ポケモンTS転生〜リーフは原作を忘れかけている 作:はらへりニャンコ
クチバシティのジムリーダー、マチスは良くも悪くも有名だ。
ジムのルールは1vs1。
ジムリーダーは手加減せず、本気で相手と戦う。
中途半端な実力のものは容赦ない電撃の前に黒焦げとなり、ポケモンセンター送りになる。
その証拠に、私が辿り着いたポケモンセンターでは、ビリビリに目を回したポケモンの行列ができていた。
ジョーイさんの人数も、心なしか他の街より多い。
ポケモンセンターは、朝から慌ただしかった。
「さて……今回は誰で挑もうかな」
私は腰にあるモンスターボールを眺める。
電気タイプのジムなら……。
「カットロトムなら、電気技をほぼ無効化できる」
相性だけを考えれば、ロトムが一番手堅い。
だからこそ、今回はロトムで――。
ポンッ!
「ソウ! ソウソウ!」
「……え?」
突然、目の前に一体のポケモンが飛び出してきた。
「フシギソウ?」
「フーシ!」
フシギソウだった。
私の前に立つと、蔓をブンブン振り回す。
その姿は――やる気満々。
「……フシギソウ」
「ソウ!」
「マチスさんは強いよ?」
「フーシ!」
迷いのない返事。
そこに、出会った頃のような緊張した様子は微塵も感じられない。
……そういえば。
ここ最近、フシギソウはあまりバトルに出していなかった。
ロトムやオコリザル、メタングの出番が増えたこともあって、気づけば出番が減っていた。
それでも――。
この子は、まだ戦う気でいる。
「……分かった」
私はしゃがみ込み、フシギソウと目を合わせた。
「今日は、あなたに任せるよ」
「フーシ!」
フシギソウは嬉しそうに蔓を振った。
「一緒に頑張ろうね」
「ソウ!」
◆
「Welcome、チャレンジャー、リーフ!」
クチバジム。
その中央に立っていたのは――。
「首を長くして待っていたぜ!」
見上げるほど巨大なマッチョだった。
……下手なポケモンよりモンスターしてる。
「俺のライチュウは、少し前にピカチュウに敗北する屈辱を味わった!その後、こいつは更なるhardな修行を重ねた結果! パワー! スピード! エレキ! タフネス! 全てがレベルアップした、隙のないライチュウへと生まれ変わったのさ!」
マチスさんが拳を固く握った後、背後からモンスターボールを取り出す。
「俺のジムはこいつとのタイマンだ!」
「さあ、チャレンジャーのポケモンを出しな!」
「OK!Let’s go!フシギソウ!」
「フーシ!」
……オーノー。
イングリッシュ訛りの発言に釣られちまったぜ。
「ヘイ!」
マチスさんもボールを投げる。
「出番だ、ライチュウ!」
「ライラーイ!」
黄色い身体を持つポケモン、ライチュウがフィールドへ飛び出す。
以前、サトシくんのピカチュウに敗れたらしいライチュウ。
しかし――。
「……強い」
見るだけでも分かる。
筋肉の付き方。構え。全身から放たれる波動。
明らかに鍛え直されている。
「俺のライチュウは、タイプ相性が有利な程度じゃ止められないぜ!」
マチスさんが不敵に笑う。
「わるだくみ!」
「ライ!」
ライチュウの目が鋭くなる。
全身から禍々しいほどの気迫が膨れ上がった。
「そして――!」
バチバチバチッ!
「10万ボルトォォォ!!」
「フシギソウ、ヘドロばくだん!」
「フーシィィッ!」
ドォォォン!!
毒々しい塊と電撃が真正面から激突する。
紫色の煙がフィールドを覆う。
「押し切れ、ライチュウ!」
バチィィィッ!!
電撃がヘドロばくだんを吹き飛ばした。
「フーシッ!?」
そのままフシギソウの身体を電流が駆け抜ける。
「フシギソウ!」
「フー……シ……!」
フシギソウが膝をつく。
「まだいける!?」
「フーシ!」
すぐに立ち上がった。
「……よし!」
マチスさんがニヤリと笑う。
「その程度じゃ、俺のライチュウには勝てないぜ!」
「こっちだって!」
私は拳を握る。
「パワーウィップ!」
「ソウッ!」
フシギソウの蔓が唸りを上げる。
「ドレインパンチで迎え撃て!」
「ライッ!」
ライチュウが拳を握る。
ドゴォン!!
