まさかフォルムチェンジもせず、モルフォンを倒してしまうとは」
「ふふん。鍛えてありますから」
本来のロトムは、家電へ入り込むことでフォルムチェンジし、それぞれの力を発揮する。
けれど、私はロトムが本来持っているゴーストタイプの力に注目した。
フォルムチェンジしなくても戦えるように。
それだけは、加入してからずっと特訓してきた。
「ならば、こちらも鍛えた腕前を見せるとしよう!」
キョウが次のボールを投げる。
「ベトベトン、出陣!」
「ベトオオオオ!」
二番手は――巨大なヘドロ。
ベトベトン。
……ただ。
「……あれ?」
地下水路で出会ったベトベターたちのような、あの強烈な異臭がしない。
忍者の極意なのか。
それとも、このベトベトンが特別なのか。
「ベトベトン、あくのはどうでござる!」
「ベトオオオ!」
ドォン!!
ベトベトンの拳から、黒い波動が放たれる。
空気そのものが震えるほどの威力。
「あれに当たったらマズイ!」
「ロトム、ウォッシュフォルムにチェンジ!」
「ロトロトロト!」
ロトムが青白い光に包まれる。
そして――。
ガシャン!
洗濯機の姿へと変化した。
「なんと、変化の術まで!」
「ハイドロポンプで洗い流せ!」
「ロトォォォ!」
ゴォォォォッ!!
洗濯機から膨大な水が噴き出す。
「ベトベトン、ちいさくなる!」
「ベトォ!」
ベトベトンの身体が、みるみる縮んでいく。
ハイドロポンプが紙一重で頭上を通り抜けた。
「やっぱり簡単には当てさせてくれないか……!」
「だが――!」
キョウの目が鋭くなる。
「フォルムチェンジしたことで、ゴーストタイプが持つ毒タイプへの耐性は失われた!」
「……!」
「ヘドロウェーブ!」
「ベトオオオオオ!!」
ドォォォォン!!
紫色の毒の波がフィールド全体を覆い尽くす。
「ロトム!」
逃げ場がない。
ロトムの身体が、毒の波に飲み込まれた。
「ロトォォ!?」
「繋げて――あくのはどう!」
「ベトオオオ!」
毒の波の中を、黒い波動が走る。
バリバリッ!
「ロトォ!?」
闇の波動がロトムを捉え、その動きを封じる。
「怯んだところへ、さらにヘドロウェーブ!」
「ベトオオオオ!」
ドゴォォォン!!
再び毒の波がロトムを襲う。
「なんて凶悪な連携なんだ……!」
一度捕まえた相手を、逃がさない。
毒と怯みで、確実に仕留める。
「これぞ連携技!」
キョウが高らかに叫ぶ。
「水遁――黒飛沫の術!」
「ロトム!」
「ロトォ……」
ロトムの身体から力が抜ける。
そのまま地面へと落ちていく。
ドサッ。
「ロトム、戦闘不能!」
「ベトォ!」
「ベトベトンの必殺連携、如何かな?」
キョウが不敵に笑う。
「まだまだ秘伝の忍術はあるでござるよ」
「……」
私は倒れたロトムを見つめる。
やっぱり――ジムリーダーは強い。
でも。
この手強さこそが、ジムバトルの醍醐味だ。
忘れていた。
負けたら終わりではない。
追い詰められたところから、どうやって勝ち筋を見つけるか。
この緊張感。
この感覚。
私は思わず笑っていた。
「……そうこなくちゃ」
次のモンスターボールを取り出す。
「さあ――ここからだよ」
・ジムバトルではZ技禁止
希少価値の高い道具を巡って、未熟なトレーナーの間でトラブルが起きることを防ぐために特殊戦術は一律禁止となっています。
これについてはポケモンリーグ関係者の間でも意見が分かれており、世界に通用するトレーナーを育成する為にも解禁すべきだという声が大きくなっているようです。
・ロトムはフォルムチェンジしなくても強い。
最初は通常形態で戦い、作戦が決まったらフォルムチェンジするのがこのロトムの基本戦術。
おまけにトリックを応用したテレポート擬きも使える。イメージはONE PIECEのオペオペの実です。
リーフに使わせたいZ技
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