蔓と拳が正面衝突した。
「ソウッ!」
「ライィッ!」
一度。二度。三度。
何度も激突する。
フシギソウが蔓を振るう。
ライチュウが拳で叩き落とす。
「フシギソウ、押し切って!」
「ソウッ!」
フシギソウの蔓がライチュウの頭を打ち付けた。
だが――。
「ライチュウ!」
ドゴォッ!
ライチュウの拳がフシギソウの身体を捉えた。
「フーシッ!」
フシギソウが後退する。
ライチュウの身体が流れ込んだエネルギーによって、少し癒えていく。
私は歯を食いしばる。
「ドレインパンチの回復が厄介すぎる……!」
「ヘイ! 鞭がブレブレだぜ!」
マチスさんが指を突きつける。
「かわして追撃だっ!!」
「ライッ!」
ライチュウが跳ぶ。
パワーウィップを紙一重でかわし――。
「10万ボルト!」
バリバリバリッ!!
「フシギソウ!」
真正面から電撃が直撃する。
「フゥーシィィィッ!!」
フシギソウが吹き飛び、地面を転がった。
「フシギソウ!」
「まだだ!」
マチスさんが叫ぶ。
「トドメだ!」
ライチュウが両手を掲げる。
「わるだくみ!」
再び、禍々しい力が膨れ上がる。
「そして10万ボルトだァァ!!」
「ライィィィ!!」
巨大な電撃が迫る。
「フシギソウ!」
私は咄嗟に叫んだ。
「パワーウィップを地面に!」
「ソウッ!」
ズドォン!!
蔓が地面へ突き刺さった次の瞬間。
バリバリバリバリッ!!
電撃が蔓を伝って地面へ流れ込んでいく。
「フゥゥッ……!」
フシギソウへの直撃は避けられた。
それでも、完全には防げない。
「……ぐっ!」
フシギソウの身体が震える。
「タイプに頼らない電気対策はしっかり覚えさせているみたいだな」
マチスさんが笑う。
「だが――」
ライチュウが拳を握り、ニヒルに笑う。
「流石にわるだくみ二回はステータス差がつきすぎたか!リタイアしてもいいんだぜ?」
「…………」
私はフシギソウを見る。
あちこちボロボロで、息も荒い。
それでも――。
「フー……シ……」
フシギソウは立っている。
その目は、まだ死んでいない。
「……まだやれる?」
「フーシ!」
力強く鳴いた。
「……そっか」
私は笑った。
「じゃあ、まだ終わりじゃないね」
その瞬間。
フシギソウが足元の土を蹴った。
ザッ!
土が舞い上がる。
「……ん?」
私は地面を見る。
クチバジムのフィールド。
何度も何度も、痺れるバトルを受け止めてきた場所。
その土は――。
「……柔らかい?」
私はしゃがみ込み、指先で土を確かめる。
「そういうことか……!」
私の頭の中で、一つの考えが繋がった。
「フシギソウ!」
「ソウ!」
「パワーウィップ!」
「ソウッ!」
蔓が伸びる。
「かわせ!」
ライチュウが横へ跳ぶ。
しかし――。
「狙いはライチュウじゃない!」
私は叫ぶ。
「What’s!?」
「地面よ!」
ズドォン!!
フシギソウの蔓が、深々と地面へ突き刺さる。
そして――。
「ギガドレイン!」
緑色の光が地面いっぱいに広がった。
「ソウ……!」
大地から、エネルギーが吸い上げられていき、フシギソウの身体の傷が消えていく。
「……やっぱり!」
このクチバジムは電気タイプのジム。
当然、ここでは多くのトレーナーが地面タイプの技を使って戦ってきたはずだ。
そのたびに、ここのバトルコートの地面は何度も掘り返されている。
そして――。
「そこへ電気タイプの技が何度も流し込まれている」
「まさか……!」
マチスさんが目を見開く。
「そう!」
私は地面を指差す。
「この土地は、地面タイプの技によって耕されてきた!そこへ電気エネルギーが流れ込むことで、大地の養分が活性化している!」
「ソウ……!」
フシギソウの身体へ、次々とエネルギーが流れ込む。
「これまでこのジムで戦ってきたトレーナーたち!」
「そのバトルの全部が――」
私は拳を握る。
「今日のフシギソウの力になる!」
「フー……シィィィ……!」
フシギソウの身体から、緑色の光が溢れ始めた。
「……え?」
背中のつぼみが、大きく震える。
ドクン。
ドクン。
まるで心臓のように鼓動する。
「フシギソウ……?」
さらに光が強くなる。
「まさか……!」
フシギソウが顔を上げた。
その目には――。
戦う意思が宿っていた。
ここまで何度倒されても。
何度吹き飛ばされても。
それでも立ち上がってきた。
「……そうか」
私は、ようやく分かった。
「あなたは――まだ、強くなりたいんだね」
「フーシィィィィィ!!」
その瞬間。
まばゆい光が、フィールドを包み込んだ。
大きなつぼみが開いていく。
葉が広がる。
身体が大きくなる。
そして――。
「フシギバナ……!」
巨大な身体。
その背中には、満開の巨大な花。
「ヴァナアァァァァァ!!」
「進化しただと!?」
マチスさんが驚愕する。
私は思わず笑った。
「……待たせちゃったね」
フシギバナがこちらを見る。
「これからは――二人で取り返そう!」
「ヴァーナ!」
進化した身体から、凄まじい生命力が溢れ出す。
「マチスさん!」
私は拳を突き出す。
「ここからが反撃だよ!」
「来い!」
マチスさんも笑う。
「ライチュウ! 10万ボルト!」
「ライラーイ!!」
バリバリバリバリッ!!
「フシギバナ、ヘドロばくだん!」
「ヴァーナッ!!」
ドォォォン!!
猛毒の塊と電撃が正面衝突する。
だが、今度は違った。
「押し返してる……!」
紫色の煙が、電撃を飲み込んでいく。
「ライッ!?」
ライチュウが後退する。
「馬鹿な……!」
マチスさんが目を見開く。
「さっきまでとは、パワーが段違いだ!」
「まだまだ!」
私は叫ぶ。
「ギガドレイン!」
「ヴァーナ!」
フシギバナの蔓が地面へ突き刺さる。
「地下から全部、もらうよ!」
緑色のエネルギーが地面から一気に吸い上げられる。
「ライチュウ、かわ――」
「遅い!」
フシギバナの蔓が地面を這い、ライチュウの足元へ伸びる。
「ヴァナッ!」
ライチュウの身体から生命エネルギーが吸い上げられる。
「ライ……!」
「今だ!」
私は拳を突き出した。
「ハードプラント!!」
「ヴァーナアアアアア!!」
ズズズズズズ……。
大地が震える。
フィールドのあちこちから巨大な樹木が一斉に突き出した。
「な、なんだとォ!?」
ライチュウが逃げようとする。
しかし巨大な樹木が、その身体を真正面から捉えた。
ドォォォォォン!!
「ライラァァァイ!!」
樹木が崩れ落ち、土煙が晴れていく。
そして――。
「ライチュウ戦闘不能!」
審判の声が響いた。
「フシギバナの勝ち!」
「…………」
私は、しばらく動けなかった。
勝った。
本当に――。
「やったね、フシギバナ!」
「バーナ!」
フシギバナが蔓をブンブン振り回す。
……進化しても。
そこだけは変わらないらしい。
「ふふっ」
私は笑った。
フシギダネの頃から。
一緒に旅をして。
一緒に戦って。
そして今日――。
この子は、自分の力で次の段階へ進んだ。
「やっぱり……私のポケモンだね」
「バーナ!」
マチスさんが大笑いする。
「Unbelievable!」
ゴツゴツした大きな手でバッジを渡してきた。
「このジムに、そんなギミックがあったとはな!」
私は両手でバッジを受け取る。
「ウィナー・リーフ!」
「勝者の証・オレンジバッジを持っていきな!」
「オレンジバッジ、ゲット!」
「バーナァ!」
・お待たせしました、フシギバナ進化!
ジム巡りも終盤になり、ここでようやくの進化。
技レパートリーが増えて使いやすくなりました。
・クチバジムの地面は農業向き?
作者は齧りかけの曖昧な知識でこの話を書いているので、電気による微生物の活性化どうこうは間違ってるかもです。
でもディグダが掘り進んだ土は栄養分豊かな土になるってポケモン図鑑に書いてあったし、養分自体は十分にありそう
リーフに使わせたいZ技
-
ノーマル
-
くさ
-
でんき
-
ドラゴン
-
フェアリー